Atelier lirica~アースランドの錬金術士~ 作:ねり金術師
ルーシィが乗り込んだ船のある一室には豪奢に飾り立てられた部屋がある。
さながら仮初めのパーティ会場のように飾り立てられているのは、
ルーシィが『火竜もどき』(詐欺師)と大立回りを繰り広げてるいるなか、そのパーティ会場にジェシカはいた。
操られてる女性たちに紛れ込む形で船内へと侵入を果たしたのだ。
よほど魅了の魔法に自信があったのか警備がざらで着の身着のままでここまでこれたのだ。
(う~ん、まだ魅了が効いてるみたい。解いてあげたいけど今するとパニックになるよね絶対。)
そうなると騒ぎを聞き付けてならず者達が押し寄せてくるだろう。
自分一人ならここから逃げ出すことも、なんならある程度の纏まってかかってこられても対処は可能なのだけど、
室内にはその手のものが一人もいないのは不幸中の幸いである。
当たり前ではあるが部屋の扉の前には用心棒のように、明らかに手を汚してそうな男達が遮っていた。
(拐われた人たちの方は今のところ大丈夫だし、ルーシィの方も心配だからそろそろ動こうかな?)
再度異常がないことを確認して今度こそ行動を開始した。
「あのー、ごめんなさい。一寸お花を摘みにいきたいんですが…………」
「あん、花だぁ?何で今になって―」
「バッカおめぇそうじゃねぇよ!トイレだよトイレ」
「あ、なるほどなぁグヘヘ」
コントのようなやり取りを繰り広げたあと男共は不気味な笑い声を漏らす。
変態かな?
◇
結局のところならず者達は二手にわかれて見張りをつけたので今は一人しかいない。
そして、パーティ会場からも十分離れたので今が絶好の好機であった。
なんのって?それはもちろん―
YA★MI★U★TI★である。
こっそりポーチに手を伸ばす。
取り出したのはどうやって入っていたのか不思議なほどの長さの一本の鈍器、ならぬ杖。
それを両手で上段に構えいつでも降り下ろす状態に。
それでも男は気づかない。生来杜撰な性格だったせいかそれとも火竜の『魅了』を過信しすぎていたのか。
変態の彼の脳内はどうやって覗き見をしようかということだけで頭一杯になっていたのだ。
そんな男の内情を知ってか知らずか、無慈悲にも降り下ろされる凶器の杖。
不意をつかれた一撃は吸い込まれるように頭部に命中。
男は会えなく失神のうきめにあうのだった。
◇
扉の前には一人減ったもののまだ一人注意深くあたりを見渡して警戒している。
少なくとも半端な不意打ちは効果が薄いだろう。
荒事に多少なれていても武術に嗜みがあるわけでもない彼女には正々堂々戦うには荷が重い。
(道具で一撃で決めた方がいいけど、爆弾類は派手だし回りにも被害が出やすい、なら―)
ポーチをまさぐり次に取り出したのは手のひら大の布製の袋。
それを中身が漏れないように優しく握り、見張りめがけて思いっきり投げつけたのだ。
当然投げつけられたそれは、弧を描くように向かっていくがいち早く気づかれ叩き落とされてしまう。
すると強い衝撃を受けた袋の中から臭気が勢いよく飛び出し見張りとその付近にちりばめられた。
「く、くさ!?なんだこれ!?ゴファッッ!?」
思わず解脱してしまいそうなほどの悪臭に直接降りかかられた彼は顔色を青くしてその場で卒倒。
止めの一撃として背後から忍び寄ったジェシカの魔の手(杖による股間強打)により完全に意識をたたれるのであった、南無。
ちなみにジェシカはちゃっかり鼻栓をしていたので自爆を免れいたりする。
そして手持ちの道具で辺り一面の消臭をしてから気絶したならず者を捕縛しましたとさ。
その後もバッタバッタと闇討ち不意打ち上等だと言わんばかりになぎ倒し、船内の安全を確保したジェシカはついにルーシィが案内された部屋の前へとたどり着く。
しかしなにか様子がおかしい。
乗り込む前にこっそり中を除きこんだジェシカは、己の不運を呪った。
「おろろろろろろろろろ」
「くっそきたねぇなおい!?」
「ちょっとぉ!?いきなり現れといて人質にならないでよねぇ!?」
やけに体調が悪そうな昔馴染みが『火竜もどき』の人質になっているのである。
おおかた勢いだけで乗り込んだはいいものの天性の乗り物酔いが遺憾無く発揮され身動きとれないうちに捕まってしまったのだろう。
お陰でルーシィが攻めあぐねている。
(いやうんそれは
じゃあなにが、と聞かれればナツが、正確に言うと『妖精の尻尾』のメンバーがいる今の現状が不味かった。
一身上の都合でギルドメンバーとは顔を会わせたくないジェシカは既にどうルーシィを助けるのかではなくどうやってこの場をあとにするかに考えがシフトしていた。
そのうちに事態は刻一刻と変わっていく。
上空で待機していたらしいハッピーがルーシィを浚うように助けだしたり。
何故かその後すぐに怒声と悲鳴が聞こえ、ドボンとなにかが水に落ちた音が聞こえたり。
兎も角目下の悩みごとの一つが消えたのは行幸だ。
船にまだいる人質はナツ達が連れ帰ってくれるだろうし、このまま小舟でも拝借してとんずら決めようとした、そのときである。
グランッと船が大きく揺れた。
そして大波に押し返され船が港へ逆走を始めたのだ。
「はぇ?ぇ、キャアァァァァァァ!!??」
船内はさながら遊園地の絶叫マシンのごとく揺れ動く。
ジェシカも近く扉にしがみつきながら揺れが収まるまで堪え忍んでいるとひときわ大きな地響きのあとぱったりと揺れが収まったのだ。
―この時点で既に奴隷船は浜辺に打ち上げられ、完全に制止したことはすぐに理解せざるを得なかった。
「お、ようやく楽になった!これでようやくお返しができるな」
「ちぃっ!ふざけやがって。おい、だれかこいつをつまみ出せ!…………おい!?きいてるのか!?」
余裕を取り戻した桜髪の青年―ナツは追い詰めるように偽物にゆっくりと近づいていく。
対して偽物は部下を呼び出して袋叩きにする算段だったようだが彼らは全員ジェシカのアンブッシュでのされていた。
「おれは、別にお前がなにもんだろうがいいけどよ」
「は、はぁ!?今さらなにいってやがる!ここまで虚仮にしやがったくせに!」
偽物が放つ赤熱の炎が敵に目掛けて迫っていく。
それをナツは意にも介さず歩みを進めた。
燃えている、ナツの回りを燃やしているのは果たしどちらの炎か。
さながらモンスターである、強さも見た目も。
その威容に呑まれたのか、いつのまにか偽物は膝を震わせ尻餅をついていた、。
構わず偽物の目の前まで躍り出る。
今にも失神しそうな男の前でナツはゆっくりと口を開いた。
「けどな」
「ヒ、ヒィ!!??」
「『
怒号とともに一閃
炎を撒き散らしながら振るわれた左腕は、顔面に直撃して船もろとも吹き飛ばし港町に少なくない損壊を負わせながらぶっとばしたのである。
控えめにいって大惨事、大惨事であった(大切なことなので二回言いました。)
「―凄い。これが、火竜……『
一歩遅れてやって来たルーシィが吹き飛ばされた船の壁だったところから顔を除かせていた。
「お、ルーシィ無事だったか!よかったよかった。」
「無事だったか、じゃないわよ!なんで一番最初にあったとき『妖精の尻尾』のメンバーだって教えてくれなかったの!?」
「あれ、教えてなかったか?」
どうやらナツとルーシィは知り合いだったようで楽しそうにしている。
とにもかくにも、二人ともたいした怪我はなく元気そうである。
それだけでも確認ができて、ジェシカは安堵してゆっくりと息を
「てかさっきの声!絶対アイツだな!!おい近くにいるのはわかってんだぞ!!出てこぉい!!!」
―必死に圧し殺した。
さっきの悲鳴が聞こえてたのだろう。
船酔いでヨレヨレだったくせに感度の良すぎる耳め。
これだから
「ってそうだ。私もジェシカを探さないと。お礼も言わないといけないし」
「ジェシカ?誰だそれ?」
「私の友達。渡してくれた魔導具にも助けてもらったし、一緒に潜入してたはずだから近くにいると思う。」
「そうか、いいやつなんだな!なら一緒に探すか!」
(ごめんルーシィ。今ちょっと姿を見せるわけにはいかないの…………そこのナツとハッピーと一緒に帰って……カエッテ…………)
不本意に敵国に潜入したスパイの気分を味わっていると、周りがどんどん騒がしくなってきた。
騒ぎを聞き付けて軍隊が出動したのだ。
流石に捕まるのは不味いと思ったのかナツとハッピー、そしてルーシィ達は一目散ににげていった。
あの様子だとルーシィは無事に『妖精の尻尾』に加入できるだろう。
まもなく軍隊が船内の調査を始め、罪状やら拐われた人たちの救出が行われるはずだ。
ジェシカも事情聴取に駆り出されるだろうが軍にいる分には比較的安全だしギルドも易々と干渉はしないはず。
(事情聴取が終わったあとは昔馴染みのやらかした尻拭いとして町の復興でも手伝おうか)
そんなことも考えながら彼女はようやく一息ついたのだった。
唐突に始まる本編に出てきたアイテム、用語説明
《ルフト》
本編でも語られている通り風属性で敵を攻撃する爆弾のようなもの。
今回使用されたものは本来の使用よりコンパクトに作られていて、なおかつ低品質の為威力が低い。
なお原作のゲームでもアイテムを小型化することが可能である。
《匂袋》
名前のでなかったジェシカが見張り相手に使用したアイテム。
基本的に魔物が嫌がる匂いを辺り一面にばらまくのだが、人間にとっても比較的不快なものとなっている。
これを強化していくと解脱臭という強烈なものが出来上がるが、その威力は行為の存在にさえ影響を及ぼすという
ゲームの使用上ではステータスを下げる効果をもつ。ストーリー上のラスボスにもきく。
《偽火竜のボなんとかさん》
正体を明かしてくれる手下が全滅してしまったため名前が出ることのなかったかわいそうな人。
その後一命をとりとめ無事刑務所に収容された。