「さぁ、サンマ取りにいくわよ! 私達陽炎型が一番だって事、皆に教えてやるわよ」
「陽炎。サンマが多く取れたら私に分けてくださいね。絶対美味しく焼いて見せます」
「私もお手伝いしますよ浜風」
「ふ、ならばこの磯風に任せてくれ浜風、親潮。最高の焼き加減で焼いてみせるぞ」
「陽炎! 絶対に私に渡してください! 磯風に渡すのだけはだめです!」
「お、お願いです陽炎姉さん! 磯風に渡すのだけは!」
先を行く四人がそんな事を言ってる中、あたしは黒潮と一緒にその後を追いかけます。普段の出撃にはない、とてものんびりとした空気の中の出撃で、あたしも気が緩みそう。
「いやぁ、今日はええ天気で、絶好のサンマ漁日和になったなぁ」
「うん、うん。そうだね黒潮」
「しっかし、ホンマ良かったな時津風。こんなのんびりした出撃で」
「本当……良かったよ」
もし、あの時黒潮が来てくれてなかったら、あたしはきっと今も怯えたまま出撃してたと思う。しれぇが話した作戦の内容を疑いつつ、作戦が終わった後も……もしかしたらしれぇ疑ったままで過ごしていたかもしれない。
「……黒潮、ありがとう」
「ん? なんか言ったか?」
「んーん、なんでもないよぉ」
小さく呟いたお礼に反応した黒潮に笑顔で返しつつ、あたし達は海の上を走る。きっと今日の作戦は、楽しいものになるよね。
「ねぇ、黒潮。何してんの? かくれん……ムグ」
「シィー! 時津風、頼むから今はよそ行ってくれ! 舞風達に捕まるわけにはいかんのや!」
物陰に隠れていた黒潮に声をかけると、黒潮は慌ててあたしの口を塞いで辺りを見渡す。そう言えば舞風と親潮が黒潮の名前を呼んでたっけ。
「……黒潮、この物陰、あたしが入ってもまだ大丈夫だよね?」
「まぁ、隠れられん事はないと思うけど……なんや、今入るんか? ちょっとマジで勘弁してえや。今舞風達に見つかったら……」
「あれ、そこ誰かいる?」
舞風の声が聞こえた途端、黒潮の体が一瞬震える。
「なーにー? 舞風、どうかした?」
「あれ、時津風。黒潮見なかった?」
「んーん。見てないよ」
「そっかぁ、じゃぁ見つけたら教えてねー」
深く追及する事無く去っていった舞風を見送ってから黒潮に視線を戻すと大きく息を吐いてた。
「ふぅ~……助かったで。それじゃウチは移動するから……」
「ダメ~」
移動しようとした黒潮の腕を掴むと黒潮が怪訝な表情で見返してきた。
「なんや時津風。なんか用なんか?」
「黒潮、黒潮。一緒にいようよ。ここならさっきみたいに誤魔化せるよ?」
「いや、それはありがたいけど、なんでそんなんしてくれるん?」
「あたしが黒潮と一緒に居たいから。ダメ?」
「いや、別にええけど」
黒潮から許可も貰えたし、あたしは黒潮の懐に潜り込むと、そのまま彼女の胸に顔をこすり付ける。
「んふー……」
「おーよしよし。ええ子ええ子」
あたしの頭を黒潮が優しく撫でてくれる。いっつもしれぇにやってもらってるけど、今度からは黒潮にもやってもらおーっと。