発達障害彼女~スーパーヒロイン育成計画~   作:D1198

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女神選抜大会〈アージプリムティア〉2

 露店で昼食を済ませ、大道芸を見物し、一息ついたら、タマラの試合だ。

 

『第八試合開始!』

『『展開!』』

 

 タマラの宝石は、剣に姿を変えた。

 煌びやかな細工がちりばめられた聖剣で、とっても派手である。

 存在を誇るかの様に、タマラの聖剣が唸りを上げる。

 先手は、当然の如くタマラだった。

 

『場合の数!』

『え、なにそれ』

 

 相手は呆けてしまったので、クリティカル成立だ。

 

『おぇぇおあぁわっ!』

 

 タマラの対戦相手は、やっぱり光の中へ消えた。

 ”場合の数”とは数学の専門用語である。

 色々端折りすぎてよく分らない単語になっているが、ぶっちゃけると、マルチエンドゲームのエンディング数の事だ。

 もっと細かく言うと、場合とは分岐の選択肢に相当する。

 単語なんて覚えなくても良いから理解しておくと、人生で大活躍する考え方〈ツール〉だ。

 

「おい」

 

 流石の料理長も驚きを隠さない。

 

「ありゃぁ統計確率〈ロストテクノロジー〉じゃねぇか」

「そーらしーでーすーねー」

 

 三〇〇年前に消失してしまったらしい、今では断片が残るのみの学問だ。

 もちろんこの世界での話。

 

「マスターよ。お前が仕込んだのか」

「訓練の合間に基本〈大数・小数〉の話を小話的にしたんですが、知らぬ間に、たった半年で体系化やがったようです。一人で。あのお嬢様は」

「ポーラお嬢ちゃんが有利かと思ったが、どうなるか分らなくなったな」

 

 対戦相手はステージの外で地団駄を踏んでいる。

 一回の攻撃でHPを全て失えば……以下略。

 

『才能なんて大っ嫌いーーーーーーっ!』

 

 過度な嫉妬は、適正な判断を阻害するから要注意だ。

 

 

 試合の合間。

 ポーラの様子をこっそり見に来た。

 そうしたら意外な事に、タマラと一緒にストレッチをしていた。

 なれ合いしてなけりゃ良いんだけど。

 

「タマラさん。勝負は勝負です」

「勿論ですわ」

 

 老兵は死なずただ去りゆくのみ、か。

 俺は自分が恥ずかしい。

 

「それで、なにか在りました?」

「ご安心なさって。何もありませんわ。純粋な師弟関係ですから」

 

「別に気にしてませんし!」

「あ、あそこまでしましたのに……」

 

「はい?」

「乙女のプライドが……ズタズタです……」

「その気持ち、よぉぉぉく分っちゃいますー」

 

 何の事か興味が湧いたが盗み聞きはマナー違反だ。

 さっさと立ち去ろう。

 

◆◆

 

 タマラの成長は予想以上だが、ポーラも十分強い。

 見方を変えると、二人に敵は居ないと言う事だ。

 ポーラとタマラが闘う決勝戦までマッタリしよう、と思った矢先の事だった。

 闘技場を揺るがす程のどよめきが起ったのである。

 

『『『おぉ!』』』

 

 闘技場の複数の舞台に、視線を、アチラコチラへと走らせれば、その内の一つで倒れている副生徒会長を見つけた。

 

「あの副生徒会長が、負けた?」

 

 思わず零してしまったのは、予想外だったからである。

 単純な知識量なら生徒会長〈タマラ〉を凌ぐメガネっ娘だ。

 一言で説明すると、地味だが強い。

 あと大きい。

 タマラの紹介で何度か飯を食った事が在るのだが……やっぱり、論語読みの論語知らずだったかねー。

 

「舞台に立っている勝者は、と」

 

 小さい女の子だった。

 ポーラより更に若い。

 っていうか幼い。

 

「……なん?」

『あははは! お主の力量は中々のモノじゃ! じゃが運が悪かったのぅ♪ なんと言っても、わらわは最強じゃからのぅ♪ ……皆の者! わらわは最強〈さいつよ〉かーーっ!?』

『『『最強〈さいつよ〉!』』』

 

 フリフリのメイド服で、ふわふわ付きの扇子とツインテを、バサッと広げていた。

 流石ファンタジーだぜ。

 のじゃロリを、お目に掛かる事ができようとは。

 しかも親衛隊付きだ。

 うん、分ってる。

 問題は、こののじゃロリがポーラの次の対戦相手と言う事だ。

 

 

 情報集めである。

 これ師匠の務め。

 試合を見たらしい人その1。

 

「そののじゃロリはどうやって勝ったんですか?」

「あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺は観客席でのじゃロリの試合を見ていると思ったら、違うモノを見ていた……何を言っているのか分らねーと思うが(以下略」

「取りあえずおちつけ」

 

 試合を見たらしい人その2。

 

「そののじゃロリはどうやって闘ったんですか?」

「あ、あくまじゃ! あれは悪魔の業じゃ! ……お、おそろしい」

「アクマ、ねぇ。アクマより人間の方が怖いけどな」

 

 試合を見たらしい人その3。

 

「あの、」

「最強〈さいつよ〉!」

「だから、」

「最強〈さいつよ〉!」

「おい、」

「最強〈さいつよ〉!」

 

 駄目だ。

 色々逝ってる。

 

 聞き込みをしても要領を得ないが、標準的な選手ではない事は分った。

 強さにしろ・観客の反応にしろ・あとのじゃロリ。

 

「お主じゃな! コソコソ嗅ぎ回っている輩というのは!?」

 

 うぅむ。

 弟子を信用するのも師匠の努めだ。

 これ以上の世話は、余計なお世話になりかねない。

 

「だからお主じゃろ! コソコソしているというのは!」

 

 だが妙に気に掛かる。

 俺の直感がそう告げているのだ。

 直に会うのが適切だが……どうするか。

 

「こらーーーーっ!」

「んあ?」

 

 右を見ても・左を見ても・振り返っても、誰も居ない。

 なので下を見てみたら、そこにのじゃロリがいた。

 

「このわらわが先程から声を掛けてやってると言うのに!」

「おー。そうか。そうか。それはおにいちゃんが悪かった」

 

 この子か……ふむ。

 

「ふん。解れば良いのじゃ。お主をわらわのトレーナーにしてやろう。嬉しいじゃろぅ」

「うん。ありがとう」

 

 ピクリともしなかった。

 ナニがとは言はないが。

 

「そうじゃろう、そうじゃろう」

「それじゃ」

 

 どうやら俺はロリ属性を持ち合わせていないらしい。

 

「な、なんじゃと!? わらわを拒絶した!? わらわが声を掛ければひざまづいてへつらうのが男の礼儀であろう!? なっておらん!」

「どこの男だよ」

「わらわの傍に居る者どもじゃが」

 

 世界は違えども広がるロリコンの環。

 

「悪いんだけども訓練生は既に二人も居るから」

「ケッコンしてやるぞ」

 

「だからロリじゃ」

「お金だってたんまりじゃ」

 

「あるに越した事は無いが、不相応のお金は破滅の元だから」

 

 なんというか。

 子供相手に四の五のするのは大人げなかろー。

 

「焚書を免れた古文書も大量にあるぞ!」

「……まじ」

 

「わらわとケッコンすれば全てお主のモノじゃぞ! どうじゃ!?」

「まじーーーーーっ!?」

 

 あうあうあう、家に帰る方法が見つかるやも知れぬ、だがしかし。

 俺は再び見下ろしてみた。

 ロリっとしていた。

 な、なんてこった……家に帰る為には、人の道を踏み外せねばならんとは!

 

「のぅ、主さまよ……」

 

 なんですか、ロリボディに不釣り合いな妖艶な瞳は。

 

「世界史・経済史・宗教史よりどりみどりじゃ♪」

 

 たまにはロリコンもいいよね。

 

「さ、ひざまずくのじゃ。跪いて契約の接吻を……」

「せかいし・けいざいし・しゅーきょーしーーーーー」

 

 

「ちょーーーとまったぁ!」

 

 アレ? ポーラが居る。

 

「一足遅かったのぅ! ポーラ=ノーザンスター! お主はお役御免なのじゃ!」

「勝手に決めないで下さい! っていうかどう見ても間に合ってます!」

 

「畳と何とかは若い方が良いというではないか! 大人しく身を退くのじゃ!」

「若いじゃ無くて子供って言うんです!」

 

 二人はギャーギャー言い合っている。

 一体これはどうしたこt……我に返った。

 あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!

 ロリと話していたと思ったら、いつの間にかロリに成りかかっていた!

 何を言っているのか分らねーと思うが!!!(以下略

 

「あら、マスター。何処へ行かれるというの」

「やぁ、タマラ。どうして逃げ道を塞いでいるんだい?」

 

「だって私どものトレーナーが幼児愛好者という噂がたったら事ですもの」

「でも安心して下さい。私たちが責任を持ってまーくんを真人間にして差し上げますから」

「だから未遂だ! つーか不可抗力!」

「「教育!!!」」

 

   ◆

   ◆

   ◆

 

「ただいま戻りました。料理長」

「おぅ。遅かったな……こりゃまた派手にやったな」

 

 パンパンに腫れた頬のせいで、ホットドッグの味なんて分りゃしなかった。

 

 

『試合開始!』

 

 ポーラは何時もの身の丈ほどもある盾を構えた。

 のじゃロリが手にするのは、鉄扇だ。

 スカーレット=ヨハン=ファンタズマと言う名前らしいのだが、迂闊に口走ってしまうと暗黒面に捕らわれそうなので、のじゃロリで。

 とは言うものの、その構えはなかなか堂に入っていて、優雅すら感じさせた。

 このちびっ子、かなり強い。

 

『ポーラ=ノーザンスター。わらわと勝負をせぬか? わらわが勝ったらマスターから身を退け』

『し、ま、せ、ん! 私にメリットが無いじゃないですか!』

『ほぅ。お主は、自信が無いと? それでは彼の者も浮かばれまい』

 

 かのもの? だれ?

 

『わっかりまし! まし! ただし! 私が勝ったら、うちの人にちょっかい出すのを止めて貰います!』

 

 うちのひとって誰だ?

 ユーリさん〈ポーラの父親〉の事か?

 

『ではわらわの力を見るが良い! 悪魔の証明!』

「「「!!!!」」」

 

 対峙しているポーラはもちろんのこと、全員が目を剥いた。

 かくいう俺も”なんだってーーーー”ってのが正直なところだ。

 まさか、アレを使いこなす人物がこの異世界に居ようとは。

 祭器により具現化されたのはアンデッドの最上位 吸血鬼〈ヴァンパイア〉だった。

 

『光体顕現〈Augoeides:アウゴエイデス〉!?』

 

 誰かがそう叫んだ。

 

『精神の実体化の事だ! このバカ!』

 

 あのツンツンエルフが誰かにツッコミを入れているに違いない。

 吸血鬼は、黒い霧の様な無数のコウモリに姿を変えて、ポーラに襲いかかる。

 

「ポーラ! 半年の成果を見せてみろ!」

 

 応えるかの様にポーラの体がピクリと動いた。

 

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