魔王の部下も楽じゃねえ!   作:普通のオイル

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今後の方針を決めよう

 

 旅行から帰ってきて早々、やらなきゃ行けない事がいくつも出来たけど、全部他の奴に押し付けたら、意外と暇な時間が作れた。

 

 せっかく暇が出来たので、そろそろ次の目標について考えてもいいかもしれない。

 

 人間界(こっち)に送り込まれた当初は金が無かったので、しばらく資金集めをしていたら結構時間が経っちゃったのだ。

 もう立派な工場もできたし、店も社宅も出来た。当面の目標であった資金集めは、ある程度達成されたと言ってもいいと思う。

 

「さて、そうなると勇者召喚をどうするかだ……」

 

 一応勇者召喚自体は極秘で行われているので、分かっている情報はあまり多くない。

 

 せいぜい、召喚が行われる場所は王都の王城の中という事と、目的は魔王討伐であるという事くらい。後は召喚は王様主導で行われている、という程度か。

 

 このデリウス王国は王国というだけあって、王様が一番偉い、君主制の国家だ。

 

 当然、王様は勇者召喚を行使する権利も停止する権利も持ち合わせている。なので、王様に言う事を聞かせられたならば、召喚は簡単に止められるはずなのだ。理屈の上では。

 

 ま、言うは易し行うは難しだ。そんな簡単に出来るならこんな苦労はしてない。

 

 過去の報告書によると、王城は入り口の門を眺めてるだけでも咎められるくらい、警備が厳重らしい。これじゃあ外部から探るのにも限界がある。

 

 だから、王城の内部の関係者から情報を集める必要が必然的に出てくる訳だ。

 

 パッと思いつく方法で無難なのは買収だな。王城で働いている人間に金を握らせて協力者になって貰ったり、情報を流して貰ったり。オーソドックスな手法だけど、かなり有効だ。

 

 でも、これは慎重にやらないといけない。例え掃除のおばちゃんであったとしても、現状に不満を抱いていなかったら、懐柔するのは難しいからだ。

 

 王城で勤務してる奴なんて、金だけじゃなく、名誉だとか誇りだとかそういうのも理由になってるのが大半だと思うので、そこら辺はきっちり見極めないといけない。

 

 そういう買収以外の手段としては、普通に諜報員を雇う事かな。でもこれも簡単にはいかないと思う。何しろ人材の当てがない。まさか諜報員募集中! なんて張り紙を張って回るわけにもいかないしな。

 

 でも、魔界から人員を引っ張ってくるのも限界があるので、いずれは現地協力者が必ず必要になる。だから、そっちの方を先になんとかした方がいいかもしれない。

 

 うん、そうだな! 次の目標は現地協力者を増やす事にしよう。買収の方は運が良かったらする、ってくらいでいいや。

 

 そうと決まればどうしよっかな〜。まずは王都に拠点を構えたいとこだな。グレゴリー商会の支店として第2号店を建ててもいいかもしれない。

 

 メルスクからの輸送は厳しいから、小さい製造所も作ろう。第2号店は一応店の体裁は整ってる、って程度でいいんだ。

 

 それで、そこを活動拠点にして情報を集める体制を作りたい。ガワはそれで良いとして、問題はやっぱり中身だ。

 

「あーあ、そこらへんに手頃な諜報員でも転がってないもんかな〜」

 

 勿論、そんな事があるわけもなく、良い方法を思いつかなかった俺は、一旦考えるのを保留にして、気分転換に外に出かけることにした。

 

 

 ーーー

 

 

 商店街の中を適当にぶらついていると、色んな人に声をかけられた。ただ、顔を見た事があっても名前までは思い出せない人が大半だ。なんとなく会釈して誤魔化していると、大阪のおばちゃんみたいな人に捕まった。

 

「助かったわ〜。グレゴリーさん! あんな変なのにうろつかれたら商売上がったりになるところだったわ! うちなんて事務所があった所のすぐ裏よ? ほんと気になっちゃって夜も───」

 

 うん。今更お名前なんですかとか聞けねぇ。商店街に住んでる人みたいだけど覚えが無いよ。

 しかし、おばちゃんというのは世界が変わっても変わらないな……さっきからマシンガンみたいに喋り続けてるけど終わりが見えない。

 

「うちなんかまだ良い方よ? ロイスさんなんて首括る勢いだったんだから!」

 

「はは……それは大変でしたね。あ、リュウト君だ」

 

「あらほんと! カリウスさんのとこの……」

 

 おばちゃんと会話していたら、カリウス会長の息子さんのリュウト君を視界の端に捉えた。手を振るとこっちに気付いて近寄ってくる。

 

「グレゴリーさん。こんにちは!」

 

「こんにちは。リュウト君」

 

 彼は確か7才と言っていたから、地球でいう所の小学一年生くらいになるんだろうか? そのわりには凄く利口に見える。俺が小学一年生の時なんて遊ぶことしか考えてなかったけどな。

 

「ローラおばさんもこんにちは! お買い物ですか?」

 

 そうだ、ローラさんだ。リュウト君の言葉でようやく目の前のおばさんの名前を思い出した。ちゃんと覚えてるなんて凄いな。

 

「ええ買い物よ。あらやだ私ったら忘れてたわ! 早く行かなきゃ売り切れちゃう! 二人ともまた今度〜」

 

「はーい、また〜」

 

 おー、凄い。リュウト君がローラさんを撃退してくれた。

 

「ありがとう。助かったよ」

 

 俺がそう言うとリュウト君は背伸びしてコソッと言ってくる。俺はちょっと屈んで高さを合わせた。

 

「ローラおばさん。お話長いからね!」

 

「ふふ、本当だね」

 

 なんて賢くて可愛い子なんだろうか。君、うちの子にならない? こんな子供なら大歓迎なんだけど。そんなことを考えていたら、ふとレイラの顔が頭に浮かんだ。

 

 ……そう言えば、人間族と魔族の間には子供って作れるんだろうか?

 

 いやいや、やっべえな俺! 最近レイラのこと考えすぎでしょ。普通にキモいぞ。ゾッコンすぎて自分でもちょっと引くくらいだわ。

 思考を振り払ってリュウト君に、にっこり笑いかける。

 

「じゃあ、お父さんによろしくね」

 

「うん分かった! またね!」

 

 その後、リュウト君と別れてぶらぶらしていたら、リヨン中佐がいるデリウス軍の施設まで来たので、ついでに挨拶していくことにした。

 

 中佐がいつもいる部屋を訪ねると、今日はおらず、代わりに応対したのは彼の部下のヘルケさんだった。何度か顔は見た事があるが、あまり話した事はない。

 

「すみません。本日は中佐は所用で出ております。いつごろ戻るかも分からないと申しておりました」

 

「ああ、そうですか。ちょっと気まぐれに挨拶に寄っただけなんで気にしないでください」

 

 居ないなら帰ろうかなと思った俺だったが、ふと、そういえばギルドに来たという営業は、こっちの方には来てたりしないのかと思って聞いてみた。

 うちの最大の顧客を奪われたらたまったもんじゃないのでしっかり確認しておかなければ。

 

「営業ですか? いえ、特にそういった訪問は記録に残っておりませんが」

 

「ああ、そうですか? そりゃあ良かった」

 

 なーんだ、杞憂か。まぁ取り敢えずは来ていないらしいので一安心。しかし、他のいくつかの病院や診療所なんかには営業が来てるかもしれないので、その辺もちゃんと探りを入れといたほうがいいかも。

 

 俺はそう思いながら、ヘルケさんに礼を言って陸軍の施設を後にした。

 

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