どちらのエピローグを選ぶかは読者様に委ねます。
「陽炎、ちょっと髪傷んでない?」
「あー、加齢のせいかしらねぇ」
「アカンでー、ちゃんとケアせえへんと。ウチの使こうとるリンス貸したろか?」
「……うん、お願い」
そう言うと、陽炎は面倒そうにため息をついとる。昔はそういうん気にしとったんやけどなぁ。
でもまぁしゃあないか。ウチ等ももう40歳越えとるからなぁ。面倒くさくなってもしゃあないで。……まぁ、それでも綺麗なんやけどなぁ、陽炎は。
あの戦いからもう30年以上過ぎて、ウチは旦那様の妻として、姉妹達の母親として頑張ったけど……皆、無事に独立して、結婚してくれて……今は皆それぞれに家庭を築いとる。
正直そうやって皆が離れてくんは寂しかった。そんな中、偶然やけど陽炎だけはこうして同じマンションで暮らして、こうしてたまにウチに甘えにきとる。
「そういや、陽炎とこの子は元気にしとるん?」
「ええ。一人暮らしにはしゃいでるわ。黒潮のとこもそうでしょ?」
「まぁ、そうやなぁ」
そんな事を話しながら陽炎の頭を撫でてく。話しとる内容は子供の事やけど、こうして陽炎が甘えてきとる間だけは……ウチ等は艦娘に……陽炎型駆逐艦の姉妹に戻っとる気がするわ。この繋がりの間にだけは……旦那様でも子供たちでも入ることはできひん。ウチ等姉妹だけの特別な繋がりや。
(……でも、あとどれだけこうしていられるんやろうなぁ)
ウチ等ももう40を過ぎとる。戦艦や空母の人達には50を過ぎとる人も多い。艦娘のウチ等の寿命が人間と同じなんかは知らんけど……老衰やなくとも病気や事故とかで死んでもおかしくはないんや。もし陽炎達がそうなったら……そう考えると、後悔のないようにしたいと思ってまう。せやから……。
(陽炎が甘えたくなったときは、精一杯甘やかさんとな)
元からそのつもりやった。あの風邪で倒れた陽炎を看病しとったあの時から、その気持ちは変わっとらん。でも、もう一度口に出して伝えよう。ちょっと恥ずかしいけど、ウチの決心の現れや。
「ねぇ、黒潮」
「なぁ、陽炎」
互いの口が同時に動き、相手の名前を呼ぶ。……なんでこんな時に被るんやろか? なんやおかしくなってきて少し笑うと、陽炎も同じように笑ろうとった。
「先に言いなさいよ黒潮」
「いやいや、陽炎が先に言ってえな」
「……じゃぁいっせーので。で言うわよ」
「あー……うん、わかったわ。いっせーのーで……」
「これからも甘えるからね、黒潮」
「これからも、存分に甘えてええからな、陽炎」