転スラ世界に転生して砂になった話   作:黒千

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強欲者編
138話 評議会への招待


 

 俺達の仮魔体(アバター)パーティ"死を齎す迷宮の意思(ダンジョン・ドミネーター)"は、初期状態とは比べ物にならないくらいの成長を遂げた、と思う。

 リムルの操るゴーストは青白い鬼火(ファイアオーラ)を纏い、ヴェルドラのスケルトンはリムル作の神輝金鋼(オリハルコン)で黄金のガイコツに。ミリムの赤いスライムは残像を残すほどの素早さから"赤い流星(スカーレット)"の異名を取り、ラミリスの鎧モンスターには紫色の死の気配(デスオーラ)が漂う……皆すごい格好良い。ダンジョンの敵に貫禄があるのは大事だよな……! 

 

 俺の幼竜(ベビードラゴン)は、仔竜(ドラゴンパピー)に成長していた。そして"魔晶喰い(ジェムイーター)"とも呼ばれるようになっている。ある日の戦闘中、相手のポケットから魔晶石が落ちて……俺の目の前に転がってきたそれをパクッと喰ったら、「あ゛ーっ!?」って叫ばれたのが始まりだ。

 それからは、侵入者と遭遇すると──

 

「"魔晶喰い(ジェムイーター)"が出たぞ! 荷物はしっかり持ったか!?」

「せっかく集めた魔晶石を奪われてたまるか……!」

 

 追い剥ぎみたいに言われて心外である。まあ、迷宮内ではアイテムをロストする危険もあるって教訓にして欲しい。落ちてきたらどんどん喰うよ! 

 

 しかし最近では、ミリムが家に連れ戻されてしまったため、フルメンバーで暴れ回ることは出来なくなっていた。チーム"緑乱"が国に帰ってからは、目立った強敵もいなくなったことだし……迷宮を守る俺達の活動も、少し落ち着いてきたってところだ。

 

 そんな頃の出来事だった。

 西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)からリムルに、会議への招待状が届いたのは。

 

 

   ◇

 

 

 評議会からの招待を受け、俺達はイングラシア王国へとやって来ていた。

 今回のメンツは、レトラ、ベニマル、シュナ、ソウエイ。シオンはちょっと……公の場で普段のノリで失敗されたら大変なので、魔国に残って貰っている。

 

 レトラについては、評議会の空気がどんなものか知っておきたいと言うので参加が決まった。本当に勉強熱心な奴だが、俺はいつかレトラをイングラシアに連れて行ってやりたいと思っていたし、少しなら町の案内もしてやれるだろう。

 それに……レトラから目を離すといつもロクなことにならないというか……だったら、最初から近くにいて貰った方が俺も安心というか……そんな感じだ。

 

 

 首都ルーラの都会的な街を散策し、シュナの希望でブティックに入る。

 シュナが目を輝かせているのを見て、俺は好きな服を選ぶよう言った。日頃の感謝を込めて贈らせて欲しいと。いつもの格好をしているベニマルとソウエイにもだ。

 

 試着室から出て来たシュナが身に着けていたのは、ふわっとした白いスカーチョにニットベスト。おおっ……美少女は何を着ても似合うが、これは可愛いな! 見慣れた巫女服とは違う、カジュアルな服装のシュナがとても新鮮だ。

 ベニマルとソウエイは、ジャケットとシャツ、スキニージーンズか。はいはい似合ってる似合ってる、これだからイケメンは……ああいや何でもない。

 三人を褒めてやると、各々からお礼を言われた。

 

「あの、それで……レトラ様はどちらに……?」

 

 ソワソワとした態度で、シュナが周囲を見回す。ベニマルもソウエイも控えめながら同様で、うん、レトラにキラキラと褒められたいんだよな、わかるぞ。

 だが、今ちょうどレトラは──

 

「あっちで店員とバトルしてる」

「えっ?」

 

「お客様、こちらのワンピースは如何でしょう? リボンとティアードのとても可愛らしいデザインですので、きっとお似合いになりますわ」

「いえ、そういうのは好きじゃなくて! このセーターでコーデして下さい!」

「それでしたら、パニエを入れたフリルスカートなど」

「スカート以外でッ!」

 

 シュナ達を待つ間、俺はレトラと一緒にシオンへのお土産にする服を選び、その後でレトラにも服を買ってやろうとした。だが肝心のレトラが、もう疲れたとか情けないことを言い出したので、店員にコーディネートを任せればいいとアドバイスしてやったのだが……まだ掛かりそうだな。今のうちに、俺の服も選んで貰うとするか。

 

 

 着替えを終えたのは俺の方が先だった。やがてレトラも新しい服で戻って来たが、その表情は意外と爽やかで、「苦労したけど俺が勝った!」とご機嫌だ。

 では、その服装は──

 

 ふんわりした春色ニットセーターは、柔らかに流れる砂色と相まってレトラによく似合っているし、頭にちょこんと乗ったベレー帽も可愛い。甘いばかりではなく、それらを少し背伸びした感じにまとめるのがサスペンダー付きキュロットで……広めの裾から伸びる華奢な脚には、白ソックスとエナメルの靴。

 

「レトラ、お前の負けだ」

「何で!?」

 

 大方こいつは、スカート姿を回避したことを指して「勝った」と言っているんだろうが……残念ながらキュロットのシルエットがスカートに見えなくもないし、セーターのもふっとした感じに誘われてつい抱っこしてみたくなる完成度になっている。こんな場所ではやらないが。

 まあ、有り体に言って──めちゃくちゃ可愛いということだ。

 やってくれたな店員さん、ありがとう。

 

「それじゃレトラ、支払いは俺に任せろ」

「本当にいいの? 俺もお金あるし、払えるんだけど」

「いいか? お前の買い物に俺が全額出すのは、一度やってみたかった夢の一つだ」

「そこまで……言うなら……」

 

 レトラは人の熱意に押されやすいところがあるので、大袈裟にでも言ったもん勝ちだ。

 思った通りレトラは神妙に頷き、そして、ありがとうと笑った。はぁー、俺の弟可愛い。一度と言わず二度でも三度でも、色々買ってやりたい。またやろう。

 

「あっ、シュナ可愛い! うわ、イケメンがいる! すごい!」

 

 などという恒例のやり取りもして、俺達はのんびり買い物を楽しんだのだった。

 

 

 

 ヒナタと合流予定があるため、待ち合わせの喫茶店に入る。

 そこはかつて吉田さんの店で、今ではお弟子さんが経営していると知り、レトラはケーキを頼んでいいかと聞いてきた。フッ、お子様め。可愛い奴だな。

 

 レトラとシュナはケーキセット、ベニマルはパフェ、ソウエイは飲み物だけで良いとのこと。

 俺が注文したのは、大人らしくコーヒーだ。砂糖とミルクをたっぷり入れて、苦味と甘味のハーモニーを──楽しんでいたら、現れたヒナタに「ほぼコーヒー牛乳じゃないの」とのツッコミを喰らった。こういうのは雰囲気でいいんだよ! 

 

「でもまあ、カフェオレも似合っているわよ。格好も可愛らしいし」

 

 どうやらあの店員が俺に選んだポンチョ風の服は、子供服であったらしい。騙された。配下達は「とても似合っている」だの「その服が気に入ったと思っていた」だの。レトラに至っては「可愛いとは思ったけど、言われたくないかなって!」……何の忖度だ。

 

「そんなことより、騒ぎにはならなかったようで良かったわ。イングラシアでは、街中に魔物がいる光景はまだ一般的ではないから」

「ああ、安心したよ。案外平気なもんだな」

 

 俺やレトラは良いとして、角のあるベニマル達は人間でないことが一目でわかる。ブルムンドなら、魔国の住民が出掛けて行くことも珍しくなくなっているが、ここイングラシアでは人々を驚かせてしまうかもしれないという危惧があった。なのでヒナタからは、面倒事になりそうなら街を巡回する聖騎士達を呼んでいいと言われていたのだ。

 

 実際のところ、街を歩く俺達は注目を集めてはいたが、警戒や嫌悪という類のものではなかった。あの視線の意味を考えるに……妖鬼(オニ)達が三人とも美形であることが功を奏していたような……人間って現金だよな。

 

 

 ヒナタの紅茶を待つ間、軽く報告を受けることにした。

 遮音結界を張っているので、会話が周囲に漏れることはない。

 

「ソウエイ、ミューゼ公爵に動きはあったか?」

「いえ。監視を続けておりますが、外部の者と接触する様子はありません」

「だろうな。親玉はロッゾ一族で決まりだろうけど、ミューゼには動くなと命令してるってとこか」

「ロッゾとしては、自分達との繋がりに気付かれること自体を避けたいはずよね。なら、公爵の口封じを狙うんじゃないかしら?」

「いや、まだ早いと思う。ミューゼが逃げたり裏切ったりすれば、どうなるかわからないが……それで、シルトロッゾ王国についてはどうだ? 秘密裏に探れそうか?」

「……あっ」

 

 レトラのフォークから、一口分のケーキが皿の上にポロリと落ちた。

 それを微笑ましく見守りながら、ソウエイの返答を聞く。

 

「困難かと思われます。小国であり自由民も認めていないため、人の出入りは厳しく管理されているらしく……申し訳ありません」

「私も危険だと思うわ。西側諸国を牛耳ってきた怪人達の巣ともなれば、他国の工作員の侵入を許すほどお粗末ではないでしょうね」

「じゃあ調査は保留だな。気取られたらせっかくの優位が消える……俺達を評議会に呼んだのもロッゾの思惑なんだろうし、出方を窺ってみるか」

「リムル、あのさ……これ見て欲しいんだけど」

 

 レトラがケーキの皿を押し退けて、テーブルの上へ片手を伸ばす。サラリと砂を纏いながら翻った手の平に乗っていたのは──

 

「な……何だこれ、銃弾か? こんなものどうしたんだ?」

魔王達の宴(ワルプルギス)で…………」

 

 コツン、と置かれた小さな弾丸。

 躊躇うような口調で、レトラが続ける。

 

「クレイマンがミリムに害意を向けた時、俺が精神干渉して止めたことがあったんだよ。その時、クレイマンの魂にコレが刺さってたみたいで……情報不足で完全には再現出来てないんだけど、精神支配の呪法らしいんだ」

 

 当時は気付かなかったが、最近になって判明したのだとレトラは言う。

 ヒナタの手前、能力を事細かに話せないようだが察しは付いた。恐らく、精神干渉を行う過程で、その弾丸を『風化』させていたってことだな。

 

 それにしても、クレイマンが精神支配されていただと……? 

 もし事実なら衝撃的な話だが……気になる点がある。

 レトラが言っているのは、宴の直前にクレイマンがミリムへ暴言を吐いた時のことだろう。ミリムも後で、「クレイマンに殴られるところだったが、レトラがクレイマンを止めてワタシを守ってくれたのだ!」と自慢してきたので間違いない。

 本当にクレイマンが操られていたとしよう。だがその支配は、魔王達の宴(ワルプルギス)が始まる前に、レトラが解除していたわけだから…………

 

《告。当該の呪法は、個体名:クレイマンの自我を支配するものではなかったようです》

(そうだよな。正気に戻った様子もなかったし……クレイマンを『捕食』した時はどうだ? 何かおかしな反応はあったか?)

《否。同個体に、精神支配の痕跡は発見されませんでした》

 

 智慧之王(ラファエル)さんはキッパリと言い切った。

 それならやはり、クレイマンは洗脳されていたからではなく、()()()()()()俺と敵対していたことになる……じゃあ、その呪法は一体? 

 

《解。察知される危険性が低い範囲内での思考誘導──または、支配下に置いた対象の思考把握のためと考えられます》

 

 クレイマン達と敵対する勢力があったということだろうか? 

 先生とのやり取りは『思考加速』で行っていたので、俺は自然な流れで声を上げる。

 

「クレイマンの言動から考えても、洗脳までされていたとは思えないな。思考誘導や情報収集が目的だとして……誰がそんなことを……」

「狙撃が可能な者の犯行ってことよね? ユウキなら、拳銃を持っていたわよ」

 

 ヒナタによると、銃はこっちの世界では一般的ではなく、ほとんど知られていないそうだ。

 ここでもユウキの名が出るか……しかし俺はユウキを、クレイマンが言っていた"あの方"で確定だと思っている。"あの方"って、クレイマン達の"依頼主"なんだよな? 

 

「ユウキがクレイマンを操るメリットって何だ……?」

「あの、俺は、まだ犯人までは絞れないと思うんだ……!」

「リムル様、レトラ様……これは呪術の道具なのですか? "そげき"とは……?」

 

 首を傾げたシュナに尋ねられ、ハッとした。とりあえず、銃の存在を知らない者達に、『思念伝達』で拳銃やライフルの映像を見せて説明してやる。

 ベニマルは、魔力の通っていない弾なら大した脅威ではないと分析したらしい。ソウエイにとっては護衛の難易度に影響するため、脅威を抱いている様子だ。シュナは、これなら自分にも扱えると──銃を作るという最も物騒な発想になっていた。恐ろしい娘。

 

「クレイマンの件が誰の仕業かは置いておくとして……今考えるべきは、"狙撃"と"精神支配"の手段を持つ勢力が存在するってことか。そう言いたいんだな、レトラ?」

「うん。警戒しておいた方がいいんじゃないかな」

「そうだな、その勢力がロッゾって可能性もある。それに、ただの鉛弾なら俺達には通用しないが、人間相手なら殺傷力は充分だ。もしこれが使用されたら──」

 

《告。銃の知識のない者からすれば、目の前で射殺された者を見ても、何が起きたか理解出来ません。近くにいる者が疑われる可能性が高いと推測します》

 

 ……なるほどね? 

 暗殺だけでなく、そういう目的にも使えるのか。

 

「ソウエイ」

「はい。明日の評議会では、万が一にもリムル様が疑われないよう、会場周辺に分身体を配置して警戒は念入りに行います」

 

 まだ何も言ってないんだが……デキる男は話が早過ぎる。

 その後ヒナタから、明日は俺への質疑応答を経て、魔国の評議会加盟が正式に承認されるだろうと説明されたが、くれぐれもキレるなという注意も散々受けた。どうやら向こうには俺を怒らせようという魂胆があるらしいが、俺は大人なので何の問題もない。

 

「本当に大丈夫かしらね……貴方、レトラが槍玉に挙げられても冷静でいられるの?」

「そんなもんそいつらが悪いだろ」

「リムル……短気、ダメ、ゼッタイ」

 

 ヒナタだけでなく、レトラにまで心配された。

 冗談に決まってるだろ……そんなに信用ないか俺? 

 

「おいおい、俺だって慎重に臨むつもりなんだぞ? 奴らは俺達を上手く利用する気でいるんじゃないかとか……それならこっちも利用させて貰うが、お互い国益を懸けてやってるんだ。いちいちキレてたら話し合いが進まないだろ」

「なら良いんだけど。何か企んでいる馬鹿共もいるようだから、気を付けるのよ?」

 

 それからヒナタは、ソウエイが懸念する東の帝国の動向や、帝国がドワルゴンを通過する場合の侵攻ルートについても調査を引き受けてくれたのだった。

 

 

   ◇

 

 

 ビックリした……

 原作との相違を見付けたっていうか、何ていうか……

 ミューゼ公爵が、グレンダに射殺されずに生きていると知った時には、良いことだなとは思った。だけど、ヴェルドラ(と俺)にやられたロッゾが原作よりも慎重になったお陰で、本来ここでリムル達が知るはずの"狙撃"の情報が消えた……! 

 

 明日の評議会では、まさにグレンダが狙撃を行ってリムルを罠に嵌めようとするのに、知らないままだとどうなる……? と、俺はケーキを口に運ぶのも忘れて考えた。ラファエル先生なら事前情報なしでも、グレンダの殺気を見落とすことはない、はず、だけど…………

 

 考えて考えて、足りない情報は俺が出すことにした。

 俺には、『狙撃が起こる』という事象を伝えられない制約があるが……近藤中尉の"支配の呪弾(ドミニオンブレット)"ならもう持っている。これなら隠蔽されずに出せる。不完全だからラファエルでも解析し切れないだろうけど、これで"狙撃"の可能性を示唆することが出来るのだ。

 

 というか、この弾丸を手に入れてから……クレイマンが精神支配を受けていたことを、いつリムルに伝えるべきか迷ってたんだよな……

 ファルムスや聖教会が魔国を襲撃するよう仕向けたのは、ユウキ達だ。クレイマンは仲間達と同じ目的のために動いていた一人であり、中尉に操られて魔国を陥れたわけじゃない。そこは別々に考えないといけないが、それを知らないリムルがどう思うかが心配だった。

 

 まあ、ユウキにあらぬ疑いが掛かったのは焦ったけど……犯人の目的は思考誘導と情報収集、とリムルが一瞬で正解に近付いたのも凄かったけど……

 とにかく、"狙撃"と"精神支配"のワードを提示出来たのは大きい。近藤中尉の弾丸は、ロッゾやグレンダとは全く関係ないが、これは明日の騒動への備えになってくれる。

 

 ひとまず俺に出来ることはやった……と、一息吐く。

 ところで俺は話の途中、食べかけのケーキをベニマルの前に押しやってしまっていたらしく、「これ食べていいんですか?」と聞かれたので「ダメ」と皿を取り戻して完食した。

 ごちそうさまでした。

 

 

 

 ヒナタと別れた後、俺達は評議会が用意してくれた最高級のホテルに戻った。今はリムルの部屋に集まり、明日の打ち合わせをしながら寛いでいる。

 

 そこへ、部屋のドアをノックする音。

 対応したシュナが、ホテルマンから大判の封筒を受け取って、リムルに手渡す。

 

「リムル様。評議会からのお届け物だそうです」

「何だ? 西方諸国評議会……開催要項? こんなもん、先に送っといて欲しかったよな」

 

 つらつらと書かれていたのはよくある諸注意事項だが──最もリムルに関係のあった内容は、会議への付き添いは秘書が一名、護衛が一名、計二名までというものだ。

 

「二人までって、魔王達の宴(ワルプルギス)みたいだな……」

「評議会に魔王が参加するのは初めてだろうし、魔物をゾロゾロと連れて来られても困るんじゃない?」

 

 俺は評議会側に理解を示すフリをしながら、来たか、と身構える。

 原作にこんなルールはなかった。するとこれは、俺の影響で加わった要素である可能性が高い。仕掛け人は──マリアベルだな。

 マリアベルは俺を『強欲者(グリード)』で支配したがっているはずだから、俺の外遊という珍しい機会を逃すとは思えない。こうやって誘導を仕掛け、俺が一人になるその時を虎視眈々と待ち構えているんだろう…………いいよ、乗ってやる。

 

「リムルの秘書ならシュナだし、護衛はベニマルだよな。ソウエイは……リムルと会場の警備は、影に潜んでおけばバレないんじゃないかな?」

「じゃあレトラ、お前は……」

「俺はここで見学だね」

 

 サラッ、と手の平に小さな砂の玉を出す。ミニミニサイズの分身体だ。以前のように、コイツをリムルにくっつけて連れて行ってもらえば、リアルタイム視聴が出来る。

 

「悪いな、せっかく社会勉強になるって楽しみにしてたのに」

「出席しなくていいなら気楽だよ。リムル、明日は頑張って。留守番は一人で出来──」

「相変わらず立場をわかってない奴だな……国の要人が、外遊先で護衛無しなんて有り得ないんだよ。それにお前はイングラシアが初めてなんだから、フラフラ出掛けたりするなよ? ソウエイ、レトラを頼むぞ」

「御意。分身体を一体、レトラ様の護衛に残します」

 

 あっハイ…………

 いや、想定内だ。この状況で俺の護衛をするなら、ソウエイしかいないことはわかっていた。それでも一応、これが一応、俺の警護が最も手薄になる瞬間。

 

 開国祭で"姫様業務"までして行ってきた仕込みが、ようやく結実する。

 俺を手駒に出来たと思えば、マリアベルは勝利を確信するだろう。そうすれば今後の行動も予想が立てやすくなるし、その分、魔国の皆は安全になる…………

 俺は明日、まだどんな手で来るかもわからないマリアベルの策を読み、むしろ俺が誘き寄せ、わざとやってることを悟られないよう罠に嵌まってみせなければならない──

 

 

 ソウエイの目を誤魔化しながら。

 

 

 

 …………無理ゲー感あるな? 

 

 

 

 

 




※強敵(ソウエイ)
※更新期間ですよろしくお願いします



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