第二章 不知火編
その日、不知火は作戦室で雷を叱っていました。理由はその日の出撃において雷が既に何回かやらかしている失敗をまたやらかしたからです。戦闘自体は無事勝利を収められましたが、だからと言って雷の失敗を見逃すわけにはいきません。ここで甘えを見せてしまっていては彼女のために……ひいては艦隊のためになりません。
「雷、これで何度目の失敗ですか……失敗してる理由を理解しているのですか? 既に何回かお伝えしているはずですが」
「あ、当り前よ! 私はそこまで馬鹿じゃないわ!」
「では、改善をしてください。不知火の眼には何時も同じ失敗をしているようにしか見えません」
「う……うう……」
不知火を見つめる雷の目に涙が溜まっていますね。しかし、泣けば許されると勘違いされるわけにはいきません。そのような甘えを見せてしまっては、彼女は泣けば許されると思ってしまうでしょう。そうなればまた同じ失敗を繰り返してしまいます。そう思い口を開こうとしたとき、横から赤城さんが口を挟んできた。
「不知火さん、この辺にしておきましょう。雷ちゃんも反省しているようですし……」
「……わかりました、赤城さんがおっしゃるのなら」
正規空母であり、この鎮守府でも有数の実力者であり、今回の出撃の旗艦を務めた赤城さんに言われてはこれ以上何も言えないわね。……仕方ないわ。
「ともかく、次の出撃の時には改善していただくようにお願いします。いいですね?」
「わ、わかった……わ」
もう一度釘を刺し、雷が頷いたのを確認すると、不知火は作戦室を後にした。次の出撃に備えておかないと……それに、他にもやっておかないといけないことがあります。早めにやっておかないと、後回しにして忘れてしまったりしてはいけませんし、急な出来事が起きてしまって、やることができなくなる危険もあります。
ヒソヒソ……ヒソヒソ……
不知火さんよ……怖いわね……
あの目つき……今度は誰を怒ったんだろう……
駆逐艦以外の艦娘にもあの態度らいいぞ……
鎮守府の中を歩く不知火の耳に小さな囁き声が聞こえてきます。それは主に駆逐艦達から、不知火が通り過ぎた後に聞こえてきます。その理由はわかっていますが、不知火はそんなのを気にしている暇はありません。いえ……きっと、暇があっても気にしてはいけないんです。その声を気にしていては、きっと不知火は弱くなってしまいます。それではいけないのです。
不知火はそんな声を無視して歩き続けました。