転スラ世界に転生して砂になった話   作:黒千

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135話 モミジの疑念

 

 リムルをリーダーとした俺達のチームは、"緑乱"の撃退に成功。

 間もなく"緑乱"は魔国を後にした。どうやら『本国からの呼び出し』があったらしい。

 

 "緑乱"がいなくなってしまえば、迷宮の運営は順風満帆だ。それからも俺達は仮魔体(アバター)を使って、侵入者狩りを続けた。

 ミリムが天井からの不意打ちで一人を倒し、気を取られたチームに俺が火炎息(ファイアブレス)をお見舞いする。陣形を立て直される前に、炎を突っ切ってラミリスが突撃。ヴェルドラも加わって前衛を相手取り、リムルの魔法攻撃とサポートで確実に頭数を減らす……

 

 た、楽しい……指導員トウマとして活動する計画が、全然達成出来てない……! 

 だが、これは良い準備期間になるはずだ。冒険者達との戦闘、行動傾向のデータ収集は、指導員をやる時に役立つと思う。

 

 

 もちろん、俺も遊んでばかりじゃない。

 毎日の通常業務の他にも、剣の稽古だって欠かしてはいなかった。

 

 現在ハクロウは、ファルムス遠征の褒美としてリムルから休暇を与えられている。娘のモミジも町に滞在していて、親子水入らずの生活を満喫中だ。

 で、俺は──ハクロウがモミジに稽古を付ける際、是非ご一緒にと誘われた。

 

「二人で稽古しなよ……俺がいたら邪魔だって」

「レトラ様、そう仰らずに。武闘大会でゴブタが晒した醜態により、モミジに呆れられてしまいましてな……あのような軟弱者しか育てられぬと思われるは心外。ワシがしかと指南役を務めている所を、モミジに見せてやりたいのですじゃ。何卒、お助け頂きたく……」

 

 娘に尊敬されるために俺を使おうという強かさ、気に入った! 

 そんなわけで、俺もちょくちょく稽古に参加させてもらっている。長鼻族(テング)のモミジは、ポテンシャルは高いが実戦経験に乏しいところがあり、まだまだ伸びしろがありそうだ。

 

 俺とハクロウの真剣模擬戦では、ハクロウはいつも通り鬼みたいだった。娘にいいとこ見せたくて張り切ってるんだろうし、師匠の顔を立てると思って俺も必死に喰らい付く。

 試合を見守るモミジは、普段とは違うハクロウの気迫に圧倒されたり、ボコられる俺を心配してくれたりと素直な良い子で──やっと俺が一本取った時は、大喜びしてくれた。

 

「レトラ様……! とうとうやりましたね! あの鬼のような猛攻を凌いで、お父様の隙を突くなんて……素晴らしいです!」

 

 ハクロウ! 俺に厳しくしすぎてモミジが俺の味方になってるよ! 

 予期せぬ展開にショックを隠し切れないハクロウだったが、「レトラ様と我が娘が仲睦まじく過ごせるのであれば、本望ですぞ……」だそうだ。無理しないで。

 ハクロウとモミジが仲の良い親子になったら、モミジの許可を貰って俺もまたハクロウに甘える……って約束だったはずだけど、俺とモミジも充分仲良くなってるな……? 

 

 

 

 

 

「レトラ様、お疲れ様です」

「あれ、モミジ。今日は一人?」

 

 町での相談事を何件か解決した帰り、モミジに会った。

 会釈に合わせて揺れるショートの髪は、耳の辺りから毛先に掛けて純白が紅色へと移り変わり、そのグラデーションが綺麗だ。狼耳と尻尾も可愛い。角はない。

 

「はい、今日は服飾工房の見学を。見事な絹織物と着物の数々に、感激してしまいました。ゴブリナの皆様にも、とても親切にして頂いて」

「頑張ってるね。花嫁修業なんだっけ」

「いえ、そんな……」

 

 モミジはハクロウと過ごすばかりではなく、町を見て回ったり知り合いを作ったりと、とても活動的だ。将来ここへ嫁いでくる時のための準備ということらしい。

 恥ずかしそうなモミジだったが、その表情はすぐに神妙なものへと変わる。

 

「レトラ様、あの……少々お時間をよろしいでしょうか?」

「いいよ。どうしたの?」

「ベニマル様のことで、折り入ってご相談がありまして……」

 

 おっ、モミジからも協力要請が来たようだ。

 俺はアルビスに協力したことがあるけど、二人はベニマルを巡って自由戦闘恋愛主義(ラブアンドバトル)で正々堂々競うことになったので、今後は不公平にならないようにしないとな……アルビスにも一言入れるつもりだが、まずはモミジの相談を聞く。

 

「その、私……とある噂を聞いてしまったのです」

「うん」

「どうやらベニマル様には……既に、恋仲の御相手がいらっしゃるようだと」

「えっ!?」

 

 相談されといて申し訳ないけど、知らない知らない! 

 何だそのビッグニュース!? 

 

「だ、誰? まさかアルビ──」

「そんな訳がありません」

 

 ギロ……! とした半端じゃない眼力に、強制的に黙らされる。あのモミジさん、これでも俺、この国の王弟なんですよね……覚えてるかな……? 

 俺の驚きっぷりに消沈したモミジが、目を伏せる。耳も垂れた。

 

「レトラ様も御存じではないのですね……先ほど工房で、ゴブリナの方々がそのようなお話をされていて……私にもまだ、はっきりとしたことはわからないのですが」

「相手の特徴とか、何か手掛かりは? 魔国の住民だったら俺は全員わかるよ」

「それが、相手の方というのが……」

 

 モミジは、しょんぼりとした様子で口にした。

 

「レトラ様の姉君様のようなのです……」

「…………」

 

 俺の知らない人だった…………

 

 誰だよ俺の姉貴! 初耳なんですけど!? 

 もしかしてリムルのことか? 俺の兄弟って意味だったら、他に該当者がいない……うん、リムルは綺麗だからな、姉だと思われてる可能性も大いに…………

 

 あれ? 

 

 そうすると、リムルとベニマルが──ってことになるけど!? 

 ええええいつの間にそんな!? 全然知らなかった! で、でも、そういうことってあっていいの? ダメじゃない? いや、本人達が良ければ……いや……えぇ…………? 

 

「そ、それが本当なら大事件だな……よしモミジ、今から確かめに行こう!」

「はい! レトラ様、よろしくお願い致します!」

 

 

 

 

 モミジと共にやって来たのは、執務館の上階にあるバルコニー。表の広場に面している方じゃなくて、裏側にあるルーフバルコニーだ。そこにはカフェテーブルとチェアが並べられており、休憩中のリムルがお茶を飲んで寛いでいた。リムルも昼間はちゃんと仕事をしていて、視察や事務処理に追われているのだ。

 ディアブロは旅に出ていて不在のため、お茶を淹れたのは傍で控えているシオンかな? 力強い味のシオンらしい紅茶は、俺もリムルも密かに気に入っていたりする。

 

 テーブルへ近付いて行くと、俺に気付いたリムルが顔を上げた。そして、俺の後ろで一礼したモミジを見て、少し意外そうな表情になる。

 二人が挨拶を交わすのを待ってから、俺は切り出す──

 

「あのさ、リムルに聞きたいことがあって」

「何だ?」

「リムルとベニマルが付き合ってるって本当?」

「ハア??」

 

 あ、これは……リムルは全然関係ないな? 

 その一言だけでそう確信出来るほど、ポカンとした声だった。

 リムルの背後のテーブルで、俺達にもお茶を注いでくれようとしていたシオンが、ドガッシャンと派手な音を立てていたが、割れたなアレは。シオンには少し衝撃的な話題だったかもしれない、ごめん……でも、リムルの反応からすれば安心していいと思──

 

「ちょ、ちょっと……あの! レトラ様!」

 

 大慌てのモミジに、グイグイと服を引っ張られる。

 

「モミジ……違うみたいだよ。やっぱりただの噂じゃない?」

「いえ、私は、相手の方がリムル様だとは言っていないのですが……!」

「でも、俺の兄弟ってリムルだけだし」

 

 放置されたままのリムルが、困惑し切った顔で俺達のやり取りを見守っている。ごめんリムル、ワケわかんないよな。もう少しモミジの話を聞いてから来れば良かった…………

 そんな俺の思考に割り込む、モミジの声。

 

「ですから、リムル様ではありません! 謁見式や晩餐会の場でお見掛けした、あの麗しい御方です! リムル様の隣にいらっしゃった、砂色の長い髪の……!」

「リムルの隣……?」

 

 そこでようやく、ピンと来た。

 

「ああ! あれなら俺だよ」

「えっ……?」

「もしかして、俺とは別人に見えてた? 嬉しいな」

 

 俺と姫様を同一視しなかったモミジに、ちょっと気分が良くなった。

 サービス精神マシマシで、手っ取り早く『創造再現』を発動させる。サラァァ……と零れた砂が、あの繊細で上品な姫様専用の着物を作り出し、今日は短くしていた俺の髪も、銀細工の髪飾りを添えてサラリと背中へ流れ落ちた。

 

 考えてみればモミジは"姫様業務"を知らないし、業務以外では俺の長髪姿を見ていない。開国祭後の反省会でも、修練場で稽古する時も、俺は短髪だった。

 しかもモミジと直接話すようになったのは、一緒に稽古を始めてからのことで……ハクロウが改めて俺を王弟だって紹介してくれたけど、あれが紛らわしかったのか? 

 

「でも俺、どっちの格好でもレトラって名乗ってたはずだよな……」

「えっ……と……妖気(オーラ)はそっくりだと思いましたが……受ける印象が違って……御姉弟だったら、波長やお名前も似ていらっしゃるのかと……!」

 

 そりゃあね。"姫様業務"中の俺と、業務から解放された俺とでは、のびのび具合が違っただろう。ハクロウに容赦なく鍛えられている俺を、あの姫様だと思えないのも当然だ。

 モミジがリムルの系譜の魔物ではなかったことも一因かな? 魂の繋がりがあれば、姿が変わったくらいで俺を別人と思うことはないんだから。

 つまり俺の姫様モードは、世間では普段の俺と別人に見えるくらい完璧だったってことになる! こんな格好までして"姫様業務"を頑張った甲斐があったと…………ん? 

 

 問題はそこじゃなかったことを思い出した。

 

 えーと……? 

 ベニマルと付き合ってる俺の姉ってのが…………

 姫様やってた俺だとすると…………? 

 

 

「ってことは──ベニマルの恋人って、俺かよ!」

 

 

 勢いで叫んだ瞬間、バサバサッと背後で音がした。

 振り返ってみると、そこには、報告書の束を足元にぶちまけて立つベニマルが。

 

 タイミング悪ッッ!! 

 

 いや違う、逆に良いんだ。この場で疑惑を晴らした方が後々面倒がない……! 

 俺は姫様衣装の裾を引き、硬直しているベニマルに駆け寄った。

 

「ベニマル、大変だ! なんか俺達、付き合ってることになってる!」

「は、はい!? 何でそんなことに……!?」

「違うよな?」

「違いますよ!」

 

 誤解は解けた! 

 何はなくとも、ベニマルに言わせることが肝心なのだ。

 俺はモミジを向いて、ほらね、とアピールする。

 

「モミジ、これでわかっただろ? ちょうど俺が仕事でこんな格好してたから、俺達が付き合ってるとかどうとか、誰かが勘違いしただけだと思うよ」

「ま、待てレトラ、何の話だ!? 俺にわかるように説明しろ!」

「俺とベニマルが付き合ってないって話」

「それで説明が済んだと思ってるんじゃないだろうな!?」

 

 まあ、まあ、ちょっと待っててリムル。まずはモミジの誤解を解いてあげないと。

 俺が"姫様業務"をしてただけで、よくもまあこんな傍迷惑なことになるもんだ……と思いながらモミジの反応を見ると、何故か様子が変だった。

 口元をわななかせながら、フルフル……とゆっくり首を振っている。

 

「そ、そんなハズないわ……」

「……何が?」

「だって、私が聞いた話では、御二人が……その……」

 

 え、何……? 

 いつの間にかバルコニーは静かで、皆が事の成り行きを見守っていた。今思ったけど、さっきよりギャラリー多くなってないか……? 

 頬を染めたモミジが、とうとう、振り絞るようにして叫ぶ。

 

「く、口付けまでしていたのを見たって──!」

「ッ!?」

 

 ザワッ──とバルコニー中が息を呑んだ。

 流石の俺も動揺し、バッと勢い良くベニマルを見上げる。

 

「したことあったっけ!?」

「あるわけないじゃないですか!」

 

 真っ赤な顔で返答が来た。

 だよな! 良かった! 

 

「俺も記憶にない! だから、それも勘違いだと思うよ!」

「どうしたらそんな勘違いになるって言うのよ!?」

「知らないけど、してないんだから違うって……!」

 

 カタン、とリムルが席を立った。

 にっこりと微笑みながら、悠然とした歩みで近付いて来る。

 

「なるほどなるほど……ベニマル君、覚悟は出来てるんだろうな?」

「あの、身に覚えの無いことで処断されたくないんですが……!」

 

 命の危機を感じたか、ざざっと青褪めたベニマルが抵抗している。

 そっちで"剛力丸"を握り、「天誅……天誅を……」と震えているシオンは大袈裟だと思ったが、涙目がマジっぽくて声を掛けられない……そして「リムル様、情けは無用です。極刑に処すべきかと」と進言しているソウエイはどっから来たの。影からか。

 

「お兄様……?」

 

 お盆にケーキを乗せたシュナまで笑顔で立っていて、ああ、リムルにおやつ持って来てくれたところだな……どうしてこう巡り合わせが悪いのか、ベニマルがピンチ過ぎる……

 早々に諦めたベニマルは、潔く俺に助けを求めてきた。

 

「レトラ様すみません無理です助けて下さい」

「だ、大丈夫、助けるよ! ベニマルは悪いことしてないし!」

 

 具体的な目撃証言(知らない)が出てしまっているからには、否定しただけじゃ信憑性がない……じゃあ何を誤解されたのか特定して、濡れ衣を晴らさないと……! 

 でも、どうしたらいいんだ? 何でベニマル? 火のない所に煙は立たないって言うけど、そんな誤解をされるような心当たり、俺には全然…………

 

《告。個体名:モミジの証言と一致する事象として、最も可能性が高いのは──》

 

 いやおかしいだろ!? 

 俺に心当たりがないのに、何でウィズにはあるんだよ!? 

 と、叫びたかったが、ここは黙ってウィズの声に耳を傾ける。『思考加速』で聞き取りを終えた俺は、頭の中で話を整理しながら、今にもリムルやソウエイに連行されて行きそうなベニマルの腕を引っ張り、待ったを掛けた。

 

「ベニマル、ベニマル! わかった!」

「え? な、何です?」

「ほら、謁見式の合間に……! 俺、ちょっと愚痴ったことあったよな」

「愚痴……ああ、はい、愛想笑いしすぎたってやつですか? あの時のレトラ様は、慣れない業務に大変お疲れでしたよね」

「そうそう。それでその時、ベニマルはどうしたんだっけ……」

「どうしたって……確かレトラ様が、顔が固まってきたって言うので」

 

 首を傾げたベニマルによって、それが再現される。

 あれは休憩時間に玉座を立って、誰もいない奥の廊下へ出て、護衛のベニマルがついて来ていて……かつての出来事と同じように、ふに、と俺の頬が包まれた。

 

「じゃあ解しましょうかって…………っ?」

 

 そこまでやってから、ようやくベニマルが固まった。

 二人で向かい合い、ベニマルの両手が俺の頬を包んでいて、俺はベニマルを見上げていて……傍から見たら確かに、これから姫様にキスでもしようかという光景だった。

 

《尚、当該の事象発生時、周辺にゴブリナ一名の存在を確認しております》

 

 ……これは仕方ないね、勘違いするね。

 ……絶対的に俺達が悪いね……? 

 

(……ウィズ。お前も見てたなら、これダメだなって思わなかった?)

《否。個体名:ベニマルから主様(マスター)に対する害意は一切感じられませんでした。また、同個体との軽度の接触により、主様(マスター)の精神状態の緊張緩和が観測されましたので、静観しておりました》

(ですよねー)

 

 ベニマルはただ、疲れ切っていた俺を励まそうとしてくれただけなのだ……で、これを他意なくやっちゃうんだから、ほんと天然だよなぁ……あの時と違うのは、目の前のベニマルがぶわっと汗掻いて石になっていることか。

 そして俺も、不慣れな"姫様業務"に精神が疲弊していて、ベニマルの手あったけーくらいにしか思ってなかった……フニフニ癒された後、『よし休憩終わり……まだまだ頑張るぞ!』『頑張り過ぎないで下さいね』って普通に謁見の間に戻ったわー……

 

 ス……とベニマルの手を外し、静まり返ったギャラリーに向き直る。

 

「俺がすごく疲れててベニマルに顔揉みしてもらっただけで、他には何もしてません! というわけで、これも誤解です! 噂されてるような事実はないです!」

 

 お騒がせしてすみませんでした! と叫び、長髪と姫様衣装をサラッと元に戻す。

 よーし! 原因は俺達だったけど、これで解決だ……! 

 

「主君への重大な不敬行為……言い残すことはあるか?」

 

 あ、解決してないの? まだ処す話してるの? 

 死刑執行人のような目をしたソウエイの一瞥を受け、ベニマルが怯む。

 

「ま、待て、確かに俺が迂闊だったが……! 今回はレトラ様を怖がらせてはいないだろ!」

「……レトラを怖がらせた? 今回は?」

「!!」

「ベニマル君、俺の執務室で話を聞こうじゃないか?」

「はい……」

 

 あーそういえばあったな……リムルの留守中、ベニマルに喰われるかと思ってビビったやつ……今度は身に覚えがあるからだろう、ベニマルは大人しく出頭することにしたようだ。

 生きて帰って来いよ……! 

 

 

 

 

 騒動が終わり、割れたカップや散らかった報告書の後片付けがされていく。

 俺がモミジの元に戻ると、放心した顔で立っていたモミジの身体から──カクン、と力が抜けたので焦った。咄嗟にモミジの両腕を支えながら、一緒に屈み込む。

 

「よ……よかった……!」

 

 何だ、どうしたどうした。

 さっきまでモミジにあった悲愴感漂う表情は、今は安堵したように緩んでいた。

 

「あ、あの麗しい御方が恋敵だったら……私、とても敵わないと……!」

「あれ俺だから気にしないで……本当は、この国にあんな人いないんだよ」

 

 あれはこんなのいたら完璧だぞっていう理想の姫様で、空想上の生き物と変わらない。そうか、モミジは強敵が現れたと思ってションボリしてたのか……ゴメンな……

 そっと、モミジの目が俺を向く。

 

「あの、レトラ様は……ベニマル様と私のことを、応援して下さいますか?」

「うん、応援するよ。あ、でも俺、アルビスにも協力してるから、アルビスにも聞いて公平にってことになるけど……それでもいい?」

「構いません! 私、自分を磨いてベニマル様を振り向かせてみせます!」

 

 ふんす、と気合いを入れるモミジ。

 アルビス派の俺だけど、俺の意見でどっちかが有利になるなんてことは絶対にあっちゃいけない、そこは弁えている。ベニマルのことは、本人達が己の力で勝ち取ってくれ。

 

 俺は次の仕事が迫っていたので、モミジとはそこで別れた。

 ぜひ今度、時間のある時にベニマルの話を聞かせて欲しいと言うモミジと約束をして──俺への頼みがすごく可愛い! アルビス、こういうとこ見習って! 

 

 

 

 




※姫様やってた弊害のお話
※次回はリムル、10/31(木)予定。




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