転スラ世界に転生して砂になった話   作:黒千

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113話 迷宮計画~もうひとり

 

 リムル、ヴェルドラ、ラミリス、俺。

 四人で地下迷宮の最下層に集まり、ダンジョン作りの相談を行う。魔物の供給問題は解決したし、次なる課題は内装と仕掛けについてだ。

 

 ラミリスは、『迷宮創造(チイサナセカイ)』の中では様々なことが実現出来る。迷路の構造変更は自在で、暗闇階層や低天井階層という特殊フロアの他、毒矢や毒沼、爆発宝箱といった罠も具現化可能。

 まあ、アイデアを出すことに関しては、前世でダンジョン探索型ゲームをやったことのあるリムルや俺の方が得意だった。

 

「アンタ達、よくこんなに色々思い付くわね……」

「フーム、移動床の先に切断糸か……リムルは嫌がらせを考えるのが得意だな」

「はっはっは、これが経験の差というものだよヴェルドラ君」

「俺も考えた! ワープ床か落とし穴で、魔物部屋の真ん中に出るようにしない?」

「お前のも殺す気満々じゃねーか」

「違う違う、これは部屋の中央で全体攻撃かましたら絶対気持ち良いだろっていう配慮!」

「一般冒険者はな、お前の砂みたいな攻撃手段は持ってないんだよ……」

 

 もし罠や魔物にやられてしまっても、ラミリス製の使い捨てアイテム"復活の腕輪"を身に着けていれば蘇生可能なので、対策さえ怠らなければ命の危険もない。

 そしてラミリスの配下なら、迷宮内ではアイテムがなくても不滅の存在になるという。ラミリス自身は殺されてしまえば終わりだが、不死身の軍勢が守る難攻不落の魔王城を作り出せるのが、『迷宮創造(チイサナセカイ)』というチート能力なのだ。あ、ラミリスの配下と言えば──

 

「来た来た、ベレッタ! なんかね、リムルが話があるんだって」

「リムル様、ワレに御用でしょうか?」

 

 呼び出されて最下層にやって来たベレッタから、リムルが製作者命令(マスターロック)を解除する。そしてベレッタの真の主(マスター)の座は、リムルからラミリスへと委譲された。

 驚いているベレッタやラミリスの前で、リムルが笑う。

 

「ベレッタ、これでお前の主は正真正銘ラミリス一人になった。お前がしっかりとラミリスを守ってやってくれ。これなら、ギィに文句言われることもないだろ?」

 

 先日の魔王達の宴(ワルプルギス)で、ギィはラミリスにベレッタという配下が出来たことを知ったが……ラミリスの古い友達であるギィは、ベレッタが複数の主を持つ状態であることが気に入らなかった。それでその時、今後はラミリス一人に仕えるという宣誓をベレッタにさせている。

 ベレッタとしては、ギィの手前もあってそう誓いはしたが、これからもラミリスとリムル(と、おまけに同格の俺)に仕え続けたい、と言ってくれていて……

 

 それはマズイだろ、とはリムルの言。魔王の中でも最強とされるギィとの約束を破れば、ベレッタが無事では済まないかもしれない。製作者の自分に義理立てしてくれるのは嬉しいが、ラミリスと一緒にテンペストで迷宮運営を手伝ってくれるなら同じことだから、と。

 

「リムル様……感謝致します。この命に代えましても、必ず──」

「ベ、ベレッタちゃんがアタシの本当の配下に……!」

 

 深々とリムルに頭を下げるベレッタと、心底嬉しそうな笑顔を見せるラミリス。

 うんうん、良かったな二人とも。俺は、ラミリスとベレッタが普通に俺と仲良くしていてくれるなら異論はないので、ヴェルドラと一緒に大人しくその光景を見守った。

 

 さてさて。

 ベレッタは地上での作業に戻り、俺達は相談を再開──というところで声が上がる。

 

「あ、ギィで思い出したんだけど」

 

 空中で、くるりとラミリスが振り向いた。

 ねえレトラ、と俺を呼びながら…………? 

 

「ギィには気を付けた方がいいよ? ギィってば、昔から『渇望者(カワクモノ)』を捜してるのよねー」

「は」

 

 予想していなかったタイミングでぶち込まれた話題に、俺は言葉を失った。

 突然の闇討ちに遭った気分である。

 っていうか、こんな所でそんなこと言ったら──

 

「…………おい、ギィが何だって? ラミリス、どういうことだ?」

 

 うわああリムルに知られたああああ! 

 リムルの要警戒リストにギィが入るじゃん! ダメだ、原初の赤(ルージュ)は相手が悪すぎる……今の今までほのぼのしてて超楽しかったのに、何だこの急展開……!? 

 

「んーっとね、ずっと昔に『渇望者(カワクモノ)』を持った人間が暴走して、一国が滅ぶ事件があったのよ。その時はギィが解決したんだけど」

「ギィがそいつを倒したってことだな?」

「そうみたい。アタシはギィに頼まれて、『渇望者(カワクモノ)』を見たっていう精霊の子達を紹介しただけだから、詳しくは知らないけど……そのスキルが何度もこの世に現れるから、捜してるんだって」

 

 俺が"白氷宮"に攫われてやっと聞かされたような情報を、ラミリスが無邪気に暴露してゆく……これは間違いなくラミリスの親切心なので、文句なんて言えないけど。

 

「何でギィは『渇望者(カワクモノ)』を捜してるんだ? まさか、今度こそ倒そうってことなのか?」

「捕まえときたい、みたいなこと言ってたかなあ」

「捕まえ…………」

 

 スィ……とリムルの纏う空気が冷えた。いや、弟があんなヤクザの標的になるとか、そりゃ心配するに決まっている。そんな反応にもなるだろう。

 黙っている俺に気付いたリムルが、俺を安心させようとしてか、表情を緩めた。

 

「レトラ、大丈夫だ。ギィの好きにはさせないからな」

「……うん」

 

 ウッ、罪悪感が……! 

 俺はもう二回ギィに誘拐されている。毎回無事に解放してもらえるのは、俺がギィとのことを口外しない代わりに、ギィは俺を家に帰すという約束をしているからだ。

 これ、破ったらどうなるんだ? やっぱりマズイか? 契約違反を盾にされ、()()()()()()()()()()()()なんて事態になったら目も当てられないんだけど…………あ、ウィズ? 待って、考え事してるから後にして…………

 

「何だっけなー、ギィは仕事って言ってたかも」

「魔王が何の仕事してるんだよ……」

「よく知らない! ミリムもたまに、ギィを手伝って魔獣退治とかやってるみたいよ?」

「安心するのだ。たとえギィの頼みであっても、ワタシはレトラを退治したりしないぞ!」

「ありがとミリム。すごく助か…………る?」

 

 揺れる桜金色(プラチナピンク)のツインテール。

 いつもの魔王服(紐パンツ)ではないが、キャミソールにショートパンツ、両腕にドラゴンナックルという普段とあまり変わらない元気な露出度で、ミリムが立っていた。

 ウィズが俺を呼んでたのはコレかー……後でって言ったな俺。ごめんな。

 

「ミリムお前、よくこんな所まで来られたな?」

「何やらお前達が、面白そうなことをしている気配がしたのでな!」

 

 呆れ顔のリムルに、ミリムはフフンと胸を張って答える。ラミリスが支配する迷宮内なのに余裕で入り込んでくるとか、とんでもないヤツである。

 ミリムは颯爽と俺達に近付いて、会話に参加してきた。

 

「ギィの話をしていたな? ギィはこの世に大きな力を持つ者が現れると、様子を見に行くことがあるのだ。魔王同士には不可侵条約があるが、外部の者を退治するのは問題ないからな。ワタシに譲ってくれることもあるぞ」

「そう聞くと、やっぱりギィは戦うのが目的って感じがするが……」

 

 ギィは強い奴に喧嘩を売ってくスタイルの魔王番長でありながら、世界を守る仕事してるんだよな……厳密には、世界が滅びないようにってことなので、特別誰かの味方ってわけでもないんだけど。あと、不可侵条約さんはもっと仕事して欲しい。誘拐反対。

 

「あのさ……ラミリスは知ってたみたいだけど、ヴェルドラもミリムも、ギィが『渇望者(カワクモノ)』を捜してることは知ってたの? 俺がその『渇望者(カワクモノ)』の持ち主ってことにも気付いてた?」

 

 素朴な疑問だった。『渇望者(カワクモノ)』は昔から悪名高かったようだし、ここに集まっているのは"竜種"や最古の魔王達という、歴史の生き証人とも言える顔触れだ。俺はあまり隠さずに『風化』を使ってきたし、実際にギィは『風化』を見て気付いたらしい。じゃあ、俺を見てピンと来る人は結構いるのかな、という疑問への反応は──

 

「それがだな、我は、ギィや『渇望者(カワクモノ)』とやらには興味がなかったのでな……」

「ワタシはギィから聞いていたが、今まで忘れていたのだ!」

「実はアタシも見たことなくて、最近まで全然!」

「誰も気付いてなかったんだ!?」

 

 ま、まあ、ヴェルドラは昔ギィに倒されてるし、ギィの傍にはヴェルザードさんもいる……何となく二人を避け続けてきた結果、『渇望者(カワクモノ)』とも関わりがなかったんだろう。

 ミリムは俺の『砂操作』や『造形』の方を気に入っていたから、『渇望者(カワクモノ)』を思い出せなかったのかもしれない。『風化』を警戒していたトレイニーさん達だって、俺が破壊活動をしないから、本当に『渇望者(カワクモノ)』かどうかわからなかったって……ん? トレイニーさん? 

 

「ラミリス、もしかして……俺のことはトレイニーさんから?」

「そーよ? アンタが『渇望者(カワクモノ)』を持ってるって、魔国(ここ)に来る前に教えてくれたの」

 

 なるほど、トレイニーさん経由か。

 あっさりと頷いたラミリスは、でもさ、と笑った。

 

「アレが暴れ出すと大変みたいだけど、アンタなら大丈夫ってトレイニーちゃんが言ってたよ。アタシもレトラは良い子だと思うし、気にしないからね!」

「うん。ラミリス、ありがとう」

 

 今は堕落して妖精となっているラミリスだが、その正体は"精霊女王(エレメント)"。精霊達の頂点に立つ存在として、破壊者である『渇望者(カワクモノ)』を敵視していて当然だが……ラミリスは俺がその所有者だと知っても、俺を友達と言ってくれたのだ。

 それと、トレイニーさんは俺を擁護するために、ラミリスに『渇望者(カワクモノ)』のことを伝えてくれたみたいだな。頼れるお姉さんぶりがまだ生きてて感動した。

 

「心配することはないのだ! レトラに手を出したら許さないと、ワタシはちゃんと魔王達の宴(ワルプルギス)で言っておいたからな!」

「ああ、そうだったな。もしギィがレトラの『渇望者(カワクモノ)』に気付いたとしても、ミリムのあの宣言が抑止力になるってこともあるのか……よしミリム、頼りにしてるからな」

「任せるのだリムル! レトラのことはワタシが守ってやるぞ!」

 

 リムルにヴェルドラ、ラミリス、ミリム……ヴェルザードさんもきっと俺の味方になってくれる。これだけ揃えば、ギィと言えども一筋縄ではいかない──……だからこそ、ギィはこっそり俺に接触して口止めすることを選んだんだろうなあ! まんまと協力させられてて腹立つ! 

 

 ……ごめんリムル、俺もうちょっと黙ってるよ。やっぱりギィとの約束を破るのは危険すぎる。むしろギィはそれを待っているという可能性もあるので、隙は見せられない。

 このままにしておいても、リムルとギィが原作通りに話し合いの場を持つ頃には片が付くだろうという予想はあった。ギィは魔国の戦力が過剰すぎると文句を付けに来るので、きっとその時に俺のこともウヤムヤになる……はず! だと思う! 

 

 

 

 それから、ミリムとラミリスの仲良しコンビが、魔国に住んでいるなんてズルイだの、自分の方が働いていて偉いだのと口喧嘩を始め──「喧嘩している人にはオヤツは無しです!」と、シュナに怒られて静かになった。

 シュナが持ってきてくれたオヤツは、生クリームたっぷりのホールケーキ。最近ウチでは、イングラシアでパティシエをしていた"異世界人"の吉田さんの引き抜きに成功したので、出てくるスイーツのレベルが桁違いなのだ。

 まさに芸術品のようなケーキの味に、二人とも歓声を上げている。

 

「何コレ何コレ! こんなの食べたことないんですけど!」

「美味いのだ……! 相変わらずこの国には美味しいものがたくさんあるな!」

 

 敷いたシートに輪を作り、皆で楽しいおやつタイム。勇んでお代わりをするミリムやラミリスやヴェルドラに、シュナがケーキを取り分けてくれている。

 うーん、一時はどうなることかと思ったけど、ケーキは美味いし、ようやくギィの話題から離れられたし、平和っていいな……という満足感に包まれていた俺、だったが。

 

「シュナ、料理の研究の方も進んでるか?」

「はい、リムル様。実は先日レトラ様から、貴重な香辛料をお譲り頂いたのです。ルビークラウンペッパーという、お料理に芳醇な奥行きを生み出す隠し味として使われるものなのですが……王城の料理人でも入手困難な品とのことで、吉田さんが大変感謝しておりましたわ」

 

 開国祭で王侯貴族達に出す料理の多くは、シュナと吉田さんが協力して手掛けることになっている。その応援として、運良く俺が手に入れたスパイスを渡した覚えがあるけど……あれ? でも、それって確か──

 

「へえ、レトラがそんなもの持ってたなんてな」

「何でも、町を訪れたさすらいの旅商人から購入したものだとか……そうでしたね、レトラ様」

「…………うん」

 

 微笑むシュナに頷きながら、俺の心がヒヤァァッと凍る。

 何を隠そう、その香辛料は……ギィの所から貰って来たお土産だった。

 

 ──もし誰かにギィさんのこと見られてバレそうになったら、さすらいの旅商人ギーコさんってことで誤魔化しますからね! 

 

 二回目の"白氷宮"訪問時、そう言ったのは俺だけど……それが青髪メイドのレインのツボに入ってしまったらしい。帰り際、キリッとした顔を取り繕ったレインが、「ギーコ嬢との商談の証としてお持ち下さい」と、小さな包みを渡してくれたのだ。

 

 後日、吉田さんとシュナの料理研究会に味見係として参加した俺は、香辛料の話を聞いて、レインに貰ったアレじゃね? と気付いてしまった。そりゃ、持ってるんだからあげることにしたよね……どこで手に入れたって話になるから、旅商人から買ったって言うしかないよね……? 

 ギーコさんの名前は出していないのでバレないと思うけど、結局ギィの話題に戻ってるのは何でだよ! 因果応報だよ! 俺の! 

 

「かなり高級品みたいだが、そんなのよく売ってくれたな?」

「お試しってことで少しだけ……ま、まあ、少し手に入れば良かったし?」

「ははーん……その商人、やらかしたな」

 

 俺は現物を溶かして構成情報をゲットすれば、『創造再現』を用いた無限製造機と化すので、どんなに希少なシロモノであっても、少量で充分なのだ。それを知っているリムルは、ズル賢い奴めと言いたげに笑って、不審に思った様子はなさそうだった。き、切り抜けた……! 

 

 で、ルビークラウンペッパーの構成情報は獲得済みのため、今後魔国での供給が途絶えることはなくなったけど……加減は必要だと思う。とりあえずシュナ達には、開国祭用の料理の研究にだけ使うようにと、量を決めて渡しておいたのだった。

 

 

 

 

 めちゃくちゃ脱線してしまったが、この集まりの目的は迷宮作りの相談だ。

 途中からやって来たミリムにも、開国祭とその目玉イベントの一つである地下迷宮について説明すると、ミリムは頬を膨らませて俺達に抗議した。

 

「こんな楽しそうなことをワタシに内緒で計画しているとは……リムルもレトラもひどいのだ! 親友(マブダチ)のワタシに声を掛けてくれてもいいだろう!」

 

 つい最近見たような光景に、俺は心の中で猛省する。

 リムルとブルムンドから帰って来た後、ヴェルドラが拗ねてしまったのは本当にビックリした。ヴェルドラは町に行くより漫画読む方が良いんだろうなって思ってたけど……そういう問題ではなく、ヴェルドラは仲間外れにされたのが嫌だったのだ。今のミリムみたいに。

 

「何言ってんだ、今度遊びに行くって俺に手紙を寄越したのはミリムだろ? だからこうやって、お前達を招待するべく色々と準備してるんじゃないか」

「ワタシの手紙を無視していたわけではなかったのだな!?」

 

 まーたリムルが器用に躱してる……いや、仲間外れにしたつもりはなかったんだから、悪気がなかったことを伝えて誤解を解くのは大事だろう。俺も謝っておく。

 ミリムはコロッと機嫌を直して、自分も迷宮作りを手伝うと言い出した。どうやら新しい領地の勉強が嫌になってフレイから逃げ出してきたらしく、また魔国に長期滞在しようという固い意志を感じる。家には一言くらい連絡した方がいいと思うんだけどな? 

 

「よし、オヤツも食べたことだし、そろそろ仕事に戻ろうではないか。ミリムも邪魔をしないと言うのなら一緒に楽しめばいい」

「師匠がそう言うなら、アタシもいいよ!」

 

 ヴェルドラが見せた大人の対応にラミリスも賛同し、ミリムも加えて再び議論が交わされる。

 ダンジョンに火山や氷雪地帯を設置する、というリムルの案は、エネルギーの維持が出来ないとラミリスに却下されてしまった。だがミリムが言うには、どこかに生息している火竜や氷竜を捕まえてきて迷宮に放てば、その階層をそれぞれの属性に合った環境に作り変えてくれるとのこと。

 

 ここでヴェルドラによる、"竜種"と竜族(ドラゴン)についてのレクチャーが入る。

 大きな違いは、"竜種"が精神生命体であるのに対して、ドラゴンは肉体を持つ物質生命体であり、その本質が恐竜(サウルス)に近いという点だ。ルミナスがヴェルドラのことをトカゲと呼ぶのは、この辺から来ているらしい。

 

「ドラゴンの起源は精霊竜(エレメンタルドラゴン)──我が兄にして最強の"竜種"たる"星王竜"ヴェルダナーヴァが、かつて娘であるミリムに与えたペットだが……そやつが死んで混沌竜(カオスドラゴン)となった際、世界に竜の因子がばら撒かれたのだ。以来、魔素溜まりから生まれる魔物の中には、下位龍族(レッサードラゴン)も含まれるようになったというわけだな」

 

 竜皇女と子竜の物語。以前リムルは、俺が襲撃事件で力尽きて亜空間に籠っている間にエレンから聞いたというお伽噺を、俺にも教えてくれていた。

 ミリムの友達だったペットが殺されてしまったという話は、かなりデリケートなものだと思うんだけど……ミリムは平気なんだろうか? 魔王に覚醒した切っ掛けは忘れてしまったとミリムは言ったが、そんなことはないだろう。きっと、普段はあまり考えないようにしているだけで。

 

 そっと振り返り、背後のミリムの様子を窺う。

 足元に視線を落とすように俯きかけていたミリムの顔が、急に持ち上がったかと思うと──どんっ、という衝撃があった。ちょうど並んで立っていた俺とリムルの間に潜り込むように、ミリムが強引に突撃してきたのだ。左右の腕に片方ずつ俺達の腕を抱えたミリムが、にぱっと笑う。

 

「大丈夫だ、寂しくないぞ! ワタシにはお前達がいるからな!」

 

 そっか。

 それなら良かった。

 

 そしてミリムは、火炎竜(ファイアドラゴン)氷雪竜(アイスドラゴン)烈風竜(ウインドドラゴン)地砕竜(アースドラゴン)の四系統の上位龍族(アークドラゴン)捕獲(テイム)するため、カブトムシ捕りのような気軽さで町を飛び出して行ったのだった。

 

 

 

 

 




※チラチラとバレゆく秘密


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