黒潮お姉ちゃんシリーズ   作:雨宮季弥99

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第二章 不知火編4

「……へー。不知火にそんな事があったのね。それで皆から近づきやすくするために笑顔の練習ねぇ」

 

「そうやねん。いやぁ、ウチもびっくりしたで、廊下歩いとったら不知火が泣きながら走っとるんやから。それで話聞いてみたらアレやし、これはどうにかしたらなアカンって思ったで」

 

 黒潮の部屋で彼女に膝枕をしてもらいながら、私は不知火が笑顔の練習をしていた理由を黒潮に聞いていた。そう……そんな事があったのね。まったく、前々から気になってはいたけど、一言相談してくれれば良かったのに。相談してくれていたら不知火がそんな泣くことになる前になんとかできたかもしれないのに。

 

「まぁ、雨降って地固まるって言うし、今回のことがええキッカケになったとは思うで。これで不知火も他の子と仲良くなっていってくれりゃぁええなぁ」

 

 そう言って黒潮はまた私の頭を撫でてくれる。時折、髪を慈しむように、黒潮の指が私の髪の毛に優しく絡み付いてくる。ああ、本当に気持ちいい。黒潮の指が動くたび、例えるのが難しい喜びが湧きたつ。

 

「でも陽炎、次からはもうちょっと優しく誘ってな。不知火ほっぽり出して陽炎に付き合うんは流石に気が引けるで」

 

 気持ちいい。と思っていたら黒潮からそんな声が聞こえてきた。あー……うん、確かにあれはちょっと強引過ぎたわね。私自身よくわかってはいるけど……。なんか、黒潮が可愛い笑顔で不知火を見てるのを見てると衝動が収まらなくて……。

 

「う……悪かったわよ。次は気を付けるから」

 

 仕方ないじゃない。笑顔で不知火を見つめる黒潮の姿を見て、黒潮があんな笑顔を不知火に向けてるのを見て、なんか面白くないかったんだもん。……絶対にこんなの言えないけど。言ったら黒潮に何を言われるか。

 

「ホンマ頼むでぇ。不知火が困ってまうからなぁ」

 

「わかってるって。後で私もちゃんと不知火の練習に付き合うわ。お姉ちゃんだもん、妹が頑張ってるならちゃんと協力してあげるわよ」

 

「ふふ、それでこそ陽炎や。うちの自慢のお姉ちゃん、陽炎型自慢の長女や」

 

 そう言いながら黒潮は私の頭を撫でてくる。視線を上に向けてないけど、黒潮が嬉しそうに笑っているような、そんな気配も感じちゃう。

 

 なんか、もうすっかり癖になっちゃったわねぇ。最近は黒潮の膝枕を味わないとなんだか落ち着かなくなってきちゃったし……前までの私なら絶対に考えられなかったけど……これ、黒潮に依存してない? 長女としてなんだかまずい気もするけど……でも、気持ちいいから別にいいか。


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