「ルミナス様。お待たせしました」
「来たか、レトラよ」
待ち合わせは午後二十二時半。
大通りから少し離れた並木道の片隅で、ルミナスが俺を待っていた。浴衣を着て銀髪を上げて、手には巾着という夏祭り仕様が可愛い。実際の季節が春だとしても。
俺も浴衣姿だし、夜店に繰り出すにはお誂え向きなんだけど……ルミナスは魔王であり神であるという正体を隠し、聖騎士付きのメイドに扮してお忍びで魔国へ来ている。魔国王弟として知られる俺と出歩くような余裕はない。ルミナスも納得してくれていて、待ち合わせには人目に付かない場所を選んだし、お互いに尾行や見張りには注意しながらやって来ていた。
「じゃあ行きましょうか。俺の庵はこっちです」
「うむ、楽しみじゃ」
ゆったりと頷き、俺の隣を歩き出したルミナスは機嫌が良いように見える……うーん、水を差すようで気が引けるけど、今のうちに言っておいた方がいいよな……
「あの、ルミナス様。実は〇時から仕事が入ってしまいまして」
「何じゃと? まだ仕事があるのか?」
「ええ、ちょっと打ち合わせが……」
ついさっきの、リムルとのやり取りを思い出す。
『レトラ、考え直せ! お前が危ない!』
『いやルミナスは大丈夫だって。ていうか、かなり前から約束してたし』
『俺の弟が無警戒すぎて泣きたい……』
頭を抱えて蹲ってしまったリムルの傍に屈み、大丈夫? と声を掛けていると、少ししてリムルがバッと顔を上げた。思いっ切り不本意そうな表情を、隠そうともしていない。
『約束してるなら……仕方ない、が……〇時までに迷宮の九十五階に来い』
『え、何で?』
『俺にだけ金策させて、自分はデートとか許されると思ってるのか……?』
『リムル、さっき金策は任せろって』
『いいから来い! 来なかったら俺がそっちに行くからな!』
『わかったよもー』
噛み付くような勢いのリムルに、はいはいと了解を返す。
まあ、一応仕事をしに行くリムルには申し訳なく思っているし……ルミナスとお茶する時間は充分あるんだから、俺も後でリムルに合流しようっと。
俺に仕事の予定があると知ったルミナスに、時間が勿体無いと急かされながら、俺達は目的地である"レトラの庵"に到着した。
古風な造りの庵はこの世界では珍しいだろうけど、ルミナスは魔国の宴会に参加したことがあるので、裸足で畳の上を歩くことにも、座布団に座ることにも、もうすっかり慣れているようだ。
俺の案内を受け、ルミナスは茶の間の座卓の前に腰を落ち着ける。
「今日は俺がルミナス様をお持て成しします。今、お茶を淹れますね」
「お前が淹れるのか?」
「任せて下さい」
俺には前世のカフェバイト経験があるため、コーヒーや紅茶を淹れる手順には案外詳しい。だが今回は、いつも紅茶を飲んでいるだろうルミナスに、緑茶を淹れようと思う!
じいちゃんとばあちゃんは緑茶派だったし、ハクロウを庵に招いて緑茶を出したこともあるし、人並み程度には淹れられるのだ。
まず、『創造再現』で沸かし立てのお湯を用意します。俺の砂が超絶便利。やろうと思えばダイレクトに淹れ立てのお茶すら作れるけど、そこまではしないでおこう。
二つの湯呑みに熱湯を注いで温めるついでに、お湯の温度を下げる。旨味と渋味のバランスを取るため、八十度くらいでいいかな。急須に茶葉とお湯を入れ、『解析鑑定』で抽出具合を確認して湯呑みに注ぎ……どうぞ、とルミナスに出す。
「ほう、これは……紅茶とはまた違う味わいじゃ。仄かな甘みを感じる……」
「緑茶は少し低温で淹れるんです。あ、新作のお菓子もどうぞ。練り切りって言うんですよ」
「初めて見る菓子だが、形と色は相変わらずじゃな」
小皿にちょこんと乗っている和菓子は、例の如くスライム型で、水色と砂色のセット。魔国にはこのパターンしかないのか? ってツッコまれるのも頷ける。
ここだけの話、もし紅茶を淹れるんだったら、お茶請けはマカロンにしようと思っていた。スライム型で、水色と砂色のセット。本当にこればっかりだな!
ルミナスは切り分けた練り切りを上品に口に運び、美味しいと言ってくれた。
「このお茶もお菓子も建物も、俺やリムルや、ヒナタが生まれた国の文化なんですよ」
「うむ、それと、前回の宴会で出ていた酒もそうじゃな? 確か日本酒と呼ばれておった……あれも美味であったぞ」
「あ、ルミナス様、お酒は飲みますか? 今日はお茶会にしようと思って、お茶と和菓子を用意したんですが、ご希望でしたらお酒も作れますよ」
サラサラッとね。俺は酔うつもりはないが、ルミナスが飲みたいなら付き合おう。
ルミナスは、そこまでしなくて良いと笑った。今日は俺の持て成しを受けると決めたので、俺に任せてくれるそうだ。
「そうだな……では、レトラよ。次は妾がお前を招き、持て成すとしよう。その時には、また酒を酌み交わしたいものじゃな」
「はい。是非よろしくお願いします」
宴会でお酌をし合った仲だからね、俺達。
いつになるかはわからないが、きっとルベリオスに招待してもらおう。
「それにしても、この国には目新しいものが多いのう。この"浴衣"も気に入ったぞ。以前、温泉で着たものよりも華やかだが、あれとは違うのか?」
「温泉で着る浴衣は、バスローブというかパジャマというか、室内用です。今着てる方の浴衣は外出用で……お祭りでは定番なんですよ」
「お前が昼間着ていた衣装もそうか?」
「あれは、正装として思いっきり飾り立てた着物ですね。普通はあんなの着て歩きません」
「なるほど、それぞれに用途があるのじゃな」
ルミナスがオーケストラや技術発表だけでなく、和の文化にも興味を持ってくれたというのは、悪い気はしない。次々と俺に質問しては真面目に聞いていたルミナスは……やがて、チラッ、チラッと俺に流し目を送ってきた。
「して、レトラよ……後学のためじゃ、昼間の装いをもう一度見せてくれぬか……?」
「後学っていうか、ルミナス様が見たいだけですよね」
いや効きませんけど? そんな目で見られても、俺の心は動きませんけど?
それよりも、そういう話の持って行き方だと、俺の姫様姿を見たいがために魔国を褒めた感じになるからやめて欲しい。台無しである。
「あれは開国祭用の飾り付けの一種だから、仕事以外では着たくないんですよ……この浴衣も、もう甚平に着替えたいんですけど良いですか?」
「待て待てそう急くこともあるまいせっかくの祭りの定番なのじゃろう? よしわかったこれ以上無茶は言わぬからせめてそのままの格好でいてくれ」
「(必死か)」
うーん、他国のお客さんの前で俺だけルームウェア、ってわけにもいかないしな。
ルミナスが美少女好きなのは知っているし、見た目上の分類では俺もそこに振り分けられるだろう。お持て成しのため、この可愛らしい浴衣姿の継続で手を打つことにしようか。
「俺は国相だから、謁見式では儀仗兵やるつもりだったんですよ。なのに急に"姫様業務"をやることになって……その所為で更に忙しくなったんです」
お茶とお菓子を楽しみつつ、世間話に勤しむ。
交換日記は少し前から止まっていて、今はルミナスの所にある。謁見式と開国祭の間際となると目も回るような忙しさだったので、ルミナスが気を遣って止めてくれていたのだ。
「俺の知らない間に玉座が一つ増えてた時は、驚きました……」
「リムルの奴め、どうしてもお前を隣に置いておきたいようじゃな?」
「魔国のためになるならやりますけどね……」
「いや、そうではなく……まあ良い」
なので、交換日記が止まってからの出来事を話しているのだが、ルミナスは毎日が変わり映えしないそうだし、俺も謁見式の詳細までは漏らせない。話せるのは愚痴か、政治とは無関係で当たり障りのないことくらいだ。
「そういえば、ヒナタとは同郷という話だが、お前やリムルは"転生者"だと聞いておるぞ。ならば、お前にも前世の名があるのじゃろう? 名は何と言うのじゃ?」
「俺ですか?
「ふむ……トウマか」
後は、俺のことだったら話せる。
もう呼ぶ人のいなくなった名前を久しぶりに名乗ったが、別に隠しているわけでもないしな。
「森の魔物達の謁見が終わって、次は開国祭が……ああそうだ、その前に、リムルがイングラシアから教え子達を招待したんです。それで、俺も子供達と知り合いになって……」
そこまで言ってから、あっと思った。
これは……クロエの話だ。本当はルミナスの親友で、ルミナスの最愛の人。
だけど、ここのクロエはまだそれを思い出していないし、まだルミナスのことも知らないはず……まずいな、考え無しだった。クロエの話は、ルミナスには辛い話題なんじゃないのか……?
「どうした? 今日ヒナタが面倒を見たという子供達の話じゃろう? お前のことじゃ、すぐに仲良くなったのだろうが……どのような子供達なのじゃ?」
ずっと話の聞き役に徹しているルミナスが、静かに続きを促してくる。そうすると俺も黙るわけにはいかず、子供達のことを話した。皆がリムルを先生と慕っていて、模擬戦では全員子供とは思えないほど強くて、でも素直で可愛い子供達だと。
クロエの話もした。長い黒髪の女の子で、絵本が好きで、剣と魔法を使う戦い方で……と語る間、ルミナスは穏やかに微笑みながら俺の話を聞いていた。
「あの、ルミナス様……」
「ん?」
「リムルが言ってたんですけど、ヒナタは明日、子供達を連れて歌劇場に演奏を聴きに行くそうです……良かったら、ルミナス様も会ってみたらどうですか?」
お節介かとは思ったが、歌劇場で遭遇することになるなら、心の準備も要るだろう。
ふふ、とルミナスが綺麗に笑みを零す。
「そうじゃな、それも良い……ヒナタに紹介して貰うとするか。妾も友となれると良いが」
ルミナスの声には、昔を懐かしむような響きが乗っていた。
というか、ヒナタも……ヒナタもそうなんだよなぁ……本当はルミナスの親友だけど、今のヒナタはそれを知らず、ルミナスを信奉し仕える聖騎士。
ルミナス、ヒナタ、クロエの三人は親友同士なのに……それを知っているのは、まだここにはルミナス一人しかいないのだ。
「大丈夫、友達になれますよ。皆いい子達なので」
「……では、お前はどうじゃ? レトラよ」
「え、俺が? 何ですか?」
「妾は、そなたのことを友と思うておるが……お前はどうなのじゃ?」
じ、とルミナスが俺に視線を向ける。
少し躊躇いのあるような、それでいて、間違いなくルミナスの本心が映し出されているとわかる真剣な眼差し。そういう目をされたなら、俺だってちゃんと応えよう。
「俺もです。ルミナス様は、俺の大切な友達ですよ」
「そうか……それは、嬉しいものじゃな」
表情を綻ばせ、ルミナスは笑う。
いつもよりあどけない、年相応の少女のような顔だった。
時が経つのは意外と早く、話をしているだけなのにもう一時間ほどが過ぎていた。午前〇時までにはお開きにして、リムルのいる迷宮の九十五階へ行かなくてはならない。
「もうすぐ時間か。多忙なことじゃ……いつも言っておるが、休んでいるのか?」
「もちろんですよ。お気遣いありがとうございます」
眠ろうとして眠れない時期すらあった俺としては、今はちゃんと休息を取っている。
ただ、ルミナスは俺の言葉をあまり信用していないようだった。ふーむ、と視線を下げて何か考え込んだと思ったら、ぱっと俺を見る。
「そうじゃ……ここで少し休むと良い。妾の膝を貸してやろう」
「え?」
「枕になってやろうと言っておる」
それでも何を言われたのかわからず、俺はぱちぱちと瞬きをした、と思う。
ルミナスが座卓の脇で正座を崩した横座りとなり、手でさらりと脚を撫でるのを、ついマジマジ見てしまった。膝を……枕に?
「ひざまくら……?」
「光栄に思え。普段の妾はこのようなことはせぬ」
「そんな感じがします」
いやそんなことより、膝枕? 膝枕って、あの?
俺は二次元でしか見たことないぞ……都市伝説のようなもんだと思ってた。砂の姿で膝に抱えられるのとも違うだろうし、どんな感じなんだろう。
…………ちょっと、興味あるな。
「えーっと……じゃあ、お願いします……」
「うむ、こちらへ来い」
せっかくルミナスがこう言ってくれているんだし、お言葉に甘えることにした。
俺の浴衣の帯は柔らかな兵児帯なので、少し横へずらせば邪魔にもならない。手招かれて畳の上を移動した俺は、この辺かな、という目測でルミナスに背を向けて腰を下ろした。そして、背中から身体を倒していく。
頭って重いよな、痛くないかな、と魔王に対しては失礼かもしれないことを思いながら、頭をゆっくりとルミナスの太腿に乗せて…………うわ、わ、柔らかい。ふかふかする!
首の辺りから後頭部に掛けてふわっとしたものに受け止められる、未知の感触。しかも、身を屈めたルミナスに上から覗き込まれると……流石にちょっと照れが来る。
「レトラよ、どうじゃ?」
ど、どうって言われても……柔らかいです、とか、気持ち良いです、とかはセクハラになるような気がしたので黙った。それ以外に、許されそうな言葉を探す。
「…………嬉しい、です」
「ふっ」
ルミナスが小さく息を零した。
笑われたぞ? 合ってた? 大丈夫かな?
「妾もじゃ。なかなかどうして、気分が良いぞ」
「んん……」
ルミナスの指が悪戯するように俺の前髪を弄り、梳いて、額に触れた。くすぐったい。ううー……めちゃくちゃ役得なんだろうってことはわかるけど、これは…………
あの、と声を出す。ルミナスが少し顔を傾ける。
「…………ルミナス様は、何で、俺に優しいんですか?」
ルミナスは最初からそうだった。
「何、気にすることではない」
「……顔ですか?」
「まあ、そう理解しても構わぬが……お前は特別じゃ」
いっそ、理由はこの顔だと言って欲しかった。
もし他に理由があるとするなら……俺には、認めたくない心当たりがあったのだ。
「……ルミナス様」
「何じゃ?」
「……もしかして、俺達……昔、会ったことありますか?」
具体的には──二千年前、とか。
ルミナスは反応しなかった。優しい表情も変わらない。間近から俺を覗き込む体勢のまま数秒が経過し、やがて可笑しそうな笑い声がした。
「どうした。妾に見惚れたか?」
……隠蔽された。俺の言葉は伝わらなかった。
俺はまだクロエの時間遡行を知らないので、関連する事象を口に出すことは出来ない。この世界に存在しない"原作知識"を下敷きにした意思は、この世の誰にも届かなくなる。
だけど、もし……俺も
……何が歪んでそうなった? 俺に時間遡行は出来ないし、する理由はないはずだ。あの時はリムルでさえ過去に飛んでいないのに、俺が行く意味があるとは思えない……でも、会ったことがないなら、ルミナスは何でこんなに優しいんだ……?
いや、でも、俺の考えは突拍子も無い。ルミナスが優しいからという根拠だけで考えてしまったが、そもそも俺が過去の世界にいたかどうか、クロエが俺を知っているかどうか、それすらわからないんだった……いや、これ、無理だろ。頭で考えて答えを出せるような問題じゃない──
するり、と眉間に触れる感触。
ルミナスの指が、いつの間にか強張っていた俺の目元を撫でる。
「やはり、疲れているようじゃな。気を楽にして休むと良い」
「……はい……」
言われてみれば少し重みを感じる瞼を下ろし、身体の力を抜く。
頭を撫でるルミナスの手が優しかった。
クロエの背負う運命が明らかになるまでは、俺は俺のことを確かめられない。だけど、ルミナスは俺を友達だと言ってくれた……それはきっと嘘じゃない。
ルミナスと話して、俺はそう感じたのだ。
うん、お茶会も楽しかったし…………
今日ここで、ルミナスと会って良かった、なあ…………
*****
静まり返った深夜の庵に、重なり合う影があった。銀髪を結った浴衣姿の麗しい少女と、その膝に砂色の頭を乗せて眠る少女──としか見えない姿。
庭に通じる障子は開け放たれているものの、元々人通りの無い場所に建てられたこの庵には物音一つ届かない。明かりの消えた和室は闇に包まれ、静寂だけがそこにある。
畳に腰を下ろすルミナス・バレンタインは、夜の闇を物ともせずに
「……まったく、レトラときたら。この妾が膝を許してやったというのに、本当に眠りこけるだけとは末恐ろしいものよ……穢れを知らぬ幼子か?」
まるで詰るような言葉に反して、その口調は弾むように朗らかだ。
ルミナスは殊更にじっとレトラの寝顔を見つめながら、はあ……と熱く息を吐き、とろりと頬を緩ませた。引き寄せられるかのように、距離が近付いて行く。
「ああ美しい、いつ見ても美しい……どれ、少しだけ──」
「おいこらルミナス」
ガサリと庭の茂みが揺れ、
ルミナスには驚いた様子もなく、平然としたものだった。
「誰かと思えば、リムルではないか? 覗き見とは無粋な奴じゃ」
「覗き見じゃねーよ。時間を過ぎてもレトラが来ないから、約束通り俺が来ただけだ」
「いい加減にせよ。まだ弟離れ出来ておらぬようじゃな」
「相手がレトラの寝込みを襲うような奴じゃなかったら、俺の心はもう少し広いぞ」
「何のことやらわからぬが……妾は友との親交を深めたいだけよ」
「いつ友達になったんだ」
「お主の知らぬ所でじゃ」
ふふん、とルミナスの口許に浮かぶ揶揄。
対してリムルは不満そうに目を眇め、口の端をへし曲げる。
「……ただ仲良くなりたいってだけには見えないんだよな。お前は最初から、レトラへの執着が異様だった。レトラに近付いて、何を企んでるんだ?」
ルミナスは答えなかった。
細い指が、レトラの額に掛かる髪筋をそっと払う。
「……忠告しておくぞ。一万歩譲って、レトラが望んでるなら俺だって考えるが」
「そこまで譲って考えるだけとは、筋金入りじゃな」
「もしレトラを傷付けてみろ。俺は絶対に許さないからな」
「わかっておる。レトラじゃぞ? あの無垢な瞳を裏切れるとでも?」
「レトラって純粋すぎて怖いよな……」
一瞬だけの意気投合の後、ルミナスは開いた障子から外の風景を見やり、夜も更けたなと口にした。眠るレトラを支えながら肩と脚の下へ腕を差し入れ、その細身を抱き上げる。そして、庭から室内へ上がって来たリムルの腕へと、丁寧にレトラを乗せた。
「大変有意義な時間であったと、レトラに伝えてくれ」
「……ああ」
「では、開国祭の成功を祈っておるぞ」
「…………」
そう言い残し、ルミナスは『空間転移』で姿を消した。
レトラを腕に抱えて立つリムルは、ルミナスが消えた後の空間を無言で見つめ続け──やがて開いた口から、はあああ、と大きく溜息を吐き出すのだった。
「怪しいのか怪しくないのか、どっちなんだよ…………」
※ルミナスの膝枕回でした
※開国祭一日目が終わりました。まだ漫画版25巻の途中ですが、二月から忙しくなりしばらく更新が難しいため、キリの良いここで一旦停止します。