第十三章 浦風編
うちはなんだかんだで世話好きやと思っとる。これまでも色々とみんなの世話をしてきとったからな。おかげで陽炎型のおかん。なんて呼ばれる事もしばしばじゃ。
それはうちにとってある意味誇りじゃ。うちら艦娘はおかんから生まれたわけやない。やから、どうしてもおかんと呼べる相手に憧れる。……だから、うちにとっておかんと呼ばれることは誇らしいことじゃ。
それなのに、なんか最近は暇じゃ、最近は皆黒潮が世話してもうとる。陽炎型だけやない、他の艦娘からもそういうのが出てきとる。
いくら姉とはいえ、あんなチンチクリンな見た目の黒潮にそういう役割を持っていかれるのは癪じゃ。じゃから、うちも頑張らんといけんの。負けてられん。
けたたましい目覚ましの音に目を覚ます。
「ん……もう朝か」
目覚ましを止めて時間を確認すると○六○○。うむ、ちゃんとセットできておったな。
「さて、今日も一日頑張らんといけんな」
ささっと身支度を整えて、まずは姉妹達のために食事の用意をせんとな。それに夜の出撃から帰ってきた姉妹の洗濯物も洗濯しとかんとの。
食事の用意をしとる間に親潮と萩風が起きてきおった。二人とも早起きじゃな。
「あ、浦風おはようございます」
「おう、おはようじゃ親潮、萩風。今朝食作っとるけ、待っとってくれ」
二人に笑顔で返事してからうちは朝食作りを再開する。萩風には薄味で作っとらんな。
「あ、浦風。私も手伝いますよ」
「いやいや、大丈夫じゃけえ、二人とも待っとってくれ」
ここで親潮に手伝ってもらったらおかんとは呼べんからな。さて……早めに朝食を作って洗濯物もせんと。
手早く朝食を作り終え、二人の前に並べてから次は洗濯物に取り掛かる。ふぅ、昨日は夜の遠征に陽炎型が駆り出されたけぇ、洗濯物も多いわ。早く片づけんとなぁ。
そんな風に、うちは陽炎型の世話を一身に引き受けつつ、自分の出撃や遠征もこなしていった。さて、今日も早起きして、飯の用意をせんといけんな。
「ん~……」
ん? なんじゃ? なんか体が起きづらいんじゃが……はて?
「よっ……とぉ」
気合を入れて体を起こし、部屋の扉に向かおうとして……む、なんじゃ? なんか眩暈……が……。
「……は!?」
目を覚ますとそこは見知らぬ天井……ではないな、ここは医務室か?
「お、起きたんかいな、浦風」
声がした方向を向くと、そこにおったんは黒潮じゃった。なんで黒潮ががここにおるんじゃ? それに、なんでうちは医務室に?
「……黒潮、うちはなんで医務室におるんじゃ?」
「浦風の姿が見えんからって心配した磯風が部屋に見に行って、倒れとる浦風を発見したんや。磯風めっちゃ慌ててたで」
う~ん……ちょっと倒れただけで磯風は大げさじゃな。ま、起きたからには動かんといかん。どれだけ寝とったかはわからんが、色々とせんといけんことがあるけえ。
「ちょ、浦風。まだ寝とき。お医者さんからは疲労が溜まってる言われとるんやで」
「大丈夫じゃけえ、ちょっと寝不足だっただけじゃ。横になってて治ったわ」
そう言ってベッドから体を起こして軽く関節を解す。
「待ちいや浦風。無理はしたらアカンって、また倒れるで」
「だ~いじょうぶじゃ。心配しなさんな」
引き留める黒潮を置いてうちは医務室を後にする。時間は……もうこんな時間かぁ。急がんと、出撃から帰ってきた子らの洗濯物を洗えんな。