「ちょっと……アグレッシブ過ぎたかな……貴夜に対するアピールが」と軽く頬を赤めながら言ったものの、反省する気はないので、私は鼻唄混じりにアミュスフィアを被って、ベッドに寝そべって
「リンクスタート」と呟くと意識は妖精の世界へと飛んだ。
SAOの時と体格は変わらないのだが、耳はエルフのような耳になり、髪色と瞳の色は闇妖精族の紫色だった。そんなことを思いつつ、少し待っていると待ち合わせしていた人物であるナキがやって来た。
「ナキ似合ってるよ」と言うと
「俺だけ初期装備か……ちょっち辛いな……」
「パラメーターは前のまんまの癖に……ま、レクチャーも兼ねてアルン行こ?」と言いつつ私は自分の装備を眺めた。SAOの時とあまり変わらないが、マントが無くなった代わりにキュロットのスカート丈が長くなっただけだった。ただ、武器はあの時使っていた武器ではなかった。しかもチャクラムは、ALOでもレア武器らしく手に入らなかった。その代わりピックを多めに装備している。
「あぁ、頼む」とナキの返事を聞くと、私達は装備を整えて都市の外に出た。
そして少し離れた所にある草原で翔び方のレクチャーをした。
「ナキ、翔び方解る?」
「最初は補助コントローラー、慣れたら随意飛行だろ?」
「正解……ならやってみて」
「分かった」そう言ってナキは補助コントローラーを用いて軽く飛ぶと、途中から両手を横に合わせて飛び始めた。私は随意飛行(私だって一応出来る)で、ナキのいる位置まで追い付くと、ナキはホバリングしながら待っていた。
「何で、始めて数十分で既に随意飛行出来てるのさ……」
「何でって言われてもさ……SAOの時スキル使っている時、翼出てただろ? あれって自分で動かせるから、もしかしたらその要領でいけるかなと思ったら、ビンゴだった」
「そう言うことなら納得……さっさと行こ?」
「そうだな」
そうして私達は度々休憩を挟みつつ飛んで、アルンまで半分の距離に達した頃、ナキが下の方を見始めてこう私に言ってきた。
「何かが呼んでいる気がする……」
「急にどうしたのナキ?」
「何て言うか……体が無意識に下に行こうとしてるんだ……下に降りていいか?」と言われ私は断りきれず
「良いよ」と答えるとナキは急降下した。案の定地上にいたワームに気づかれたが、ナキはヴォーパルストライクを放ったが、
「パクッ」と気の抜けたワームの口の閉じる音がなった。お約束と言わんばかりにナキはワームに食べられた。私はナキのHPバーすら見る余裕を無くしてしまい「ナキっ」と叫びながら、ワームに対してリニアーで攻撃すると、私もワームに食べられた。
そうして気がつけば私は、ヨツンヘイムに、ナキと共にいた。
「痛てて……サナ大丈夫か?」
「大丈夫だけど……ナキの馬鹿っ……私達ヨツンヘイムにいるじゃん……レイドボスがウジャウジャいるヨツンヘイムにっ」
「幸か不幸か、俺を呼ぶ声が強くなってる……周囲を探索しよ……最悪敵とは遭遇しても、スキルで戦闘は回避出来る」
「そう言えば、そうだね……レイドパーティーに会えれば、出口まで案内してもらえるだろうし」
そんなことを私達は言いつつ、周囲を探索し始めて数十分が経って、私達は、小さな祠の周りを守るように動物型邪神がいて、それの祠を狙うかのように巨人型邪神が攻撃しているのに遭遇した。それを見た私は嫌な予感がしたのでナキに
「ナキ……まさか、あそこに行くとかじゃないよね?」
「何で解ったのさ……とりあえず巨人型の方をヘイトコントロールで仲間割れをさせて突破するつもりだけど」予感的中だった。
「もう、私知らないっ」と流石に呆れていると
「どうぞ勝手に、俺は行くから……駆逐してやるっ」と明らかに楽しんでいた。壁が破られるまで人類はとあることを忘れてそうなマンガのキャラのセリフを最後に言って、ナキは盾を構えて巨人型邪神達に威嚇した。
ナキが己にターゲットを集中させる効果のある〈挑発〉などを使ってヘイトをためまくり、巨人型邪神のうちの一体だけナキに構わず動物型邪神に攻撃していたが、さっきよりも攻撃が当たらなくなっていたが、それはナキのユニークスキル〈懲罰・守護天使〉にしか出来ない芸当だった。
そして、その一体にナキがたまっていたヘイトを全て擦り付けて、他の巨人型邪神が仲間割れを起こした。それに乗じて動物型邪神の方も攻撃している巨人型邪神に反撃をし始めた。この行為は、本来モンスタートレインと言われる迷惑行為だが、周囲にいるプレイヤーは私とナキしかいないので問題はなかった。私は、ナキのSAO時代から変わらないヘイトコントロールに見蕩れていると、動物型邪神の内の一体でイメージ的に一番近いのはサーベルタイガーに翼の生えた邪神が、私のところに来てー〈隠蔽〉している私に気づいていると言うことは、余程索敵能力が高いのか、視覚以外の索敵方法を持っていると言うことなのだがー乗れ、と言わんばかりに背を向けてきたので、私は背中に乗ると、祠の所まで連れていかれ、ナキもその場にいた。
「ナキ……このモンスター達って……」と私がナキに訊くと
「サナの思っている通り友好mobだよ、襲ってきた奴らで逃げた奴もいたけど、倒した奴のアイテムは回収したし……ただ何故か動物型邪神達に是非も言わせずにここに連れてこられて、祠の中に見たことがある物が置かれてるし……」と貴夜が祠の中の方を見ながらいった。
「言われてみれば、見覚えのあるものが置かれてるもんね」と私も祠を見て言ったー動物型邪神達が守っていたのは、ナキがSAOで使っていた武器そのものだった。
すると私をここまで連れてきた邪神の周りに、他の邪神達が集まってーどうやらあの邪神がリーダー格の邪神だったようだー祠の封が解かれた。リーダー格の邪神がナキに取れ、と複数ある眼で見られたと言うよりは、睨まれながらも、ナキは剣を取って鞘に納める前に、剣を眺めた。それを背中に装備して、盾を手に取った。ナキはさっきの戦闘で鎧を全損させたらしく、鎧を着ていなかったのだが、盾から体を覆うように、鎧が展開された。そして盾の中央部に、髪が蛇の女の生首のレリーフが彫られていた。
「やっぱりな……アロンダイトとアイギス……完璧なる騎士の剣に、ヴァルキュリーのアイギスの鎧と盾だったのか……お前らは」と優しく嬉しそうにナキは独り言を洩らしていた。
それを見ていた私は、羨ましさを覚えた。私の《滅銀水晶の細剣(シルバーロストクリスタル・レイピア)》と円輪刀は、私の許にいないのだから……と不貞腐れいると
「この子達を助けてくれてありがとうございます……私の鎧も認めているということは、貴方が〈天使〉の名を持つ妖精の戦士なのですね」と女神らしき人物が何処からか現れて、そう言ってきた。そして、キョトンとしている私達を見て、その女神は軽く咳払いして
「申し遅れましたね……私はワルキューレ、ブリュンヒルデと申します。お二人の名を聞いても?」と自己紹介をしてくれたが、引っ掛かる部分があったが、北欧神話のワルキューレはギリシア神話のヴァルキュリーとほぼ同義なので、ゲーム上の仕様と言うことで自分を納得させた。
「俺はナキです」とナキが先に言った。
「私はサナです」と私が言い終わると、ブリュンヒルデはこう言った。
「天使の名を持つ者と吸血姫の名を持つ者……預言通りです」
「どういうことですか?」と私はたまらずに訊くと
「天使の名を持つ者が、この地に現れる時、その隣には吸血姫の名を持つ者がいる、と言われているのです。そして吸血姫には、これを渡すようにとも」言い終わったブリュンヒルデのところに、細剣と円輪刀を持った邪神がやって来て、ブリュンヒルデに手渡した。その邪神に対してブリュンヒルデは「ありがとう」とお礼を言って、私に手渡たされた。
「この剣の名を《滅水晶の細剣(ロストクリスタルレイピア)》と言い、そしてこの円輪刀の名は《エデン》と言います。この武器達が貴方の力になってくれるでしょう」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます。久し振りロストと、丸いの……じゃなかったエデン」と私は受け取ると
「貴方達が、もしこの場に留まるのであれば良いのですが、よろしければ地上まで送りますが、どうされますか?」と訊かれたので
「送っていただけるんですよね」と再確認すると笑顔で頷かれたので
「お願いします」と伝えると
「ならば、ペルセス……この二人の妖精族を地上までしっかり送り届けるのですよ」とブリュンヒルデがリーダー格の邪神にそう命じて
「最後にこちらの笛を1つずつお渡ししておきます。もしまた、ヨツンヘイムに来られるさいに、この笛をお使いください。そして、同胞達を傷付けることが無いようにお願いします」
「はい、分かりました。巨人の方は倒してしまっていいんですよね?」とナキが言うと
「はい、倒してもらって構いません。同胞の傷を癒す力が、その盾にはあります。無いように願いますが、もし同胞を傷付けてしまったら、その盾で迅速に傷を癒してもらえれば、咎めはしませんので」と諫言された。
「はい、しっかり覚えておきます……では」とナキはペルセスの背に乗ると、私に手を伸ばして来たので
「ブリュンヒルデさん、ありがとうございました」と私はお礼を言って、ナキの手を掴み、ペルセスの背に乗った。するとペルセスは翼を広げて飛び立った。多分だが、ペルセスの背中は後5、6人は乗れる位広かったし、ペルセス自体も大きかった。
飛んでいる間ナキは剣と盾を愛おしそうに眺めていたが、見ている私に気づき
「サナどうしたの?」
「いや、最初は散々だったけど……あの時共に戦った武器達にまた出会えた……ナキありがと」
「別に……俺を呼んでいたのはこの武器達だし……ペルセス達が味方だとは最初は思ってなかったから」
「今日のことは二人の内緒にしておこ? ……アルンで何か奢って貰うだけで許してあげるから」
「はいはい」とナキは流すように返事をしてきた。
そんなやりとりをしていると、桟橋のような物が空中にある所に着き、ペルセスが軽く鳴いた。ニュアンス的に着いたぞ、と言う意味だろうから、私達はペルセスの背から降りた。するとペルセスは下へと降りていったので見送ったが、いざ地上まで上がろうにも長い螺旋階段があった。ただ、自力でここまで上がってくることと比べると楽なので、覚悟を決めて駆け上がった。私の方がAGIが高いので、ナキとは2〜3段、間が空いていたが、キュロットなので問題無いし、たとえ見えたとしてもナキに見られても恥ずかしくないので関係無かった。
数分後、私達はアルンに出た。
「ここって……」とナキが言ったので
「アルンだよ……私も始めてくるけどね……とりあえず世界樹の方に行こ」
「世界樹の中だっけか……俺が囚われてたの」
「元だけどね、見た目が同じなだけで中身は変わってるよ」
「そうか……」とナキは言い終わると走り出したので私は追い掛けてすぐに追い付いた。
そして二人で央都アルンを見て回るのだった。
次回待たせたなぁと言う嘘予告
いま論理コード回のある意味お約束のお話を書いてるけど、出そうか葛藤中
バレンタイン回の話は書き終えてるんで、バレンタインにはだせそ