吸血姫と天使と鋼鉄の城   作:奈多ナキル

25 / 30
アファシスとピンクの悪魔

 どんよりした梅雨が明け、日に日に暑さを増し始めた7月某日、サナ達はGGOの世界にいた。場所は、いつもの雪原ではなく、私達の拠点である〈SBCグロッケン〉とは敵対していた勢力の拠点跡地だ。何故ここに私達が来たのかと言うと、新アイテムがあると言う噂を聞き付けて、真偽を確かめる為だ。因みにナキが珍しく乗り気でしつこく言ってきたので、私は仕方無く折れたのだが、正味私も気になっていたのは事実だった。新アイテムの正式名称は長すぎて忘れてしまったが、通称アファシスと呼ばれるアイテムらしい。研究施設の跡らしき廃墟の中に、人間一人が入るサイズのポッドがあった。

 

 

 私達は周囲にモンスター及びプレイヤーの気配などが無いことを確認し、私とナキは、ポッドとの距離を詰めた。多少の安全が確認できたので警戒を緩め、ナキがポッドの横にあった機械を操作すると、ポッドの中身が見える状態になった。

 

 

「ハッキングする必要無かったな……ま、あったとしても問題は無いけど」とナキが言った。私は、ナキが言った事をシカトしてポッドの中身を見た。だが、中に入っていたのはあまりにも見覚えのあるものだった。否、見覚えしかなかった。赤い瞳に銀髪、淡い青の服……私達の愛娘であるナナにそっくりと言うより、ナナそのものだった。

 

 

「何で、ナナそっくりのアファシスが……待って……まずアファシスってプレイヤーと同じ大きさなの?」と私は驚きに捕らわれつつも思考を纏めようと言い出しっぺのナキに事情を問いただした。

 

 

「何も知らないさ……それは、中にいる本人に訊くべきだろ……こっちだって半信半疑だっての」とナキは、何処か心当たりがありそうな雰囲気だったが、ナキも知らないようだった。ただ、何か企んでいるのは確かだ。

 

 

「分かった……とりあえず、このアファシスを叩き起こして拷mo……ゲフンゲフン……聴取するしかないのね」と一瞬、イケナイモノが、ナチュラルに出ようとして、ナキの目が笑っていなかったのもあり、どうにか私は取り繕った。

 

 

「サナは、訳の判らんタイミングで変なのが出てくるよな……ホントに……」とナキが呆れながら機械を操作して、ポッドを開いた。

 

 

「何で、うんともすんとも言わないのこのアファシス」と私が言うと、

 

 

「当たり前だろ……中身が完全じゃないんだから」とナキが言った。ただ、完全に私が正気かナキに疑われていた。私が何をしたのか……心当たりしかなかった。最近ジメジメし過ぎて私は、色々溜まっていたいたのを、現実でナキにぶつけたり、PKで凄惨なアレやコレやをしでかしたりしていた。多分ナキも堪えていたんだろうが、溢れてしまっていたらしい。ただ、ナキに対して現実で自重する気は無い。

 

 

「なら、どうすれば良いの?」と私は、これ以上疑われるのを避けるためにナキに訊くと、

 

 

「どっちかが、マスター登録しなきゃならないみたいだ...俺はこれ以上は勘弁だからサナな」と勝手に決められて、私に有無を言わせてくれなかった。渋々、私はアファシスのマスターになったのだった。その甲斐あってかアファシスは無事起動した。

 

 

「ナナなの? ……中に入っているのは?」と私がアファシスに対して訊くと、

 

 

「そうなのママ」とアファシス……いやナナは答えた。

 

 

「なら、なんでなのかママとパパに答えて」と私が問うと、

 

 

「ナナもママとパパがいる世界に……ううん……ママとパパと一緒に居たかったの」とナナは言った。

 

 

「ナナ、確認するが……ハッキングはしてないよな?」とナキが訊くと、ナナは首を横に振ってこう言った。

 

 

「してないの。この世界(GGO)のデータを見てる時に、アファシス(これ)を見つけて、更にアクセス出来たの」

 

 

「まぁ……もしかしたらと思って、アファシス(それ)を取りに来てみたら、既にナナが中に入ってたから手間も省けたが……ナナ、はどういうアイテムなんだ?」とナキは、しれっと白状しやがった。ただ、ナナの為だったので、私は追求しないことにした。

 

 

「アファシスは、プレイヤーを補助するAIみたいなアイテムなの。マスターと登録されたプレイヤーのステータスの1割が、そのままアファシスのステータスになるの」とナナは説明してくれた。

 

 

「つまり、サナがマスターだからナナのステータスはサナの1割か……でも俺にしなくて正解だったな……使える武器の幅的な問題で」

 

 

「そうなの……パパには失礼なのは分かってるけど、ナナもママがマスターで嬉しかったの」とナナに言われたナキは笑いながらこう言った。

 

 

「事実、サナよりステータスは上だが、汎用的じゃなくある意味ピーキーだからな」

 

 

 その後、私達はナナからアファシスについて詳しく説明を聞いた。その際に、私達以外の事情を知らない人間がいる時は、原則的にナキの指示などは通らなくなり、私のこともマスター呼びになって、口調もアファシス本来のものになる、とナナが教えてくれた。

 

 

「ひとまず、ナナが持てる武器ってあったけ?」と説明を聞き終えてから私がナキに訊くと、

 

 

「サナはどうなのさ」と訊き返され

 

 

 た。

 

 

「私は、無いよ……ベレッタなんてナナに使わせれる訳ないじゃん」

 

 

「なら……俺の AKSー74U(クリンコフ)と、光剣か……」

 

 

「そうなるね」とナナに持たせる武器は決まった。ナキは、元々STRが高かったのでストレージ用量に余裕がある。それに全員が共通の口径弾を使用するので、弾薬管理をしっかり行えば、特に問題もなかった。STRが高いナキは本来、LSW(分隊支援火器)を持つのがベターだが、ストレージ用量に余裕が無い私の分の弾薬等を持つために、グローザを選んでいた。その代わりサブアームである光剣の他に、互いに使いたい拳銃を持っている。私は、9×19mmパラベラム弾を使用するイタリアのベレッタM93R……名称から判るように、三点バースト(トリガーを1度引くと3発の弾が射出される)のマシンピストルを使っている。だが、そのベレッタはストックを拡張し、マウントレールを2つ増設して、それぞれにレーザーサイトとフラッシュライトがマウントされている。照準器(サイト)はホロサイトだ。ただ、ストレージに今は眠っている。ナキの方は、ナナに光剣を持たせたので、サブアームがゴツい拳銃に戻っていた。その拳銃の名称は、AMTーオートマグⅡだ。使用する弾薬は、22WMR弾で、今では狩猟用カードリッチとしても使われている弾薬だ。ナキが言うには、使い方がガバメトと同じだが、小銃で使われる射缶方法を用いているので、出た当初こそ評価は高かったが、後に不具合が大量に見つかった為、現在では欠陥銃だが、現在でも根強い人気がある俗に言うロマン銃らしい。特徴的なロングバレルであるそれをナキは、更に拡張して、サプレッサーを着けて、下部に増設したマウントレールにはフラッシュライトを、照準器(サイト)は×1.5スコープが取り付けられていた。

 その為、女性っぽいアバターのナキが持つと元々ゴツい拳銃なのだが、更にゴツさが際立っていた。シュワルツネッガー等のハリウッドスターやエギル辺りのがたいの良い男性が持っていて、やっと違和感の無いレベルの物に仕上がっていた。カスタムから解る通り、ナキも私も大概なのは、事実だ。メインアームこそロシア(旧ソ連)の銃だが、サブアームの拳銃は、私のはイタリア、ナキはアメリカ、と個性とも言える感じだ。ナキに関して言えば、メインアームで使っているグローザは、本来7.62mm口径か、9mm口径を使用する武器だ。5.45mm口径は、計画段階で、没になっていたらしい。ナキが言うには、同じブルバップ式ARであるステアーAUGよりも、扱いづらく、げでは倉庫に眠っていれば良い方だと。だが、そのお蔭で色々と楽なので、問題は無い……と私は逸れまくった思考をどうにか戻して、ナキ達とグロッケンに戻った。

 

 

 グロッケンに入る前、ナキがナナに念のために、とポンチョを着せた。勿論、悪名が知られている私達もポンチョを着ている。

 

 

 グロッケンに入ると、そのままレンタルルームに入った。余談だが、私達は、基本的に他のプレイヤーと余り関わらないのもあって、私達が『雪原の悪魔』だとバレてない……ただ、未だにナンパみたいなものや、謎のファンはいるが、基本シカトしている。

 

 

 レンタルルームに入ってからは、ナキがAKSー74Uをナナが使いやすいように弄って、私達はログアウトした。

 

 

 

 

 

 翌日も、私達はGGOにいた。ただ、いつものように雪原フィールドではなく、砂漠フィールドだった。ここに悪質なPKerがいるらしく、私達は気分転換も兼ねて倒しに来たのだ。

 

 

 私達の装備が完全に場違いなので、全員砂漠迷彩柄のポンチョを着て、周囲に湧く敵mobを処理しながら、その時を今か今かと待っていると、近くで爆発音が鳴り、その後プレイヤーが死ぬ音がした。

 

 

「今のって……」と私が音がした方向を見ながら言った。

 

 

「多分、当たりなんだろうな……囮は俺がやるから、ナナは周囲を警戒、サナは対象の拘束」とナキが指示を出してきたので私は、

 

 

「分かった」と頷くと、ナキはポンチョを外して、駆け出した。

 

 

 ナキが、罠が張ってあるであろう位置にグレネード弾頭を投げ入れて、罠を起動させた。私はナキの向かい側から回り込むようにして、裏取りを行った。すると、ナキのいる方から光線銃の銃声が鳴り、ナキのHPが若干ではあるが、少しずつ減り始めた。だが、私は既にナキを撃っているプレイヤーの背後をとっているので、ナイフを抜いて組み付いて、抵抗してくるそのプレイヤーの首筋にナイフを当てながら、

 

 

「チェックメイト……とりあえず引き金離して、銃を離すか、銃口を上に向けて貰えるかな……ピンクの悪魔さん?」と私が言うと、ピンクの悪魔は銃口を上に向けて、抵抗を止めた。

 

 

「まぁ、そんなに怖がらなくてもね……別に倒すつもりは無いし、こんなところでPKしてるプレイヤーの面を拝みに来ただけだからな」とナキが声色を女寄りにして、片手だけで構えているAMTオートマグⅡの銃口を、ピンクの悪魔に向けながら言った。

 

 

「逃げないって約束してくれるんだったら、私は拘束しないけど……この条件にのるんだったら手に持ってる銃を地面に落として」と私が言うと、ピンクの悪魔は、素直に両手に持っていた銃を地面に落とした。それを確認すると、私はナイフを戻し、ナキもホルスターへと戻した。

 

 

「それで、貴女のお名前は?」と私が訊くと、ピンクの悪魔は

 

 

「レン」と答えた。体つきからも女性なのは確かなので私は、

 

 

「レンちゃんね……私はサナ」と自己紹介をすると、ナキが

 

 

「俺は、ナキ……『雪原の悪魔』って言えば解るかな?」と口調だけいつも通りで言った。レンがコクリと頷くと、ナキはこう続けた。

 

 

「見た目こそ、女っぽいが男だ……一応言っておく」

 

 

「けどピンクの悪魔がこんなに可愛いプレイヤーだと思わなかった……ねぇ、私達とフレンド登録しない?」と私がレンに言うと、ナキが

 

 

「別に、サナだけで良いだろ……後、どの口がそんなことほざいているんだか……」と言った。

 

 

「なら、私とだけフレンド登録しない?」と再度レンに訊くと、レンは頷いた。レンとフレンドになった後、私が

 

 

「数少ない女性プレイヤー同士仲良くしたいってのもあったから、今日はもうかったかな」と言うと、

 

 

「それだけの為に、ここまで来たんですか?」とレンに訊かれたので、

 

 

「うん、そうだよ。後、なんなら誘ってくれれば私達も手伝うから……もちろん、今日の事はここにいる人間以外、誰にも言わないから安心して」と私はあっけらかんと答えた。

 

 

「サナ、そろそろ戻らないと、他のプレイヤー達が来る……ナナもそう言ってるから」とナキに言われ、私達はグロッケンへと戻った。

 

 

 道中、レンを倒そうとしていたプレイヤーに出会ったが、居なかったと嘘の情報を伝えたのは、同業者(PKer)としての礼儀だ(とサナが勝手に思っているだけ)。

 




次回身バレと言う嘘予告
次回も更新が1ヶ月になるかも…諸事情によるんでご容赦を
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。