吸血姫と天使と鋼鉄の城   作:奈多ナキル

21 / 30
時系列若干ずれてるけど更新ペースの為、許せ


番外編 幾路

 

 

 エマと初めてあったのは、俺が小学校低学年の頃だった。親父の大学に良くついて行く事が多かったから、必然的にエマの両親とも面識があった。今思えば、何で子供が大学についてくるのを親父が文句を言わなかったのかは、姉である朝陽に対して自分が劣等感を抱かないようにする為だったんだろう。エマの両親は、二人とも学者で人として優しかったし、学者としてはAIの基礎的なプログラムを開発して、親父のメンタルシステムのもう1つの中核を担っている程の汎用性が高いものだったが、それを狙う者も多かった、と聞いている。事実SAOβテストの時に須郷によって、エマの両親は殺された。

 

 

 俺から見てエマは姪に近い感覚だ。距離感的にもそう自分は思っているんだが、自分がエマに対してツンケンしているらしいので、エマ本人はどう思っているのかは知らないが、まぁそういうことなのだが、姉の朝陽はどう思ってるのか訊く気はないので知らない。多分エマを妹みたいに思わない理由は、十中八九、朝陽のせいなのだし……とハンドルを握りながら思った。

 

 

 今俺は、一人車を適当に走らせていた。別に紗奈と喧嘩したとかそう言う訳ではなく、紗奈は出掛けていて、自分はすこぶる暇だったので、車を走らせていただけだ。因みに、車はSAOに囚われる前にも持っていたのだが、運悪く災難に遭ったらしく廃車になっていた。まぁ、中古車だったのでそんなに痛手では無かったのと、保険がおりたので、はれて新車を買ったのだ。車自体は、軽自動車のMT車なので紗奈には文句を言われたが、その気になればサーキットも走れる車なので性能は充分ある。後部座席が意味をなさない某スポーツカーや、時速300㎞でも真っ直ぐ進む某スポーツカー達は、お値段が笑えないし、日常で使うにもアレなので、買わなかった。そう言うのはゲームで使うに限る。

 

 

「でも、俺も紗奈も金銭感覚は普通なんだよな……黒華さんもそうだったし」名取家は、親父が大学教授なので家柄的にも学問に対して金を惜しまなかったし、メリハリがしっかりした家だ。ゲームに対しても厳しく無かったし、それが勉強に繋がれば文句は言われなかった。ある意味稀有な家庭だろう……紗奈の方は、元々華族だったこともあったが、紗奈が一人っ子だったので、溺愛されていたようだった。ただ、紗奈本人はそう言う貴族的な思考では無く、節約とかを是とするタイプの人間だ。ただ、好きなことになると財布の紐が緩むのだが、考えて出費しているので問題はない……はずだ。黒華家は、外から見た感じ普通の家庭だったな……と思っていると、ホルダーにつけていた携帯の画面にナナが出てきた。

 

 

「パパは、車を運転するの楽しいの?」と訊いてきたので、

 

 

「あぁ、パパは楽しいよ」と答えた。そんな会話を愛娘としながらも、心の隅で、エマの事を考えていた。別にエマとの距離感は今のままで良いのだが、エマが自身の事を知ったり、エマに埋め込まれているICチップと託されているであろう真のプログラムの事だったり、と対策をしておいた方がいいことが多くあった。そう言う意味では、ナナもその対策の一つなのだから。

 

 

 しばらく車を走らせて、コンビニの駐車場に車を停めると、ノートPCを取り出した。ナナは紗奈の方に行ったし、なんならナナに釘をさしたので、独り言も聞かれる心配も無い。

 

 

 PCを立ち上げて、あるプログラムを組み、オーグマーと仮称されている物のプロトタイプと接続させた。画面には、鎌なのかツルハシなのか判らない武器らしき物が、写っていた。それ以外のプログラムも写っていたが、文字化けして見えなかった。

 

 

 SAOを生き残った1人の天才は、何かを隠し、盤面を狂わせ、手札をちゃくちゃくと整えて、数手先を見据えながら、己を殺して苦悩する。罪を見定める尋問いや拷問をする天使に憧れた狂人は、いつしか偽善者の仮面を、はたまた悪役の仮面を手にとった。道化師は踊る、己が運命に絶望しながら、今にも壊れた硝子の檻でただ踊る。壊れかけの天才は自然に、そして急速に壊れてゆく……

 

 

「オーディナルスケール……ここで終わらせる」と貴夜は悲壮と狂気と愉悦の混じった表情で独り言を漏らすのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。