漂流物のファミリア
【ヘスティア・ファミリア】には妙な連中がいる。廃教会にて出現した【漂流物】と呼ばれる者たち。彼らはオラリオをひっくり返しかねない力を持っている。力、知略、知識、それら全てがオラリオやそれが存在する世界をひっくり返しかねないものである。今分かっているのは【島津豊久】や【織田信長】それに【那須与一】に【安倍晴明】等々。彼らは【ファミリア】を育てた。そのおかげで規模は中堅、そして戦力は対人ならば【ロキ・ファミリア】よりも強いとされている。【量より質】そんな時代に量と戦術で勝負をしかけ、ほとんどの勝負に勝っているのだ。【ソーマ・ファミリア】に【アポロン・ファミリア】等々、彼らが滅ぼしたファミリアは中堅、零細、最大ではないにしろ大きなファミリアでさえも彼らに滅ぼされた。彼らはオラリオの法ではなく自分の法で動く。ギルドでさえも何度罰則を課したものか、それでも彼らは止まらない。まあ、団長である豊久が止まらないだけではあるがもう、ギルドは諦めた。【ヘスティア・ファミリア】担当の【エイナ・チュール】というハーフエルフの胃が死にかけているだけだ。胃薬を常備して、常に虚ろな目でいるだけである。
今は【アポロン・ファミリア】の本拠を改装してそこを拠点にしている。そこで色々と信長やヘスティアや豊久に救われた人々が仕事をしている。大体、豊久は救った人のうちの一人である【リリルカ・アーデ】を連れてダンジョンに潜っていることが多い。鍛冶師を抱え、魔術師を抱え、弓師を抱えている。かの【勇者】よりも頭のキレが良い織田信長や【ハンニバル・バルカ】に【スキピオ・アフリカヌス】。弓使いの中で最高の腕を持つ那須与一。【万能者】と同じかそれ以上の物作りの腕を持ち、陰陽術を使いこなす【安倍晴明】。なんとなく、そこにいて外交担当の【サンジェルミ伯】。他のファミリアには【ポセイドン・ファミリア】に【山口多聞】と【菅野直】がいる。そんなところだろう。ちなみに【廃棄物】は存在しない。
豊久の太刀は【不壊属性】を付与された一級品だ。しかもそれが何本か用意されている。与一は何よりも弓の腕が立つ。爆薬等々、そんなものがあると与一や弓を使うエルフ衆の価値は高くなる。信長や数少ないヒューマンの衆は銃を使う。火縄銃などとは違う、完全な近代の武器である。ドワーフは豊久と共に突貫するのだ。死んでも誉れ、そんなふざけたような、狂ったような思考をして笑っている。全ては頭領である豊久のせいである。うん、島津って怖いね。
取り敢えず彼らが遠征でやることは信長やスキピオが中心になっての全体の指揮。ドワーフは豊久が、弓を使うエルフ衆は与一が、後衛である魔術師や治療師にヒューマンは信長とスキピオが直接指揮をとる。
モンスターにだって感情はある。恐怖はある。モンスターに前衛や中衛、後衛はない。理性のないモンスター相手に人間の策が通じないか?否だ。いつだって人間が勝ってきたのはそれがあるからだ。知識によって全てを貪欲に集め続けて発展してきたからだ。神に依存した世界で一貫して人であることに傾倒し続けた。それが彼らだ。【ヘスティア・ファミリア】だ。
彼らと共同で遠征する物好きなど存在しない。しかし、時期が被ることはある。総大将は【島津豊久】だ。周りはその豊久に振り回されるだけなのだ。
目の前から【フォモール】の群れが迫り来る。ダンジョンの【深層】である四十九階層。目の前には島津十字、甲冑を着込んだ武者を先頭とする集団が目にはいる。人間を殺す、そんな単純な思考を、深層の住人であるから上層以上に知能を持つモンスターは存在しない。勝ち続けているから、強いから感情が失せて殺すことしか考えない。
後衛では詠唱が始まる。弓に矢をつがえる。スコープを覗く。肩に太刀を乗せる。
大きな音だ、銃声が鳴り響く。
『ヴォッ!?』
眉間が貫かれる。モンスターとて人型、脳のあるそこを突かれれば容易く死ぬ。生き物を殺すならば脳を潰せばいいのだ。頭蓋ならば通せる。恐怖はなけれど動揺はある。だからこそ、彼らはそこを狙っている。
「オオオオオオオオオオォォォッ!!」
人の声とは思えない雄叫び。それがフォモールの首を容易に刈り取る。それに続くドワーフ衆が次々に首を掻っ切ることを狙う。足並みが崩れたフォモールがそれに対応できない。
『ヴォッ』
『ヴァッ』
「トヨォっ!」
「応っ」
散開する。無論、それは巻き込まれないためだ。逃げた、そう認識してフォモール達は追撃しようとする。否か、追撃しようとしたのだ。砲撃、そんなものが雨のように降り注ぐ。追撃しようとしても、本能的な恐怖が勝る。簡単に、フォモールは全滅する。
「うわぁ、今回も私の出番なかったなぁ」
「それだけアイツらが優秀なんだよ」
信長の指揮する銃部隊。スキピオの指揮する魔術師部隊。豊久の指揮するドワーフ部隊。それらによって簡単にモンスターは死ぬ。しかし、ここはダンジョン。じっとしていては消耗するだけ。五十階層に向かうことになる。
「な、なんだぁっ。あれ」
信長の言葉である。彼が見る奥にあるのは緑であった。壁を、天井を埋めつくしている緑色の芋虫。
「ハッハー、すんごい数じゃのう!」
「あれは【ロキ・ファミリア】の野営かな。どうします?信さん」
「話ぃ、聞くしかねぇだろうよ。あれは多分ウラノスの言ってたやつだ」
細かいことは分からないとかの神は言った。調べてきてくれとかの神は言った。遠征になぞらえてそれを調べに来たのだ。
「私が行ってきましょうか?」
与一が言う。与一ならば、適任だろう。遊撃も弓の腕も、俊敏も全てにおいて現在の第一級冒険者に劣っていない。
「あ、ああ。頼む」
信長はそう判断する。
それはいきなりやってきた。下の階層から続く階段から、緑色の巨大な芋虫が現れたのだ。フィンなどの【ロキ・ファミリア】の幹部陣は【ハイエルフ】であるリヴェリアを除いて【ディアンケヒト・ファミリア】からの【冒険者依頼】を受けて五十一階層にある【カドモスの泉】より泉水を持ってくるために幹部のみで下の階層に向かったすぐあとだった。そしてオラリオ最高の弓取りが現れたのは少し経ったあと、幹部が戻ってくる直前のことであった。
「リヴェリア殿」
女とも男ともとれない声。リヴェリアはその声に覚えがある。
「与一!」
「アレはどんなもので?」
リヴェリアは歯噛みするが芋虫のことを与一に洗いざらい話す。体内に酸が貯まっていること、死ぬ際に自爆すること。簡単なものであるが良いものであると信長にそれを報告する。それのついでにフィンたちのことも話す。
「で、あるか」
そして、信長は悪魔のような笑みを浮かべる。
さて、ダンまちだと豊久や信長がダンまちの世界に行ったらどんな生活を送るでしょうか。国奪りしそう、多分。