12月某日
私達は重村教授に呼ばれて、重村教授の部屋に来ていた。
「で、重村センセ自分らを呼び付けたのは、何用なんです?」とナキはうっすらと笑みを浮かべながら訊いた。
「君たちの力を貸して欲しい」と重村教授はすんなりと喋った。
「名取教授〈親父〉に頼んだ方が早くないですか?」とナキの内心は協力する気がないことを私はその発言で察した。
「頭を下げに行ったさ、しかし貴夜君に任せると言われて、この場を用意したんだ」
「内容も分からずに言われてもこっちは承認しかねます」と私がばっさりと言った。
「これを見てくれ」と言われ、テーブルの上に機密と判が押された資料を渡された。貴夜はさっと目を通して、考えている様子だった。私は、ある程度読み込んで行ったのだが、内容に思わず絶句した。
「オーディナルスケール…それに伴う計画をOS計画と便宜上私たちは呼んでいる、表向きはARでのMMORPGだ」と重村教授は簡単に説明した、表向きの内容を。
中身に書かれていたのは、本当の目的だった、それに乗じたとある死者を元に作られたAIにその死者のデータを回収させて、その死者を甦らせると言う計画だった。
「なんで、こんなものを俺達に見せたんだ?」と貴夜は最早呆れている様子だった。
「君たちにはそのAIのベースを作ってもらいたいんだ…その端末の中にも既にいるんだろ?」と重村教授には私達がAIを持っていることには気づいていた様子だった。
「…それで、条件はなんなんです?」と貴夜は問うと
「いまさっきの事以外特にない」
「はぁ!?」と貴夜は素っ頓狂に言った。
「どうした、意外だったかな?」
「重村教授個人で考えれば妥当だと私は思いますけど、この変人だらけの場所では、まともな回答とは思われる事はないと思いますよ」と私は皮肉を混じらせながら言った。
「……とりあえず、先払いで貰いますからね…で、条件はコレで」と、貴夜はメモ帳から紙を1枚剥がして、何かを書いてテーブルに置いた。
それを一瞥した重村教授はこう返してきた。
「珍しいな君が現物で要求するなんて」
その発言に対して私は貴夜を即座に問い詰めたかったが、流石に自重した。
「親父と一緒にしないで下さい、地位とかにそこまでの欲求は無いですけど、親父のようにふわっとした要求なんてする訳ありませんから…それに俺達は堕落してる訳では無いので」
「それは失礼した…適当なものを見繕っておこう、君たちがそれを受け取ってから手をつけて貰って構わない…悪くない条件だろう?」と表向きは重村教授が不利にしかならない口ぶりだが、実際は協力せざるおえない状態だった。駆け引きと言う点では貴夜に任せて正解だと私は思っている。 私は貴夜よりも目立った功績らしい功績を立てられてないし、バイトという名のアングラな仕事とゲーム、学生としての時間の隙間を縫っては、近郊の大きな病院などで私の夢を叶える為の事をしている…それだって、名取教授では無く、重村教授の言付けがあってできている事だ。
「分かりました、ではこれで俺達は失礼します…紗奈、行くよ」
「あ、うん、重村教授では失礼します」そう言って私達は重村教授の部屋から出た。
紗奈達が去った後、重村教授はすぐ隣の部屋に繋がる扉を開けて、壁に持たれかけながら聞いていたとある少年に、こう声をかけた。
「これで、新たな協力者を確保…そしてユナの足がかりがさらに増えたわけだが」
「どうしてあの2人なんですか」
「エイジ君、それは愚問だろう…」
「肝心な時にいなかったアイツらの何がいいですか…っ!」とエイジは重村教授の表情を見て言葉を詰まらせた
「君の言うことは、もっともだが、私も清も濁を飲み込んだ」
「わかりました…では、失礼します」
「ねぇ、貴夜…良いの本当に?」
「知らないさ…エマとまた決着つけられるなら手段は選ばないさ」
「……分かった、貴夜に任せる…その代わり私が何しても恨まないでね?」
「分かってる…だから、俺のことも恨むなよ」
「大丈夫、恨んでもその代償は、お察しでしょ?」と私は含みを含めまくった笑みで貴夜に言った。
「気を付けはする」
「前向き受け取っておくわ」
「お手柔らかに頼む」
そうやって私達は、意味の無い会話をしながらキャンパスを後にするのだった。
しかし、この後私達が決別することになるなんて、まだ知る由もなかったのだった。
to be continued
お久しぶりな更新です