黒潮お姉ちゃんシリーズ   作:雨宮季弥99

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第十五章 雪風編3

 後日、大規模作戦は無事に成功しました。私は誰かに自分が避けた攻撃が飛んで行ったりしないよう立ち回りに注意して戦ったおかげで、私を狙った攻撃が誰かの不意を突いたりすることもなく戦いを終わらせることができました。

 

「ふぅ……本当、誰も沈まなくて良かった。……良かったぁ……」

 

 大規模作戦の事を思い返しながら雪風は廊下を歩いています。すると、反対側から時雨が歩いてきているのが見えました。

 

「あ、雪風。大規模作戦お疲れさま」

 

「時雨も、お疲れさまです」

 

 時雨の挨拶に答えると……なんでしょう? 時雨が歩かずにこっちを見てきます。

 

「……良い顔になったね、雪風」

 

「え? な、なんですかいきなり?」

 

「……ずっと、気になってたんだ。雪風は出撃のたびに暗い表情になってたし、出撃に関することを話してる最中にもどこか暗い影が刺してたからね……」

 

 ……確かに時雨の言う通りです。雪風はずっと、出撃するのが嫌でした。出撃の話をするのも好きじゃありませんでした。それが変わったというなら、それはきっと黒潮のおかげです。

 

「ご心配をおかけしてごめんなさい。でも、雪風はもう大丈夫ですよ」

 

「うん、そうみたいだね。良かったよ、雪風が暗くしてると、僕まで悲しくなる。ずっと、雪風がそうやってくれることを願っているよ」

 

 そう言って時雨は歩いていきました。……私と時雨は大戦中には関わりはありませんでした。でも、私達は武勲艦、幸運艦の双壁として称えられる事があります。だからこそ……時雨は雪風の事が気になってたのかもしれません。

 

「……大丈夫です、時雨。私はもう……大丈夫ですから」

 

 私は正直時雨と共に称えられるのが嫌でした。でも、今ならきっと胸を張れると思います。胸を張って、時雨と並ぶことができると思います。だって、私は死神じゃないんですから。

 

 この事を気づかせてくれた黒潮にはいくら感謝してもしきれません。なので……。

 

「黒潮~黒潮~、遊ぼうよぉ」

 

「黒潮、遊びましょう。雪風も遊びたいです」

 

 今、私は時津風と一緒に黒潮に遊んでほしいと縋っています。こうしていると黒潮はちょっと迷惑そうにしてますが……嬉しそうな感じもします。だから、私は黒潮に遊びをせがみます。

 

「ちょっと~、黒潮。今度の出撃の事で相談があるんだけど、来てくれる?」

 

「あ、わかったわ陽炎。ほら二人とも、遊ぶのは後でやったるから、離れてな」

 

 仕方がないので黒潮から離れると、黒潮は陽炎と一緒に行ってしまいました。

 

「……雪風、一緒に遊ぶ?」

 

「うん、そうしよう時津風」

 

一緒に縋っていた時津風と視線を合わせると、二人で一緒に遊ぶことにしました。後で黒潮が戻ってきたら、今度は三人で遊ぼうと思います。

 

 

 

 

「ほい陽炎、アーン」

 

「アーン」

 

 黒潮の膝枕の上で次の出撃の事を相談している私に黒潮が飴を取ってくれたからそのまま食べる。あー、大規模作戦が終わったばっかりなのにもう次の出撃のこと考えとかないといけないのが本当面倒だなぁ。

 

「陽炎、すっかりアーンも慣れたなぁ。風邪引いとったときは拒否しとったんが懐かしいで」

 

「……いいでしょ、別に。それより次の出撃だけど、雪風を連れていきたいって考えてるのよ。黒潮はどう思う?」

 

「そうやねぇ、今の雪風なら大丈夫やと思うで。それに、雪風自身にもええ特訓になると思うわ」

 

 黒潮と一緒に出撃したあの戦い以降、雪風の戦い方は一気に変わった。前みたいにがむしゃらに前に突っ込むんじゃなくて、うまく敵と味方の位置を把握して立ち回れるようになった。おかげでメキメキ戦果を上げてるみたい。

 

「……雪風、自分の気持ちに決着をつけれたのよね?」

 

「……きっと、そうやと思うで」

 

 雪風は生き残った。多くの戦いを経験し、多くの仲間が沈み、姉妹が全員沈む中で生き残り、中国に引き渡され、そこで最後まで就役した。中国での扱いは悪いものじゃなかったみたいだけど、もし私が雪風と同じ立場だったら、そんなの慰めになっただろうか? きっとならない。ずっと自分の中で自分を責めていたはず。

 

 だからこそ、ここで雪風と会ってから、気を遣うようにはしてたんだけど……流石に他の姉妹の面倒をみたりしないといけない私は雪風だけに気を遣うわけにはいかなかった。それは今回の出撃でも同じ……。だからまぁ、今回黒潮に一緒に出撃するようお願いしておいたんだけど。黒潮ならきっとなんとかしてくれるって思ったから。

 

「黒潮、雪風の事、ありがとうね」

 

「ええって。可愛い妹やもん。それに、陽炎の役にも立てたんやから。別に困るような事やないで」

 

 ……こいつ、素で言ってるのよねぇ。本当にもう。

 

「可愛いこと言ってるんじゃないわよ」

 

「あひゃひゃ……ちょ、陽炎。だから腋はやめてぇ……あっひゃひゃひゃ」

 

 つい黒潮の腋をくすぐると、黒潮は色気のない声で笑いだす。まったく、どうせなら笑い声も色気のあるものに……だめね、私暴走するかも。

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