どちらのエピローグを選ぶかは読者様次第です。
「えーと……この辺も持って行こうかなと。後は……」
私は自分の部屋で持っていく物を決めている。この機会なので、艦娘として必要なものは全部置いて行ってもいいんだけど、思い出があるものはどうも置いていきにくい。
「陽炎、まだかいなー?」
声がかけられたから後ろを向くと、そこには黒潮が立っていた。またノックせずに扉開けて、まったくもう。
「もうちょっとで終わるわ。あんたのほうはちゃんと終わってるのね?」
「勿論やで」
その声が聞こえたと思うと、ベッドのほうから軋む音がしてきた。黒潮が座ったのかしら。
「……しかしまぁ、ここでの生活も長かったなぁ陽炎。艦娘として生まれ変わってからズーッとここで生活して……ああ、そうや。陽炎の看病をしたんはこの部屋やったな」
「……そうね」
そう。今思えばあれが始まりだったのかもしれない。あれをキッカケに私は黒潮に甘えるようになった。あと、あの後から、何かしらのキッカケを元にして妹達も黒潮に懐くようになっていった……。
(それでまぁ、最終的にはお母さん……かぁ)
まさか三女の黒潮が陽炎型のお母さんになるなんて、想像もしてなかったわ。そもそも司令官が黒潮に告白するなんて事も考えたことなかったけど。本当、艦娘生には何が起こるかわからないわね。
「なー陽炎。手止まっとるでー」
「おっと」
考え事をしてる場合じゃないわね。さっさとやらないと皆待たせちゃうわ。
そうやって手を動かしていって、程なくして私は持っていくものを全部鞄に纏めることができた。
「お待たせ黒潮。行きましょうか」
「了解や」
黒潮と並んで私は部屋を出て、廊下を歩いていく。そんな中、私はここで過ごしていた日々を思い出していた。
(……色々あったなぁ)
ここには艦娘として生まれてからの思い出のほぼ全てが詰まっている。海に出て戦った日々も、仲間と触れ合った日々も、妹達と戯れた日々も。でも、それも全部今日でお終い。
私達が寮を出て鎮守府の出入り口に視線を向けると、そこには司令官……いいえ、義父さんと妹達がバスの前で待っているのが見えた。
「ありゃ、もう皆待っとるな。急がんとアカンか」
「そうね、急ぎましょうか」
私と黒潮は足を速めて皆の元に行く。あそこに着いたら、私達のこれまでは終わって、新しい私達が始まる。……でも、変わらないものがあった。
「ねぇ、黒潮」
「んー? なんや?」
私のほうを振り返った黒潮に、私は満面の笑みで言葉を紡いだ。
「これからも、ずっと甘えるからね」
私の言葉に黒潮は少し驚いた顔をして……それから、彼女も満面の笑みを浮かべた。
「ええで、陽炎。疲れた時は存分に甘えてぇや」
そう言って私達は少しだけ笑いあうと、改めて皆の所へ歩き出す。きっとここから先は戦いとは違う大変なことがあると思う。でも大丈夫、私には、私達には、互いに支えあうことができる存在がいるんだから。