「はい、紗奈。これ、クリスマスプレゼントっ」と言われ叶からだいぶ大きい箱を渡されたが、 唐突すぎるので、私は少し情報を脳内で整理した。
今日は2024年12月25日ー言わずもがなクリスマスーだ。何時ものように叶が病室に来ていた。
あの日以降……最低でも週1ペースで来ていて、叶の愚痴を聞いたりしていたのだが、今日に関しては、いきなり大きな箱を渡され私はどうにも出来なかった。
「どうして私にプレゼントを?」
「だって、紗奈がさ、VR ゲームやりたいって言ったじゃん……大丈夫、病院に許可はとってるから」
「でも高いでしょ、これ……」
「あ、安心してアミュスフィア自体はご両親からだし、ALOは名取教授からで、私は単に配達人なだけだし……」
最近変化したことと言えば、貴夜の父親である名取教授と話すことも多くなり、色々教わっていたりしたことや、周りより体重の戻りが悪く、体調が安定してないので様子見も兼ねて、退院が長引いたと言うのが分かったぐらいだ。それ以外は、殆ど変わることがなかった。未だに私は車椅子で移動することが多く、松葉杖へ移行する為のリハビリも相当辛いものだし、ナキが目を覚ますことだって無かった。
「……奈……紗奈? ……聞いてる?」
「ご……ごめん叶は……ボーッとしてた」
「どうせ貴夜君の事を考えてたんでしょ?」
「…………」
「図星か……貴夜君の事も含めて仮想課も公安の一部も動いてるから安心して」
「私さ……貴夜に大分精神的に依存してたみたいでさ……辛いよ……」
「見ててそれは、察したよ。名取教授も気付いてたみたいだったし……」
「どう言うこと?」
「あの愚息が、そこまで信頼されてて、愛されているってことが良く分かったって言ってたから……ぶっちゃけると、紗奈がそんな様子だから、入院延長されてるんだから……それ以外の理由でそう簡単に決めれることじゃないんだし」
どうも私は無意識下で、それを外へと出していたらしく、精神的にかなりに弱っていると言う客観的でもあり、主観的な意見に医師達も辿り着いたらしい。狩人行為に関してはカウンセリングの必要無しと言う判断になったらしい。まぁ……精神鑑定以前に私は精神衰弱状態なので、まず考えられなかったらしい。後々両親から聞いたのだが、幼少期から既にその片鱗を見せていたらしく、元々小学校から一貫校で、女子校ー俗に言うお嬢様学校ーに中学まで在籍していたが、高校進学の際に私の我が儘で共学の高校に行くのを許可してくれたのも、引きこもり気味な状態や精神的な危うさが改善するんじゃないか、と期待を込めてだったらしい。
「ま、貴夜君は変に掴み所と言うか、何処か芯がなさそうな人だったからね……モテることは無かったけど、教師陣からはそこそこ好評だったらしいよ……少し事務的な面もあったけど対人能力の高さは詐欺師とトントンだもん」と叶は言いながらも、何処か疲れている表情だった。
「大丈夫、叶?」
「え? ……いやうん、面倒事がこんがらがって、手が付けられなくてね」
「きな臭い事案ってことが良く分かったから、変に首は突っ込まないよ?」
「公安でも強硬派がね……エマちゃん達の処遇について不満を募らせてるの」
「放置しかないんじゃないの?」
「そうよね」
「……けど叶ありがと……このプレゼント」
「私はただ渡しただけ、だけどね」
「少しだけ気が楽になったのは事実だもん」
「なら良かった……ってもうこんな時間……紗奈また今度ね
「またね、叶」
叶が帰ってプレゼントの包装だけ開けて適当な場所に置くと、親に持ってきてもらっていた愛用のノートPCの電源をいれて、ブラウザを立ち上げた。
「取り敢えずALOについて調べてみよっと……」
ALOー正式名称はアルヴヘルムオンラインと言うらしいーの運営はレクトプログラムで、SAO事件から約一年後に発売されたタイトル。様々な妖精族から自分の種族を選べて、どスキル制。本筋のクエストとなるグランドクエストが存在し、その舞台は央都アルン。グランドクエストの難易度は無理ゲーの域。そして完成度はSAOと同等レベル、と私は調べて分かった結果を脳内でまとめた。
「ある意味考え物だなぁー...QoL云々って言われると質は良いとは思うけど……やっぱりするなら貴夜とだなぁ……」と私はポツリと呟くと、己の感情が、ぶり返した。涙と怒り以前に、溢れてきた感情は愛しさと虚しさだった。貴夜が居ない、と言うただそれだけで、心の喪失感は物凄いものだった。だって貴夜が戻ってくる、という保証は無いのだから…………。
後ろ向きな感情に陥りながらも、私は眠りについた。
変な夢を見た。SAOで過ごした約二年間を……ナキと再会したあの日、狩人として戦った日々、セムブルグで過ごした甘い日常、そして私の隣にはナキがいた。カッコいいナキ、女々しいナキ、優しくハグしてくれたナキ……その全てに私は惚れていた。その気持ちにわざと気づかないフリをして、焦らしてきたナキの笑顔ですらだ。そして夢の中で、私はナキに言った。
「私の道化師……いや天使さん」と優しく、ただ粘着的な言い方で……
そして、気付けば何故か景色が変わった。巨大な樹の内部にあるSFチックな設備とナメクジのような何か……そして水槽のようなものに浮かぶ脳がい……それらの前に立ちはだかる大量の敵とそれに立ち向かう妖精の戦士達の姿が見えた。そして捕らわれている貴夜達の姿が顕れて、私は右手を差し出そうとして、夢から醒めた。
「何で私……泣いてるんだろう……よく思い出せないけど……巨大な樹と妖精……うっ……頭がっ……」
頭に痛みが走ったが、その2つのワードだけが強く残った。
私は既に鍵を握っていたのだから……
このあと紗奈達の高校生時代のお話をあげる予定
本筋のストーリーの次回予告は
ナキ陥落と言う嘘予告