昼休憩も終わり、今日はあと準決勝の二試合のみ。
舞台では、ゴズールVSマサユキの試合が始まろうとしていた。いや、原作知識を持つ俺からすると、始まるかどうかは未定って意味なんだけど…………
「リムル陛下に喧嘩を売った"勇者"ってのは、アンタだな? 身の程を知らないってのは憐れなもんだ」
まず、ゴズールがマサユキを挑発。
威勢は良いのだが、メズールとの死闘で消耗した魔素量がまだ戻っていない。
マサユキは不戦勝だったので余裕綽々──ではなく、汗がすごいし膝も震えている。そしてニヒルに笑った──ように見えたが、口元が引き攣っただけかもしれない。Aランク超の魔物を前にして怖いだろうに……頑張れ、超頑張れ!
とにかくマサユキは、ゴズールの試合を見事だったと褒めた。だからこそ、今の疲弊したゴズールと戦って勝っても嬉しくない、と。
「聞けば君は、あの馬の彼と一緒に、魔王リムルが用意した迷宮の主に任命されているんだってね? それを嫌って"四天王"を目指したそうだけど──」
「馬鹿なっ!
ゴズメズコンビが明日公開予定の
マサユキは、万全の状態のゴズールと勝負がしたいと言い出した。ここでではなく迷宮で。つまり、ゴズールに棄権しろと迫っているのだ。
その提案にゴズールは……あれ? 顔が険しい?
「見くびるな! 俺は己のためだけに戦っているのではない……いかに余力が無かろうと、試合を放棄することなど出来んのだ! レトラ殿下の御為に──!」
あ!!
そ、そうか、ゴズールも優勝して俺を守ってくれるつもりでいるんだ!
ありがとう……でも困る! 試合されたらマサユキが死ぬ! 疲労困憊のゴズールの余力だけでも、マサユキの腕っ節よりは確実に上なのだ……ヤバイぞ、『
「ああ、魔物の国の姫君のことだね。僕も評判は聞いてるよ、姿だけじゃなく心まで美しく、慈愛に溢れ、聖なる力で民を守っている……とても優しい姫なんだってね?」
俺はそんな姫知りませんけどね。
だがこの瀬戸際で、そんなことを言い出すマサユキは一体……?
「はっきり言おう、今の君じゃ僕の相手は務まらない。想像してみるといい……何も出来ずに負ける君を見たら、姫はきっと心を痛めるんじゃないかな──?」
うわスゲェ! マサユキの奴、顔を合わせたことすらない俺を臆面もなくダシに使って、ゴズールを言いくるめようとしている……このハッタリのかまし方、一つの才能だろもう!
「グ、グヌヌヌッ……! 悔しいが、貴様の言う通りだ……お優しいレトラ殿下の前でそのような姿を晒しては、あの御方を悲しませてしまう……!」
そして、ゴズールの中の俺もどうなってるんですかね?
まだ少ししか話したことないのに、何をそんなに俺に入れ込んで……ああ、そうだ、リムルが"名付け"してるから! とっくに俺も、リムルと同格の崇拝の対象になってるのか……!
結局、マサユキの対応は完璧だった。
主のためにと危険を冒すことだけが忠義じゃない──言ってることは本当に正しいその言葉に、ゴズールは迷宮でのマサユキとの再戦を誓い、後のことは残る幹部にお任せすると言い残して、試合の棄権を申し出たのだ。
会場は割れんばかりの歓声に埋め尽くされた。
マサユキの度量や見識に感動し涙する者。ゴズールの根性や決断を称える者。よく考えると結構不思議な光景なんだけど、丸く収まって良かったぁぁ…………
本来ツッコミを入れる役割のリムルは、肘掛で身体を支えながらぐったりしていた。
「決勝に進んだのは勇者マサユキ……順当に来てるってことなのか……? 次の試合で
リムルの心労が只事じゃなさそうで、ちょっと悪いことしたかなって思うけど……でも、大丈夫だよっていくら言っても気休めにしかならないし、試合を見届けてもらうしかない。
さあ、次が本日の最終戦だ。
ゴズールが言っていた幹部の出番──
「頼むぞ、ランガ……!」
「ゴブタだよ」
準決勝の二試合目、ゴブタVS
舞台上で向かい合う二人の体格を見比べるだけで、ゴブタが可哀想になってくる。重要なのは魔素量とは言うが、その魔素量も普通に負けてるし……
勝敗は誰の目にも明らかで、それは
「小僧、悪いことは言わねーから棄権しな。ゲルドみてぇに見事な覚悟で俺様を燃え滾らせてくれるってんなら、全力で相手してやるが──」
「どうぞご自由にっす!」
だが、今日のゴブタは一味違う。
挑発するような物言いで、
「……何だと?」
「ただし、次またあの変身をしたら……その
「っ!?」
ゴブタの指摘通り、覆面の側頭部に走る裂け目。
実を言うと、俺は見ていた。前の試合でカリオンがユニークスキル『百獣化』を使った時……迸る
正体をバラすなとミリムに言われているカリオンは、もう『百獣化』を使えない。
試合が始まり、覆面を手で押さえたカリオンに、ゴブタとその召喚獣という体で呼び出されたランガの連携攻撃が襲い掛かる。しかも──
「あいつ、マスクを狙って攻撃してやがる……!」
「汚ねぇぞ! 真面目に戦え、この卑怯者ー!」
それでもゴブタは動じなかった。
「卑怯者で結構っす! ゲルドさんが負けた相手に、オイラが敵うなんて思ってないっす……でもオイラは、絶対に勝ってレトラ様をお守りするっすよ──!」
うおおお、今日のゴブタほんと格好良いな!? いつもの頼りない感じはどこへ!?
バンバンと椅子を叩いて応援したいが、姫様はそんなことしないので出来ない。窮屈だな……いや、この苦行ももうすぐ終わる。開国祭が終わるまでの我慢だ。
「フン……! 小賢しい野郎だが、形振り構わずレトラを守ろうって心意気だけは認めてやる。お前らの作戦勝ちってことにしといてやるよ」
こんなお遊びで無様を晒すなんて、"
◇
明日の決勝戦は、マサユキVSゴブタとなった。
何という意外な組み合わせだ。ランガを召喚可能とは言え、あのゴブタがカリオンに勝つなんて俺は微塵も……いや、本当によくやってくれたと思う。
俺は約束していた五人の教え子達と、引率のヒナタと共に夕食のテーブルを囲んでいた。子供達も今日は歌劇場で演奏会を聞いた後、武闘大会を観戦していたそうだ。
「すごかったー! やっぱりマサユキ様、格好良い!」
「立ってただけだよ……?」
「勇者もスゲーけど、ゲルドさんマジパネェよな!」
「うんうん、あの
「
「ゲイルもか? 俺も俺も! しかも変身するし……俺見たんだけどさ、被ってたマスクの下から金髪が伸びたんだよな……!」
「僕も見たー! あの変身って3だよね!?」
アリスはマサユキ一択、クロエは興味なし。少年チームの中ではゲルドの人気以上に、まるでヒーローのようだった
今日の晩餐会は、各テーブルの間に防音効果のある衝立を置き、少しくらい会話が弾んでも周囲を気にせず過ごせるようにしてある。
レトラも誘おうと思っていたのだが、夕食前に現れたミリムが──
『レトラ! 武闘大会に優勝したら、お前が手に入るというのは本当なのか!?』
『真っ赤な大嘘です』
というやり取りの上、レトラを連れ出してしまったのだ。
そのミリム達のテーブルは、衝立を挟んでちょうど隣にある。上位者相手には防音効果も意味がなく、向こうには子供達の声が丸聞こえだろう。カリオンがニヤついていた。
「フッ、俺様の格好良さが伝わっちまったか。3ってのはよくわからねーが……あの小僧共は見る目があるぜ」
「ゲルドとの試合は熱かったですね! 俺もカリオンさん格好良いって思いましたよ!」
「だが、優勝を逃したではないか! 元魔王としての誇りを忘れたのではないのか!?」
「そう言うなってミリム。戦いたかった相手とはやれたしな」
俺も『万能感知』が働くので見聞き出来てしまうが、ミリム一派に紛れて、またレトラがキラキラしている……まあ、あの試合を見たらレトラじゃなくてもそうなるか。俺も、今大会のベストバウトではないかと思っているしな。
おっと、自然に感じ取れてしまうとは言え、あまり詮索するのは失礼──
「あら、カリオン? だけど貴方、途中までは優勝を狙っていたそうじゃない。もしかして、例の祝福が欲しかったのかしら?」
うむ、自然に感じ取れてしまうものは仕方ない。
フレイが流し目を送りながら微笑むと、カリオンは意に介した様子もなく返す。
「いーや? 俺様が優勝したら、祝福はいらねぇから、レトラを連れて帰っちまおうかと思ってたんだよ。ミリムやスフィアが喜ぶんじゃねーかってな」
「俺の宣言を丸ごと無視してますよね!?」
「そこは交渉次第、だろ?」
何てこった……カリオンは、レトラの予想通りキスには興味がないようだが、レトラ本人を欲しがっている危険人物だった。覚えておこう。
流石は元魔王としか言えない傍若無人さでニヤリと笑うカリオンに、レトラもげんなりとした顔だ。ゴブタがカリオンに勝ってくれて本当に良かった……!
「まったく、情けないのだ! レトラと一緒に帰れるかと思ったのに!」
「だからミリム、違うんだってそれ……」
「あっ! 明日はワタシが飛び入り参加するのはどうだ!?」
いざとなったら俺も全力で阻止しなければならない。レトラが攫われる。
カリオンやミッドレイ、レトラまで加わって一丸となった面子が、ミリムの思い付きを必死に止めている間──急にヒナタに話を振られた。
「それで? 実際、決勝戦であのマサユキって子が勝ったらどうするの?」
「そりゃあ……」
「本当にレトラはキスするつもりなの?」
ゴフッ。
噎せた。まさか、ヒナタまで気にしていようとは……
それを聞いて、アリスが慌て出す。
「そうよ、マサユキ様が優勝したらどうしよう……! 優勝して欲しいけど、でも、そうなったらレトラさんと……キャーッ!」
「はっはっは、安心しろアリス。そんなことは俺が許さん」
「レトラは一体何を考えているのかしら。誰が勝っても損するのは自分じゃないの……初めから断れば良かったのに」
「大会を盛り下げたくなかったって言ってたぞ」
そして、ヒナタにここだけの話にしておいて欲しいと『思念伝達』で断りを入れ、こちらの心積もりを伝える。ヒナタなら口は堅いし、レトラを心配しているようだったしな。
祝福の口付けというのは建前で、優勝した身内にキスを辞退して貰い、事を終わらせようとしているのだと告げると、ヒナタは納得してくれた。
『じゃあ、明日の決勝戦が全てね。マサユキ君の強さは私にも読めなかったけど、あのゴブタって子もなかなか見所があると思うわ。勝つ可能性は充分あるわよ』
『そうなってくれないと困るんだよな……』
『ルミナス様にも伝えておくわ。今朝はレトラからカードが届いたって上機嫌だったけど……この話を聞いて飛び入り参加、なんてことにならないようにね』
『……ああ、頼む』
子供達の間では、俺とマサユキとヒナタとでは誰が一番強いかという話になっており、満場一致でヒナタに票が集まったのだった。本気で悔しい。
食事の後は定例報告会。
本日最大の事件は、やはり闘技場での一件だ。
昼間その場にいなかった者達が説明を求めてレトラを取り囲み、質疑応答の第二ラウンドが始まることになったのは言うまでもない。
「……ってわけなんだ。ごめん、俺の勝手で面倒なことになって……」
「何の何の! レトラ様、面倒事などいくらでも起こして下さって良いのですぞ!」
「そうですよ。その対処を我々にお任せ頂けるのでしたら大歓迎です」
「ほっほっ、今回はゴブタの奴めに花を持たせてやるとしますかな」
「ええ。ただ、わたくしは、レトラ様にはもっと御自身を大切にして頂ければと……」
ガビル、リグル、ハクロウ、シュナの言い分は全てわかる。
レトラは基本的に大人しいヤツなので、もっと好き勝手に過ごしていいし、俺達に迷惑を掛けていい。今回のことも原因はガイとかいうアホであり、レトラは魔国のために一芝居打っただけで、何も悪くない。しかも一人で片付けようとしたのではなく、ゲルドやゴブタを作戦の要として頼ったのだから、それ自体は良い傾向だろう。
しかし、レトラは簡単に自分を餌にするんだよな……俺としては、こんな心臓に悪いことはもうやめて欲しいが…………レトラだからな、望みは薄いな。
そして全員で、絶対に優勝しろとゴブタを叱咤激励する。
俺も今日のゴブタとランガの活躍を褒めてやり、明日は全力で勇者を倒せよ! とエールを送った。何故か、反応したのはレトラ。
「あ、待って、全力は……ほら、マサユキの実力も試さないとだし」
「それも大事だが、二の次でいい。まずは優勝が先だ」
「レトラ様、明日はパパッと勇者に勝ってみせるっすよ!」
「我も力の限りゴブタに協力します、我が主!」
「…………、…………」
「? どうしたっすか、レトラ様?」
「む、無理しないで、そーっと、頑張って……!」
「はいっす、頑張るっす! それでオイラが優勝したら、えーと、祝福の……アレを! かっこよく辞退してお守りするっすから、心配しないで待ってて下さいっす!」
そう、アレな。優勝者を称える、レトラの祝福のキス。大きな声では言えずとも、内心では誰もが欲しいと思っているはずだ。恐らく一生涯自慢出来る勲章となるだろう。
だが、あのレトラの……あまり人を頼ることがないレトラの、『キスを辞退して俺を守って欲しい』というお願い。そんなことを言われたら喜んで辞退するし、レトラの期待に応える方が何より大事、『ありがとう!』って言われたい──ウチでは全員その意見で一致する。
あの怠け者のゴブタですら、レトラを守るためにと普段見せないやる気を出しているのだ……ここまで来たらきっと優勝してくれるだろうと、俺はゴブタを信じることにした。
◇
今日の最後の仕事は、金貨の件での秘密会談。
夜遅く、仕事着に着替えた俺は、リムルと共に応接室でガゼル王を出迎えた。ベニマルやシオン、ディアブロ、ミョルマイル、シュナもいる。
小売商達への支払いに必要なドワーフ金貨は、およそ三千枚強。
魔国にはドワーフ金貨十五万枚相当となる星金貨があるのに、ドワーフ金貨での支払いしか認めないと言われてしまい、価値の高い星金貨を崩せずに困っているという状況だ。
ドワルゴンからは、星金貨と交換可能なドワーフ金貨を千五百枚ほど用立ててくれることになった。ムチャクチャ有り難い話である。
だが、それでもまだ三千枚にも届いていない。どんぶり勘定だけどあと数百枚は欲しいね、と零すリムルに、ガゼル王の説教が始まりそうだったところ──室内に響いたノック。
やって来たのはエラルド公爵と、もう一人。
「お邪魔するわねえ。お話は聞かせて貰ったわ、金貨が足りないんですって? ならばその足らぬ分は、私が用意してもよろしくてよ?」
サリオン皇帝、エルメシアの突然の訪問だった。エラルドの憔悴し切った様子から見て、無理矢理ついて来たのは明らかである。
リムルは初め、二千年以上も生きる大物に借りを作るのは──という警戒を見せていたが、エルメシアが取引条件として提示した「こんな面白いお祭りを企画するなら、次回から自分も誘って欲しい」という言葉に、「喜んで」とアッサリ承諾を返す。
「王族は民の奴隷ではないのよ? 私達が自由に生きる方が、民も嬉しい。私も嬉しい。皆が幸せになれると思うのよ!」
「同感ですね──おい、聞いたかレトラ?」
「俺は毎日幸せに生きてるよ」
何で俺に振るんだか。今日の俺は特に自由だったのに。
すると、対面のソファに座るエルメシアが、嬉しそうに俺に笑い掛けてきた。
「あらあ、弟さんね? 実は私、エレンちゃんから貴方のこと聞いてるのよねえ」
「改めましてご挨拶申し上げます、レトラ=テンペストと申します。俺もエレンから聞いてますよ、従姉妹のお姉ちゃんだって……お話ししてみたいと思ってました」
「まあ! そうよぉ、エレンちゃんの従姉妹のエルちゃんよぉ。私とも仲良くしてねえ、レトラちゃん」
「はい、よろしくお願いします!」
エルメシアはとても気さくなお姉さんだった。ガゼル王やエラルド公は、何で苦手にしてるんだったかな? 遥か年上のエルメシアに、子供扱いされるのが嫌なんだっけ?
悲しいことに、俺は子供扱いに慣れてるからな……俺をちゃん付けするお姉さんは二人目なので、最早何とも思わないあたりとか。
「昨日の
「陛下。今はリムル殿とのお話が先かと……」
「エラルドったら、細かいんだから」
促されたエルメシアは、朗らかにリムルとの交渉に戻る。まあ既に成立したようなものだったので、魔法の財布から取り出されたドワーフ金貨千枚(ポケットマネーらしい)が星金貨十枚と交換され、お金の問題は片付いた。
安堵を見せるリムルに対し、エルメシアが助言をくれる。
「でも、金貨の用意が間に合わなくても、協力を申し出る人物がいたと思うわよお?」
「え? どういう意味です?」
「相手を従えたい場合、恐怖や威圧といった強硬的な手段を取るよりも……恩を売る方が何倍も簡単で、成功率も高いっていう話」
その読みは当たっている。ロッゾの狙いはまさにそれ。
エルメシアの説明をいち早く理解したのはディアブロだった。
「なるほど。自分達で問題を起こしておきながら、恩を売り付けて融通を利かせようとする……実に人間らしい、欲深い考えです。勉強になりました」
ゾッとするような笑みを浮かべるディアブロ。
そんなディアブロを眺めたエルメシアは、纏う雰囲気を重々しく一変させると、一つ聞いておきたい、と威圧感と共にリムルに尋ねる。
伺いましょう、とリムルが応じた。
──そこの危険極まりない"原初の悪魔"が暴走したなら、貴殿はどう責任を取るつもりじゃ?
──暴走……? そりゃあ、暴走する前に止めますよ。
──は? えっと、ちょっと待って? 君が止めるの?
凄まじい『英雄覇気』と『魔王覇気』の衝突は、すぐに終わった。
リムルは"原初の悪魔"を知らないから、齟齬が生まれているんだけど……まあ、ディアブロなら大丈夫だろう。今日もほら、ガイを切り裂く前に思い止まってくれて……いや違うな、意識を飛ばしてた所為でとか言ってた……うん、気にしない気にしない。ダメって言えばディアブロはわかってくれるし、俺も頑張って止めるから!
呆気に取られていたエルメシアは、鈴を転がすような声で笑い出し、サリオンとテンペストの正式な盟友関係を認めてくれた。良きに計らえ、とエラルドに命じて。
「リムル殿の考えは理解した。もしも貴殿が人類の敵に回るなら、その時は朕が全力をもって止めて見せようぞ──それじゃあ、何かあったら私かガゼルちゃんに相談して、決して暴走しないようにね?」
「嫌だなあ、俺が暴走するみたいな言い方は……」
「リムルよ、思い付きで開国祭を開催したのは一体誰だったかな?」
ガゼル王がいつもの小言をリムルに繰り出している。
その間に、エルメシアが再び俺へと顔を向けた。
「レトラちゃん。昼間の武闘大会を見てたけど、貴方も結構お茶目なのねえ?」
「えーと……お目汚し失礼しました」
「あれは読めなかったわぁ……あの状況を利用しての返し方、素敵だったわよ? エラルドに聞いていた通りの判断力と行動力ねえ」
思い掛けない評価が聞けた。エルメシアが感心するくらいなら、マリアベルにもそういう感じで見えていただろう。俺は夕食時にまたマリアベルを待ち構えるつもりだったが、ミリムに捕まってたからなー……最終日となる明日こそ、何らかの動きがあるはずだ。
「お兄さんや臣下からも大事にされているみたいだし……だから、レトラちゃんにもお願いしておくんだけどね? 貴方も暴走しちゃダメだし、させてもダメよ?」
……それは、誰を暴走させるなと?
エルメシアの言葉を額面通りに受け取れば、リムルやディアブロを……となるが、それだけじゃない。その裏に隠された真意に、俺は気付いていた。
先程、エルメシアは
それは
つまりあれは、俺が『
……『
とは思うが、エルメシアが『
エラルドも、人魔会談の時点で『
とにかく、サリオンはドライアド以上に『
納得はするが、どちらにしても俺の答えは一つしかなかった。
「はい、お約束します。決して暴走しませんし、させることもありません」
俺も。
リムルも、ディアブロも。
それと『
「うふふ、賢い子……頼りにしてるわよぉ」
全てを見通すような翡翠の瞳が微笑む。
これが天帝エルメシア──トレイニーさんも、ギィでさえ、リムル達の前で俺を牽制したことはない。それは魔国を敵に回す恐れがあるからで……そうとわかっていて尚、俺への警告をここまで堂々とやってのける人は初めてだった。
仕事の話が終われば、平和な交流タイム。
エルメシアが"異世界人"のパティシエ吉田氏を紹介して欲しいとリムルに頼んだり……後の"悪巧み三人衆"となるリムルとミョルマイルとエルメシアが、商売について意見交換したり。あ、俺はたまにオブザーバーとして呼んでもらえればそれで。
あと、俺もエレンみたいにエルちゃんって呼んでいいか聞いてみたら、もちろんよぉ! ってイイ笑顔で返ってきたので、そうすることにした。やった。
※いつも沢山の感想をありがとうございます。よし続きを書こう、という原動力になっております。一点だけお願いなのですが、展開予想は返答に困る部分があり……ネタ潰しが増えると執筆が難しくなる恐れがあるため、ご配慮を頂けましたら幸いです。
※開国祭二日目が終了しました。少し休んでからヴェルドラ日記をやろうとしていたんですが、漫画版26巻の発売日が6/7(金)と判明したので、そちらに照準を合わせることになると思います。今後もよろしくお願いします!