入渠が終わった後、私は初風と雪風に事情を説明し、謝罪した後、後日改めてケーキの買い直しと、黒潮要望のお饅頭を買ってきました。黒潮は買ってきたお饅頭を陽炎型の皆で分け合って楽しそうにしてくれました。
そしてそんなこんながあってから数日後……。私は親潮を相手に黒潮の取り合いをしています。
「黒潮は今日は私と一緒に食事するんです!」
「いいえ、黒潮さんは私と食事をするんです!」
くっ、普段黒潮と一緒に食事してるくせに! 妹の我儘を聞いてくれないなんて。
「……なぁ二人とも、一緒に食べたらええんや……」
「黒潮「さん」は黙っていてください!」
これは大事なことです。今、押し切れば今後も優位に立てます。逆に今負ければ今後も優位をとれない可能性が高い。向こうもそれをわかっているんでしょう、一歩も譲らない姿勢ですね。ならばこちらも……。
「公共の場で騒ぐなっていっつも言っているでしょうが!」
突然の頭への衝撃に私も親潮も頭を抱えて蹲りました。痛みを堪えて顔を上げると、そこには眉間に皺を寄せた陽炎の姿がありました。
「痛いです陽炎。横暴です」
「イタタ……陽炎姉さん、何を……」
「横暴もくそもないわよ。騒がしいと思ってきてみたら黒潮と一緒に食事するって誘うだけで大騒ぎしちゃって。何やってるのよあんた達は」
親潮と共に苦情を言いますが、陽炎の剣幕に思わず体が強張ります。あ、これはダメね。
「まったく……喧嘩両成敗よ。私が黒潮と一緒に食事するから」
「へ? いやちょっとま……ちょちょちょぉ」
そう言って黒潮の左腕をとって強引に移動しようとする陽炎。それを私と親潮は咄嗟に黒潮の右腕を取って阻止します。
「陽炎姉さん。それは流石にダメです」
「そうです、姉の横暴に反対します」
「じゃぁ、あんたら仲良く食事しなさいよ。いちいちこんな事で騒がれたら他の人に迷惑なのよ」
その言葉に私と親潮は互いを見合わせました。
(浜風、まずはこの場はこれで収めよう)
(賛成です。後の事は食事が終わってからで)
互いの意思を確認した私達は黒潮から手を放し、陽炎に頭を下げました。
「一緒に食事をするので黒潮「さん」を連れて行かないでください」
「最初からそうしてなさいよ……まったく」
「はぁ……やっと解放されたで……てかどうしたんや二人とも? 親潮はまぁまだしも、浜風までいきなりウチと一緒に食事したいて言い出して……」
「黒潮が言ったんじゃないですか。私はもうちょっと我儘になって良いんだって。だから我儘になってるんです」
「はぁ……。それは確かに言うたけど、それがどうしてウチと一緒に食事することになるんや?」
くっ、この間の出来事があった上でそんなことを言いますか。鈍感にも程がありますよ黒潮。
「もうその辺の理由を聞くのは後にしなさい。どうせ長くなるでしょうし、さっさとお昼にするわよ」
そう言うと陽炎はさっさと四人用のテーブルに座りました。しかもさり気なく黒潮を自分の隣に座らせています。……悔しいですが今日は我慢しましょう。