夢を見た。私がまだ船であった時の、あの大戦の時の夢を。最後まで頑張ったけど、全部の弾薬を使い果たした私は親潮と一緒に海に沈んでいった。
海に沈んでいく私は寂しかった。悲しかった。妹達は? 私に乗っていた人たちは近くの無人島に移動したはずだけど、その後、無事に帰れたの? 親潮は? 一緒に沈んで……泣いてない?
次々に誰かの事が心配になる。でも、それ以上に私は寂しかった。嫌だ。こんなところで死ぬのが、皆と離れ離れになるのが。いやだ、皆を置いて死にたくない! 死にたくない! 死にたく……ない! 嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
「ハッ!」
目が覚め、慌ててアイマスクを取る。ここは私の部屋。あの海の底じゃない。私は沈んで……沈んでなんか……。
「あ……れ……?」
体を起こして部屋の中を見る。黒潮は? 黒潮はどこに行ったの? 慌てて時計を見ると、もう時間は一七○○を過ぎている。間宮にお鍋とか返してくるだけにしてはいくらなんでも遅すぎる。どこ……行ったの……?
「くろ……しお……くろし……お……どこ……? どこよ……」
カーテンが閉められた薄暗い部屋の中、不安がどんどん大きくなっていく。怖い……怖い……どこ行ったのよ黒潮、なんで……なんで今居ないのよ……。
いつしか目から涙が零れて止まらくなっていく。思わずベットから無理に立ち上がり、部屋の扉へ向かうけど、足から力が抜けて体が崩れる。黒潮、どこなのよ、黒潮……黒潮……。
「ふー、ちょっと遅うなった……って陽炎、どうしたんや!? 何しとるんや!」
黒潮の声が聞こえ、顔を上げると、部屋の扉が開いていて、黒潮が心配そうに私に駆け寄っていた。ああ、居た。居た。居てくれた。
「くろし……お……くろしお。くろし……お」
駆け寄った黒潮を見た途端、私は黒潮の胸に飛び込むと、思い切り彼女を抱きしめた。
「陽炎……どうしたんや? 怖い夢でも見たんか?」
「ヒック……私が……私が沈んだ時の……皆が……いなくて……いなく……うう……うあぁ……」
嗚咽と共に絞り出した言葉。怖かった、起きた時に誰も居ないのが。寂しかった、私一人しか居ないことが。
「……大丈夫やで陽炎。ここには皆おるんや。ごめんなー。ちょっと用事があって遅くなってもうたんや」
泣いている私の背中を黒潮が優しく撫でる。そして私を安心させるように優しい声音で囁き続けてくれる。
「陽炎はいっつもお姉ちゃんしとるから、ちょっと疲れてしもうたんや。だから今はうちに存分に甘えてええんやで。気ィ張るのは風邪が治ってからでええんや。だから、今はゆっくりお休み。うちが一緒におるからな」
その黒潮の声は私の心に沁み渡り、少しずつ心が落ち着いてきて。私はそのまま黒潮に身を任せてしまった。だって、あまりに気持ちよかったから。