吸血姫と天使と鋼鉄の城   作:奈多ナキル

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目覚め

 不思議な夢から約1ヵ月……1月22日の深夜、私の携帯に1本の電話が来た。

 

 

 その電話の内容を話す前に、退院するまでとその後の事を私は、振り返った。

 

 

 昨年末はリハビリがメインで結局プレゼントを使うことが無く、年が明けると私はただリハビリに励んだ。貴夜が目を覚ますまでに、生活できるレベルまで復調してやる、と言う不純な動機を持ったからだ。

 

 

 それは1月中旬まで続き、どうにか松葉杖で歩けるまで回復したので、退院となり私は我が家へと戻った。私の部屋の家電が一新されたが、流石に音声コマンド機能はなかったものの、手元の携帯で操作が出来るようになっていたのには、驚いた。

 

 

 また、貴夜とのこともあって名取家とも家族ぐるみの付き合いとなったし、実質的に貴夜の堀を全部埋めて、後一押しで落ちる状態になった。

 

 

 大学に関しても、名取教授の言葉添えで、私も正式ではないものの重村ラボの実質的なメンバーとなった。

 そんなことを思い出しつつ、電話をとった。

 

 

 時間帯が深夜だったので、流石に病院に今から入ることは出来なかったが、その代わりに翌日の面会時間最初に、私は叶と共に貴夜の病室へと乗り込んだ。

 

 

 私が軽くノックをすると、

「はい、どなたですか?」と貴夜が訊いてきたので叶が

 

 

「仮想課の者です」と半分嘘を吐き

 

 

「どうぞ、入って下さい」と貴夜が言ったので、私は

 

 

「失礼します」と言葉通りの意味で入ると、そのまま貴夜に近付き抱き着いた。流石の貴夜も固まったが、軽く唸って抗議して来たので私は少し離れてこう言った。

 

 

「お帰り貴夜……この嘘吐き」の冗談混じりに言うと

 

 

「皮肉なら帰れ……こっちは現状把握なんてろくに出来てないのにさ……阿呆紗奈」と仕返しが飛んで来た。

 

 

「こほん……ちょっと二人共夫婦喧嘩は私がいないところでお願いね……こっちの身になれって話よ」と叶が咳払いと共に嫌味を言うと

 

 

「ん? 春山さんか……見たところ出向?」と貴夜が見透かすと

 

 

「正解……一応軽く話をと思ってね……後はそこの人を抑えることが出来るのが私しかいなかったのもあるけど」

 

 

「何となくだが理解したけど……幽閉されてた間の記憶は無いよ」

 

 

「分かった……なら仮想課としてのわたしの用は終わり」と叶は言った。

 

 

「仮想課のって事はまだ本題があるのか……」貴夜が苦笑しながら言った。

 

 

「高校時代2年間の関わりしか無かったけど、貴夜君本当に恐ろしいよ」

 

 

「そう言ってもらえた方が助かるよ……何で紗奈はここにいるんだよっ」

 

 

「何でって、お寝坊さんを怒りに……後報告にかな」と私ははにかみながら言うと

 

 

「この状態で良いなら……ご自由に」と素直にと言うより諦めた物言いだった。

 

 

「この馬鹿っ…………そんな貴夜にはこうよっ」と言って私は貴夜の唇を強引に奪った。叶がいようとお構い無しにだ。

 

 

 そして少し長めの接吻を終えて、私はこう続けた。

 

 

「ねぇ……貴夜……結婚前提に付き合ってよ……大丈夫、安心して両方の親の許可は下りてるからさ」と爆弾を落とした。言うなればツァーリボンバ級の爆弾を、だ。

 

 

「寝てる間に、堀どころか天守閣まで落とされていやがった……」と毒づきながら貴夜が言って、少し間をおいてこう続けた。

 

 

「こんな俺を好きでいてくれるなら……喜んで」と答えてくれた。本当なら抱きつく流れなのだが、叶の咳払いで甘ったるい空気が元に戻ったので、流石に自重した。

 

 

「イチャつくなら、私の居ないところでお願い」と叶に言われたので自重したところで、かもしれなかった。

 

 

「すまん」と貴夜が軽く謝り

 

 

「覚悟はしていたからいいけど……本題に入ってもいい?」

 

 

「あぁ」と貴夜が返事をした。私はある程度話す内容を知っているので、貴夜に抱き付こうとするのを頑張って堪えていた。

 

 

「出向元は何処か分かる?」

 

 

「司法関連か?」

 

 

「まぁ、一応当たり……公安だよ……変なところで読み間違えるのも高校時代から変わらないね」

 

 

「言わずもがな国家か……あと、最後の一言は余計だよ……気にしてはないがな」

 

 

「ええ……貴夜君、エマちゃんは知ってるよね?」

 

 

「それがどうした……もしかして……」

 

 

「今うちで預かっているけど、そのもしかしてだよ……一枚岩じゃないからね」

 

 

「処遇か」

 

 

「そうよ……ぶっちゃけ駒が欲しいの公安は」

 

 

「それで、エマちゃん達をそうする流れだが、そうしたくないのか……」

 

 

「そう言うこと、それでお願いがあるの」

 

 

「駒になれ、か……」

 

 

「その通りよ」

 

 

「OKだ……エマちゃん達よりも俺らが適任だ」

 

 

「ありがとう、助かる」

 

 

「俺からしても、エマちゃんは姪と同然だからな……仲違いするのは藪蛇過ぎる」とナキの口からはじめてエマに対する思いを聞いた。

 

 

「良かった……貴夜が乗り気で……でもその姿、下手したら女の子だね貴夜」と私が言うと

 

 

「知ってる……だから長い髪は嫌なんだよ……そっちの気は無いし……」

 

 

「まぁ、取り敢えず私はこれで失礼するから……またね紗奈、貴夜君」と叶が言うと

 

 

「おう、また」 「またね叶」と私達がそれぞれ答えると叶は病室を後にした。

 

 

「それでお医者さんは何て?」と私が訊くと

 

 

「退院出来るまで、早くて2週間って」

 

 

「早すぎない?」

 

 

「車椅子ならそれぐらいで可能と言われたからそれでお願いしたよ」

 

 

「これから大学も一緒に行けるし、二人っきりの時間も増えるね」

 

 

「この際言うけど、満更でもないし、抵抗は殆どしないよ、愛しの吸血姫さん」と貴夜がおちょくってきたので

 

 

「うるさいっ……この天使がっ」と私が言い返して、二人で笑った。

 

 

 そうして波乱とは言い難い日々が始まったのだった。

 




次回ナキ完全復活と言う嘘予告



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