気づいたとき、秋雲はベットの上で寝ていた。泣き疲れて寝てしまっていたんだろうなぁ……どれだけ寝たんだろう。時計なんか全然見てなかったから時間がわからないや。
ゆっくりと体を起こして部屋の中を見渡す。すると、机の上にお皿が置いていて、その上におにぎりと水筒が置かれているのが見えた。その下には紙が挟まれてる。体を起こして紙をとってみると、そこには「起きたら取りあえずこれ食べとき」と書かれているのが見えた。黒潮が用意してくれたのかな?
「……頂きます」
おにぎりを口にすると、美味しかった。冷めていたし、塩だけで味付けされてる単純なおにぎり。でも、秋雲にはとても……とても美味しかった。
おにぎりを食べ終え、水筒の中のお茶を飲みほした秋雲はまず身だしなみを確認して、それから部屋を出て、まずは皆に心配をかけてしまった事を謝って回った。その中にはもちろん黒潮も居たけど、彼女は「なんやそないちゃんと謝ってくるなんて。明日は雨でも降るんちゃうか?」って茶化されたけど。
それから秋雲は部屋に戻って作品を描き始めた。まるでここ数日の不調が嘘のように頭の中にアイデアが沸き上がり、手が動いていく。なんだ、本当に最近の秋雲がバカみたい……いや、本当にバカだったんだなぁ。
それで、結局あっさりと作品を描き上げて印刷所へ依頼を終えて……それから無事にイベントに参加できて、すぐに完売して、人気投票ではあのサークル連中をぶっちぎって上位に入賞。これであいつらに嫌味を言わせない程の差を付ける事ができたよ。普段の秋雲さんなら胸を張って喜べるんだけどねぇ……。今回はちょっと……ね。
イベントが終わってから数日後、秋雲はこの間のお詫びとして黒潮に間宮のスペシャルパフェを奢っていた。なんか黒潮って親潮や浜風と一緒に食事してることが多いから中々誘えなくて時間経っちゃったなぁ。
「はぅあ~。やっぱ美味いなぁ間宮はんのスペシャルアイスは。でも秋雲、ホンマええんかいな? こないだの事、ホンマにウチは気にしとらんで」
「いいの。世話かけちゃったんだから。素直に食べてよ黒潮」
「うーん……まぁ、秋雲がそう言うなら、遠慮なく食べさせてもらうで」
そう言って再びアイスを食べる黒潮。うわぁ凄いいい笑顔。後で思い出しながら描こうかな。
「ところで秋雲。例のイベント、うまく言ったって聞いたけど、今回どないな本だしたんや?」
「へ!? そ、それはいつも通りのだよ……うん」
そう言いはしたけど、黒潮は疑いの眼差しを向けてくる。
「……ホンマかぁ? まさか、変な本出したんとちゃうやろな?」
「本当だって! ほら、それより、早く食べないとアイス溶けちゃうよ」
「ありゃ、ホンマやな」
黒潮の意識が再びアイスに向かったのを見て内心で安堵する。……言えるわけないじゃん。今回出した本は、今まで薄い関係だと思っていたの妹が、姉の愛に気づく話だなんて。……絶対言えない。絶対に誤魔化さないと……恥ずかしすぎるもん。