第十五章 雪風編
私の名前は雪風。陽炎型の8番艦で、幸運艦と言われています。
でも、私は幸運艦なんかじゃないんです。だって、私だけ生き残っちゃったんです。いろんな戦いに参加して、皆が沈んでいく姿を見て……それでも私は生き残って中国に連れていかれました。
……私は死神と呼ばれるほうが相応しいんです。幸運艦なんてのは出鱈目なんです。だって、姉妹が、仲間が沈んでいく姿を見続けるなんて……悲しいじゃないですか。
「索敵機からの報告! 敵の部隊を発見しました。全艦攻撃準備!」
赤城さんの報告にわたしたちは即座に戦闘の準備に入ります。程なくして敵艦隊と会敵。双方が陣形を組んだうえでの戦闘が始まります。敵とこちらはややこちらが優勢と言った感じで、このままいけば特に問題なく倒せるはず……でした。
「ちょ! こっちきた!」
私の近くにいた軽巡の攻撃は私を逸れて、川内さんのほうへ飛んでいく。慌てて川内さんは避けますが、そこに彼女が戦っていた敵の攻撃が飛んできて命中してしまいます。
「川内さん!」
榛名さんが急いで川内さんが戦っている敵を倒して事なきを得ましたが、これが私が出撃しているときの光景です。いつも、不自然に敵の攻撃は私から逸れて味方のほうに行きます。たまにとかじゃありません。大抵がそうです。
本来なら来るはずのない攻撃は容易に皆さんにダメージを与えます。今は大きな損傷になった事はありませんが、いずれ大破や……轟沈に繋がることになるかもしれません。
私はそれが怖い。でも、自分でもどうしようもない。いくら私が敵の的になるような位置へ移動しても敵の攻撃は私を逸れる。……私は……。幸運艦なんかじゃない。
「……では、次の大規模作戦は新しい海域の攻略となる。敵には強力な個体も多くいると予想されているから、皆、気を引き締めてかかるように」
作戦室で私達に次の大規模作戦の説明がされます。そして、現在予定されている出撃表……そこに私の名前はありました。それも、主力艦隊の中にです。
それを見た途端、私は冷や汗が止まりませんでした。これまでの出撃では厳しい海域に出撃したことはありません。でも、今回はどれだけ厳しくなるか想像もつきません。もしも……もしも私のせいで誰かが沈んだら……!
「し、しれえ! なんで雪風が主力の編成に組まれているんですか!? 雪風は……!」
「この海域の攻略には戦力を惜しむ余裕はないんだ。雪風の事は聞いているが……雪風の錬度を考えれば前線に出てもらわなくてはならない」
確かに私の錬度は低くはないです。でも、でも!
私はしれえに何回もお願いしました。でも、聞き入れてはもらえませんでした。