そんな事があってから数日後。俺は再度神通さんの率いる艦隊で夜戦を行っていた。今回の編成には黒潮姉も居るけど、俺は最低限の挨拶だけで済ましている。……別にあれで黒潮姉の事が嫌いになったわけじゃないけど、やっぱり俺のやり方を非難されたのは腹が立つ。
そして今日の出撃先は……前回の夜戦に追い込まれた海域だ。前回よりも戦力的には上がっている編成で挑んだけど……それでも敵の強さは半端じゃなくて、俺達は再び撤退に追い込まれた。
「おらあ!」
敵に砲撃を叩き込みながらも俺は考える。このままだと前回の二の舞だ。前回に比べれば全体の損傷は少ないけど、それでもだ。それなら。
「神通さん! 俺が突撃して敵の気を引きます!」
「嵐! また貴女は!」
神通さんが止めるより早く俺は敵に突っ込んでいく。大丈夫。ライダーなら同じ相手に負けたりなんてしない。ライダーが時間を稼いで、皆を安全に退避させる……!
その決意を胸に俺は敵に向けて攻撃を続ける。よし、大丈夫だ。大丈夫、俺なら……ライダーなら大丈夫。だいじょ……。
「グアアア!」
戦っている最中、横からの魚雷を避けることができずに大きなダメージを受ける。そんな俺の目の前に、別の敵が……。
「ぐ……クソ!」
避けようとしても体が動かない。ダメだ、ライダーがこんなんじゃ。動け、動いてくれ! 動いてくれよ!
「嵐! 伏せえ!」
後ろから聞こえた声に思わず頭を伏せる。そして何かが頭の上を飛んでいく気配がしたと思うと目の前の敵が沈んでいく。
「嵐! 他はもう撤退した! ウチらも撤退するで!」
そう言われたと思うと、俺の体が簡単に持ち上げられる。そして持ち上げた本人……黒潮姉はそのまま俺をお姫様抱っこして後退していく。
「く、黒潮姉! 俺、一人で走れるよ!」
「神通はんの制止を無視して殿したアホが何言うとるんや! おとなしくしとき!」
俺の言葉に怒鳴り返しながら黒潮姉は走り続ける。俺は……何も言えなかった。
その後神通さんから軽く怒られた(入渠の後に本格的に怒られるけど)俺は黒潮姉と一緒に入渠している。その黒潮姉は不機嫌そうな顔で俺を睨んでいた。
「まったく……前回のはまだしも、今回のはなんやねん嵐。ウチがおらんかったらどうなってたんかわかっとるんか?」
「……わかってるよ、ごめん、黒潮姉」
あーあ、こんなのライダーの姿じゃないよなぁ。情けないなぁ、ライダーになれば夜戦だって怖くないのに、同じ相手に二回も負けるなんて。
「……嵐、なんであんな無謀な真似するんよ。あんな戦い方しとったら命がいくつあっても足りんで」
「だって……俺はライダーだから……ライダーは同じ相手に負けない。ライダーは夜戦を恐れない。ライダーなら……」
「……アホ、あんたはライダーなんかやないわ」
「な!」
黒潮姉の言葉に思わず睨もうとして……俺の頭はいつの間にか黒潮姉に抱きしめられてた。
「あんたは嵐や。ウチの妹。陽炎型の姉妹や。あんな特撮の中にしかおらん架空の存在ちゃう。ここにおる……ここにおるウチの妹や」
「う……」
黒潮姉の言葉はさっきまでの怒りや呆れの気配のない……たまに陽炎姉が聞かせてくれるような、優しい音で……。
「あんたが夜戦を克服するためにライダーになるんは止めへん。でもな……それは一人でなんでもやらなかん、一人で危険を背負わなあかん理由にはならん。ウチらは姉妹や、この鎮守府には仲間がおるんや。やから、一人で無理はアカン。一人で突っ込むのもアカン。それは一人よがりに過ぎへん……。やから、ウチらを頼り」
その言葉に……俺の目からお湯じゃない……何かが零れる。
「……ごめん、黒潮姉。ごめん……なさい……」
「謝るんなら神通はんや萩風達にしい。皆、嵐の事心配しとるんや。心配かけてごめんなさいって、ちゃんと謝るねんで」
「……うん……うん……」
黒潮姉の胸に顔を埋めてる間、黒潮姉は俺の頭を撫でてくれて……そうだよな、ライダーはこんなのないもんな。俺は……ライダーじゃなくて、嵐だから……。