それから数日の間。私は黒潮に思いきり甘えた。多分、人生……いや、艦娘生なのかな? ともかく、甘えられるだけ甘えた。それこそ、子供が母親に甘えてるんじゃにかってぐらい甘えきって……そのおかげか軍医さんが予想していたよりも早く風邪は治ってくれて、今日からはもう出撃もできると太鼓判を押してもらえた。
「さーて、不知火達に顔見せないとねぇ。心配かけちゃったし」
医務室を後にした私はとりあえず間宮に足を運ぶ。確か今日は皆非番だったはずだし。それに……不知火達がくれたクッキーとかも美味しかったけど、折角風邪が治ったんだし、甘いものいっぱい食べて精をつけないとね!
足取り軽く間宮に到着すると、そこには不知火、黒潮、浜風の三人がいた。不知火と浜風の対面に黒潮が座ってるわね。あ、美味しそうなアイス食べてるじゃない。
「あ、陽炎。もう風邪は大丈夫なんですか?」
「バッチリよ! 今日からもう出撃しても大丈夫だって太鼓判押してもらったわ!」
胸を張って私が答える。
「おお、そりゃぁ良かったやん。看病した甲斐があったで」
「黒潮に全部任せてしまいましたし、今度私のお気に入りのお饅頭をあげますね」
「お、ありがとな浜風。いやぁ、浜風のお気に入りってなんやろなぁ、美味しそうやなぁ」
「黒潮、食べ過ぎはダメですよ。ただでさえ黒潮はここ数日の陽炎の看病で体を動かしてないんですから」
「なんや不知火、固いこと言わんといてーな」
「ですが、体調管理はちゃんとしないと黒潮が黒豚になってしまうのでは……」
「誰が鹿児島の黒豚の原産種バークシャー種やねん」
「なんでそんなのが出てくるんですか」
久しぶりに聞くけど、相変わらず騒がしいわねぇ。ま、嫌いじゃないんだけど、間宮で騒ぐのはダメよね。
「相変わらずウルサイわねぇあんた達は。公共の場所ではもうちょっと静かにしなさい」
そう言って私が黒潮の隣に座って注意すると、不知火と浜風は少しバツが悪そうにしたけど、黒潮だけが笑顔のままだ。なによ、私の注意は聞けないっての?
「ホンマ元気になったみたいやなぁ。うちも看病した甲斐があるで。ほい、お祝いや、アーン」
「アーン……ハッ!」
黒潮が差し出してきたアイスの乗ったスプーンを咥えてから私はしまったと気づいた。何してるのよ私は! 看病してもらってる間に甘える癖がついちゃってる!?
「……陽炎がアーンを受けてる……」
「……凄いものをみたわね」
あーもう、案の定不知火も浜風も驚いてるし! そりゃそうよ、私はアーンをする側で、される側じゃないのに! しまったぁ……。
「なんや陽炎。まだうちに甘えたいんか? ええでー、いくらでも甘えても」
「う、ウルサイ! もう甘えたりしないからね!」
そう言ってそっぽを向くけど、後ろから三人の視線がビシビシ突き刺さってくる。……うう、やっちゃった……私のイメージがぁ……。
「大丈夫やでぇ、陽炎」
そんな私の背中に抱き着いてきた黒潮が、私の耳元で小さく呟いた。
「疲れた時には、うちにたっぷり甘えてええからなぁ」
「う、うるさーい!」
黒潮を振りほどいて彼女を睨むけど、黒潮はニヤニヤと見てくるし、不知火と浜風は驚いた顔のまま見てるし。あーもう、恥ずかしい! 顔が本当に火が出そうなぐらい熱くなってるのが自分でもわかる。……もー、こんなんだったら黒潮に甘えるんじゃなかったー!