2024年7月31日
私達は、とある人物を叶と仕事の話をする時に利用しているレストランに呼びつけていた。
「よっ、アルゴ……じゃなかったな帆坂朋さんよ」とナキが牽制と言わんばかりの一言を投げ掛けた。
「話のペースをそっちに握られるとやりにくいナ」
「ナキは置いといてアルゴさん取り敢えず座って」
「ならお言葉に甘えテ」
「色々聞きたいことがあるだろうけど、取り敢えず、だ」そう言ってナキは座って名刺をアルゴの前に差し出した。
「オレっちもだよナ」と言ってアルゴも名刺をナキの前に差し出した。
「ナっ……名取ってあの名取教授のカッ?」
「ああ、ついでに言うなら今Mトゥデで使っているデータ管理システムを作った人間だよ」と貴夜が言い終わるのを待って私は自己紹介をした。
「久し振りアルゴさん…………私の本名は有栖川紗奈だよ……今は名字は名取だけどね」
「久し振り、サナっち……それと結婚おめでとうお二人さん」とアルゴは言ってこう続けた。
「なぁ、オレっちが何でここに呼ばれたのかの理由を聞いてもいいカ?」
「あっちでそれなりに貸しがあったから返そうと思ってな」
「そう言う理由なのカ……取り敢えず単刀直入に言うゾ?」
「あぁ……後オレは呼び捨てで構わないよ」
「分かったヨ、二人共ユニークスキルを持ってたダロ?」そう言われてナキが少し固まったので、私が返答した。
「アルゴさんの前では使った記憶無いけど……」
「正直に言うヨ、実は1回だけ二人の後を尾行したんだヨ……ハンディングしながらだけどナ……そしたら二人がレッドプレイヤーと戦闘し出して、違和感を覚えたんダヨ」
「ナキがリピール出来なかったって事は相当隠蔽スキル高かったのか……脇が私も甘かったなぁ……」
「まぁ、言ったらいけないのを本能で感じてナ……バトルヒーリングスキルにしてはサナっちの回復量はおかしかったシ……ナキに対してふるわれた攻撃は、当たるどころか誰も居ない方向にふるわれたからナ」
「ま、それだけで判断出来たアルゴも流石は情報屋としての眼だな」と貴夜が硬直からとけて言った。
「誉められてもオイラからは何も出ないゾ?」
「解ってるさ……Mトゥデのライターとしてのアルゴは何を書く気なのかは知りたいけどな」
「情報料は貸しにするけド教えるヨ。ザ・シードのハード関連だナ」
「成る程ね……」とナキが言った。ここまで、私は殆ど話にはいれなかったので、話題の転換も兼ねて言った。
「アルゴさん好きなの頼んで良いから、会計はナキ持ちだから遠慮せずに、ね?」
「そうさしてもらうヨ」そう言ってアルゴはスイーツと飲み物を頼んだ。ここのレストランは基本的に店員が入って来るときはノックをしてから入って来るので、話を中断できるし、もし聞かれたとしても店員には守秘義務があるので気にする必要はない。ここの利用者には、政界や経済界の大物等がいるのである意味当然と言える。
私達もそれぞれ飲み物を頼んだが、私は耐えられずモンブランを頼んだ。すると貴夜から
「太るぞ」と言われた。
そのやり取りを見ていたアルゴから
「あの時と同じやり取りだナ」と言われた。
「お似合いだな、とは言わないのか?」
「元からだらかナ、否定はしないケド」
「ただ……現実に戻ってこれたって感覚が薄いんだよな」
「どういうことなんダ、ナキっち」
「サナが俺の隣にいるのもあるけど、あっちにいようが考えることが変わってないからな……俺は」と苦笑しながらナキが言った。
「説明になってないゾ」
「VR技術について考えてしまうのは学者の端くれでも同じってことだよ……」
「そう言えば、ナキっちは重村ラボ所属だったナ」
「一応私もだけどね」と私が言うと
「だから、サナは変なところで対抗心燃やすなよ……」
「幸せそうなんだナ……二人共」とアルゴが生暖かい目でこっちを見てきたが、私はスルーした。貴夜は少し気まずそうだったが、私は気にせずにアルゴに
「アルゴさんは帰還者学校に通っているの?」と訊いた。
「いや、地元の学校に通ってル」
「距離か……」と貴夜がポツリと言うと
「ナキっちってエスパーか何かカ?」
「化け物なんじゃない?」と私はアルゴに対して冗談混じりに答えた。当の本人は心外そうな顔をしていたが、誰も気に止めなかった。
「……」と貴夜が何か言いたそうにしていた。私は貴夜が結構機嫌を損ねているのを理解したので、少しだけ優しく接するのだった。