転スラ世界に転生して砂になった話   作:黒千

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2024.7.24 本文の後半部分を追記
※実は二日目夜にも騒ぎを起こしていた砂の話


(短編/砂とフォビオ+魔国勢他)7/24追記

 

 開国祭二日目の夕食は、ミリム達と一緒に食べた。

 隣のリムル達のテーブルでは食事が終わったようだ。これから定例報告会があるため、リムルは先に行ってるぞと俺に声を掛け、広間を出て行った。ヒナタと子供達は、夜店巡りに行くらしい。

 少し遅れて、俺も食事を終える。

 

「ごちそうさま。それじゃミリム、俺ももう行くよ」

「うむ! レトラ、また明日なのだ!」

 

 今日も美味しい食事を頬張って幸せそうなミリムに一言告げて、ミッドレイやカリオン達にも挨拶した俺は──あ、と声を上げる。

 

「カリオンさん。そういえば俺、フォビオに用事があるんです。後で少し、フォビオの時間をお借りしてもいいですか?」

「あ? おう、好きにしな。フォビオをどっかに向かわせりゃいいのか?」

「いえ、後で迎えの者を出しますよ。俺は会議の後にも予定があるので、ちょっと遅くなるかもしれないんですけど……」

 

 今夜はガゼル王やエラルド公、あとエルメシアまで参加しての会談があるから、その後だな。日付を跨ぐほどにはならないだろうが、ホント俺、夜しか時間空いてない。

 構やしねぇよ、というカリオンの返事を信じて約束を取り付け、俺はその場を後にした。

 

 

 

 さてさて。三巨頭会談が終わり、客人達の退室を見届けた後、俺はリムル達よりも一足先に部屋を出て、コッソリと別棟の応接室へ向かった。

 

「フォビオ! 来てくれてありがとう、こんな時間に呼び出してごめんな」

「いえ。レトラ様こそ、遅くまでお疲れ様です」

 

 ソファから立ち上がったフォビオが俺に会釈する。

 テーブルの上には、じっと佇む砂スライム。そろそろ会談が終わりそうだな、という頃合いを見計らって、俺はフォビオの元に迎えの者──『強化分身』を送っておいたのだ! 

 

「カリオン様から伺っていたので、自室で待機していたんですが……突然ドアに何かぶつかったと思ったら、隙間からサラサラと砂が入って来たのは驚きましたよ」

「あっ、結構ホラーっぽくなってた……」

 

 ノックだったんだろうけど、砂スライムを送ったのは失敗だったか……

 お使いご苦労様、と分身体を消し、『創造再現』で二人分の紅茶とお菓子を用意する。

 

「それで、レトラ様。俺は何故呼び出されたんでしょうか?」

「何でっていうか……俺達、友達じゃん?」

「そうでしたか……?」

 

 ノリの悪いことだ。

 俺は仕事着のまま来たし、フォビオもカジュアル過ぎない服装で、テーブルを挟んで座る雰囲気からしてもやはり会談のようになっている。でも、そんなに堅苦しいつもりで呼んだわけじゃないので、リラックスして欲しい。

 

《問。防視防音の遮断結界を張りますか? YES/NO?》

(うん、一応お願い)

 

 ウィズにいつもの結界を張ってもらってから、本題に入る。

 

「アルビス達から聞いてると思うけど、俺、開国祭では"姫様業務"やってるんだ」

「はい。魔国のためと聞き及んでおります」

「この数日で、俺の"姫様業務"は見たよな? ……どう思った?」

「素晴らしいと思いました」

「いやそういうんじゃなくて」

 

 メッチャ真面目な顔で返されたが、負けるか……! 

 というか、フォビオならそう言うだろうなって思ってたよ! 

 

「俺も仕事でやってることだから、どうせなら完璧に仕上げたいんだ。もっと良くするにはどうすればいいか、具体的な意見が欲しくてさ」

 

 そこで、フォビオの出番である。前回あれだけ熱く語ってくれたんだから、フォビオには理想の姫様像があるはず……俺の演じる姫様がどんなもんか、査定してもらおうというわけだ。

 話の内容的にも適任だし、スフィアと二人になるとリムル達がうるさくなるのは学習したので、フォビオなら問題ないだろう、という考えもあった。

 

「なるほど……ですが、素晴らしいというのは本心からです。もしレトラ様が俺の姫君だったなら、一生を捧げてでもお仕えしたいと思いました」

「そういうこと真顔で言うのって恥ずかしくないの?」

「事実を事実としてお伝えすることに、恥じ入る必要はないですよ」

「ユーラザニアの体育会系まじ尊敬する……」

 

 それはいいとして、素晴らしい、だけじゃ参考にならないんだよな。せめてどこが良かったのかを言ってくれないと改善点も見付けられない。開国祭は明日が最終日だし……完璧な姫様を装うためにも、出来る限りのことはしておかないと。

 

「じゃあまず……フォビオには、俺が姫様に見えたんだな?」

「それは当然ですが……あの、レトラ様は何か勘違いされていませんか?」

「何が?」

「俺が素晴らしいと言ったのは、レトラ様が姫君のように着飾っていたからではなく──いえ、レトラ様の御姿は目が眩むほど美しいものでしたが、それはレトラ様であったからこその話で、中身の伴わない者が外見だけ取り繕っても何の意味も持ちません」

 

 出た! フォビオの姫様トーク! 

 というか、放っといたらほんと好き放題言うよなコイツ……!

 

「そう心配なさらなくても、レトラ様は正真正銘──」

「どうしようもない結論に持ってくのやめて!? あのさフォビオ、言いそびれてたんだけど、俺は姫って呼ばれるの嫌だから、もう言わないで欲しいんだ……」

「……嫌なんですか?」

「すごい嫌」

「…………そういえば、アルビスがそんなことを言ってましたね…………」

 

 おっ? 流石はアルビス、フォビオにも話しといてくれたのか! やっぱりデキるお姉さん! フォビオだって、そうとわかれば俺に嫌がらせはしないはず……! 

 あれ本当だったんですか……と腕を組んで唸っていたフォビオは、大きく頷く。

 

「わかりました。レトラ様がお嫌なら、"姫"ではなく"宝"と言い換えましょう」

 

 ほぼ変わってねえ!! 

 うーん……姫じゃないならまだマシ……か……? 

 

「いいですか? レトラ様には、守るべき宝として掛け替えのない価値があることをご理解下さい。日頃の政務や研究のみならず、人間達との今後のために"姫様業務"に踏み切り、こうして手間を惜しまず改善にも努める……その全てがレトラ様を魔国の宝たらしめるのです。国を思って行動される限り、レトラ様は魔国の輝かしい至宝なんですよ」

「くっそ……! また褒められる……!」

 

 ダメだ全然変わらない……何だこの全肯定マン……

 ああでも、フォビオの言う姫様が中身優先なら、俺のやってる"姫様業務"とはあまり関係ないのかもしれない。外見を重視する人間向けに、見た目と振る舞いに特化して俺の評判を上げようって作戦なんだからなぁ…………だが、俺もこのままでは終われない! 

 

「武闘大会の無礼者には腹が立ちましたが、レトラ様の全く動じることのない対処には感服しました。レトラ様に祝福を賜るなど至上の栄誉ですし、ゲルド殿もゴブタ殿も意気込みが違いましたね。俺はカリオン様に優勝して頂きたかったですが、明日の決勝は──」

「フォビオ!」

「はい」

「褒めてもらってばっかりでバランス取れない! 何か厳しい意見も言って!」

「はい?」

 

 延々トークを続けていたフォビオが、キョトンと目を丸くする。

 

「いえ、レトラ様は立派に御役目を果たされて……」

「それはもういい! 探せば何かあるだろ!? ダメだったところ!」

「そ、そう言われてもですね……」

「いいから改善点! 答えが出るまで付き合ってもらうからな!」

 

 褒められ続けるこっちの身にもなって欲しい。フォビオも少しは苦労すれば良いと思う。

 イチャモンに近い俺の要求に、フォビオは眉間に皺を寄せながら悩み始めた。根が素直なので、真剣に考えてくれるつもりらしい。いい奴だ。

 

 紅茶を味わい、マカロン(水色)を摘まんで待つ…………と、その時。

 

《────!》

 

 それは降って湧いた異変だった。

 俺の内側で、ウィズが明らかな反応を見せたのだ。

 

《告──警告。緊急事態発生。遮断結界が『解析鑑定』を受けました。偽装不能、妨害不能、結界の再構築不能……この部屋は監視されています》

(は!?)

 

 監視って……誰に!? 

 まさか、ロッゾやユウキが何か仕掛けて……!? 

 

《解。『解析鑑定』の実行元を特定しました。究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)』──》

 

 身内だったよ!! 

 ラファエル先生……っていうかリムル!? 

 いや、それより、ウィズの結界がラファエルに突破された……!? 

 

《及び究極能力『究明之王(ファウスト)』及びユニークスキル『大賢人(モトムモノ)』及びユニークスキル『解析者(サトルモノ)』──》

(あっ数人掛かり!? っていうか多い多い……!)

 

 リムル、ヴェルドラ、ディアブロ、シュナ……これはひどい。いくら『先見之王(プロメテウス)』でも、演算系・思考系スキルにここまで寄ってたかって解析されたら勝てないって……! 

 え、でも、何で皆が…………? 

 

《──以上、複合演算による解析を感知しました。尚、その数分前から固有スキル『竜眼(ミリムアイ)』及び『竜耳(ミリムイヤー)』の監視を受けていた可能性があります》

(ミリムかあああ!)

 

 間違いなく、ミリムからリムルに伝わってるだろこれ! 

 でも……こんなこと、ミリムがわざわざリムルに言うとは思ってなかったし、だから俺もそこまで隠そうとはしてなかったんだけど…………何があったんだ? 

 

 

   ◇

 

 

 ガゼル達との会談後、ミョルマイルも退室し、残ったのは俺と配下達のみ。

 そこへ、ヴェルドラがラミリスやミリムを連れて賑やかにやって来た。明日のお披露目会に向け、張り切って地下迷宮(ダンジョン)に籠っていたそうで、その成果を見せたいらしい。

 

「クックック、明日は凶悪な迷宮の目覚めの日となろう……!」

「だからな、三時間しか公開しないんだって言ってるだろ……」

「わかってるってー! でもアタシ達が担当した下層の仕掛け、スゴイんだよ!」

「ワタシが捕まえてきたドラゴン達の階層も傑作なのだぞ、見に来るといいのだ! レトラも一緒に…………」

 

 ミリムが部屋を見回すが、レトラの姿はない。あいつも明日の準備があるとかで、出て行ってしまったからな。だが俺がそれを伝える前に、ミリムは何かを思い出したように言葉を途切れさせ──こんなことを言った。

 

「そうだった……いないのだったな。まったく、レトラはハクジョーモノなのだ。親友(マブダチ)のワタシより、フォビオと遊ぶなんて!」

「ん?」

 

 唇を尖らせたミリムは可愛らしいが、聞き捨てならない発言があった。レトラが誰と遊ぶって? と尋ねると、フォビオだぞ、とあっさり返答が来る。

 

「夕食の時に、レトラが後でフォビオに会うと言っていたのだ」

「え……何でフォビオ?」

「そこまでは知らないのだ」

 

 詳細は不明ながらも、室内には緊張が走った。正確には俺、ベニマル、シュナ、シオン、ソウエイ──以前起こった、レトラとスフィアにまつわる騒動を知る者達の間でだ。

 とりあえず『万能感知』にレトラの反応がないことを確かめて、ソウエイに所在確認を命じる。ソウエイが影に沈んで消えた後、残る面子で目配せし合う。

 

「もしかしてなんだが……これは、例のヤツか……?」

「可能性はありますね……俺の印象では、フォビオもかなりレトラ様に傾倒していましたし……」

「前回はわたくし達の早とちりでしたが……まさか、今度こそ……」

「レトラ様をユーラザニアへ連れて行こうと……!?」

 

 確かにあの時は、スフィアがレトラにプロポーズして自国へ迎え入れようとしている──なんて事実は存在せず笑い話で終わったが、油断は出来ない。

 何故なら俺はまさに今日、カリオンがレトラを国に連れ帰ろうとしていたことを知ってしまったからだ。それなら、フォビオも同じように考えていても不思議ではない…… 

 

「ユーラザニアの黒ネコまでレトラ様を誑かそうと……? リムル様、直ちに対処すべきでは? 私も上位悪魔(グレーターデーモン)を召喚して──」

「黙っていろ茶坊主! レトラ様の御心を無視して面会の場を荒らせば、レトラ様に嫌われてしまうかもしれないということがわからないのか!?」

「……ッ! か、考えが至らず……お許し下さい……!」

 

 ディアブロはシオンに一喝されて最悪の場面を想像してしまったらしく、本当に黙ってしまった。メンタルが弱いところあるよな、コイツ。

 そして、早くもソウエイから『思念伝達』が入る。

 

『御報告致します。つい先程、東館の清掃員からレトラ様とフォビオの姿を目撃したという情報が寄せられておりました。また、その近辺の応接室の一つが、外部からの感知を受け付けない状態となっています。恐らくは、レトラ様の遮断結界ではないかと──』

 

 くっ……やはり結界が張られていたか……! 

 ラファエル先生なら『解析』も不可能ではないだろうが、無理に覗けばバレてしまう……ソウエイもそれを危惧して、下手に近付いてはいないそうだ。

 

「リムル様、ど、どういたしましょう……?」

「レトラの仕業だと思うが、何も起こっていないのに俺達が大袈裟に出て行くのはちょっとな……せめて、中の様子がわかれば……」

「ワタシには見えたぞ? あの部屋には、レトラとフォビオがいるのだ」

 

 ミリム! そうか、『竜眼(ミリムアイ)』があった……!

 二人が何をしているのか問うと、ミリムはうーんと腕を組む。

 

「それがだな……さっきから見ているのだが、気を抜くとコチラが解析されそうなのだ。ワタシは集中するのが苦手だから、途切れ途切れなのだが……」

 

 レトラの先生の目を掻い潜れるだけでも、ミリムは別格だった。

 よし、ミリムに状況を探って貰い、踏み込むかどうか決めよう……以前のように、俺達の早とちりということもある。ただの考え過ぎであれば、それでいいのだから──

 

「レトラは、お姫様はどうだったかとフォビオに聞きたかったようだぞ!」

 

 いきなりどうしてそうなった。

 シュナとシオンが、「レトラ様は姫君役がお嫌だったのでは……?」「それを何故フォビオ殿に……?」と顔を見合わせて戸惑っているが、俺も同じ思いである。

 

「それでフォビオは、素晴らしい姫君だったとレトラをとても褒めていたのだ。一生を捧げて仕えたいとか……目も眩むほど美しかったとか……守るべき宝だとも言っていたな!」

 

 お前は何を言っているんだ。

 いやフォビオ君? それだと、レトラを口説いているようにしか聞こえないんだが……君はレトラの何なんだ? そう思ってしまう俺がおかしいのか? 

 ディアブロが「一体どのような手を使って……」と歯軋りしている心境は不明だし、ベニマルは「レトラ様はお前の主君じゃないだろうが……」とよくわからない理由でキレていた。

 

「あとは武闘大会の話……フォビオはカリオンに優勝して欲しかったようだが、ワタシもなのだ。レトラと一緒に帰りたかったのに……」

 

 だからそういう話じゃないって言ってるだろ! 

 しかしそれを聞くと、フォビオもカリオンのようにレトラを連れて帰りたい派である可能性が高まってきたな……やっぱりそうなのか? 今度こそ、勘違いじゃないってことなのか? 

 

「で、今話しているのは──む? フォビオの様子が変だな……レトラに何か言われて返事に困っているようだが……うーん……付き合え? とか……何のことだ?」

 

 ……付き合えって? 

 ……レトラが言った、だと? 

 ……フォビオがその返事をしようとしている……? 

 

「──間違いなく異変だ、乗り込むぞ。結界を解析して転移する」

「リムル様。このディアブロ、微力ながら御役に立ちたく……!」

「わたくしも尽力致しますわ」

 

 高い演算能力を有するディアブロやシュナ、そして究極能力『究明之王(ファウスト)』を持つヴェルドラ──は、「レトラに嫌われてしまうのではないのか?」と日和っていたが、大丈夫だ俺に任せろレトラは怒らないからと宥めすかして協力を取り付けた。

 

 俺にはレトラを言いくるめる自信がある。

 バレようがどうなろうが構わないから、さっさと踏み込んで片を付けよう──

 

 

   ◇

 

 

 ここまでのあらすじ。

 フォビオと会っていたら、身内(大勢)に監視されていました。

 普通そこまでするか? ……とは思うけど、もう結界を『解析』されてるんじゃ仕方ない。恐る恐る、俺はリムルに思念を送る。

 

『あのー……リムル? 何やってんの? 皆で覗くのやめて欲しいんだけど……』

『レトラ……お前こそ、こんな時に何してるんだ? 国家行事の最中に不審な結界が発生したら、調査するのは当たり前だろうが』

『そうだった! ゴメン! ちゃんと言っとけば良かったな!?』

『……お前、少しは反論とかしてもいいんだからな』

 

 謎の注文を付けられたが、TPOを弁えなかった俺が悪い。開国祭のために厳戒態勢が敷かれている中でやることじゃなかった……! 

 

『で、フォビオと一緒なんだろ? 俺達も話を聞きたいんだが、そっち行っていいか?』

『来るの? いいけど……じゃあ結界は解いとくよ』

 

 リムル達は、俺がダメ出しされるのを見に来るってことか……

 対面のフォビオに声を掛けると、フォビオは解析には気付いておらず、熱心に考え込んでいた。

 

「レトラ様、すみません、もう少し時間を……!」

「ああ、それちょっと待って……今、リムル達も来るってさ」

「え?」

 

 室内に"転移門"が出現し、中から──リムル、ミリム、ヴェルドラ、ラミリス、ベニマル、シュナ、シオン、ディアブロ、ソウエイ…………こんなに来るとは聞いてなかった。しかも、大半のメンバーがピリピリとした雰囲気なのは何だ……? 

 困惑するフォビオの挨拶に、リムルは爽やかに応えて俺の隣に腰掛け、配下達はソファの後ろにズラリと並ぶ。いや威圧感……お客さんに圧掛けてどうする……? 

 

「フォビオ君。レトラが無理を言ったみたいで、悪かったね」

「いえ……この度は身に余るお話を頂き、光栄に思います」

「光栄ねぇ……で、どう答えるつもりなんだ?」

 

 なんか……リムルが怖いし、皆の空気が冷えたぞ……? 

 ちなみにミリムとラミリスとヴェルドラは、向こうに用意されたソファとテーブルで、お茶を飲んだりマカロン食べたり漫画を読んだりしている。俺もあっちに交ざりたい。

 

「それは……今、検討中でして……」

「はあ? 検討? 即決出来ないってのか?」

「も、申し訳ありません! レトラ様は素晴らしい御方なのですが──」

「…………お前、もしかして断るつもりか? レトラの何が不満だ?」

「いえ、そうではなく! 不満がないので答えが出ないんです……!」

「ん……?」

「せっかくレトラ様に、()()()()()()()()をご依頼頂いたのに……!」

「──タイムッ!!」

 

 リムルの大声が場を遮る。

 しんとなった応接室で、額に手を当てたリムルがフォビオに問う。

 

「……フォビオ、レトラに何て言われたんだ?」

「"姫様業務"をより良いものにするため、褒めるのではなく厳しい意見を出せと」

「あー……あぁ……それに付き合えって?」

「はい。ですが、全く思い付かず……」

「そうか…………」

 

 リムルが両膝に肘を突き、頭を抱えて項垂れた。後ろの配下達も、面食らった顔でざわついている。リムル達は、改善案を出せって俺がフォビオに突っ掛かったのを見て傍聴しに来た……わけじゃなかったんだな? じゃあ何だと思ったんだ? 

 だが、俺の疑問が解消されることはなかった。リムル達の様子を見ていたフォビオが……まさかレトラ様、と声を上げたのだ。

 

「まさか……リムル様達には何も伝えず、ここへ来たんですか……!?」

「うん? 言ってないけど……」

「……!」

 

 愕然とした表情を浮かべるフォビオ。俺には意味がわからない。

 

「レトラ様……ご所望の改善点が見付かりました。厳しい意見となりますが、ご容赦下さい」

「え、今? わ、わかった……どうぞ」

「レトラ様には、リムル様や部下達との意思疎通が足りていません! 今回のことも俺に相談する前に、もっと身近な者達と話し合うべきでした!」

 

 そ、それが改善点……? 

 リムル達に言ってからにすれば良かったって……? 

 

「でも、評価してもらうなら、身内より第三者だよな……?」

「そういうことじゃないんですよ! 俺を頼って頂いたのは光栄の至りですが……もし俺のお仕えする姫君が、俺より先に他国の者を頼っていると知ったら面白くないに決まってるじゃないですか。そんな暇があるなら、その全てを俺に向けて欲しいですよ──そう思うだろベニマル!」

「はっ?」

 

 突然、バッとフォビオが視線を向けた先にはベニマルがいた。不意打ちを受けてポカンとしているが、そういえばさっきはベニマルも珍しくキレ顔だった。

 

「え、あ、いや……多少は……?」

「多少か?」

「くっ……た、多少じゃない──あと言っておくが、レトラ様はお前の主じゃないからな」

「わかってる! ものの例えだ許容しろ」

 

 以前の交流経験からか、二人はかなり気安い仲ではあるようだ。

 そして、フォビオのターンは続く。

 

「レトラ様は、褒められてばかりは嫌だと仰いましたね? 良いものは良いんですから諦めて下さい。それと悪い点を挙げろと言い張ったあれも、俺は楽しかったですが今度は御自分の配下にしてやってください……そういうのも含めて皆、主の御役に立ちたいんです」

 

 ええっと……駄々を捏ねろと……?

 チラッと後ろを振り返ると、シオンとディアブロがコクコクコクコクと高速で頷いていた。仲良いね。確かに二人とも、頼めば何でもしてくれそうな感じはあるけど……俺のためなら、厳しいことでも言ってくれるのか……? 

 

「レトラ様が国や民のため、合理的な行動を取ろうとするのはわかります。ですが、レトラ様が何を目指して行動しているのかわからなくては……いくらレトラ様をお支えしたいと思っても、それが叶わないのは辛いことです。なので、もっとお考えを口にして下さい」

 

 こ、これはどうなんだ……合ってる……? 

 もう一度首を捻ると、シュナとソウエイが俺を見ていた。じっと力を込めて懇願し続けるような、一歩も引く気の無い眼差しが、強い肯定を表していた。

 

 ……だけど俺には、言えることと、言っていないことと、言えないことがある。

 言っていないことはともかく、言えないことは伝えられない。隠蔽された情報は、誰にもわかってもらえない。それが出来ない俺は、皆に支えてもらうことも出来ない──

 

「あのさ、じゃあ……言えなかったら?」

「言えない原因が悪いので、それを排除すればいいんです」

 

 ストレートな脳筋理論きた! 

 いや、それはそうなんだけど……!? 

 

「…………が、頑張る…………」

 

 今の俺に出来る、最大限の譲歩だった。

 

 

 

「リムル様、お見苦しい所をお見せして申し訳ありません」

「いや、俺達こそ横槍を入れて悪かった……世話になったなフォビオ」

「今日は色々ありがとう。すごく参考になったよ」

「それは何よりです。いいですかレトラ様、まずはリムル様や周りの者を頼って下さいよ。その後だったら、俺でよければまた伺いますから」

「うん。あっそれと、フォビオ……」

 

 この機会に、一つはっきりさせたいことがあった。

 

「俺達って、もう友達でいいよな?」

「え?」

 

 またフォビオが困り始めた……そうでしたか? を二回やられたら俺もそろそろ泣きが入るので、その辺は配慮して欲しいんだけど……

 

「──良いぞ! 友達なら構わないのだ!」

 

 弾ける笑顔で口を挟んできたのはミリム。

 

「フォビオ、お前はなかなか良いヤツだな。レトラの親友(マブダチ)はワタシと決まっているが、友達ということであれば許してやるのだ!」

「ウム、我にも異論はない。そこまでレトラのことを考えていたとは、貴様を見直したぞ」

「良かったね、レトラ!」

 

 抱えたマカロンを齧っているラミリスが癒しだった。

 別に、友達って許可制じゃないよな……まあミリムもヴェルドラも、フォビオを認めたってことになる。じゃあ、リムルはどう思ったんだ? 

 

「あー、そうだな……フォビオ、良かったらレトラの友達として、よろしく頼むよ」

 

 お! リムルが怖くなくなった! 珍しい! 

 そうか、フォビオが困っていたのは、リムル達が怖かったからってこともあるのか……本当は要らないはずの許可が次々と出て、最後にはフォビオも頷いてくれたのだった。

 

「では……今後は友としても、よろしくお願いしますレトラ様」

「やった友達! よろしくフォビオ!」

 

 

 

 

 




※友達が増えました(保護者公認)(快挙)
※今回の更新期間は終了です。ありがとうございました。

2024.7.24 本文の後半部分を追記



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