仮面ライダーアギト ー神との戦いー   作:アルペン

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第五話「新しいG3!」
英雄の邂逅


 一瞬の出来事だった。

 氷川の視界が高熱のあまり真紅に染まり、胸部装甲が火花をあげる。数千度の熱にも充分耐えうるはずのその装甲が悲鳴をあげたのだ。

 G3のモニタを通して現場の様子を見ていた小沢と尾室も、突然の出来事に思わず息を吸い込んだ。

 

 バチバチとパルスのように光の残滓が氷川の周囲で弾ける。

 

「ぐっ!」

 

 思わず氷川は後ずさり、膝をつきそうになった。

 が、なんとか踏みとどまり、辺りを見回す。

 

 ……見えない! 

 

 敵の姿がどこにもないのだ。G3システムによって超広角、超範囲の視覚聴力を与えられた氷川にすら、敵の姿が捉えることができなかった。

 しかしそれでも、氷川はサッとGM-01を不可視の敵に対して構える。と、まるでそれを彼の敵意と感じ取ったかのように再び、稲妻が迸った。

 青白い電子がはじけ飛び、億ボルトにも達する電流がまたもG3-XXを貫く。

 今度こそ氷川はその場に肩膝を着いた。

 

 だがなおも、彼は歯を食い縛り立ち上がろうとする。そしてその時、氷川の頭に鋭い痛みが走った。

 

「うあっ!」

 

 キーンという耳鳴りの様な音と共に締め付けるような、貫くような痛みに襲われる。氷川は思わずGM-01を手放し、頭を抑えた。

 

「うっ……ぐあっ!」

 

 痛みによろめきながら、頭を押さえつける氷川の耳にオペレーターの小沢の声が響く。

 

「氷川君!? どうしたの、氷川君!?」

 

 しかしそんな声に答える余裕があるはずもなく、氷川はどうしようもない痛みにうめき声をあげる。

 顔をしかめながらも、霞む視界で目をこらした時だった。

 G3システムのモニタ越しの何もないはずの空間に、ぼんやりと人の形を象ったような影のようなものが写りこんだ。ついさっきまでは確かに何も見えなかった筈なのに、今はそこに何かが存在しているように見える。

 不意にその人型がモゾモゾと蠢いた。

 

 その瞬間、氷川は反射的に飛び込み姿勢で前に転がっていた。まるで、脳内で何者かに「かわせ」と命令されたかのように。

 

 そして、数瞬先まで氷川が立っていた場所にまたしても稲妻が走る。それをかわしながら氷川は手落としたGM-01を拾い上げると、起き上がりざまに前方の不可視の人型に向かって構え、トリガーを引いた。ドトン、という発砲音と共に薬莢が宙を舞い、そして肝心の弾丸は何もないはずの空中でパシュンと弾けた。

 

 何かに当たった! 

 

 氷川は考えるよりも早く、続けてトリガーを引き、サブマシンガンを連射する。何発もの弾丸が虚空に着弾した。

 

 

 

 ちょうどその頃、本能に導かれた翔一も現場へと到着した。翔一はファイヤーストームから下りると辺りの様子を伺う。そして、宙に向かってひたすらにGM-01を発砲するG3の姿を目にした。

 

「氷川さん?」

 

 翔一は目を細めながらも、彼が戦っているというその状況を理解して、変身ポーズをとる。オルタリングの両端を思い切り叩くと、翔一はアギトへと変身し、氷川の元へ駆け寄った。

 

「氷川さん!」

 

 近寄りながら、そう声をかける。その声を聞いた氷川が、思わず発砲をやめてそちらを振り向いた。

 そして、アギトの姿を見て驚く。

 

「つ、津上さん!?」

 

 氷川がわずかに気を抜いた瞬間だった。

 

 先ほどとは比べ物にならないほどの、電信柱程もあろうかという雷光が二人を狙って一直線に落雷した。コンクリートを砕き、爆風を広げるほどのエネルギーが衝突する。その余波に巻き込まれただけで、二人は数メートルも吹き飛んだ。

 

「うわっ!」

 

「わああっ!」

 

 二人は地面に叩きつけられて身悶えしながらも、手をついて立ち上がり、辺りを見回した。しかし既にそこには先程までの気配はなく、ただ再び不気味な静寂だけが空気を支配していた。

 

 ──────────

 

「そうですか、では津上さんも……」

 

「ええ、実は……」

 

 不意のことにアンノウンを取り逃がしてしまった二人は、あの事件以来お互いにそれぞれの人生を歩んでいた為に久方ぶりの再会となった。とはいえ、素直にそれを喜んでいいという雰囲気になることもできず、再びに現れたあの異形の存在アンノウンについて談義していた。

 翔一は既に人間の姿に戻り、氷川もG3のマスクを取り外している。

 

「でもなんでまた奴らが? 一体どうして……」

 

 翔一はそう言って唇を噛む。氷川もその言葉に首を振りながら口ごもった。

 

「分かりません、まだ。何故アンノウン達が再び現れたのか、彼らは一体何なのか……」

 

「そうですか……やっぱりそうですよね」

 

 翔一はファイヤーストームに手をつきながら考える。

 

 あの、最後の戦いの日。翔一達が倒した相手はとてつもなく強かった。きっとアンノウンの親玉だったに違いない。だからこそそれ以来アンノウンは姿を消したはずなのだ。

 それなのに再び、こうしてアンノウン達が現れた。それならば一体どうすれば? 奴らは不滅なのか、もしそうならば抗う術はないのか? 

 

 アンノウンは一体何者なのか? 何故現れるのか? 

 

 三年前も解かれる事がなかった問が、翔一の中を巡る。

 

 多くの物を失った。本当にたくさんの人間を救うことが出来なかった。そしてそんな多大な犠牲を払うことで、あの日、ようやっと全てが解決したと思っていた。けれどそれは、偽りだったのか? 

 

 そんな、らしくもないマイナス思考を振り払うように翔一は首を振ると、無理やりに笑みを浮かべて氷川に言う。

 

「でも、良かったです。氷川さんとこうしてまた一緒に戦えるなんて、なんていうか、頼もしいっていうか? またよろしくお願いします!」

 

 そんな風に無邪気に言う翔一に、氷川もまた安堵したように笑った。

 

「そんな、それはこっちのセリフですよ。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 そう言って、返すように氷川は頭を下げる。

 と、それを見た翔一が慌てて、

 

「そんなそんな! 頭下げる必要ないですって、こっちがよろしくお願いしますですよ!」

 

 そんな風に言いながら氷川に倣って頭を下げた。その様子を、ちょっと顔を上げて伺った氷川は、

 

「いえ、そんなことはありません、こちらこそよろしくお願いします」

 

 と無理やり更に深く頭を下げる。と、対抗するように翔一も。

 

「いやいや、俺の方がよろしくお願いしますですって!」

 

「いえ、僕の方が!」

 

「いやいや俺の方ですよ!」

 

「そんなことはありません頭を上げてください、僕の方がよろしくお願いします……あっ!」

 

 馬鹿みたいに二人で張り合って地面に頭がつくほどに深く低頭した氷川は、G3-XXの装甲の重量を全く考慮しておらず、思わずバランスを崩し、前のめりに上半身ごと倒れ込むと、地面に強かに頭を打ち付けながら転んでしまう。

 

「痛っ〜!」

 

 思わず頭をさすりながら上半身を上げて翔一を見上げる氷川。タイミング悪く、それと同時に翔一が「ブフッ」と吹き出した。そしてすぐに。

 

「あっ……」

 

「……」

 

 なんとも言えない沈黙が流れた。

 

 ──────────ー

 

 警視庁では、捜査一課に所属する警察官達が会議に緊急招集されていた。議題は勿論、再び姿を現したアンノウンに関してだ。当然氷川も呼ばれるはずだったが、アンノウン迎撃中との事もあり参加していなかった。

 

 重役幹部三人が一番前のテーブルに、刑事らと向き合うように座し、出席した十数人らと顔を合わせる。

 

 まず河野刑事が起立し、議題の概要についての説明を始めていた。

 

「えー、既に聞き及んでいるとは思いますが、今回の議題は他でもありません。アンノウンが活動を再開したらしい、という件についてです」

 

 河野は自身の手帳をペラリと捲ると、続きを言う。

 

「情報の確証性はほぼ間違いありません。殺しの手口もさることながら、現職の警察官にも目撃者がいますし、アンノウン対策班も応対を余儀なくされています」

 

 その言葉に一つ頷くと、重役の内の真ん中に座った男が口を開いた。

 

「事件についてはどうなっている?」

 

「はい、事件は確認されているだけでも十三件。手口は様々ですが、いずれも通常では不可能な犯行です。例えば……お配りした資料の三ページ目を見てください」

 

 河野がそう言うと、刑事たちは一斉に慣れた手つきで配られた紙束の三枚目に目を通した。河野はそれを確認して再び続ける。

 

「最初の被害者です。死因はショック死ですが、鑑識によるとこれは、人間大の物体に時速にして300kmの速度で衝突されたのと同じだけの衝撃によるそうです。この速度は新幹線の最高速度に匹敵します。市街でこれだけの衝撃を与えるものを何の痕跡も残さずに扱うのは不可能と言えるでしょう」

 

「なるほど、つまり……」

 

 今度は重役幹部の内、左に座った眼鏡の男が口ずさむ。

 

「はい、アンノウンが再び現れたというのはほぼ間違いないと言えます」

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