黒潮お姉ちゃんシリーズ   作:雨宮季弥99

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第十三章 浦風編2

 倒れてから一週間、うちはまた同じように皆の世話をし続けとる。浜風や磯風はやめるように言って来たりしとるが、なに、大丈夫じゃけぇ。もうあんな倒れたりなんかせん。

 

「ふんふんふ~ん」

 

 鼻歌交じりに洗濯物を干していき、乾いているのを取り入れるが、やっぱり多いのう。じゃけぇ、うちが頑張らんといけんのやけどな。さーて、洗濯物を片付けたら、次は掃除もせなアカン、洗い物ある。やることはいっぱいじゃ。頑張らんと、頑張らん……と。おお!?

 

「ちょ、どこいくんじゃー!」

 

 不意に吹いた風のせいで取り入れた洗濯物が転がっていきおった。まったく、いま吹くんじゃなくて、全部終わってから吹いてほしいものじゃ。

 

 慌てて転がった洗濯物を追いかけて、拾って立ち上がるって……さ、続き……を……。

 

「おお……? お……」

 

 なんじゃ、目の前がくら~っとして……あ、いかん、これは倒れ……。

 

「おわあ! 浦風!」

 

 倒れそうになったうちの体が支えられる。眩む視界の中見えたのは、黒潮の姿じゃった。

 

「あ……なんで黒潮がおるんじゃ……?」

 

「浦風が一人で洗濯物干しとる言うから様子見にきたんや。案の定倒れとるし……。ほら、持ち上げるで」

 

 そう言うと黒潮はうちの体の下に手を差し入れて、あっさりと持ち上げてしまいおった。

 

「……黒潮、見た目によらず力持ちじゃな」

 

「体は鍛えとるからな。それじゃ、運ぶから動かんといてな」

 

 そう言って黒潮は軽々とうちを部屋まで運んでいき、ベッドに寝かせる。

 

「熱は……ないみたいやな。浦風、どっか変な場所とかあるんか?」

 

「いや、単なる眩暈じゃけえ、大したことはないよ。少し横になっとったら回復するわ。早よう回復して、家事をせんとな」

 

「なに言うとるんや。浦風はおとなしく寝とき。ウチがやっとくから」

 

 そう言うと、黒潮はうちの返事も待たずに部屋を出て行ってしもうた。うちはそれを追おうとしたが……上半身を起こした途端、また眩暈がして寝直す。

 

「……はぁ……何をやっとるんじゃうちは」

 

 流石に自己嫌悪の気持ちが出てくる。大丈夫じゃと思っとったのに、こうして黒潮の世話になるとはのう……うちは何をやっとるんじゃ。

 

 そうして自己嫌悪の気持ちに陥っておると、しばらくして黒潮が戻ってきた。

 

「洗濯物は全部干したで。浦風、体調はどうなんや? 冷たい水持ってきたけど、飲むか?」

 

「……もらうわ」

 

 黒潮から受け取ったペットボトルの水を飲み……うちは大きく息を吐いた。

 

「……黒潮。うち、何やっとるんじゃろう……。これじゃぁおかん失格じゃけぇ」

 

「……なぁ浦風。おかんってさぁ……一人でなんでもやらなあかんもんなんか?」

 

 その言葉に黒潮に視線を向けると、彼女は不思議そうな顔でうちを見とった。

 

「ウチらは艦娘やから、おかんに世話してもらったわけやないけど、長女の陽炎が大体そのポジションやろ……陽炎、一人でなんでもやっとるわけやないんやん。なんか困ったことがあれば妹の誰にでも頼るし、他の艦種の艦娘も頼る。不知火かてそうしとるし、ウチかてそうや」

 

「……でも、それは姉じゃけぇ。おかんじゃなか」

 

 そうじゃ、黒潮の言っとるんは姉じゃ……おかんやない。それは違うもんじゃけぇ、比べたら……。

 

「……あんなぁ浦風。あんたはおかんちゃうで」

 

「な、なにを言うんじゃ!」

 

 思わず体を起こして黒潮を睨むと……黒潮は心配そうな顔でうちを見とった。

 

「あんたは陽炎型11番艦。陽炎型の中でも妹のほうや……なぁ浦風。あんたがおかん呼ばれるんが嬉しい言うんはなんとなくわかるで……でも、だからってウチ等心配させてええ理由にはならん」

 

 そう言うと、黒潮はうちの顔を両手で挟んできて、思い切り顔を近づけてきおった。黒潮の顔が目前過ぎて、他のなんも見えん。じゃから……黒潮の心配そうな顔がよう見えた……。

 

「浦風。おかんになりたい言うんなら止めはせえへん。でもな、皆……浜風も、谷風も、磯風も……他の姉妹全員が心配したんや。わかるか浦風? 姉妹心配させるような事するんやったら、それはきっとおかんやないし、ウチは姉として全力で止めるで……わかったか?」

 

「……わからん言うたら黒潮はどうするんじゃ?」

 

 心はもう決まっとる。でも、つい口から出た反論。その返しは予想外じゃった。

 

「……このままキスしてファーストキス持っていったる。なんなら舌差し込んでディープキスしたるで」

 

「へあ!?」

 

 思いがけない言葉に思わず変な声がでてしまう。な、何を言うとるんじゃ黒潮は!?

 

「まぁ、それは冗談なんやけど、ともかく今は寝とき。ええな」

 

思わず頷くと、黒潮は顔から手を放して「ほな、ウチは用事あるから行くけど、しっかり休むんやで」と言って行ってしまった。

 

「……いくらなんでもあの不意打ちは卑怯じゃ……。もしも黒潮にキスされとったら……やめじゃやめじゃ、変なことを考えとかんで寝とこ」

 

 去っていった黒潮の姿を思い出し……うちはため息をつくことしかできんかった。少し顔が熱くなっとる気がしたが、それは気のせいじゃ。

 

 

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