第三章 親潮編
私の名前は親潮。陽炎型駆逐艦の四番艦。陽炎型の中では姉のほうであり、よく戦っていると言われる事がある私ですが、私の力はまだまだ未熟です。
先日も、陽炎姉さん、不知火姉さんと一緒に出撃した時もそうです。私が苦戦している間に二人はあっさりと敵を轟沈させました。敵を轟沈させた後にハイタッチを決めている二人はとても眩しく、遠い存在のように見えました。
ですから、私はもっと強くならないといけないんです。それが、先の大戦で陽炎姉さんと黒潮さんを守れなかった私がしなければいけないことなんです。
ですので、私は今も一人で訓練場で射撃訓練をしています。少しでも命中精度を上げなければ。少しでも敵の弱点を貫けるようにしなくては……少しでも……足を引っ張らないようにしなければ。
「……おーい、親潮。まだ訓練しとるんか?」
声をかけられ振り向くと、そこには黒潮さんが立っていました。
「親潮、あんたウチが昼に通った時にもおったよな? まさか、ずっと訓練しとったんか?」
「あ、はい。そうですけど……どうかしましたか?」
「……いやいや。今何時やと思っとるんや。自分、時計見てみいや」
黒潮さんに言われて時計を見てみると……けっこう時間が経ってましたね。ですが、今日は非番なので問題はありません。
「そうですね、けっこう経ってますね」
「いや、けっこう経ってますね。ちゃうで、親潮、少しは休憩をしたらどうや? このままじゃ体持たへんで」
「大丈夫です。これぐらいでどうにかなる親潮では……あれ?」
話している最中に不意に足の力が抜けて座り込んでしまいました。あれ、どうしたんでしょうか? さっきまでなんともなかったはずなのに。
「アホゥ。気づいてなかっただけで、もうフラフラやん。ほれ、肩貸したるから休憩室まで行くで。そこでゆっくり休むんや」
そう言うと黒潮さんは有無を言わさず私の肩に手を回して立ち上がらせると、そのまま休憩室まで運ばれていきます。
「すみません、黒潮さん。この程度の訓練で体がついていかなるなるなんて……」
「そんなら次は気ぃつけや。まったく、親潮は加減を知らんのはアカンで。体が壊れてしまうわ」
黒潮さんが呆れた感じで言ってくるのを私は黙って聞くしかできなかった。こんなのじゃダメです。こんな、黒潮さんの手を煩わせるようなことをしてはいけないんです。私がもっと強ければあの時、陽炎姉さんも、黒潮さんも、沈まずに済んだんです。だから、私は頑張らないと……。