魔王の部下も楽じゃねえ!   作:普通のオイル

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話し合いはおしまい!

 俺達はヘルサイスが買った土地を手放すよう迫るために、問題の建物まで来ていた。

 

「はいはいどーもこんにちはー。グレゴリー商会ですー。商店街の代表で来ましたー」

 

 そんな超適当な挨拶をしながらヘルサイスの事務所の中に入って行く。俺を先頭に右後ろにはサリアスさん、左後ろにはゴンザレス君の布陣だ。

 

 この話し合いは、一応平和的に解決しようとしましたよ、というポーズのためにやっているだけで、本気で解決するとは思っていない。だからまぁこんなのは適当でいいのだ、適当で。

 

「何だぁ貴様ら。礼儀ってもんがなっとらんなぁ! このリン・レイビン様に対してようそんななめ腐った態度取れたなぁ!!」

 

 いや誰だよ、レイビンって。知らねえよ。ていうかいきなり恫喝だよ。流石はヘルサイスとかいう恥ずかしい名前してるだけあるわ。昨今じゃ小学生でも恥ずかしくてこんな名前つけられねえよ。

 

 うん、ちょっと怖いけど、魔王プロテクションあるしサリアスさんいるし俺も任侠映画みたいな事やってみよう。一度やってみたかったんだよね。

 

 俺は奥にあったソファにドカッとふんぞりかえって、いきなり煽り全開で捲し立てた。

 

「おうおう! しけてんなぁ、この店は! 客に茶も出さねえのか! 礼儀どうこうはお前らの方が出来てねえんじゃねえのか?」

 

 噛まずに言えたのでよしとしよう。レイビンもまさか俺がこんな行動をするとは思ってなかったのか、一瞬呆気にとられる。

 

 レイビンはそんな俺を見て、コイツはただの商店街の使いで来たんじゃ無いなと思ったらしい。ドスの効いた声で探りを入れてきた。

 

「てめえ何処のモンだ……返答次第じゃ生かして帰さねえぞ……」

 

「あ? さっき言っただろ? 商店街の使いのグレゴリー商会だって。聞いてなかったのか?」

 

 まぁただの商店街の使いがこんな堂々とヤクザの事務所の真ん中でふんぞり返ってる訳が無いので、それはある意味正しい疑問かもしれない。

 

「そんなわけが───」

 

 レイビンが何か言う前に、カリウス会長に託された用紙を突きつける。

 

「これを見ろ。これな、今ならてめえらが買ったこの土地と建物を同じ金額で買い取りますよっていうありがた〜い紙切れだ」

 

 レイビンがバシッと紙を俺の手から奪い取ると、目を行ったり来たりさせながら読み進めていく。やがて読み終えたレイビンはニヤリと笑った。

 

「ほう? コイツを用意した奴は礼儀が分かってるじゃねえか。その誠意に免じて出て行ってやってもいいぜ。本当だ」

 

 あ〜この顔、ぜってえ嘘だわ。トールが持ってる真実の目が無くても嘘だって分かるくらいレイビンは怪しい顔をしてる。

 

 だいたいこういうヤクザ組織に一回金出したらそれ以降どうなるかなんて分かりきってる。

 

 なんのかんの言って金を出させて寄生虫みたいに延々と毟り取るに決まってるんだ。伊丹十三の映画で見たから詳しいんだぞ俺は。

 

「おい、いつそれがてめぇの物だなんて言ったよ」

 

 俺はレイビンから用紙を奪い取ると、呆気に取られているレイビンの目の前で、その紙をビリビリに破いてやった。こんな奴らにはびた一文出してやらねえ。

 

「いいか。お前らはもう既に失敗したんだ。素直に出てくなら許してやろうかと思ったが、もうそんな気は微塵もなくなった」

 

 話し合いなんて最初からいらなかったね。こういう相手には力で分からせるしかない。予定通り実力行使で行こう。

 

「金を払うなんてお前らの養分になるような事は絶対にしない。すぐにでもこの商店街から出て行け。さもなくば……」

 

 まぁ、どうなるかはまだ言うまい。わざわざ聞かせてやる事もないしな。

 

 ところがレイビンは俺が言い澱んだのを見て怖気付いたと思ったらしい。急に調子に乗り始めた。

 

「さもなくばどうするってんだ? まさか俺達をどうこうできるとでも思ってんのか? ヘルサイス舐めてるとどうなるか分からんぞ。うちの若いもんは血の気が多いからなぁ」

 

 レイビンが分かりやすい脅しをかけると、下っ端連中が急に勢いづいた。おいコラ! とか、分かっとんのか! とか口々に騒ぎ出す。

 

 おおこわ。でも魔王プロテクションがあるし、サリアスさんなら無傷で全部ぶっ殺せるのは確定的に明らかなので、身の危険を感じるほどではなかった。

 

 俺よりも、むしろこんな物騒な所に連れてきちゃったゴンザレス君が内心びびってるんじゃないかって心配なくらいだ。

 

 え、もしもサリアスさんが居なかったらって? そんな事になってたらまずこんな所には来てないから。

 

「はぁ……なんかどうでも良くなってきた。二人とも帰ろう。時間の無駄だったわ」

 

 俺が立ち上がって出口に向かおうとすると、下っ端二人が通路を塞いできた。

 

「ようコケにしてくれたなぁ! ただで帰れると思っとんのか!」

 

 うわ面倒くさ。俺は溜息を吐きながらチラリとゴンザレス君に目配せする。ゴンザレス君は無言で頷くと一歩前に出て、チンピラ二人をまるで暖簾でも押すかのようにグイと両脇に追いやった。

 

 超でかいゴンザレス君に押されたチンピラ二人は踏ん張る事も許されずに左右の壁に押しつけられる。俺はそんなゴンザレス君の脇の下をひょいと潜って外に向かった。

 

 それを見た他の下っ端が動き出そうとするのをサリアスさんが目線だけで止める。射竦められた下っ端を満足そうに眺めたサリアスさんはゴンザレス君と一緒に外に出てきた。

 

「覚えとれよ……」

 

 出ていく間際にレイビンが何か言っていたが、鼻で笑っておいた。予定通りいけばどうせ()()()()()()()()()()はずなのだ。ま、せいぜい今日の間くらいは覚えておいてやるさ。

 

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