デジモンアドベンチャー01   作:もそもそ23

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やっと進化にたどり着きました。




言っただろ、マァマは、この"オレ"が守るって。

「マァマのために…いくぞ!ティラノモン超進化!」

 

ティラノモンの全身が光に包まれ、彼の進化が始まった。

 

「やっぱり進化だよ!エンジェモンの時と同じだもん。」

「タケル!伏せろっ!」

 

トコモン抱えてその光景に見入っていたタケルをヤマトが強引に地面へと倒し、覆い被さるように自分も伏せる。他の子供達も各々の防御姿勢を取ったその直後、ドカンという鼓膜の破れそうな爆発音と共に、周囲一帯を激しい衝撃と閃光が襲ったのだ。

 

「ヤマトー!」

「空っ!」

 

衝撃の余波で吹き飛ばされそうな身体を抑え、パートナー達はそれぞれの主の名前を呼ぶ。

 

その威力はやはり、完全体に相応しい物であった。

 

 

 

やがて、爆風は収まり、周囲は一時静寂に包まれた。

大量の土埃が徐々に晴れていき、パートナー達の視界が鮮明になっていく。そこにあったのはえぐり取られた地面とボロボロのスタンド、最早ここに"闘技場"としての機能はない。

 

それでも、ただ一ヵ所、ティラノモンが立っていた位置からその後方にかけては、無傷のまま。

 

一つだけ違う事があるとすれば、そこに立っているのはティラノモンではなく、

 

 

 

 

 

「言っただろ、マァマは、"オレ"が守るって…」

 

 

全身を機械で武装した。灰色の恐竜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!大丈夫!」

 

「ああ、何とか…」

「みんな、無事みたいね。」

 

土埃が舞う中、沙綾は皆の安全を確認するため声をかけ、子供達はゆっくりと立ち上がる。どうやら沙綾も含めて全員怪我はなく、彼女は取りあえず安心し、視線を完全体へと進化したパートナーに向けた。

 

「言っただろ、マァマは"オレ"が守るって…」

 

灰色の恐竜はスカルグレイモンを見つめたまま沙綾へと声をかける。その声色は前よりも低く、口調も穏やかなティラノモンに比べて少し粗暴だ。

だが、それは暗黒の力に飲まれた時のような狂気を含んだものではなく、沙綾は彼に笑顔を向け、新しい彼の名を呼ぶ。

 

「うん…ありがとう…"メタルティラノモン"。進化、出来たんだね。」

 

メタルティラノモンは彼女の声に、自信に満ちた表情で頷いた。

 

 

 

沙綾の知識の中で、ティラノモン系統の完全体は2種類いる。

一つは、マスターティラノモン

走攻守全てに優れたティラノモンの完全上位種、姿はティラノモンとあまり変わらず、その性質もデータと似たワクチン種である事から、戦闘方法などにも特に違いはない。

 

もう一つは、今目の前にいるメタルティラノモン

早さを削った代わりに、攻守においてティラノモンを圧倒的に上回る力を持つ。だが、性質がウイルス種へと変更されるため、性格がやや好戦的になり、戦闘方法も機械化した体で戦う分、違いが発生する。

 

他にもエクスティラノモン、マメティラモンなども存在するが、厳密には彼らはティラノモン系統ではない。

 

彼がマスターティラノモンではなくメタルティラノモンに進化したのは、ウイルス種であるデビモンのデータが進化への大きなウエイトを占めたのか、または、相手の必殺をその身で受け止めるため、彼が自ら防御力の優れた方に進化をしたのか、思い付く可能性は幾つかあるが、沙綾にもはっきりとした理由は分からない。

 

「沙綾君のティラノモンも進化したのか!?」

 

「お、襲ってこない!?」

 

メタルティラノモンを見上げ、丈とミミが警戒を示す。確かに、暴れまわるスカルグレイモンを見たその直後の進化なのだ。二人の反応は妥当だろう。だが、それに対して空と光子郎は反論をした。

 

「さっきの言葉を聞いたでしょ。ティラノモンは何も変わってないのよ。」

 

「僕達を守ってくれましたし。」

 

「まあ…確かに、」

 

「うん…そうよね。」

 

まだ多少の恐れはあるようだが、二人の言葉で彼らは納得する。どちみち、もうこの場はそれを信用する他皆に選択肢などない。そして、

 

「ヤマト!大丈夫!?」

 

子供達の身を案じたパートナー達が戦闘を放棄してここに到着したことで、太一のアグモンを除いた全員がこの場に集結する形となった。破壊の衝動で動いているスカルグレイモンにとって、それは絶好の機会。既に2回の必殺により、エネルギーは底をつきかけているのか、身体から黒いオーラを漏らしながらも、3度目となる必殺の体勢にはいったのだ。

 

「もうやめてくれ!グレイモン!」

 

太一の必死の叫びは虚しく、スカルグレイモンは再三脊髄のミサイルに点火をする。子供達が不安な表情を見せる中、沙綾だけは、その決意を示すようにスカルグレイモンを見つめ、そして、

 

「行くよ、メタルティラノモン!」

 

「任せろ!アイツはオレが止める。マァマは、オレが守るんだ!」

 

「むこうのエネルギーはもう残ってないよ。次の一撃を何とか防いで!」

 

「了解だ。打ち落としてやる。」

 

ティラノモンでは到底出来ない指示にも、彼は難なく頷いた。

 

 

白い煙を上げ、三度発射される『グラウンド・ゼロ』、それに標準を合わせるように、メタルティラノモンはその機械化された右腕をむける。近い未来、目の前の彼も使う事になるその『必殺』を放つために。

 

 

 

「ギガ!」

 

 

 

左腕で補助をするように右腕を支え、沙綾を守るため、彼は新たに搭載された自身の技の名を力強く叫ぶ。

 

 

 

「デストロイヤーッ!」

 

 

ドゴンと、

 

 

声と共に彼の右腕の掌からも、一発のミサイルがスカルグレイモンのミサイルに向けて放たれる。正式名称『ギガデストロイヤーⅡ』、核弾頭一発分に相当する威力をもったそれは、正確に彼の『グラウンド・ゼロ』に命中し、

 

「みんな!もっかい伏せて!」

 

 

お互いのミサイルの威力が横への衝撃を相殺した結果、コロッセオの中心で、縦方向に凄まじい爆発が巻き起こる。

 

(これでもうスカルグレイモンのエネルギーは底をついたはず…)

 

「これでいいのか?」

 

「うん、ありがとう、かっこよかったよ。」

 

メタルティラノモンが腕を下ろす、スカルグレイモンの最後の攻撃を防ぎ、爆炎が上がる中、沙綾はこの戦いの終わりを確信するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、爆風が静まり、発生した煙の奥で子供達は目を回して気絶しているコロモンを見つけ、太一を先頭に一行はコロッセオの反対側へと走り出す。

 

「コロモン!大丈夫か!」

 

コロモンを抱き上げながら太一は問いかけるが、歴史よりも多くのエネルギーを消費した彼は命に別状は無いものの、意識がなかなかもどらない。

 

日が沈みかけたところで、一行はこの半壊したコロッセオで夜を迎えることを決めた。

 

「ごめん…みんな、俺のせいで…ごめんな…コロモン…」

 

 

そんな中、コロモンを抱きしめ、皆に頭を下げる太一の姿に、沙綾はファイル島でのある出来事を思い出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、

 

綺麗な星空が見渡せるコロッセオのスタンドで、太一は一人皆から離れた位置で肩を落としていた。

 

「何やってんだろ…俺…」

 

昼間に起こった出来事を思い返し、彼はため息をつく。

今もまだ眠っているコロモンを追い込み、スカルグレイモンの暴走に皆を巻き込んだ事を、太一は後悔していた。そこへ、

 

「一人で何してるの?みんな心配してるよ。」

 

黒い髪をなびかせた少女が、彼の隣へと腰をかける。珍しく、彼女は今自分のパートナーを連れてきてはいなかった。

しかし、太一にとって、今はこの少女こそが一番顔を合わせにくい、同じアグモンを連れながら、完全体となったパートナーを暴走させた自分と、タグも紋章もなしにそれを止めた彼女の間に、何か決定的な違いを見せられたような気になるからである。

 

「沙綾か……今は…一人で考えたいんだけど」

 

「やっぱり、昼間の事、気にしてるの?」

 

「当たり前だろ!沙綾のアグモンは上手く進化出来たけど、俺のアグモンは手がつけられなかった。勿論それが俺の責任なのは分かってる。でも、そのせいでコロモンは眠ったまま、みんなも危ない目に会わせちまった。気にするなっていう方が無理だ。」

 

沙綾の問いかけに対して、太一は感情をむき出しにして捲し立てるようにそれを返す。それほどに今の太一には余裕がないのだろう。しかし、沙綾は彼の大声を聞いても、慌てる事なく口を開いた。

 

「ねえ、ファイル島でティラノモンが一度暴れた事、覚えてる。」

 

デビモンを倒した直後に起きたその出来事について彼女は語りだす。

 

「私もあの時、たぶん今の貴方と同じ事を考えてた。私のせいでって、私が"余計な事"をしなければって。」

 

「でも、それはデビモンが乗り移ったせいだろ。」

 

沙綾以外の子供達にとって、それは共通の認識だ。だが彼女はそれを否定する。それでも流石に全てを話すことは出来ないのだが。

 

「ううん。あれは間違いなく私のせいだよ。だから、本当に泣きそうなぐらい悔しかったの。だけど、タグも紋章も無しに完全体に進化出来たのは、あの時エンジェモンに助けて貰った後も、デビモンの純粋な力がアグモンに残り続けていたからだと思う。」

 

「結局、沙綾は何が言いたいんだよ。」

 

話しの要点が掴めなくなった太一は、今度は沙綾へと問いかける。その声は先程よりも落ちついているようだ。そして、彼女はここで一番彼に伝えたかった事を話し始めた。

 

「貴方が今日した事は、絶対に無駄なんかじゃない。今はまだ怖いかも知れないけど、それでも貴方は必ず"本当の勇気"にたどり着く。私も今日それに気づいたの、だから、心配しないで、」

 

沙綾にとって、無駄に歴史を変えてしまった事も、結果をみれば、それによって子供達との絆を深める事には繋がった。彼らからの絆に気づけたからからこそ、彼女はあの土壇場でも諦める事はなかったのだ。

 

少しの間、沈黙が続く。先にそれを破ったのは太一であった。彼は夜空を見上げながら、ゆっくりと独白するように語りだす。

 

「俺、自分でも気づかない内に、焦ってた。紋章を持ってるのは俺だけだって、俺がみんなを守らなきゃって。」

 

「私も人の事は言えないよ。本当にさっきまで、私も太一君と同じだったんだから。だけど、今なら分かるよ。私達は一人で戦うんじゃない、みんながついてるんだって。」

 

「ああ、なんで忘れてたんだろう。」

 

太一の表情は先程に比べて落ちついており、それを見た沙綾も頬を緩め、しばらくした後、彼女は立ち上がった

 

「じゃあ、私はもう戻るね。太一君もあんまり考えすぎないようにね。」

 

 

「ありがとう。沙綾…」

 

去り際に太一が呟いた一言は、沙綾に届く事はなく、彼女は皆の元に戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、沙綾が歴史に介入した事によって、パートナー達の被害は抑える事が出来たが、コロモンの容態は歴史よりも重く、"危機を煽った"という意味では、あまり良い結果とはいえない。

 

それでも、彼女にとって今日の出来事は、子供達との『絆』を確認する重要なものとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「沙綾ちゃん、ちょっと…」

 

「あれっ、どうしたの空ちゃん? 」

 

「あっ!私も付いてくー!」

 

 

その後、太一の元から帰ってきた沙綾が、何故か空とミミに挟まれるようにして再度何処かへ連行されていくのを、ヤマトを始め、他の子供達は不思議そうな目で見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




進化先はやっぱりメタルティラノモンです。
というより、彼にしておかないと後々不都合が…
ある意味、メタルティラノモンになった一番の理由は、作者の都合ですかね。

ちなみに沙綾のアグモンは、この時既に寝ています。
初進化の疲れですが、彼は自力での進化ですので、サーベルレオモンなどと同じく、幼年期まで退化してしまうことはありません。戦闘力自体は、紋章の力を受けた他の子供達の完全体とあまり変わりませんが。



このスカルグレイモン戦は、中盤からオリジナル展開でしたが、いかがでしたでしょうか。
結果は同じ所に落ちつきましたが、原作よりも、コロモンへのダメージは大きくなってしまいました。

ご意見、ご感想等、いつでもお待ちしております。
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