転スラ世界に転生して砂になった話   作:黒千

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127話 二日目~本戦開始

 

 国を挙げての武闘大会に優勝した褒美は、姫との結婚──というのは古来からよくある話だ、ゲームや漫画の中だったら。現実では、そんな人権無視が罷り通るわけがない。

 だから、ガイに『優勝したら姫君を貰い受ける』とか言われても、身売りなんて嫌に決まっている。代わりに俺が宣言したのは…………

 

 ──祝福の口付けを授けましょう、だった。

 

『レトラ様、レトラ様ぁ……!』

 

 俺とリムルで連携して『思念伝達』と『思考加速』を行い、配下達も巻き込んで思念リンクを繋げた途端、まず飛んできたのはシオンの泣きそうな声だった。

 

『どうしてあんなことを言ったんですか……! あのような輩にまともに取り合う必要などないのです! それを、くっ、口付け、だなんて……!』

『"姫様業務"を考えたらこれしかなくて……あと俺は"魔国の守護聖"らしいし、聖者の祝福なら特別感あるかなって』

『レトラ! お前がそこまでする必要ないんだ、まだ遅くないから取り消せ!』

『いやリムル、もう完全に遅いよ』

 

 実際の俺は姫様でも聖者でもないが、それを知らない観客達は思ったより盛り上がっていた。やっぱり取り消しますなんて言ったら、大ブーイングだろう。

 続いて気になるのは、魂でも抜けたのかって声でブツブツ呟いているディアブロ。

 

『何故、何故このようなことに……? 私が、奴の戯言に一瞬意識を飛ばしていたばかりに、レトラ様に御迷惑を……ああ、あの時、奴の喉笛を切り裂いておけば……!』

『それ絶対やっちゃダメなやつだったから、逆にありがとう』

 

 舞台周辺にいた幹部達の他、貴賓席の近くには来賓への対応や護衛を任せたリグルドやベニマルがいたので、二人にも思念リンクを繋げている。

 

『いくら客人と言えども、リムル様とレトラ様への非礼を見過ごすわけには参りませんぞ……! 今後は、選手への接し方にも検討の余地がありますな』

『というかレトラ様、"優勝者には"って言いましたよね? じゃあ、ガイって奴以外が優勝した場合でも、その、祝福する……ってことですか? 何でそうなったんですか……?』

『ガイとだけ約束するのは嫌だったし、権利は公平じゃないと悪いだろ』

 

 事態が悪化してるぞ……と、リムルが大きく溜息を吐く。

 

『……ガイを何とかするだけじゃ、解決しないってわけか』

『御安心下さいリムル様、レトラ様。優勝者がいなければ問題ありません』

『ソウエイ……ああ、こうなったらもうそれで』

『はいはいアウトアウト! そして誰もいなくなったは禁止!』

 

 ゲルドとゴブタも一緒に聞いてるんだからやめなさい! 勿論二人は除きます、じゃなくて! というか、獅子覆面(ライオンマスク)さんを排除対象に入れてるのが何気にヤバイねソウエイ。

 このままだと皆が良くない方向に進んでしまいそうだったので、そろそろ俺の話を聞いてもらおう。あのさ、と強めに思念を送り出す。

 

『俺の見たところ、観客の大半はガイの発言を楽しんでる様子だった……あんな無茶な要求が通るわけないんだから、こっちは毅然と突っぱねるのが正解なんだろうけど、それをやったら会場の空気が白けてたと思うよ』

『そんなもんより、お前の身の安全の方が重要なんだが?』

『……うん、ありがとう』

 

 魔国の宣伝を兼ねた興行を、"そんなもん"で切って捨てた…………

 だがリムルの大真面目な即答は、俺を大事に思ってくれてのことだ。幹部達も一言の反論もなく、肯定の意思表示を行っている。わかってるよ、皆は俺を景品にしたりしない……だからこそ、それをやれるのは俺しかいないし、俺にしか出来ない読みもある。

 

『確かに俺は、優勝者にキスするとか言ったけど、何も考えずに言い出したわけじゃなくてさ。作戦っていうか、ちゃんと勝算があるから聞いて欲しいんだ』

『……そうだな、お前も自分の命運が懸かってるんだし……勝算ってのは何だ?』

『ほら、元々は、この大会で四天王を決めようって話だったろ? だから俺は、予定通りゲルドかゴブタが優勝すればいいって思ったんだよ!』

 

 想定していたような反応は来なかった。

 シーンとした静寂があり……少し経って、レトラ? とリムルが俺を呼ぶ。

 

『それ、何も解決してないような気がするんだが……?』

『なんで?』

『お前まさか、ゲルドかゴブタだったらいい……って言ってるんじゃないよな?』

『そう言ってるんだって。二人とも身内だし』

『…………!?』

『ちょ、ちょ、何すか!? レトラ様!?』

 

 どうしてか、リムルや皆が絶句する気配を感じた。ゲルドとゴブタからも、物凄い戸惑いが伝わってくる……え、何で? 俺、そんなに驚くようなこと言った? 

 

『つまりお前は……身内なら誰でもいいってことか……?』

『誰でも……? まあ、うん、身内だったら』

『っ……リムル様! 今から私を大会に出場させてくださいッ!』

『いいえ私が! 私には、奴を引き裂き損ねた責任が御座います……!』

 

 シオンやディアブロが騒ぎ始めたが、飛び入り参加なんて認められるわけがない。状況が悪くなってからの強制介入は悪手なのだ……ベニマルやソウエイが何か言いたげながらも黙っているのは、そういう常識を理解してくれているからだろう。見習って欲しいよね。

 

『いや、国主として俺が出るべきだと思う』

『全員却下! リムルもちゃんとルール守って!』

 

 いい加減ツッコミ疲れてきたけど、さっきから、何かがおかしいような気がする。会話が噛み合ってないというか……俺達、本当に同じ話してる? 俺が言ってるのは──

 

『だからさ! ゲルドとゴブタは俺の味方だろ? どっちかが優勝したら、恐れ多いとか何とか言ってキスを辞退してくれればいいんだよ。で、俺が、その忠義を嬉しく思いますとか何とか言って良い感じに終わらせるから! 二人はぜひ優勝目指して、俺のこと守って欲しい!』

 

 優勝者が身内なら、後はどうにでもなる。

 二人は間違いなく俺に協力してくれる、という確信あっての作戦だった。

 

『────……』

 

 もう一度、無音の時間。

 

『採用だ! それで行くぞ! 二人とも、絶対に優勝しろよ!』

『承知! このゲルド、必ずやレトラ様の御身をお守り致します……!』

『あーびっくりしたっす! でも、それならオイラも頑張るっすよー!』

『ゲルド、ゴブタ、任せましたよ! ああっでも、私もレトラ様のために戦いたかった……!』

『クフフ、優勝すれば主への忠誠を示す場が与えられると……何と羨ましい……』

『そういうことなら俺も出場したかったですね……』

 

 俺の案は無事に受け入れられた。皆はわかってくれると思ってたよ! 

 あと一つ心配なのは、優勝者がキスを辞退するのも場が白けそうってことだけど……俺が知っている今大会の結末を思えば、まあ……何とかなるはずだ。

 

 しかし、さっきの反応は何だったんだろうな。

 もしかして皆、本当に俺がキスすると思ってた? いやいやいやいや! よく考えなくても、キスが景品とかセクハラすぎる……そんな罰ゲーム、皆に強制しないよ! 当たり前だろ! 

 

『じゃあソーカ、そういう予定だから気にせず進めて。予備のマイクある?』

『はい、レトラ様。ですが、あのガイという者が食い下がって来た場合は……?』

『ガイのマイクには俺が干渉してオフにするから、サクサク次行っちゃっていいよ!』

 

 それと、アナウンスがすごく良かった頑張ってと付け加えると、一呼吸分くらいの間の後に、身に余るお言葉ですと控えめな声で返ってきた。かわいい。

 思念リンクが解除された直後、ソーカが声を張り上げる。

 

『これは大変なことになって参りました──ッ! 今大会の優勝者には、レトラ殿下から祝福の口付けが贈られるとのことです! 我らが魔国の大いなる守護聖、レトラ殿下の祝福は一体誰のものだあ──ッ!?』

 

 こんな状況になっても、俺を決して姫と呼ばないのがソーカの優秀なところである。そういう約束だもんな。ちゃんと守ってくれてるの、本当に嬉しいよソーカ……

 ガイは「フン、何を勝手に決めて……」などと言い掛けたが、マイクが原因不明の故障を起こしてしまったため、その声は会場の喧騒に掻き消された。そうしている間に、リムルとソーカは残る選手達へのコメントをどんどん進めていくのだった。

 

 クジ引きが行われ、トーナメント表が完成する。

 第一試合、ゴズールVSメズール。

 第二試合、マサユキVSジンライ。

 第三試合、ガイVSゴブタ。

 第四試合、ゲルドVS獅子覆面(ライオンマスク)

 

 先程の話し合いでは、ゲルドやゴブタが優勝しやすいようクジに細工する案も出たが、後で発覚したら信用を失うようなリスクは避けるべきだとして不採用。

 その結果、対戦カードも全て原作通りだった。ここまでマサユキ超有利の組み合わせになるのって、『英雄覇道(エラバレシモノ)』の効果なのか、それとも本人が豪運なだけなのか……? 

 

 

 

 早速、第一試合が始まった。

 ゴズールは斧を、メズールは槍を得意とする、近接格闘型(パワータイプ)同士の戦いだ。Aランクの魔物達の戦闘を間近で見る機会などない観客達は、すっかり魅入ってしまっている。

 

「メズール! 貴様との長い因縁も今日で終わりだ!」

「馬鹿め、ゴズール! リムル陛下の"四天王"の一角を担い、レトラ殿下に忠誠を捧げるのはこの俺、メズール様よ!」

「抜かせ! その輝かしい栄光を勝ち取るのは、俺様に決まっておるわ!」

 

 そうそう、さっきの話はゴズールとメズールにも伝達しておいた。

 二人を思念リンクに参加させていなかったのは、配下になってまだ数日なのに幹部達の話し合いに放り込まれたら、生きた心地がしないだろうと──まあそれよりも、俺のことで大騒ぎするリムルや皆の様子を見せ付けられても困るよな、と思ったからだ。

 優勝してキスを辞退すれば、俺を守り抜いたという名誉と、リムル達からの評価を得られる……というお知らせは、二人のやる気材料になったらしい。

 

 両者の実力は拮抗しており、試合は大接戦だったが──メズールの"馬超連槍"で受けた大ダメージを『超速再生』で回復させ、ゴズールが"雷撃角(ライトニングホーン)"を決めたことで決着が付いた。二十分以上も続いた白熱の勝負は、ゴズールの勝利となったのだった。

 

 

 

 第二試合。

 舞台中央で握手を交わす、マサユキとジンライ。マサユキの不戦勝である。

 客席からは「流石はマサユキ様だ!」と歓声と拍手が送られ……いや、ほんとに解せぬ。何に対しての称賛だ? 強いて言うなら、勇者一行の絆に……かな? 

 

 

 

 第三試合。

 "流麗なる剣闘士"ガイと、ゴブタ。

 ガイは舞のような美しい剣技を売りにしているそうで……なるほど、踏み込みは素早く、その剣先は変幻自在。流麗と言われるだけのことはある。

 

「ヒエェッ、速過ぎるっすよー!」

「ギャハハハ! 最強であるこの俺に、貴様程度が勝てるものかよ!」

 

 ゴブタは涙目でガイの剣撃を避けている。その何発かをガルム製の特質級(ユニーク)の胴当てによって凌いでおり、まともに喰らえばタダでは済まないだろう。

 だが、ゴブタは退かなかった。嘲笑しながら攻撃を仕掛けてくるガイに、奥の手を見せてやると言い放ったのだ。おお……ゴブタがやる気だ! 格好良いぞ! 

 

「召喚ッ! さあ来るっすよ、星狼族(スターウルフ)……へっ?」

「チッ、黒牙狼(ブラックファング)の亜種か。だが俺の敵では……」

 

 影から飛び出したのは、ゴブタの相棒のBランク星狼族(スターウルフ)でもなければ、CまたはDランクの黒牙狼(ブラックファング)でもなかった。出現した黒い狼に流星のような速度で体当たりをぶちかまされたガイは、為す術なく場外まで吹っ飛ばされ、壁にめり込むオブジェとなった。

 その狼は、危険度特A級の黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)──

 

「ランガ!?」

「チッ、その手がありましたか。流石はランガ、策士ですね……」

 

 リムルが目を剥き、シオンが悔しそうに舌を打つ。

 ゴブタもポカンとしているが、召喚術はルール違反ではないためゴブタの勝ちだ。

 この前ランガは、大会には人型の参加者が多いから出場禁止、とリムルに言われて沈んでいたが……ゴブタの召喚に便乗することにしたんだな。失神したガイをゴリゴリと甘噛みする姿が微笑ましい。担架係がやって来たらちゃんと譲ったし、よし、お利口さん! 

 

 

 

 注目の第四試合、ゲルドVS獅子覆面(ライオンマスク)

 

「クックック……久しぶりに思いっきり戦えそうだな、おい!」

「全力で挑ませて頂きます」

 

 始まったのは、後世まで語り継がれそうな素晴らしい試合だった。

 獅子覆面(ライオンマスク)の正拳突きや手刀、回し蹴りや踵落としといった、目にも留まらぬ多彩な連続攻撃。対するゲルドは鉄壁の守りに徹しながら、隙を突いての重い一撃で迎え撃つ。

 

 衝撃が旋風となって荒れ狂う舞台上で、ガシッと両者が組み合った。

 これまでゲルドの投げ技を身軽に往なしてきた獅子覆面(ライオンマスク)が、その時初めて、体勢を崩しながらも掴みを振り払って飛び退いた。筋肉質な腕が爛れている……観客達には何が起こったかわからないだろうが、あれは──

 

「ほう……『腐食』か。全力ってのは社交辞令じゃねぇようだな」

「貴方様にも事情はお有りでしょうが……オレは、何としてもレトラ様をお守りせねばならぬのです。どうかお許し頂きたい……!」

 

 あの黄色い妖気(オーラ)は、混沌喰(カオスイーター)……原作でのゲルドは、本来の力を出せないカリオン相手にスキルを使わなかったのに、俺のために解禁してくれたってことだよな……!? そこまでさせてしまったことは申し訳なく思うが、ゲルドの力強い声に迷いはなかった。

 ゲルドは俺を守るという固い決意の下、カリオンに勝とうとしている……こ、この試合、もしかして、もしかすると──……!? 

 

「ハァーッハッハッハッ! 国の宝を守るためとあっちゃ、全力出さねぇワケにはいかねぇよなあ!? いいぜゲルド、それでこそ戦士ってもんだ! そんな姿を見せられちまったら、こっちだって血が滾って仕方ねえ……!」

 

 いや、何でカリオンにもブースト掛かってんの?

 相手に応じて強さが増すタイプの戦闘民族か……? すごいしっくり来た。

 

「少しくらいなら、バレねえよなぁ……?」

 

 楽しそうな呟きに感じ取ったのは、チリッと首筋を焦がすような警鐘。

 この闘技場には観客に危険が及ばないよう、舞台を中心とした二重の結界が張られているが……当然ながら、つい先日まで現役バリバリだった魔王の本気を想定したものではない。

 間髪容れず、リムルの思念が飛んで来る。

 

『レトラ! 客席に『万能結界』だ!』

『了解……!』

「──行くぜ!!」

 

 叫びと共に、ユニークスキル『百獣化』が発動する。一気に膨れ上がった妖気(オーラ)の圧力は──リムルが内側の結界に重ねた『絶対防御』に阻まれた。

 俺の『万能結界』は、客席の目前にまで迫る外側の結界を補強している。流石にここまで影響は来ていないが、安全第一だ。

 

 というかカリオン、こんな所でそれやって大丈夫!? 

 結界の外からは正確な解析や魔素量感知が出来ないよう、ウィズに頼んで偽装効果を付けてもらったけど……"獅子王(ビーストマスター)"の奥の手なんだろ!? 正体バレない!? 

 

『おーっと!? 何と、獅子覆面(ライオンマスク)選手の背に翼が生えました! これはどういうことなのでしょう!? まさかまさか、彼は天よりの使者だったと言うのか──ッ!?』

 

 親切にも、ソーカがカリオンの正体を誤魔化してあげている。

 ユニークスキル『百獣化』で顕現するカリオンの真の姿は、あらゆる獣の長所を調和させた獣魔の王そのもの──頭部が覆面で隠れている今、一番目立つのは背中の大鷲の翼だが、獅子の獣人であるカリオンを鳥のようだと形容するわけにもいかないソーカの機転だ。

 うーん、魔王カリオンの『百獣化』を見たことある人なんていないだろうし、これならバレずに済むかな……? 

 

「さーて、悠長に見せびらかしていい姿じゃねぇんだ。次で決めさせて貰うぜ?」

「受けて立ちましょう。どの道、貴方の本気を防ぎ切らねばオレに勝利はないのですから」

「ハハハッ、良い覚悟だ! 褒美に本気の技を見せてやらぁ。死ぬんじゃねぇぞ!」

「応ッ!」

 

 か、格好良いやり取り……! もちろん俺はゲルドを応援しているが、あーでもなぁ、ゲルドを認めて真の姿で戦ってくれるカリオンも武人だな……熱い……! 

 

 では勝負の行方は──と考えた時、カリオンに分があった。

 ゲルドは守りに特化したユニークスキル『守護者(マモルモノ)』を持っている。だが、権能は『守護付与、代役、鉄壁』……部隊の防御力を底上げしたり、仲間のダメージを肩代わりしたりと、その真価は()()()()()ことにある。ゲルドは本当にイケメン……とか言っている場合ではない。この局面で有効な権能は、『鉄壁』のみ。

 

 そして、やはり元十大魔王の名は伊達ではないのだ。『百獣化』を使ったカリオンならば、ゲルドの全力の『鉄壁』をも超える破壊力を叩き出すことが可能となる。

 金色の覇気を纏うカリオンが放った"獅子砲拳"を真っ向から受け、何とかその場に踏み止まったゲルドだったが──

 

「……お見事……! どうやらオレは、ここまでのようです……」

「誇って良いぜゲルド。俺様の奥義の一つを受けて、まだ意識があるんだからよ」

 

 ──勝負あり。

 ゲルドは膝を突き、これ以上は続行不可能と負けを認めたのだった。

 

 万雷の拍手と大歓声。

 会場中から惜しみない称賛が降り注ぐ。

 この大会で、二人は一躍人気者になったようである。

 

 リムルは試合が始まる前、「いきなり獅子覆面(ライオンマスク)と当たるなんて……ここでゲルドが勝ってくれれば……」と怖い顔で呟いていたが、途中からはそれをすっかり忘れてしまったようで、固唾を呑んで真剣勝負を見守っていた。

 試合後、他の観客達と同じように二人へ拍手を送っていたリムルは──ハッと我に返り、忙しく頭を抱えるのだった。

 

「ってことは、次に獅子覆面(ライオンマスク)と戦うのはゴブタ……? ダメだ終わった……っていうかあの人、出場者の中でぶっちぎりに強いじゃねーか……! このまま優勝したらどうしよう……レトラの祝福が……!」

獅子覆面(ライオンマスク)さんは硬派じゃん? キスとか興味ないって」

 

 炭酸オレンジジュースを、ストロー(紙製)でチューと吸い上げる。

 そういえば俺の作戦、カリオンには伝えてないな……まあいいか。下らねえ! って棄権してくれるかもしれないし、今の試合を見て、ゴブタとの試合展開にも予想が付いたし。

 

 でも、そうだなぁ、キスなんて言われたら知り合いこそ気まずいよな……俺は最初から切り抜けることを前提にしてたけど、ひどい罰ゲームを景品にしてしまったと思う。

 もうしません。

 

 

 




※Web版を元に作ったプロットだと、優勝者はレトラから肩叩き券(≒お手伝い券≒何でも一つ言うこと聞くよ券)が貰えました。すごく困るやつ。
※次回、漫画版25巻を少し超えたところまでやります。コミックス派の方はご注意ください。



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