レベル1とは【神の恩恵】を貰った直後、または器を昇華させるような偉業をなしていないものを指す。世間一般的には【新米冒険者】と呼ばれ、冒険者の中でも一番下のものたちのことだ。しかし、そんなレベル1と言われている者が【ファミリア】の団長をやっている【ファミリア】が中堅に存在する。言わずと知れた、戦争で負けることはありえないとされている、オラリオの問題児【ヘスティア・ファミリア】だ。その団長である【島津豊久】は未だにレベル1であった。そんな【ヘスティア・ファミリア】が遠征に出かける一日前のこと。
「エイナさーん!!」
白髪の少年、純新無垢な田舎者。そんな印象を与える【ベル・クラネル】がギルドにて彼が初めてギルドを訪れた際に対応してくれた【エイナ・チュール】に大声で嬉しそうに呼びかける。その後ろにはなにやらエイナに撮って見覚えのある女神がいた。
「あ、ベル君。【ファミリア】は見つかった、って神ヘスティアァ!?」
ロリ巨乳にツインテール、女神に自堕落等、属性山盛りの女神【ヘスティア】がベルについてきていたのだ。彼女の目もまた、虚ろであった。
「えっと、まさか。ベル君【ヘスティア・ファミリア】に?」
「はい!そうです!」
「ああ、神ヘスティアこちらに」
「ああうん」
純新無垢な笑顔を他所にエイナはヘスティアを近くによびよせる。
「何やってるんですか、神ヘスティアっ!」
「だってしょうがないじゃないか、あの子が困ってたんだからさ」
「それは、そうなんですか?」
ベルのファミリア選びはまだ初日であった。故に進捗をエイナは知らない。
「大体のファミリアから門前払いくらったんだってさ」
「ええっ、いやまあそれは分かりましたけど」
「ボクも気乗りはしなかったんだけどね、放っておけなかったんだよ」
問題児だらけの【ヘスティア・ファミリア】に入ったらどうなるか?魔術師はハンニバルに木苺を与えることを義務だと思うようになり、弓士は語尾にゲンジバンザイと付けるようになり、ドワーフは笑って死ぬるが普通と普通のパーティからは絶対に受け入れられないようになり、ヒューマンは大体本拠に篭もる。オラリオ全体から見ても【異端】と位置づけられ、同胞を大切にすると評判のエルフからも少し距離を置かれている。ちなみにハイエルフへの敬意なども一切ない。
そんな【家族】というより【組織】としての側面が強いとともにかなり結束力があるあの【ファミリア】に行けば絶対ベルは悪影響どころか、豊久に染めあげられるかもしれない。そんな懸念は当然のことにエイナとヘスティアの脳内に浮かび上がる。
「【ミアハ・ファミリア】とかマシな所あったじゃないですかっ」
「いやぁ、うん。それは思ったんだけどね」
あそこはあそこで魔境になっている。この世界に【廃棄物】はいないが、元なら存在する。【ミアハ・ファミリア】ならば【アナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァ】である。【アストレア・ファミリア】ならば【土方歳三】がいる。ジャンヌとジル・ドレェはどこにいるかは知らない。存在することは知っているが。黒王?いまなら立川でバカンス楽しんでるんじゃないですか?
「あそこはあそこでなんとなく悪影響ありそうでさ」
「貴方のところよりはマシでしょうっ!?」
「言うねぇ、事実だから何も言えないな」
いつもの苦労をヘスティアにぶつけているようにも見えるが、それを疲れたような笑みでハッハッハ、とヘスティアは受け流す。
「となると、一年後。染まるには十分じゃないですか。馬鹿なんですか?」
「おっと、心は硝子だぞ」
「知りませんよ。日頃バイトしてて苦労から逃げているあなたがよく言いましたねぇ‥‥‥!」
事実としてヘスティアは仕事を全ては信長や童貞役人に押し付けている。
「ボクとしても後悔してるのさ!」
「してても行動しちゃってる時点で駄目なんですよっ!ベル君は近年稀に見る純粋な子なんですよっ!」
「ええ‥‥‥。キミ、ベル君に肩入れしすぎじゃないかい?」
「癒しですから」
キリッ、とされても困る。そんなことをヘスティアは思うが口には出さない。豊久もある意味純粋ではあるのだが、それが首取りに振り切っているのだ。
「ま、まあ受理はします。しますけど、絶対に」
「分かってるってば」
エイナとヘスティアは苦労人仲間である。それが故に、かなり仲がいいのだ。巷ではエイナとヘスティアのカップリンクができているらしい。いや、なんで?
「エイナ君。ボクからも相談があるんだ。あ、ベル君は先に帰っててね」
「あ、はい。分かりました!」
「よし、個室に案内してくれ」
「え?ああ、はい」
ヘスティアはエイナと共に個室に入っていく。ベルの【ステイタス】についての相談なのだが、やはり良からぬ噂もたっていく。
ベル・クラネル
Lv 1
「力」 I 0
「耐久」 I 0
「器用」 I 0
「敏捷」 I 0
「魔力」 I 0
魔法
【聖女の火】 これはかの救国の聖女のもの。邪悪なるものを焼き尽くす役目は少年に託される。
スキル
【島津への憎悪】廃棄物として相対した男への憎悪。早熟する器によって男を焼き尽くさんことを。
「‥‥‥は?」
「そうだよね、そんな反応になるよね」
いままで見たことも聞いたことも無いもの。エイナの常識にないステイタスであった。魔法には詠唱式がなく、スキルも抽象的どころか意味がわからないものになっている。それに不穏なスキルである。【島津への憎悪】、これは豊久へのものだろうか。そうでなくともこの上なく物騒なものだ。
「誰かの影響なんだと思う。ベル君は心当たりがあるって言ってたんだ」
幼い頃に助けられたのは鎧を着込んだ女性。その女性の名は【ジャンヌ・ダルク】といったそうな。傍には大男【ジル・ドレェ】もいて、元々ベルの住んでいた村にいたのだという。夢を語れば彼女はいい顔をしなかった。それでも、なりたいというならばと稽古をつけてくれることになったのだ。ジルとジャンヌ、二人の扱きはベルに新しいものを見せてくれたのだという。
「それによって発現したのが」
「これってことだね。頭痛くなってきた」
ベルが語ったのはジャンヌの操る炎の恐ろしさ。上手く火力を調整していたようだが、本気でやれば人やモンスターなぞ容易く灰にかえすような威力でったらしい。
「これは秘匿しましょう。ええ、その方がいい」
「うん、そうだね。まだノブにも言わない方がいいかな」
「あ、そういえばベル君の訓練は誰がやるんです?」
「え?うーん、確か豊久くんだったかな。‥‥‥あ」
「アホぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ヘスティアがやっちゃった的な反応をすると、エイナの絶叫がギルドを包む。無論、エイナは上司に怒られたとさ。
ここのベル君はジャンヌに強い影響を受けています。豊久にしようとは思ったんですけどね、それだとパクっちゃってるみたいだなぁ、と。まあこれから影響受けまくるんだけどネ!