吸血姫と天使と鋼鉄の城   作:奈多ナキル

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旧交

「貴夜-……そっちの荷ほどき終わったんならこっちも手伝ってよ-」と私が少し大きな声で言うと、

 

 

「ちょっと待って……PCさえ終わればナナがこっちの様子見えるからさ」と貴夜が答えた。

 

 

 今日は4月1日……エイプリルフールなのだが、私達は慌ただしく荷ほどきに追われていた。両方の実家から距離もあり、大学から程良い距離がある、2LDKのマンションだ。私は特に希望は無かったが、貴夜の要望でマンションになった。そこそこの家賃だが収入が有ることや、来客が来ることもあるので、反対する理由も私には無かった。因みに何故2LDKなのかと言うと、PC等を置くスペースが部屋が別に必要なレベルだったからだ。寝室は無論一緒なのだが、SAOに居た頃と同じような環境になって嬉しかった。そんなことを考えながら手を動かしていると貴夜が、

 

 

「こっちは終わったけど、そっちは?」と訊いてきた。

 

 

「だから、手伝ってって言ってるでしょっ……話聞いてた?」と少しキレ気味に答えると、貴夜が寝室にやって来て、

 

 

「なんだ……後は寝室位なんじゃん……さっさと終わらせられるな」と言った。どうも全体的な進捗を訊きたかったらしい。

 

 

「と言うか……今何時?」

 

 

「12時過ぎ……これ後30~40分で終わらせられるから、紗奈は先に昼飯食べてていいけど」

 

 

「別に30~40分くらい大丈夫だし……その後は買い物に行くんだよね?」と私が貴夜に確認をすると、

 

 

「別に、火急の用って訳じゃないからいいのにさ……ま、いいけど」と曖昧な返事で返された。

 

 

 場面は変わって車の中だ。運転はもちろん貴夜だ。

 

 

「ねぇ、貴夜」

 

 

「…………」

 

 

「返事くらいしてよ」

 

 

「…………」と言う風に会話が成立していなかった。

 

 

「ウンともスンとも言わないじゃん」と私が言うと

 

 

「スン」と貴夜が答えた。

 

 

「ふざけなくていいから」と私が言うと丁度信号が赤になり貴夜が、

 

 

「人が集中しているのにさ、制圧射撃よろしく話し掛けてこられるの困るんだけど」と言ってきた。

 

 

「いや……さ、一人で買いたいものが有るから、着いたら少しだけ別々に行動したくて……ね?」

 

 

「別に、それ提案するの着いてからでよくなかったか? ……まぁ、分かったよ」と貴夜が言い終わるとほぼ同時に信号が青になって、再び車は動き始めた。

 

 

 場所は移って、郊外にある大型商業施設に私達は居た。私の提案通り、最初に別々に行動して、後から一緒に動くことになった。そして私は一人で腕時計を見ていたが、思った以上に決められずいた。そんな私をみかねたのか店員が出てきて相談にのってくれた。貴夜とのお揃いの時計で、値段は1つ辺り最大20万円台で、と伝えると希望に近い時計が提案されたので、私はそれを買った。無論この代金は私の貯金からなのだが、その内の4割は両親から貰って使いどころに迷っていたお金を使った。

 

 

 一方その頃の貴夜はと言うと、事前にネットで注文していた物を受け取りに行っていた。とあるアクセサリーショップに入って、支払いなどを済ませて品物を受け取った。白みがかった十字架のネックレスが2つなのだが、嵌められていた宝石がそれぞれ違った。片方はサファイア、もう片方はブラックダイヤモンドがそれぞれ嵌まっている。そんなことを最初から見ていたナナにまだ秘密にするように言って、集合場所であるフードコートへと貴夜は向かった。

 

 

 集合場所のフードコートに先に着いていた紗奈は貴夜を待っていると、集合時間まで多少余裕のあるタイミングでフードコートに来た貴夜がこちらに気付いた。その後、紗奈達は雑貨などの必要な物を買って帰宅したのだった。

 

 

 

 

 

 二日後、私は春山家では無く原宿にいた。エマ達と現実で会うのだが、貴夜は私をここまで車で送ると逃げるように帰っていったので、少し不満を抱いていると、見覚えのある人影を見つけ誰なのか理解した。

 

 

「いたっ……こっち、こっちー」と叶、エマと積木が、気付くようにアピールして、無事エマ達と合流しショッピングに向かうのだった。そしてエマが着せ替え人形にされたり、積木のヤバさを紗奈が実感したりしたのは、また別のお話。

 

 

 一方その頃の貴夜は、シンカーの所に来ていた。

 

 

「お疲れ様です、シンカーさん」

 

 

「あぁ、ナキさんか……なにか用ですか?」

 

 

「えぇ……その前にこれ差し入れです」と和菓子の入った菓子折をシンカーに手渡した。

 

 

「ありがとうございます、別に気を使って貰わなくても構わないのに」

 

 

「いやこっちの方がほぼアポ無しで来てるんで気にされないでください」

 

 

「それで何を持ってこられたんです?」

 

 

「あぁ……少し見て貰いたいものがあって」

 

 

「立ち話もなんだから、ついてきて下さい」とシンカーに言われ、俺は応接室の様な所に通されて、椅子に腰を下ろした。

 

 

「見て貰いたいものはこれです」と言いながらバックからタブレットを取り出して、見せたいものを画面に表示させた。

 

 

「これってVR関連の論文かい?」

 

 

「はい、重村ラボのとある学生が書いた論文です。無論、ちゃんと許可をもらってます」

 

 

「まぁ、面白いと思う内容だけど……どうしてこれを?」

 

 

「俺はこの論文の言いたいことを理解している側の人間ですけど、他の人が見て分かるのかなと思って」

 

 

「けど、これ多分原文じゃないよね? どちらかと言うと、原稿の下書きに近いし」

 

 

「はい、最後の方のはまさしくそうですけど……問題は無さそうですか?」と俺が言うと、シンカーはその発言に含まれている意味を理解した。

 

 

「まぁ……余程難しい用語も無いし、こういう記事は見る人間の大体は分かって見ているはずだからね……けどこれだけの為に、ここに来たかい? だったら送付でも構わなかったのに」

 

 

「それ以外にも別件があるからに決まってますよ……なんと言えばいいかな……頼み事なんですけど……」

 

 

「可能な限り訊くが」

 

 

「シンカーさんと面識があるんだったら会いたいライターがいるんです……Mトゥデの…………ってライターなんですけど」

 

 

「本人に了承を得る必要があるが、ナキさんの頼みですし、前向きに検討してみますよ……丁度いいタイミングなんでこれを」とシンカーが自分の持ってきたタブレットとは別のタブレットを見せた。

 

 

「これは?」

 

 

「ナキさんの名刺ですよ、とりあえずここに情報を打ち込んでもらって」

 

 

「なんかすいません、色々お手数かけてしまって……」

 

 

「ナキさん学生だから持ってないだろう? SAOの時は、ナキさん達は名が知れていたから良かったが、現実世界は流石にね」

 

 

「本当に色々とありがとうございます」

 

 

「構わないよ。社会人として必要な物だしね」

 

 

「恩に着ます」

 

 

「まぁ……話が大分逸れてしまったが、そのライターの連絡先は教えておくから、後は自分で交渉してくれ」と言ってシンカーは、テーブルに出されたままの見本の名刺の裏に書いて、こちらにさしだしてきた。それを自分は受け取って、忘れていたことを思い出した。

 

 

「そう言えば親父……名取教授からシンカーさんに預かっていたものがあるんですけど……」と俺は持ってきていたタブレットをバックの中に仕舞って、その代わりにバックの中からUSBメモリーと親父の名刺を取り出した。

 

 

「これの中身は何なんです?」

 

 

「簡単に言ってしまえばデータ管理システムです……大学で使われている物を一般企業向けに調整した試作品で」と自分が言おうとしたことをシンカーは理解して、こう言った。

 

 

「試しに使ってみてくれ、と言うことか……」

 

 

「試作品と言いはしましたが、潰せる不具合は潰してますし……大企業や大学としか取引してなかったので、開発者の我が儘を通してもらったんで」

 

 

「面白そうだし、ナキさんが開発者らしいから使いたいのは山々なんだが……」

 

 

「そのシステム自体は放棄されてたのを、自分が手直ししたのを親父が世に出したんですけど、システム的な問題は無いですし、バックアップは標準装備です……性能依存しないようにしてもらえれば問題無く運用出来ますよ」

 

 

「だったら有り難く使わせてもらうよ」

 

 

「その代わり感想を教えてもらうますけどね」

 

 

「あぁそれぐらいお安いことさ、因みにナキさんこの後用事は?」

 

 

「この後、紗奈を迎えにいかなきゃならないんです」

 

 

「そうか……まぁ、急用じゃないし、また都合が合うときで良いから」

 

 

「すいません、こっちの都合に合わせてもらって……」

 

 

「構わないよ……お互いに良い収穫があっんだから」

 

 

「それでは、失礼します……今度良ければ食事でも」

 

 

「あぁ、ユリエールにも言っておくよ……ならまた、今度」

 

 

 シンカーの所を出て、駐車場に停めていた愛車に乗り込んだ。紗奈を迎えにいくにも時間に余裕があるので少し車を運転することにした。

 

 

 例えそうやって逃避しても、脳裏に浮かぶのは、SAOサービス開始日の現実世界で起きていたことだった。母親が俺のナーヴギアを外そうとした所を丁度帰宅した親父が止めたので、どうにか助かったのだが、この事を気に病んでか、帰還してからは母親との距離が遠くなっていた。ただ、紗奈の尽力によって少しずつそれは改善され始めている。名取家は有名な家系では無かった。元士族らしいのだが、今の名取家のようになったのは祖父の代からだ。祖父は戦後まもなく成功し、ある程度の財を築いた。ただ、それらを教育の為に使い学校を作り、東都工業大学の前身である所と統合され、今に至るらしい……身内だからと言って何か変わるわけでも無いので、気休め程度のものだ。ただ、親父は学内でもそれなりに高い力を握っているので、半ば横暴な事がまかり通っていた、と言っても滅多に親父もそんなことしないし権力争いを疎んでいるので、権力争いに対して不干渉と言う対価の上で現状と思えば妥当とも受け取れる。話を大分戻すが、そんな親父とは対照的に母親は高卒と言うこともあってか、負い目を感じているー特に母親によく似た自分に対してーと親父から聞かされていた。自分は母親に対して感謝の念しかない、恨みなんて抱かなかった。あの馬鹿姉は論外だが……そんなことを思いながら苦笑していると、スタンドに置いていた端末にナナの姿があった。

 

 

「パパ、どうかしたの?」

 

 

「少しな……大丈夫だから気にしなくて良いよ……でもナナ、ママの方にいたんじゃないのか?」

 

 

「ママからパパが、なにかいたらないことしてないか見てきてって言われたの」

 

 

「……ったく、俺を信用してんだかしてないんだか……まぁ、送ってすぐ脱兎のごとく逃げるように戻っていったから仕方無いか……ナナ、ママに今から言うことを伝えといて」

 

 

「はい、パパ……なんて伝えれば良いの?」

 

 

「電子世界の鼠を黒い天使は捕捉したって」

 

 

「分かったのパパ」そう言ってナナは紗奈の許へと向かった。

 

 

 そして、車のエンジンをかけると適当に走り始めたのだった。

 

 

 その頃紗奈達はと言うと、休憩を兼ねてお茶をしていた。鞄の中で、唸る携帯に気づいた私は

 

 

「ごめん、ちょっと失礼」と言って携帯の画面を見た。気を利かせてくれたのか、貴夜からの伝言をナナがテキストにして送ってくれていた。書かれていた内容の意味を理解した私は、思わず口角が上がっていた。

 

 

「紗奈さん、SAOの時にしてる笑みだよ」と積木に言われた。

 

 

「積木に言われるなんて一生の不覚だな-」

 

 

「ちょっと酷くない紗奈? ……一応私の可愛い妹なんだから……さ?」と叶にやんわりといなされた。そんなやりとりをしながら和気藹々、時間は過ぎていくのだった。

 




色々と伏線を張りまくり始めちゃってるけど、死銃さんの出番はまだ当分先案件
次回爆発オチなんてサイテ-と言う嘘予告

実はこの後ALOでサクヤと話したりするんだけど、紙幅の薄さで割愛…1つだけ言えるのは、もう紗奈達だけでアンダーワールドですらどうにか出来そうな気がす
後貴夜の姉は一体どんな人なんやら…(すっとぼけ)
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