古代に飛んだ青年は「始まりと終わりを見守る者」となる 作:小人熊
自己紹介を終えたのだが、予想通り少女は八意永琳だった。ただ想定していた以上に古代に飛んで来てしまったようだ。
「ユウって言うのね。というか名前を思い出せないってどういうこと?記憶喪失なの?」
「記憶喪失とは少し違うだろうね。自分の名前だけが思い出せなくって他のこと…家族のこととか友人のこととか、自分が何をしていたのかは普通に分かるんだから」
永琳はかなり驚いているようだ。まぁ、自分もどういうことだよ、って思ったけど。しかも、本名は思い出せないのに自分で付けたユーザーネームや友人が付けたあだ名は思い出せるという不完全感。
「えっと、ユウってどう書くの?」
「…まぁ、本来はユウもあだ名からさらに取って言ってる名前だから違うんだけど、熊の音読みから取って"ユウ"だからね」
「…そう。わかったわ。もう1個質問いいかしら?」
「何?」
「私が最初に言った名前…貴方、聞き取れたの?」
…さて、どう答えたものか。そこを指摘されるとは思わなかったから。というか他に聞くべきことあるだろ普通。
「…一応ね。でも、発音しろって言われても出来ないよ?」
「聞き取れたのに発音出来ない?この街出身じゃないから発音出来ないのは当然としても聞き取れるのはおかしいわね。とにかく、貴方行く宛てはあるの?」
「牢屋に入れといて行く宛てはあるのかとは妙なことを言うね」
「すぐに出られるからそう聞いているのよ」
そう言って永琳は鍵を取り出し、牢屋の扉を開けた。
「いいのかい?そんなことして」
「こう見えて私はそれなりに偉いからね。それに他の人達も大丈夫だろうと判断したしね」
それなら大丈夫なのだろう。その他の人達には何か裏があるだろうけど、ずっと牢屋には居たくないので外に出る。
「それでユウはどうするの?」
再度永琳は同じことを聞いてくる。正直どうすると言われてもこの世界に突然飛ばされたんだから目的があるわけが無い。せいぜい原作まで生きるくらいだが、蓬莱の薬でも飲むしかないだろうし……。
「特にやることないからね。1人で気ままに生きるかなぁとは思ったけど」
「そう。それなら…」
永琳は間を置いて、こう聞いて来た。
「この街に住まない?」
永琳に提案され、自分はその提案を受けた。外で野宿なんてしていたら妖怪か動物に殺されるので断るわけにもいかなかったからだけど。んで、自分に与えられた家は小さな小屋である。
この街の大半はアパートやマンションが基本的な住居だが、防壁に近いほど建物が少ない。役所の人達はアパートを推して来たが、こっちにした。個人的に一軒家の方が落ち着くからというのもある。生活に利便性を求めない派だし。閑話休題。
この街では仕事は兵士か自営業かくらいしかない。そのため、決まった仕事をしていない者も結構居るそう。自分が兵職をしたら、いろいろ大変なことになりそうなので家で内職なりなんなりして生活するつもりだったのだが、
「ユウー?居るー?」
この街で生活しだしてからそろそろ3週間経つ頃だというのに、永琳は2〜3日に1回くらい家に来るのである。幾許かの食品を持って。彼女はこの街の中心街に住んでいるので片道数十分かかるというのに。(この街は半径5キロほどの円形である)
「はーい。そんな頻繁に来なくても大丈夫だって言ってるのに。そもそも尋ねるのは男の方が普通じゃないのか?」
「別にいいじゃない。偉いといっても基本暇だし」
「いや、そういう問題じゃなくて」
この少女は結構呑気で自身が偉いことを分かっていながら、ここまで1人で来るのである。女の子が男の家を1人で尋ねるのは傍から見れば危険な感じしかしないので辞めるべきだろう?と言っても聞かないだろうが。
「んで、今日は何?」
とりあえず、訪問の理由を聞くことにしよう。ということで聞くと、
「今日は貴方に提案があって来たのよ」
…彼女は提案が好きなのか。今月2回目の提案をしてきた。
「たまにでいいから、私の助手をしない?」
ホントこの少女は突発的なことを言う……。
お気に入り6件ありがとうございます。今後は最低月2話投稿の予定で進めて行くつもりですので、期待せずお待ちください。