Atelier lirica~アースランドの錬金術士~ 作:ねり金術師
「マカロフさん、だなんてずいぶんと他人行儀になったものじゃのう。おじいちゃん、おじいちゃんと呼んでくれてたというのに」
およよと、わざとらしく目元をぬぐう仕草をするマカロフ翁。
齢88にして知る人ぞしる問題児ばかりが集うギルド、『
そしてジェシカ―妖精の尻尾に滞在時はリリカと名乗っていた―にとっての命の恩人にして今までで2番目に信頼に足る人物で―そして親代わりともいえる存在であった。
頭が上がらない人物、ともいえる。
だがしかし、というべきかだからこそとも言えるかもしれない。
ジェシカは毅然とした態度を崩さなかった。
「ふざけるのはやめてもらえませんか、それとジェシカです。いまは」
「…………おぬし、変わったのう。強かになったというか多少は駆け引きができるようになったのじゃな」
「生憎、なんのことか存じ上げませんが?」
「昔はマグノリアでも有名な泣き虫じゃったのに」
「え、なにそれ初耳なんだけど」
「ラクサスやエルザはまだしもグレイの魔法を見て怖くて涙目になってたり」
「え、ちょ」
「ミラジェーンたちやレビィに先輩風を吹かそうとして物理的に自爆して泣き出したこともあったのぉ」
「まってマスターマカロフお願い」
「ナツと初めてあったとき-」
「おじいちゃん!?」
続々と出てくる昔の
耐え切れずに素の自分を出しながら話を遮る。
「まだまだ子供だのう。わしを謀るのは10年早いわい」
先程までの余裕はどこへやら、ジェシカは恨みがましそうにマカロフ睨んでいる。
若干涙目であった。
「うう…おじいちゃんのいじわる」
「ほっほ、スマンスマン。じゃが元気そうで良かったわい」
子供好きのする笑顔を向けるマカロフに、まだまだ敵いそうにないなと実感したジェシカ。
そこでふと、気になったことを口にすることにした。
「おじいちゃんは、連れ戻そうとはしないの?」
「ワシとしても戻ってくれるなら嬉しいがな、悪事をなすでもないし孫娘の旅立ちを見送るのも親の勤めというものじゃ。心配じゃがの。それに―」
「あらやだー↑↑こんなところにいたのマカロフちゃん。」
唐突に第三者の声がマカロフの語りと重なる。
その声の主はマカロフの後ろにいる小太りで何故か女物の服を着て口紅を塗っているいい年した
控えめにいって常軌を逸した風貌にジェシカは近くの物陰に隠れ、手元にあった頭巾を目深く被った。
如何やらマカロフの知古のようらしい。
「む、どうしたのじゃボブ」
「どうしたのってあなたが突然いなくなったから心配して探しに来たんじゃない。やることあったんじゃないの?」
「…………しまったぁぁああ!!うちの馬鹿共のことをわすれておったわ!」
マカロフ、ここにきてようやくやらなければいけないことを思い出し、焦りだす。
そしてこの馬鹿ども、というのはジェシカにも誰の事かが理解できた。
特に昔から付き合いのある友人である水と油ならぬ、氷と炎の二人だろうと当たりを付ける。
ある意味で頼りにもなるし厄介でもある二人だ。
使う魔法の相性のごとくいつも仲たがいしている二人が同じ以来を受けるとは到底思えなかったが。
「一刻も早く見つけねば、町ひとつ潰されかねん!ボブ、すまんがその子を頼む!それとり…………ジェシカよ、辛くなったらいつでも帰ってきていいからの!」
矢継ぎ早に締め括ったあとマカロフはジェシカとおねぇっぽい男性―ギルドマスターのボブを残して走り去っていった。
「あらーよっぽど大事なようなのねぇ。ところであなた、マカロフと仲がよかったみたいだけど?」
「あ、わたし何度か…………マカロフさんにご贔屓させてもらってる行商人でして、今回軽食のご用意をさせていただきたく、搬入をさせていただきたいのですが」
「そうだったの?じゃあ一寸まっててね♥」
そういうや否やボブの号令で人が集まり、荷車に積んであった商品が次々と定例会場へと運ばれていった。
ジェシカが疑問に思う間もなくすべて運び終わってしまった。
思わず呆けてしまっていたジェシカにボブは一つ提案する。
「ねぇ、アナタ一緒にマカロフのことつけてみない?」
「…はい?」
◇
そして(強引に)流されるままマカロフの後をボブと一緒に追うことなる。
如何やら他のギルドマスターたちも出歯噛めする気満々のようでマカロフが見える位置にすでに何人もの人が隠れ潜んでいる。
その中に、見知った人影を発見した。
「おい、離せよオッサン。じいちゃんを助けるんだ!」
「まぁまちなさい、いまちょうどいいところから」
別のギルドマスターに抑えられているナツだ。
(いやマズイマズイ、なんでこんなとこにってああおじいちゃんのこと心配してか。)
半ば混乱のさなか顔を隠しながらあたりの状況を確認する。
どうやらナツ以外にグレイ、エルザ、ルーシィまでもがこの場に集っているらしかった。
何故かみんな傷やら疲労やらこさえていて、特にエルザに至っては魔力切れ寸前のようだ。
「んん!?何か懐かしい匂いがする…ような気がする!」
「なんじゃそりゃ、まぁもう少しで終わるから大人しくしとけよ」
侮りがたし滅竜魔導士、鼻の良さが犬並…!隣にどぎつい香水のにおいの漢女がいなければ即死()だった。
そんな風に息をひそめているとマカロフの説得も無事終わって、一件落着、といったところか。
何事もなければ、だが。
『カカカ、どいつもこいつも根性のねぇ魔導士どもだ。もう我慢できん、儂自ら喰らうてやる」
マカロフと男のがいるあたりから、その二人の誰でもない声が聞こえた。
すると男の手にもつ横笛らしきものからモクモクと何かが這い出てくるではないか。
這い出てきた煙は形を成し、一つの巨大な化け物となってこの場にいる生き物を滅ぼそうと襲い掛かったのだ。
唖然とするギルドマスターたち、その中で毅然と立ち向かうナツ・グレイ・エルザ・ルーシィたち。
-このまま彼らに任せれば彼の悪魔は退治されるだろう。
-今ならマスターたちも、妖精の尻尾も悪魔―ゼレフ書の悪魔に注目していて、この場を簡単に去れるはずだ。
(でも、万が一でも大きな怪我だけはしてほしくない。)
だから、彼女は-
◇
「チックショウ!あのふわふわした見た目に反して固すぎだろ!」
「威力の上がる鎧に換装して、強撃を食らわせれば―だが魔力が心もとないか……ん?」
エルザとグレイが攻めあぐねているところに局所的な雨が彼らを濡らす。
二人だけを濡らす奇妙な天気雨はさらに奇怪な現象を二人の身体に巻き起こした。
「なんだ…傷が塞がっていく?」
「魔力も全快とはいかないが、戻っているな。……だが、これなら」
役目は果たしたと言わんばかりに晴れ上がった空の下
グレイは巨体をも刺し貫かんばかりの巨槍を作り上げ
エルザは一撃の威力を上げる鎧『黒羽の鎧』に換装してその手には、まるで
―そして上空、悪魔の頭の上に陣取ったナツは案の定乗り物酔いでダウンしていた。
だがしかし、それでもしがみついていたのは流石といったところだろう。
突然悪魔の動きが止まる。
グレイの作った巨槍が悪魔を地面に縫い留めたためだ。
それと前後するようにナツの飛来する火の玉のように赤い何か。
それが、自分にとっての
爆発したのが先か、咀嚼したのが先か。
それはナツにとってはどうでもいい話だ。久しぶりに美味しくも懐かしい味を楽しむ。
やがてその
「おまけだ、アイスメイク・ランス!」
「黒羽・月閃!」
「
3人の力を合わせたとっておきが悪魔へと炸裂する。
あれほど強靭だった悪魔は、見るも無残に焼かれ、貫かれ、切り崩されていた。
ここでようやく、定例会を巻き込んだ闇ギルドとの抗争は幕を閉じたのだった。
……定例会場を粉みじんにして。
◇
「今度もぜってぇリリカが近くに居るって!まだ遠くに行ってねぇはずだ!」
「それはわかるが、今は逃げるほうが優先だ!…本当に申し訳ありませんマスター」
「いいのいいの、どうせもう呼ばれないでしょ?リリカのことは今回あきらめんしゃい」
「あの泣き虫、次会ったら絶対捕まえてやる!」
「うわーん!!今回もこうなるのねぇ!!」
妖精の尻尾が捨て台詞とも取れる発言を残しクローバーの街から去っていく。
そしてそれを追っていく兵士たち、ギルドマスターたちは未だに粉みじんの定例会場を唖然として見ている。
「へぇ、あの子が巷で噂の『イシュガルの錬金術士』、ねぇ」
誰が呟いたのかわからないほど小さな誰にも聞こえることなく空へと消えていった。
―そして件の錬金術士は-
「あっっっっぶなかったぁぁぁ…!あと少し遅れてたら牛車と一緒にぺしゃんこだったよ…。ほんとみんな手加減が下手なんだから…」
一瞬の隙をついて牛たちを回収し一足先にクローバーの街を離れていた。
相変わらず周りの被害などお構いなしな彼らに愚痴をこぼしつつも、いつも通り元気だった姿を見れて、晴れ渡った笑顔をしていたのだった。
今回使ったアイテム開設コーナー
《ゲヌークのじょうろ》
じょうろ型の魔道具
対象(範囲)に傷をいやし、魔力を回復させる雨を降らす。
エルザとグレイに使用
《フラム》
炎をまき散らす爆弾。
【オリジナル設定】
ナツに食べさせるとすべての炎に『爆裂する』特性を付与。滅竜奥義より威力が低いがコスパよし、使い勝手良しの汎用技になる。
効果持続中は【爆炎竜の~】に変わる。
ナツは桜色の髪だし魔法たべてパワーアップするし魔法の効果引き継ぐし(ハッピーの力を借りて)空も飛ぶから星の戦士。間違いない(違)
地味にエルザの武器にもオリジナル混ざってます。