「うう……野分のアホー、裏切りもんー、薄情もんー」
「はいはい、静かになさい。湿布張るから」
……こないだも私が甘えようとしたら黒潮が筋肉痛で動けなくなってたのに、なんでまた同じことなってるのよまったく。これじゃぁ、私がいつまでも甘えられないじゃないのよ。
「なんでやー。なんで野分まで舞風側に回ってもうたんや。ウチがなにした言うんや、ウチは別にあの二人になんもしとらんで」
「しっかりやってるでしょうが。司令から、例の女性の更迭が決まったって連絡がきたわよ。なんでも他にも色々やらかしてたみたいで、ちょうど良いキッカケになったらしいわ。向こうのお偉いさんからは逆に感謝されたんだって」
黒潮から話を聞いた司令はすぐに筑摩さんや那珂さんを初めとした艦娘への事情聴取を行い。軍の上層部にも掛け合ってあの女性に対処してくれたわ。なんでも社長の親族らしく、それを利用して色々やってたらしいけど。まぁ、単なる虎の威を借りる狐じゃこんなもんでしょうね。
「そうかぁ、そりゃ良かったで」
それを聞いた時、黒潮は嬉しそうに笑った。……まったく、嬉しそうな顔しちゃって。そんな顔するぐらい嬉しいってのはよくわかるけど。
「舞風と野分には私からちゃんと言っておくわ……。まったく、私が甘える時間がなくなってばっかりじゃない」
「うう……それはホンマ申し訳ないで陽炎。ごめんなぁ」
私の呟きに黒潮は申し訳なさそうにしてくる。
「あんたを責めてるんじゃないわよ。……はぁ良いわ。今日はこれで我慢しとくから」
「へ? おちょちょ、ちょいちょい、なんやなんや?」
私は黒潮が寝ている隣に強引に体を潜り込ませる。狭いけどまぁ我慢できる範囲ね。
「……陽炎、狭ないん?」
「狭いわよ。でもあんたが動けないんだから仕方ないでしょ」
そう言って私は黒潮の手を握る。抱き着こうにもさっき張った湿布が剥がれちゃうからこれで我慢ね。
「それじゃぁお休み」
「……お休み陽炎、いい夢見ような」
空いている手で軽く頭を撫でてもらって……はぁ、早くちゃんと甘えたいなぁ。もっと抱き着きたいのに。まったく、あの二人には本当にキッチリ話をつけておかないと……そもそも、黒潮が何かにつけて筋肉痛になってたら、不知火や親潮のほうも困るんだから。
……あー、そうだ、そう言えば不知火は不知火で黒潮が筋肉痛の時に笑顔の練習ができなかったから微妙に不機嫌になってたわね。親潮と浜風も一緒に食事ができないから微妙に気を治してたし……うん、後でさっさと二人に言っておこうっと。