「サナ、1層に戻るぞ……鬼退治としゃれこもうじゃないか」と狂気混じりの笑みで、そうナキは言ってきた。
ナキとはまだ過ごした時間こそ少ないが、密度は高い私だったから理解出来たし、ナキの妻として過ごしているからこその信頼だ。ナキは、理性という堅牢な檻に閉じ込められている
1層のとある森に到着し、ナキはサナに対して鬼退治と言ったが少し皮肉が過ぎたかなと思っていたが、本人は気にするそぶりは見せなかった。ただ道中サナに対して思うことがあった。心理的に追い詰められると何をしでかしてくれるか解らないが、冷静であれば最善の選択を選べるし、優しいのだが少し否結構重い……無論物理的では無くだが……後はメンヘラ染みたと言ううか、ヤンデレ染みた行動だろうか……其処を可愛らしいと思ってしまう自分も大概なのだが、殆どサナの笑顔でいつも有耶無耶にされている。
「ねぇ、ナキ……あれって……」とサナが指さした方向には
「ちっ……ヴラド3世かよ……何でルーマニアの大英雄さんまで
そんなやり取りをしていると辺りに霧がかかり始めて、声が聞こえた。
「我ニ仇ナス雑種ハ、何処ダ……我ヲ滅サントス愚カ者は何処ダ」
「いつも通りに俺が壁、サナは牽制と遊撃な」と伝えると同時に戦闘態勢に入った。
「危なかったらスイッチしてよね? 死んだら呪うから」とサナから怖いことを言われ「はいはい、解ってるよ……まだこれが喰種なら再殺で済んだろうに……」と違うゲームの設定を言うと、敵が突っ込んできた。すかさず挑発を入れると同時に敵ごと盾で薙ぎ払うと、敵は自分に喰い付かんと肉薄してきたので、タイミングを合わせながら攻撃をいれて少しずつ敵のHPを減らしていった。
(……ったくサナに聖水渡しときゃ良かった……最悪飲んで咬まれても血を毒にするのも無難だが……)と思いつつも自分の残存HPは5割まで減っており、まだ敵は7割残っていた。すると、敵の背に銀色のピックが刺さったので敵に隙が生じ、自分は生まれた隙を突くようにソードスキルを叩き込んだ。
「サナ、スイッチっ」
「了解っ」とサナが応えながら敵に追撃を浴びせてくれたので、その間に回復し再度挑発して此方に注意を向けさせた。
だが、敵はそれをものともせずにサナに攻撃を続けた。どうにか〈守護・懲罰天使〉のスキルを使いサナの被ダメを肩代わりしていたが、完全に肩代わりできなかったダメが積もり
すると敵が「忌マワシイ小娘ヨ……我ガ技ノ前デ消エルガヨイ」と言い槍状に変化させた杭を高く掲げ心臓めがけて突き刺さんとしていた。
すると自分は、反射的に叫んだ。
「サナはっ絶対にっ……俺が死なせないっ……殺させないっ」
すると、体が軽く感じるようになり本来自分のAGIでは出せないスピードで敵の首を刈り取らんと言わんばかりに肉薄し、四連撃ソードスキルであるバーチカルスクエアを放ってサナと敵の間に入り込んだ。回復クリスタルをポーチから取り出して後ろを一瞥せずに投げつけると同時に「ヒールっ」と叫び、視界の隅でサナのHPが回復していくのを確認するのと、敵をどう対処するかを並行して処理していた。
するとサナが「あの敵の血を回収したい……ナキ出来れば硬直させて」と言ってきた。
「分かった……サナも出来るだけ敵の死角からで頼む」そう伝えると俺はヘイト操作による擬似的硬直を敵に与えた。
ナキのお陰でHPも全快して、立て直せたが厳しいなと思ったのだがナキの姿を見て驚くしかなかった。背中から2対4本の翼-天使が持つとされる翼そのもの-が生え、何故か後頭部に隠すように輪が1つあった。ただ、どちらとも半透明で見るからに当たり判定はないのだろう。そんなことを考えつつも、死角となる位置から円輪刀を投げて当たるのを認識すると同時に、走り出して戻ってくる円輪刀を迎えに行き、また敵の死角に入って背後から敵の首筋にに喰らい付いた。敵の肉ごと血を飲み込みながら少し離れて距離を置き、レイピアを抜くと慣れた動作で《リニア―》を敵に叩き込み全て頭部へ当てた。敵のHPが大きく減り、残り4割弱になったが、その代償は大きくレイピアが粉々に砕け散った。だが、破壊パーティクルが発する光に敵が怯むと、その隙をナキの4連撃ソードスキル《バーチカルスクエア》によって敵は消し炭となった。
するとドロップしたアイテムの中に
私がナキの近くへ行こうとすると少しふらついた。
「サナ、大丈夫か?」ナキが近寄って来て手を差し出してきながら言った。
「うん、気にしないで……大丈夫だから」と虚勢を張ったが、意識が軽く遠のくのは耐えは出来るので「とりあえずさ、帰ろ?」とナキに言うと
「これでクエストクリアみたいだな……転移クリスタル使うか……あと装備は直しといて」と言われ、「分かった」と私は返事をした。
次回 エマ敗す というウソ予告