貴夜と共に大学を後にして、ダイシーカフェのある御徒町へと足を運んだ。私達は寄り道をしながら言っていた時間にダイシーカフェに入った。店の中には、攻略組の面々やシンカー達がいた。
「久し振りだな、黒の剣士さん」と貴夜が皮肉気味に言い、
「久し振りだな、ナキ」と黒の剣士ことキリトは、それに答えた。
「おい待て……後ろにいるのは、レアキャラで吸血姫のサナさんじゃねぇか」と赤い髪の男性が言うと、店の中にいる独身男性の目線は貴夜に、一部は私に反応した。
「皆さん……お久し振りです。もしかしたらSAOでもはじめましての方も居るかもですけど」と苦笑混じりに挨拶を私はした。攻略会議に殆ど参加せずに、ボス戦のみに現れるし、容姿も相まって、吸血姫と呼ばれていた。私のユニークスキルと同じ吸血姫なのに、流石に私も苦笑してしまったのは、良い思い出だ。この場には、幸い知り合いがいたので、そちらの方に私は向かった。
「久し振り、シリカちゃんに、リズベットにアスナも」
「はい、久し振り(です)、サナ(さん)」と、3人はほぼ同時に返してきた。シリカとは中層で狩人をしていた時に出会った子で、ビーストテイマーだ。アスナとは攻略組の数少ない女性プレイヤー同士で、仲が良かった。また、その縁でリズベットとも、仲が良いのだが……私よりも年下ばっかりで少しショックだった。
とは言っても、仲が良いのは事実なのだし、女子同士積もる話をして盛り上がっていた。
私達が、今日のキリトよりも遅れた理由は、私達が74層攻略に参加していなかったことや、直前に入っていた用事の都合上遅れると伝えていたので、特に咎められなかったし、咎める馬鹿も居なかった。ただ、私達がSAOでしていたことは許されることでは無かった。良く言えば、超法規的行為、必要悪なのだ。悪く言えば、ただの人殺し、シリアルキラーなのだ。ラフコフの壊滅作戦の時、戦力がこちらが優勢だったのは、私達が居たことと、事前に準幹部クラスを潰していたと言うことがあり、私達の数少ない名声とも言えた。しかし、あの戦い自体が悪夢なので誰も口にはしなかった。
一方貴夜は、女性陣が談笑しているのを横目に話していた。
「ったく、キリの字といい、ナキといい……どうしてよぉ、美人さんゲットしてるよなー」とクラインが不満を垂れたので
「それはクラインが、調子に乗りやすくて、単調だからじゃないのか?」と痛いところをクリティカルで突いてやると
「おいおい止めてやれよ、ナキ……ダメージでかそうだぞ」とエギルから言われたので
「けど、クラインの侍らしい性格は俺からすれば羨ましいけどな……つうかさ、キリト、ヒースクリフって強かったか?」とフォローすると同時に、話題を転換させた。
「強かったけど、みんなの力があって勝てたよ」とキリトの答えが返ってきて、覚悟を決めて口を開いた。
「ヒースクリフ……いや茅場先輩は、後輩の俺から見ると凄い人だと重村ラボにいる時は思ったけどな……」と俺が言うと、一同驚いた様子だった。
「俺の親父もSAOに関わって、事件が起きてからは重村センセと反りが合わなくなったらしいし」と続けた。
「おいっ、ナキ……ああなることは解っていたのか?」とキリトに訊かれたが、
「知らなかったさ……だったらまずβテストにすら参加してないさ……親父ですら自分の組み上げたプログラム……メンタルシステム……正確にはメンタルカウンセリングプログラムに手を少し加えるのが、精一杯って言ってたからさ……ましてや他人の作ったプログラム何て、本人以上に理解できないさ」と言うとキリトの表情が少し変わった。
「つうか、キリト、それは何?」と肩に乗っているカメラについて、これ以上追求されないように訊くと
「視覚双方向通信ブローグって言うんだが……」と濁されたので、意趣返しにこう言った。
「話が戻るんだが、親父がな、あのシステムを使えばAIが作れるかもってこっちが言ったら乗り気だったんだよ」
「それで?」とエギルが相槌を返した。
「それで、親父はこうも言ったんだよ、SAOのメンタルケアAIが使えればな、とね」と言うとキリトの表情が何かを知っているような表情だった。
「SAOサーバーは厳重に管理されていますもんね」とシンカーが会話に参加してきた。
「シンカーさん久し振りです。ユリエールさんとのご入籍おめでとうございます」
「ナキさん、お久し振り。さっきの話は聞いてましたけど、重村ラボの学生だったんですか?」
「いや、まだ学生です……親父……えっと名取教授の息子ってこともあって、今はラボを移って名取ラボにいます」
「成程」
「結局問題はサーバーなんだよなぁ……ザ・シードを使ってみようとは思ってるんですけど」
「ザ・シードで思い出しましたけど、ALOも色々とあるらしいですかりね」
「あ、シンカーさん。連絡先交換しませんか?」
「えぇ、でも何故?」
「大学の情報……無論許可が降りてるやつを俺が記事にしても良いんですけど、コネが有れば便利かな、と思って……」
「成程……こっちとしても有益ですからね、是非」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」そうして、シンカーと連絡先を交換して
「……っと、他の所にも挨拶をしてくるので失礼」と言って俺はカウンターから離れた。
旧交を温める良い機会となったパーティーだったが、参加者の内には未成年者もいたので、少し早くお開きとなった。帰りはとある人物と会った後、紗奈と二人で帰り、道中ALOの話にもなり、足早に帰宅した。
そして場所はALOに移った。時刻は深夜23時50分……アルン上空に多くのプレイヤーが集まっていた。もう少しで、あの城がここに現れる……そう思うと複雑な気持ちになったが、嬉しいのは事実だった。私は隣を飛んでいるナキに
「楽しみだね」と言うと
「あぁ……茅場先輩も報われるんじゃないかな」
「ナキって私と居るようになってからゼミの先輩達に気をかけられるようになったよね……人間不信こそ治ってないけど」
「うるさいなぁ……まぁでも61層に辿り着くのはいつになるやら」
「別に私は、ナキと一緒に居られるなら、何層でもいい」と私が言うと
「……置いていくぞ、サナ」とナギが照れ隠しで更に上昇したので、私はそれを追いかけた。
そして深夜0時丁度に鐘が鳴り響き、雲の中から新生アインクラッドが現れ、多くのプレイヤーがそれに向かって飛んでいった。
そうしてサナとナキは第1層の主街区始まりの街の噴水の前に二人で居た。
「もうあれから約2年半以上経っているんだよね?」と私は干渉に浸るように言った。
「誰かさんの自殺未遂から、約2年半経ってるけど、どうしたのさ急に」とナキに皮肉を言われたが、気にせずに
「少しだけ、罪の意識が芽生えちゃってさ」と私は涙混じりになりながら言うと
「俺だって罪の意識はあるさ……レッドプレイヤーを倒していって、多少整理がついても、ラフコフのpohだけは許せないけどな」
「私達は、他の攻略組よりも、多くの命を刈り取ってる」
「だからって……多くは黒鉄宮に送っていたし、実際に手にかけたのはごく一部だけだ……殺される覚悟無しに殺すなって話だよ……変に気にして押し潰されるより、殺した奴等の分まで生きるのが、俺らの役目だと思うよ?」
「そうだよね……なんかお腹空いちゃった……ナキ何か奢ってよ」
「分かったよ……その代わりにサナがSAOサービス開始の日から出会った日までの足取り、実際に教えてもらうからな?」
「何で……」
「ALOのアインクラッドに慣らすついでに、さ」
「足取りだけだからね、教えるのは」
「別に慣らしだからな」とナキに押し切られつつも、私達はレストランに入って、小腹を満たした。
レストランを出て、トールバーナー近くー尚、迷宮区とは逆側ーの森へと向かった。
「ここで、私が敵と戦闘中に、ソードスキルで飛び込んで来たのが、ナキだったと……」私がそう言うと、ナギにこう言われた。
「タイミングが遅かったら死んでたクセに」
「第一声は『君、しっかり』だからね……暑苦しいのやら、事務的なのやら……」と私が茶化すと
「サナだって、『ナ......キ……君? ……あのナキ君なの?』だったじゃん」ナキは笑いながら茶化し返してきた。
「でもあの時は、私、嬉しさと罪悪感でいっぱいだったしさ……」
「だろうな……」そう言い終えたナキが私に抱き着いてきた。
「ちょっ……ナキ?」と私が少し戸惑うと
「あの時の仕返し」とナキに優しい笑みで言われた。
「とりあえずさ、時間も時間だし、トールバーナーまで戻って落ちよ?」と苦し紛れに私が提案すると
「そうだな」とナキが了承したので、トールバーナーで私達はログアウトするのだった。
次回迫真(白目)と言う嘘予告