「……黒潮、あたしが……舞風がどういう風に沈んだのか知ってるよね?」
「……そりゃぁ知っとるで……」
返事を返す黒潮の顔に苦いものが浮かんでるなぁ。でも仕方ないか。
「うん……それでね、あたしはその時の事を克服しようと、色んな踊りを踊るようにしてるの。元々踊るのが好きだっていうのもあるけど……今度は戦場で踊れなくなるのが嫌だからさ」
「でもさ……盆踊りだけは踊れないんだ。何回か挑戦はしてるんだけど、途中で……思い出しちゃうんだ。舞風が棒立ち状態になって……。舞風に乗ってる人たちの様子や、香取が沈んでいく様子。ぜーんぶ思い出して……気づいたらああやって倒れてるの。……情けないよ、本当」
そこまで話したとき、不意に黒潮があたしを抱きしめて、頭を撫でてきた。
「阿呆、どこが情けないんや。……立派や舞風は、立派に頑張っとるわこんな立派に頑張ってる、ウチの自慢の妹や」
「……うん、ありがとうね、黒潮」
……ああ、なんだろうなぁ。こうして真正面から言ってもらえると安心するなぁ。それに、黒潮の暖かい体に包まれてると、すごくホッとしてくる。だから、つい体を預けちゃうけど、仕方ないよね。あ、黒潮って意外と胸あるんだ。普段あんまり見てないけど……なんかくやしい。
「……で、舞風。これからどうするんや? まだ練習するんか?」
そんな事を考えてると黒潮がこれからの事を聞いてきた。
「うん……頑張ろうと思ってるんだ。今日、雪風に盆踊りの大会に誘われて……さ。いつまでも暗いまんまで居たくもないって思えたから、頑張ろうと思う」
いつまでも引きずったまんまじゃ、どんな踊りも心から楽しめそうにもないしね。
「そうかぁ……よっしゃ、ウチも付き合うたる。可愛い妹が頑張っとるんや、応援せんわけにはいかんで」
「え、ええ? いや、大丈夫だよ黒潮。別に付き合ってもらうほどじゃ……」
慌てて断ろうとしたけど、黒潮は寂しそうな顔で私を見つめてきた。
「……そう言うてもなぁ。またさっきみたいにぶっ倒れ取ったらと思うで気が気でないで。ウチ、嫌やで? 妹がそんな大変な状態になっとるかもしれん思いながら過ごすんは」
う……それを言われると確かに痛い。あたしが同じ立場でもそう思うのがわかるから反論ができない。
「わ、わかったよぉ……お願いね黒潮」
「おう、任せとき、舞風が盆踊り踊れるようになるまで、しっかり面倒みたるからな」
そう言って自分の胸を叩く黒潮は、普段よりも頼もしく見えた。