源蔵はシャルルと響を持ち上げたまま山道を淡々と登る。凸凹しており、時折大きな穴や大木が道を塞ぐ。が、源蔵はそれを飛び越えたり、時には大木を蹴って破壊するなどして歩く。
「私の師匠もそうだけど貴方のおじいさんも中々に凄いですね」
「まあ他の人に比べたらね……それよりも貴方の師匠の方が気になるわね」
「そうですね〜私の師匠は……」
「話は後でにしなさい。着いたぞ、ここがワシの道場じゃ」
目の前にとても立派な道場が建っており、歴史も長そうだ。
「とてもデカいですね」
「もう百年は経つ。歴史ある道場だ。ここで精神ともに鍛え直す。覚悟しなさい」
「はい!!」
「へーい」
「カァァァァァァァァツ!!返事は押忍じゃ!!」
「「押忍!!」」
「うむ。それでは中で道着に着替えなさい」
二人は更衣室に入り、道着に着替える。帯はシャルルは黒、響はもちろん白色である。
「シャルちゃん黒帯持ってるの!?」
「ん?ええ。おじいちゃんに無理矢理取らされたんだ〜」
「私そういうの持ってないからなぁ〜なんかこうすごい技とか使えるの!?」
「う〜ん……凄いかどうか分からないけど、見てもらった方が早いかな?」
「じゃあ見せて見せて!!」
響は興味津々でシャルルに寄り付くが、肝心のシャルルはあまり乗り気ではないようだ。しかも若干嫌そうですらある。
「……気が向いたらね。それじゃあ早く行こ。早く行かないと師範が怒る……」
「うん!!」
そう言ってシャルル達は更衣室から源蔵のいる稽古場に移動する。すると源蔵は正座をしながら二人が来るのを待っていた。やはり体格のせいか異様なほど空気に馴染んでいる。The武道家。
「来たか……二人ともそこに正座しなさい」
「「押忍」」
「まずは瞑想からじゃ。全てを無にし、ありとあらゆる煩悩を捨てる所から始める。では始め!!」
「「押忍!!」」
シャルルは経験者でもあり、武道家の孫。目を閉じた途端、すぐに瞑想に入る。ここまでは良い。問題は響だ。
「(あ、足が痺れてきたよォ〜)」
「コラ、煩悩を捨てなさい!!」
そう言って肩を叩かれる。瞑想をしていないとこうやって源蔵に肩を叩かれるのだ。ぶっちゃけ棒で叩かれるから痛い。
「(う〜お腹も減ってきたよォ〜みく〜!!)」
「集中しなさい」
また響は肩を叩かれる。あの子は何をやってるんだか……
「乱れておるぞシャル」
シャルルも源蔵に肩を叩かれる。
「痛て」
それから30分が経ち、ようやく響も瞑想が出来るようになるが、それでも叩かれる頻度はあまり変わらない。
「それでは瞑想をやめ。二人とも目を開けなさい」
「「押忍」」
「シャルは出来て当たり前。立花君には瞑想というのは少しばかり難しかったようじゃな」
「す、すみません……」
「謝る事じゃない。最初のうちは出来なくて当たり前だからな」
「ちょっと私も瞑想初めてだったんですけど……」
シャルルがそういうと源蔵はガッツリ無視し、話を続ける。おいジジイ。
「それでは次は正拳突きじゃ。立花君は軽く千回はしなさい。シャルは十万回しなさい」
「押忍!!」
「ちょっと私だけ多くない?なんで?」
「……仕方ない。綺麗な正拳突きをしなさい。立花君と同じで千回それなら出来るな?」
「それなら……綺麗の基準がちょっとわかんないけど……」
「ワシが綺麗と思ったらそれが一回じゃ」
じゃあどのみち十万回しないといけないじゃん。おじいちゃんの基準滅茶苦茶シビアだからやる気なくなるよ……
「採点甘い?」
「……お前はとことん楽しようとしてるな。じゃあ立花君が綺麗と思ったら一回してやろう……今回だけだぞ」
「やった〜!!」
「それでは始め!!」
「「押忍!!」」
源蔵の掛け声と同時に響は勢い良く正拳突きをする。それを見るなりシャルルと源蔵は少し驚いた表情をする。この子、中々に良い突きをするね。これで白?
「立花君、君はなにか習っていたのかな?とても良い突きをする」
「いえ!!特に何もしてないです!!してると言ったらアクション映画を見てるだけです!!」
「……だとしたら才能があるのかもしれんな。是非うちで武術を学ぶのどうだろう?」
そう言うと響は勢い良く源蔵の提案を断る。
「いえ、私には師匠がいるので!!」
「そうか……君の師匠はとても良い弟子に恵まれているようだ。だが、うちの孫も負けてはおらんぞ。シャル、お前の思う最高に良い正拳突きを立花君に見せてあげなさい。今日はそれで終わりにしてやろう」
その一回で今日の分チャラ?めっちゃいいじゃん!!
「ただし、手を抜いたら倍じゃ。いいな?」
「へ〜い」
「返事は押忍!!返事は!?」
「押忍!!」
シャルルは深呼吸をし、ゆっくりと右足を引き、それと同時に右手も引く。正直、正拳突きに綺麗や最高なんてあるのかもよく分からないけどやるしかないか。
身体全身の力を抜き、そこから右手にだけほんの少しだけ力を入れる。そう、赤ん坊の手を握るぐらい軽く。
そして右手を突き出すその一瞬にだけ自分の全身の重心を下半身に集中させる。
「はぁ!!」
勢い良く突き出されたその正拳突きは響の正拳突きと同じかそれ以下の突きだった。だが、源蔵は何故か頷き、響は首を傾げていた。
「あ、あの……綺麗な正拳突きってもっとこう……なんて言いますかね、凄い物だと思ったんてますけど……」
「まあ、あの子の正拳突きは他の人よりも特殊で尚且つ素晴らしい。ほれ、もうすぐじゃ」
源蔵のその言葉と同時に謎の風と音が道場に鳴り響く。そしてその後、響の目に写ったシャルルの姿はとても綺麗で、勇ましく感じてしまう。
「ふぇ……」
あまりの出来事に響はその場に座り込んでしまう。す、凄すぎる!!
「あの子の綺麗で最高の正拳突きは音と拳圧を置き去りにしてしまう。突き出した時はなんの感動もない。だが、その数秒後には奴の拳の虜になってしまう。それほどまでにあの正拳突きは美しい」
「は、はい……ドキドキで目が離せなくなりました……!!」
「カッカッカッ!!そこまで来ればもうお主は奴の拳の虜じゃ。だが、奴の凄い所はまだある……と言いたい所じゃが、その前に飯じゃ。シャルはちょいと遅いが昼飯を食べるぞ」
「……ご飯?は〜い!!」
三人は少し遅い昼食を食べにまた、山から降りる。行く所はもちろんファミレスである。
「いや〜お腹空いたよォ〜」
「私も〜」
「二人とも沢山食べなさい。食べる事は成長するという事じゃ。だから沢山食べなさい」
「「は〜い!!」」
響はメニュー表を見るやいなや、大量に注文していく。それに続きシャルルも注文していく。
「私はこのビーフカレーと、ハンバーグ定食と、後は……このカツ丼!!」
「じゃあ私は……この大盛り唐揚げ丼と、オムライス」
「ワシはこの塩サバ定食を」
「わかりました〜」
「いや〜お昼ご飯をご馳走してもらってなんかすみません」
「これぐらい気にしなさんな。育ち盛りの子が遠慮してはいかん」
「そうだよひーちゃん。こんな時に遠慮なんかしてたら損だよ?こんな時は遠慮しな〜い」
笑いながら響のほっぺたをつつく。すると、どこからともなくリディアンの制服をきた生徒が数名ほど来店してくる。
「あれ?響!?」
「あ、未来!!」
響の前に現れたのは響の同居人の小日向未来。響の陽だまりであり、幼馴染でもある。
「どうしたの今日学校にも来ないで!!」
「あ、その事は……」
「それについては私から説明させてもらおう」
そう言って源蔵は立ち上がり、未来に向かって深々と頭を下げる。
「私は愛明神源蔵。今日は訳あって立花君に稽古をしていたのだ。申し訳ない」
「い、いえ!!こちらこそ。最近響はちょっと寝坊とかが酷くていい機会だと思いましたからありがとうございます」
「ちょっと未来!?」
「やはり稽古して正解のようじゃな。だが、まだたるんでいるようじゃから立花君には引き続き、うちの道場に来るように」
「え!?そんなぁ〜!!」
「自業自得よ。これを機に少しは寝坊を改善させてよね」
「だな。お前は最近たるんでるからいい機会じゃねえか?」
「クリスちゃんも!?」
後ろから、響たちの先輩に当たる雪音クリスが出てくる。すると、さらにクリスの後ろから二人の少女が出てくる。後ろから出てきた少女はシャルルもよく知る人物だった。
「あれ?暁さんに、月読さん?どうしてここにいるの?」
「私達はクリス先輩に連れられてここに来た」
「ここで会うなんてビックリデース!!」
シャルルの同級生の暁切歌と月読調だった。まあ、シャルルは実際に話した事はない。ただ、見た事はあるだけである。
「え?シャルちゃんって……もしかして1回生!?」
「ん?そうだよ?ひーちゃんはもしかして2回生?」
「おいおいシャルってもしかしてあの愛明神シャルルか!?」
シャルルの名前を聞いた途端、クリスはとても驚いた表情でシャルルの顔を見る。
「そうですけど私なにかしましたっけ?」
「シャルルさん……私達のところでは割と有名人」
「学園一運が悪いで有名なのデース」
「あ〜私も聞いた事あるかも。すごく運が悪いって噂の!!」
私って学園でそんなに有名人なんだ。なんか不本意な有名人だな。
「同じリディアンの生徒でシャルと同級生に先輩も……ここで立ち話をあれじゃ。取り敢えず座りなさい。店員さん席移動いいかな?」
「良いですよぉ〜じゃあこちらのテーブル席にどうぞ〜」
店員さんの案内で全員が座れるぐらい大きなテーブル席に移動すると、ちょうど響達が頼んだ料理が運ばれてくる。
「お待たせしました〜ご注文の商品になりま〜す」
「響さん……凄く食べる……」
「油っこいもんばっかで実にお前らしいな」
「別にいいじゃんかそんなの!!だって私は成長期だからこれぐらい食べないと!!」
そう言って響は運ばれた料理を勢い良く食べ進める。それを見るなり、クリスたちもお腹をすかす。
「響さんの食べっぷりを見たらお腹空いてきたのデース……」
「私も……」
「それもそうね……私も少しだけ食べたくなっちゃたなぁ〜」
「お前らなぁ……って私も昼食べれてねぇから腹減ってんだよな……」
「ふむ……君達は育ち盛りだ。私がご馳走するから好きな物を頼みなさい。遠慮は要らない」
「え!?そんな申し訳ないですよ!!」
未来は慌てて手を振るが、シャルが首を振りながら言う。
「み〜ちゃん、遠慮しない方がいいよ?こんな時はドーンと頼んじゃえ!!」
「み〜ちゃん?!それってあたしの事?で、でも……」
「未来さん、人の好意は受け取った方が良い」
「そうデスよ!!こうゆう時は受け取った方が得なのデース!!」
「……じゃあお言葉に甘えて」
そう言って未来も少し戸惑いながらもメニュー表を見る。それを見た源蔵はうんうんと頷く。
「なあ、愛明神」
「シャルでいいよ、く〜ちゃん先輩」
「お、おう……じゃあシャル。お前ってハーフなのか?私と同じで」
「ん?そうだよ。お父さんが日本人で、お母さんがフランス人だよ〜」
「へぇ〜じゃあ今お父さんとお母さんは今どこにいるデスか?」
「え、え〜っと……それはねぇ……」
シャルルが切歌の問に答えようとしたその時、シャルルの注文した商品が届く。
「お待たせしました〜ご注文の商品になりま〜す」
「ま、その話はまた今度しよ〜今はご飯を食べよう!!」
「そうデスね!!私も沢山たべるデース!!」
早速少し遅いお昼ご飯を……!!
箸を手に取り、ご飯を食べようとしたその瞬間、窓ガラスが急に割れ、テーブルがあっという間に分解されてしまう。この現象……もしかして……
「嘘でしょ……せっかくのご飯がぁ……!?」
「響さん!!」
「うん!!アルカ・ノイズ!!」
「警報が鳴らない!?これじゃあみんなこいつらに気付てない!?」
「逃げるぞ!!ふん!!」
「「「「「え?」」」」」
源蔵は近くにいる響、未来、クリス、調、切歌の制服の襟を掴み、急いでファミレスの窓ガラスを突き破り脱出する。
「シャルはそのまま逃げなさい!!ワシはこの子らを近くのシェルターに避難させる!!」
「わかった!!って私も一緒に連れて行ってよ!?」
そう叫んだ頃にはもう源蔵はその場にはおらず、シャルルもまたファミレスの窓ガラスを突き破り脱出する。ちなみにここは四階にあるファミレスだ。綺麗に着地し、急いで逃げる。
「……おじいちゃんどっちに行った!?」
その頃、源蔵は五人を抱えたままありえない速度で走り続ける。
「し、師範!!私は戻らないと!!アルカ・ノイズが!!」
「行っても死ぬだけじゃ!!」
「私達には対抗手段があんだよ!!」
それを聞いた途端、源蔵は足を止め、響達の話に耳を傾ける。
「なんと!?それは本当か!?」
「本当なのデース!!だから早く行かないとシャルちゃんが!!」
「早く下ろして!!」
「……もし本当にあの化け物を倒す事が出来るのなら、シャルを頼む!!大丈夫とは思うが助けてあげてくれ!!」
「任せてください!!師範は未来を安全な場所に避難させてください」
「ああ。では頼むぞ!!」
響達を下ろし、源蔵は未来を連れ、安全な場所に向かう。
「じゃあみんな行くよ!!」
「おう!!」
「行くデース!!」
「行く……!!」
四人は首からペンダントを取り出し、聖詠を唱える。
『Balwisyall nescell gungnir tron』
『Killter Ichaival tron』
『Zeios igalima raizen tron』
『Various shul shagana tron』
シンフォギアシステムが起動し、リディアンの制服から変わる。
「行こうみんな!!」
「「「うん!!」」」
響たちは急いでアルカ・ノイズが出た場所へと猛スピードで向かう。待っててねシャルちゃん!!
シャルルさん運が悪すぎないかい?さぁさぁシャルルはどうなる!?