吸血姫と天使と鋼鉄の城   作:奈多ナキル

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SAO編
ビギニング01


 

 ソードアートオンラインーー通称SAO

 

 

 

 狂人茅場によって多くの若者がゲーム世界に閉じ込められた事件がおきたVRMMOゲームーー少なくない犠牲と時間を経て75層で«黒の剣士»らによってクリアされた。

 

 

 

 この物語はその影で起きていた«吸血姫»と呼ばれた一人の少女と«天使»と呼ばれた一人の少年がアインクラットで過ごした日々とその後のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 私-有栖川 紗那-は駆けていた.ただひたすらに、ただがむしゃらに、近寄ってくる敵mobを<リニアー>や<シングルシュート>で倒しながら……ただただ走り続けた。だが、躓いてしまい前方へと転倒してしまいHPが減った。

 

 

 

(……後少しで確実に私は死ぬ……アインクラッドここで死ねば現実で横たわっている私も死ぬ……私はそれを望んでいる…………)とそんなことをおもいながら敵mobを倒し、走り続けて転んで周囲を敵mobに囲まれていた。細剣レイピアは突きを重視した武器。故に切り払いにくい……そんなことを思い出し、体感時間が引き延ばされていき、βテスト最終日のあの日のことを思い出した。βテスト最終日あの日、とある男性プレイヤーと交わした約束―サービス開始日にまた会って一緒にパーティーを組む約束-を反故にして前線へとその身を投じていたのことを、言い切れない己の負の感情に押しつぶされていたことを……

 

 

 

 SAOゲーム世界に囚われて、自暴自棄に陥ってからの私の行動はあまりにも破滅的だった。思えば20歳になり時間の自由が利くようになると、尚更のことゲームに没頭する様になった。私自身小さい頃から頭脳明晰だと周りから評判だったがそれで周囲から浮いてしまい疎外され、半ば引きこもりだった……一応大学まで進んだものの休学しているようなものだった。今に至っては死に急いで走馬灯を見ている最中−ただ1つ心残りがあるとすれば約束相手に対する申し訳無さだ。その相手を忘れられず、心の内でその人に謝りつつ刻々と減っていくHPを見て諦めていた時だった。

 

 武器を降り下ろそうとした敵の腕部が吹き飛び、その隣の敵のHPも吹き飛んで、声が聞こえた。

 

 

 

「君っ、しっかりして……ソードスキルでこっちの1体は処理するからっ、そっちの残り1体を処理するんだっ」

 

 そう言われて私は咄嗟にレイピアを構え直して、リニアーを発動してHPを全損させると、声をかけてきた人も敵を倒し終え、私の方を向いて頭を下げてきた。

 

「ゲームであればこれが、マナー違反なのは分かってるけど……この世界での死=現実での死なんだからさ……すまない……もしあれならドロップ品は全て君に渡すからさ」と言ってトレード窓を開き、そこに表示されたプレイヤー名を見て私は複雑な心境になった。

 

 目の前にいるプレイヤー名は«NaKi»……ナキだった。名前くらいは偶然かもしれなかったが姿や細部こそ若干違えど間違いなく私がβテスト最終日に約束した、私が想いを寄せていた、その人なのだから…………

 

 私は強い罪の意識を感じながら……自分の口から溢れ出ていた言葉は

 

「ナ…………キ君? ……あのナキ君なの?」だった。そして頬に熱い水滴が流れているのを感じて理解した。私は罪悪感と安堵に挟まれながら泣いているのだと。

 

「俺のことを知っているの? ……なら……サナってプレイヤーを知らないか?」

 

「知っているも何も……私だもんサナは……その……グスッ……ナキ君……ごめんなさい……約束を破っちゃって……」と私は泣きながら言うと

 

「良かった……無事で……ただ泣かれるとなぁ……サナちゃんとりあえず始まりの街は遠いからトールバーナーに向かうけど良い?」とナキに聞かれ私はただ頷くことしか出来なかった。

 

 少しその場で私が落ち着くまでナキは傍にいて様子を伺いつつ、大丈夫だと判断したのかこう言った。

 

「なら行こうか……前衛は俺がするから、サナちゃんは後ろをお願い……スイッチのタイミングはこっちが言うから」

 

 私がそれを無言で頷くとナキは私の前に出て索敵しながら歩き始めたので、私はその後ろについて、そのまま抱き付いた。

 

「ひゃぁっ……サ、サナちゃんどうしたの?」とナキが可愛らしい反応をして聞いてきた。

 

「………………」私が無言で返すと

 

「分かったから、とりあえず圏内に戻ってからなら何でもしてあげるから……ただ約束の件は許しはするけど償いぐらいはしてもらうけどね」と呆気なく譲歩されて、私はそれをのまざるおえなかったが、私とって好都合でしかなかったので、素直に少し離れてトールバーナーへと向かった。

 

 途中でナキに目立つからと黒いフード付きマントを渡されたので装備して、トールバーナーに着くとドロップ品を換金して必要なアイテムを補充し、宿屋へと向かった。

 

「サナちゃん別々の部屋か、少し割高になるけど広めの部屋……どっちがいい? あ......後者は寝室2つあるタイプだから安心して」とナキに聞かれた。

 

 βの時からそうだった、ナキは何処か見透かしながらも核心を見透かさない人で、優しいなと思っている。

 

「なら後者で」と短く答えるとナキは部屋をとって、そこまで少し足早に向かい扉を開けて入っていったので滑り込むように入り、そのまま武装を解除した。ナキも同じく武装を解除しており、ダークブルーを基調としたロングコートと同じ色合いの上下だった。かくいう私はナキから貰った黒いマントの下はグレーのシャツとスカートなのでお互い殆ど初期装備と変わらない状態だったのだが、何処か落ち着かなかないと思っていると

 

「そう言えば、サナちゃんは……円輪刀使ってたもんね」とナキの発言でその違和感の犯人が分かった。

 

 β時代偶然五層の敵mobから落ちた武器で好んで私は使っていたが、今はまだ手に入らないのと、スキルが«片手剣»«投剣»«疾走»を選んでいるので、一応その位置に投剣用のピックをつけていたが使いきっており、補充していなかった。

 

「大丈夫だよ、ナキ君。今はまだ手に入らないし、エクストラスキル«体術»も習得しなきゃだし」

 

「そうだったな……少し落ち着いたようだし本題に入ろうか……」

 

「本題って?」

 

「誰かさんが約束破って、挙げ句の果てに自殺未遂してからねぇ……お説教かな?」

 

「………………」案の定私は固まった。

 

「と言いたいけど、サナがここまできてないと俺もここまでこれてないから今は不問にするけどさ」

 

「なら何を話すの?」

 

「どうしてサナがそうしたのかの動機と今後について……アルゴさんにも会う予定だし」

 

 アルゴー情報屋で攻略本を出している女性プレイヤーで、サナ達と同じく元βテスターーの名がナキの口から出てきたことに驚いたが、ナキに対して私は釈明しなければならないので意を決した。

 

「それじゃ……どうして約束の場所に来ないで、前線にいた理由教えて貰おうか……」

 

「あの日……ナキ君と約束していた日……私がどうして前線へと身を投じたのか……どうしてそうしたのか……ほぼ理解出来ないと思うけど、全て話すよ」

 

 そうして私はナキに話し始めた。まだまだ夜は浅く上の階層の底面に反射した月光が眩さを帯び始めた時間だ……全てを話してもお釣りが来るだけの時間だ……

 

 




皆様はじめまして奈多ナキルと申します。死神と奇術師のアインクラッドの外伝的扱いです(公認)
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