それから何日か、あたしは黒潮と一緒に盆踊りの練習をしていった。黒潮がいるおかげか練習はこれまで一人でやった時よりも順調ではあった。……でも、やっぱり最後までは踊れない。踊りきる前にあの記憶のフラッシュバックで過呼吸になってしまう。そのたびに黒潮に助けて貰うけど、それでも踊り切れない。
「……今日が最後。明日には盆踊り大会が始まる」
いつもの場所であたしは再生機を準備しながら呟く。そうだ、明日には盆踊り大会があるんだ。今日、克服しないと。
「舞風、そんな気い張らんでええんとちゃう? 別に盆踊り大会に出れんかっても問題はないやろ?」
その言葉にあたしは激しく首を横に振る。それじゃダメなんだ。そんな弱気じゃ。
「ダメだよ黒潮。そんな考えじゃいつまでも克服なんてできない。……あたしは絶対に今日克服する。克服するんだ!」
「……よっしゃ、ならウチも今日はとことん付き合うたる。気張っていくんやで舞風」
「うん!」
こうしてあたしは気合を入れ直して盆踊りを踊り始める。一歩一歩確実に、体が動くがままに踊っていき……。
(きた……!)
最後が近づくにつれてフラッシュバックが始まる。死んでいく人たちの顔が見える。舞風の体を焼く熱を感じる。香取の姿が見える。野分の後ろ姿が見えてくる。そして……最後に舞風が真っ二つになる瞬間が……。
「ッ!!」
呼吸が荒くなり、膝から体が崩れ落ちる。ああ、今回もダメだっ……。
「しっかりせい舞風!」
崩れ落ちそうになる体が、後ろから抱き抱えられる。振り向くと、そこにはあたしを睨み付ける黒潮の顔があった。
「ここや! ここで舞風はいっつも崩れとる。逆に言えばここさえ乗り越えられれば克服できるんや! 頑張るんや舞風。今はウチがおる、ウチが支えてるんや! 一人やないで!」
「! ……うん!」
崩れた足に力を込め、あたしは体勢を立て直す。そしてもう一度踊りだした。まださっきの光景は残ってる。でも……今度は大丈夫。行ける、踊れる。……踊り切る!
「もうすぐや! もうすぐやで舞風!」
後ろから聞こえる黒潮の声が頼もしかった。言葉が聞こえるたびにあたしは足に、体に、腕に力を籠める。歯を食いしばって、フラッシュバックから目を逸らさずに……!
「……やっ……た!」
最後のステップを踊り切り、あたしは大きく息を吐いた。踊れた、踊れたよ。野分……あたし、踊りきれたよ。
「……ようやったな舞風。おめでとうや」
「うん……うん。黒潮……あたし……やっと……やっ……と」
目から涙が零れる。足から力が抜けて崩れ落ちる。やったんだ……やっと……やっと……。
「……お疲れさんや舞風。少し休憩しよう。一度休憩して……もう一度踊ってみて……それから明日の大会に出るんや。やから、今は休み」
あたしの頭を撫でながら、黒潮が抱きしめてくれる。あたしも黒潮の背中に両腕を回して……抱きしめて……ッ。ありがとう……黒潮、ありが……とう。