仮面ライダーアギト ー神との戦いー   作:アルペン

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銃撃戦

「全く、とんだ食わせものだったわね、あの女。名前、なんて言ったっけ?」

 

 Gトレーラーの管制室に戻ってきた小沢は機会の調子を確かめながらぶつくさとこぼした。

 

「高山さんですか?」

 

 こういう時の話し相手は、決まって尾室だ。不幸な役回りだと、彼は自分でも思った。

 

「そうそう、高山さん。全く、急に小沢先輩だなんて馴れ馴れしく近づいてきて」

 

「いいじゃないですか別に。尊敬されてるってことなんですから」

 

「どうだか、見ず知らずの人間にあそこまで尊敬されるっていうのはなんだか胡散臭いもんよ」

 

「そうかなぁ、小沢さんがひねくれてるだけだと思いますけど。それに、高山さん結構かわいいし」

 

 ひねくれてる辺りから既に気に入らなかったのか、小沢は無言で尾室を振り向き、睨みをくれてくる。尾室はビクッと居住まいをただすと、務めて真面目に彼女をなだめ始めた。

 

「あ、いや、だからその。別にそんな疑う必要はないんじゃないかなって……」

 

「あの子、なんて言ってたっけ?」

 

「はぁ?」

 

「ほら、最後に、私のこと」

 

「あー、もしかして……」

 

 尾室は記憶をまさぐる。そう、何かとてつもなく悪寒の走るようなセリフを……。

 

「ファン、ってののことですか?」

 

 尾室が言うと、小沢は得たりとばかりに指を立てて頷いた。

 

「そう、それよそれ。それが一番気に入らないのよ。なによファンって。勘違いしないでほしいわよね」

 

 そこいら辺りから段々と小沢の雰囲気がおかしくなり始める。言っていることの内容と、彼女の表情とが全く釣り合わなくなるのだ。

 

「困るのよね、そういうお門違いなことを言われると。ファンって、アイドルじゃないのよ? 私は、現職の科学者で、警察官にも復帰したっていうのに!」

 

 どこか嬉しさをこらえきれないようにニヤニヤしながら、小沢はまくし立てるように尾室に言う。

 その様子に色々と察した尾室はうんざりしながらも、彼女の機嫌を損ねまいとひっそりと首を傾げながら不服そうに自分の作業へと戻ることにした。

 

 と、そこに。

 

 ウィーン。

 

 管制室に、もう一人のメンバーである氷川が入ってきた。氷川は少し慌てた様子で、他の2人の様子を鑑みずに口を開く。

 

「すみません小沢さん、少し……」

 

 しかし、そこで言葉を途切ると怪訝そうに小沢の顔を見つめた。

 

「なによ?」

 

「いえ、何か嬉しいことでもあったのかと」

 

「嬉しいこと?」

 

 なんのことよ、と本気で問い返す小沢に、なぜだか尾室が大きく嘆息して髪の毛を掻きむしる。突然のことに氷川は驚きつつも、たまによくあることなので一先ずそれは起き、自分の要件にとりかかった。

 

「あ、いえ、その。それはともかく、実は知り合いが少々行方不明になったみたいで……」

 

 ────────────

 

「今度は、一輝も連れてこようかな」

 

「もう二度と来るな」

 

 夜遅くまで勝手に居座った挙句、図々しくも自分の家に一泊するという暴挙に出た悪ガキに対して、涼は本気で眉をひそめた。見つけた当時はどうしたものかと思ったが、やはり厄介を抱え込むもんじゃない。

 

 彼女のあの朦朧とした状態は、不定期によく起こる現象なのだという。それがなんなのかは本人もわからないが、大して重要な異変ではないということで、いつもは無視しているらしい。

 

 涼は心配して損したという気持ち半分、まあ何事もなくてなによりという気持ち半分で、さやかを送り出そうとする。さやかは長い髪を耳の後ろに避けながら、涼を見上げた。

 

「でも知り合いなんでしょ?」

 

「そんな大した関係じゃない。名前も知らなかったしな」

 

「ふうん、そっかー」

 

 なんとなく納得がいかない風にさやかは口を尖らせて頷く。

 

「とにかく、もう俺にはあまり関わるな。いいな?」

 

「はいはい、わかりました。ありがとね、助けてくれて」

 

「いいからいけ」

 

 涼の言葉に、さやかはべーと下を出して、つーんとそっぽを向くと、とっとっとっ、と彼に背を向けて歩き出した。そして、涼が扉を閉めようかと思ったところで不意に振り向き、悪びれもせずに聞いてきた。

 

「あ、ところでさ。あんたの犬、名前なんてーの?」

 

 涼はますます顔をしかめた。

 

 

 ────────────

 

 沢木は謎の青年の姿を追って、廃病院の屋上にまでやってきていた。

 

 彼は先と変わらずそこに立ち、何かを感じ取るかのように宙を眺めていた。沢木はその背中を見つめて、しばし黙り込む。

 

「怖いですか、私が」

 

 沢木に背を向けたまま青年は言った。風が強く吹く。沢木は鬱陶しそうに目を細め、首を振った。

 

「いや。……今の世界がどうなるか、本当は私には関係のないことだ」

 

 沢木のその言葉に、青年はゆっくりと振り向いた。

 

「俺にはもう、足掻くだけの力は残されていない。彼らがどう生きるのか、それを決めるだけの力はな」

 

 ────────────

 

 ヒュオオオオオオオ

 

 雲一つない寒空、大都会を見下ろす遥か遥か彼方の天空に、その姿はあった。

 

 始祖鳥の怪人、ウォルクリス・プリーモは眼下を見下ろすと、右掌を胸にやり、死のサインを切った。そしてロードリングより、神器「常勝の弓」を取り出すと、静かにそれを地上世界に向けて構えた。

 

 ────────────

 

「なるほど、数日前から。それは大変なことになったわね」

 

 氷川が真魚のことを話し終えると、小沢は腕を組み、神妙そうに頷いた。尾室も話に入りたさそうに2人を見ているが、こういう時は大体無視されるのが常である。どうせそんなことだろうと尾室はさっさとそっぽを向くのだった。

 

「ええ、さっき河野さんに教えられて僕もびっくりしているんですが」

 

「なるほど、それでどうしようっての?」

 

「こういう場合、僕としても協力したいと思うのですが……どうにも気になって」

 

「気になる?」

 

「はい、アンノウンが再び現れたこの時期に……本当に偶然なのかと」

 

「まさか、アンノウンにってことはないわよね?」

 

「ええ、それは多分……」

 

 氷川はしばし黙り込み、考えた後に不意に。

 

「そうだ。尾室さんはどう思いますか?」

 

 急に自分を指名されて、思わず尾室はすっころびそうになった。そして自分の顔を指さして確認までとってしまう。

 

「え、ぼ、僕ですか!?」

 

 それに対して氷川は当たり前だろうとばかりに超然と答える。

 

「はあ、同じチームのメンバーとして尾室さんにも意見を求めるのは当然だと思いますが」

 

「い、いや、こんな時って大体二人とも勝手に話し進めちゃうから……」

 

 それから、顎に手を当てて考え込む。

 

 そして

 

「そうだ、まず」

 

 ピ────

 

 その時、アンノウン出現を知らせる甲高いアラームが管制室に鳴り響いた。途端に小沢が真剣な表情に変わる。迅速にオペレーター用のヘッドセットを装着すると、通信機をオンにした。

 

『警邏中のPCより入電、市内で人々が倒れています』

 

 そして状況を確認すると。

 

「氷川くん、どうやらアンノウン出現よ。それも、犯行の手口から前回のアンノウンと同一の個体と思われるわ」

 

「……! わかりました、頑張ります!」

 

「大丈夫?」

 

「……」

 

 確かに、あのアンノウンに対抗する手立てが今の自分にあるのかは分からない。だが、だからといってただアンノウンの凶行を指をくわえて見ている、というわけにはいかないだろう。

 

 氷川は自身を鼓舞するように力強く頷いた。

 

「はい、次は負けません!」

 

「よし、頑張りなさい。G3-XX、出動!」

 

 小沢はそう言って氷川を激励すると、G3-XXの装着に取り掛かった。

 

「あの、僕の意見は……?」

 

 尾室は一人取り残されたのだった。

 

 

 ────────────

 

 一方その頃、アギトたる津上翔一もまた、アンノウンの予感を感じ取っていた。

 

 頭に鋭く響く感覚に従い、翔一は無意識にレストランAGITOを飛び出した。ちょうどそれは仕入れ帰りの加奈と入れ違いになる形となった。

 

 加奈のことにも気づかずに無心でFIRESTORMに駆け寄る翔一。加奈はそんな翔一の姿を見て、声をかけようとした。

 

「津上さ……っ!」

 

 しかし、それは自身の頭にもまた鋭く走る痛みによって遮られる。

 

 キ────ーン

 

 周囲の全ての音が聞こえなくなり、頭の中にモスキート音が反響する。加奈はよろめき、壁に手を付きながら、バイクを発車させる翔一を見送るしかなかった。

 

 ────────────

 

 G3-XXはガードチェイサーに跨り、サイレンを響かせながら市内を駆け抜けた。通報のあった現場へといち早くたどり着くために。

 

 だが、そんなG3-XXにバイクで追いすがる何者かがいた。それは道路交通法などなんのそのというスピードでガードチェイサーに追いつくと、こちらに顔を向けてきた。

 

 G3-XXこと氷川も一体なにごとかとそちらを見やる。そして、その見覚えのある顔を見て驚いた。

 

「あなたは!」

 

「どうも、研修生の中野です」

 

 涼しげな顔で挨拶をくれたのは自衛隊から派遣されたという三人組の一人、中野 月美だった。彼女は非日常的なスピードで、特別仕様の自衛隊オート、KLX250改式「グランチェイサー」を彼に並走させていた。

 

 氷川は戸惑いながらも、「それ、スピード違反ですよ」と切り込むのも気が引けたので、とりあえず挨拶してみる。

 

「ご、ご苦労さまです」

 

「緊急時なので、それなりの認可は貰っています。ご心配なく」

 

 暗に「スピード違反」に対して弁解してくる月美に、氷川もぎこちなく頷いた。

 

「どうしたんです? こんな時に僕を追ってくるなんて」

 

「はい。……っしょっと! これ、高山三佐から預かり物です」

 

 そう言いながら、器用に月美はグランチェイサーの車体に装着されたケースを片手で取り外すと、氷川に向かって差し出してきた。

 

「これは……?」

 

「今回の戦いに必要なものです。私たちなりの挨拶といってはなんですが」

 

 何やらよく分からないが、今ここで疑って逐一問いただしているのはあまり利口ではないだろう。とにかく、現場に一刻も早く向かうことが先決だ。それにもし本当にあのアンノウンに対抗する手段が手に入るならば、それは願ってもないことだ。

 

 氷川はそう考えると、そのケースを月美から受け取って頭を下げた。

 

「わかりました、ありがとうございます!」

 

 そう言って、彼女を置き去りにするように更にアクセルを踏み込んだ。

 

 

 一般人の非難ルートを避けながら氷川は通報があった現場付近で最も見晴らしのいい広場付近までやってくると、ガードチェイサーを止めた。そして、ゆっくりとバイクから降り立ち、空を見上げる。それと同時にG3-XXのサーチ機能が動き始めた。

 

 以前と同じならば、敵は上空にいるはずだ。

 

 氷川は慎重にガードチェイサーからGM-01を取り外すと、ゆっくりと歩き出した。

 と、その時、G3-XXのサーチ機能が氷川に対して警鐘をならす。それと同時に氷川は素早く横転した。

 

 コンマ数秒の時差で氷川が立っていた場所に小さな何かが高速で着弾し、地面に穴を空けた。氷川はそれを見てすぐに、サッと上を向いた。

 

 G3-XXのマスク越しに氷川の目に映る青空が高倍率に拡大され、解析によってその遥か彼方にある敵の姿が晒される。氷川はハッと息を飲んで、映し出されたアンノウンに向けてGM-01を構えた。しかし……。

 

『Out of range.』

 

 ダメだ。やはり届かない! 

 

 それと同時に、第二射が氷川を襲う。急いで飛び退いてかわすと、またもや地面が弾け飛んだ。

 

 どうすれば……。

 

 氷川は打開策を得んと、ガードチェイサーに駆け寄る。そして、先程月美から手渡されたケースを手に取った。

 

「これ……」

 

 藁にもすがる思いで、そのトランクを開ける。

 

 ガチャリ

 

 中には、何かの銃身、あるいは砲身のようなものが入っていた。そう、射撃をするためのものであることは間違いないようだが、なんと持ち手と引き金がないのだ。

 氷川はそれを取り出すと、その形状を眺める。どうやら二つ折りになっているようで、完成すれば狙撃銃のように長い銃身になるようだ。トランクの中には「GR-07 ケイローン」と銘打たれていた。そして恐らく、形状からしてこれはGG-02やGXランチャーと同じく、GM-01に連結して用いられるもののようだ。

 

 氷川は急ぎGR-07を組み立てると、その銃身をGM-01に結合させる。と、銃身がカチャリと見事にハマり込み、二つの武器の連動に成功した。氷川はそれを空に向けて構える。

 

 それと同時に再び、上空からの敵の攻撃が氷川に襲い掛かった。

 今度は避ける暇もなく、まともに食らってしまう。

 

「ぐあっ!」

 

 火花をあげながらよろめく氷川。だが、前回の戦闘よりも体感のダメージはかなり少なかった。恐らくはこのG3システムの「学習」によるものだろう。

 

 管制室からモニタ越しにその様子を眺めていた小沢と尾室も思わず息を飲んだ。

 

 

 氷川は改めて、体制を立て直してGR-07を構える。

 すると、氷川の見る画面に電子文字が浮かび上がった。

 

『CODE「ケイローン」承認……残弾数3』

 

 そして画面上の敵の姿を補足するように枠状のマーカーが赤色に点滅した。

 

 その瞬間、氷川は反射的に引き金をひく。敵に照準を合わせたGR-07は、遥か彼方へ向けて超長距離狙撃ライフルを発射した。

 

 

 しかし。

 

『It was avoided……残弾数2』

 

 なんと空中で飛行する敵に、その一射は軽々と回避されてしまったのだ。

 

 バシュン

 

「うわっ!!」

 

 更にお返しとばかりに放たれた気砲によってまたもや氷川はダメージを負う。バチバチと何かが弾け飛び、氷川はこらえるために歯を食いしばった。

 

 だがそれでも、氷川は諦めずに敵を見据える。再びGR-07を構えて引き金に指をかけた。

 

「まず一発、威嚇の弾を……」

 

 口の中でそう反芻しながら、氷川は引き金をひいた。発射の強い反動に仰け反るまいと踏ん張りながらも敵の姿から目をそらさない。アンノウンが上空でまたもや氷川の発射した弾を回避する。しかし、敵の動きを見切ったG3-XXはその動きを捕捉し、逃さない。そして再び、ターゲットマーカーが赤く点滅した瞬間……。

 

「今だ!」

 

 氷川の放った一撃は今度こそ、見事に宙空のプリーモを追撃し、貫いた。

 

「グガッ!」

 

 撃ち抜かれたプリーモは体から火を噴くと、空中でロードリングを眩く輝かせて爆散しながら地に落ちて行った。

 

 ようやく難敵を撃破した氷川はライフルを下ろすと、力が抜けて無言のまましばしその上空を見つめ続けた。

 

 

 ────────────

 

 時を同じくして、アンノウンの予兆に駆り立てられて愛車を走らせていた翔一だったが、プリーモのいる場所へとたどり着くことはなかった。

 

 翔一の行く手には全く別のアンノウンが立ち塞がったからだ。

 

 相手はエルロードが一、雷のエル。雷雲より遣わされた大天使だった。雷の鎧を纏ったその姿を見れば、敵が普通のアンノウンではないことが翔一にもよくわかった。それに、以前に現れたエルらと同じく、雷のエルからもピリピリと本能に訴えかけるような威圧感があった。畏怖、そんな表現が似合う近寄り難い感情だ。

 

「変身!」

 

 それでも翔一は構えをとり、金色のアギトへと姿を変えた。

 

 自身の、そして大切な人達の居場所のために。




DATABASE
種族名:アルキオプテリクスロード
個体名:ウォルクリス・プリーモ
能力:空気を飛ばして攻撃する
始祖鳥に似た超越生命体。その名は「始祖の鳥」を意味する。
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