魔王の部下も楽じゃねえ!   作:普通のオイル

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詐欺のような何か

 

 ステイシアが、ライバル企業のマーロン製薬について調べ始めてから何日か経ったある日。ステイシアは、とても困惑した様子で報告を上げてきた。

 

「どうもおかしいんです。いくら調べても何も出てこないんですよ。もしかすると存在しないかもしれません」

 

 ステイシアは方々に手を尽くしたらしいが、マーロン製薬について何も分からなかったのだとか。

 

「存在しないって……そんな事ある? だって現に営業が来てポーション置いてったじゃない」

 

 じゃあ、あのポーションはいったい何なんだよと言いたくなるけど、続きを聞いたらそうも言っていられなくなった。

 

「それはそうなんですが、あの時トールさんに貰った住所のメモを頼りに、連絡先に行ってみたんです」

 

 するとそこには営業所など存在せず、ただの宿屋があったらしい。

 

「うーん、まぁでも宿でしょ? そこにその営業さんは居なかったの?」

 

「居たらこうはなっておりませんよ。居なかったから問題なのです」

 

 ステイシアが宿屋の店主に聞くと、確かにそんな人間が泊まって行った気がするが、自分は何も聞いていない、という反応をされたそうだ。

 

「困ったね。本当に手掛かり無し?」

 

「一応外見などの特徴は聞き出しておきましたが……」

 

 店主曰く、その男はザ・営業、というようなスーツ姿に、お洒落な帽子(ハット)を被っていたらしい。

 ただ、この世界では帽子は珍しいようで、それで覚えていたのだとか。

 

「いや、分かったよ。そこまで調べてくれたんなら充分だ。ありがとう」

 

 しかし、だとするならば全く意図がわからないぞ? 営業をかけてきたのに全く情報が掴めないなんて、普通じゃ考えられない。

 

「もうちょっと調べたほうがいいかもしれないな……」

 

「ええ、気味が悪いですからね」

 

 まずは他のお客さんの所に営業が来てないかどうか辺りから調べようかな。陸軍の方には行っていないみたいだったけど、他の所に来てるかもしれない。

 

 俺達は、その後2日かけて納入先の病院や診療所を回ったが、残念ながらどこに行っても、そんな営業は来ていない、という返答しか得られなかった。

 

 

 ーーー

 

 

 謎の営業について手掛かりが無くて困っていたある日。マーロン製薬のポーションの成分調査を終えたカイルが、俺の元に駆け込んできた。

 

「グレゴリー様。ようやく調査が終わりましたよ」

 

「それで? どうだったの?」

 

「どうもこうも無いですよ! コレ99%うちのと同じです」

 

「はぁ!? じゃあ製造法が漏れてるってことか!?」

 

 なんてこった! この国、特許とか無いから製造法がバレたら為す術が無いんだぞ!

 そう焦った俺だったが、これはそういう問題では無いらしい。

 

「いえ、配合の比率まで完全に一緒なのは考えられません。恐らくこれは、うちの商品を買って詰め替えただけだと思います」

 

「マジ……?」

 

 俺はようやくそこで初めて、先日ステイシアに調べて貰った事をカイルに話して聞かせた。

 

「───って事があって、マーロン製薬については手掛かり無しなんだよ。カイルはどう思う?」

 

 話を聞いたカイルは露骨に怪訝な表情をした。

 

「なんか……詐欺とかじゃ無いんですかそれ? よく分かりませんけど……最近多いんですかね?」

 

「あー……俺のは違うからね?」

 

 多分、こないだ渡したタマちゃんエキスの件も詐欺に含んでるんだろうなと思ったけど、それに関しては深くは突っ込まない。

 とにかくこれまでの情報を統合すると、ライバル企業が、ただ顧客を奪いに来たという単純な話では無さそうなのは確かだ。

 

 これは、このまま無視しないほうがいいだろうと思った俺は、諜報部の3人とカイルを集めて会議を開いた。

 

「マゴス君はどう思うよ?」

 

「うーん……何というか、意図が読めませんね。そんな事をして何の意味が?」

 

 そうなんだよね。詐欺にしてもいったいどう騙して、どうお金を取るつもりなのかがさっぱり分からない。だからこそ気持ち悪さが増すというか。

 

「これが詐欺だとするならば冒険者ギルドがその対象になるのかと思いますが、そうにしてはあまりにも稚拙に見えます」

 

「連絡先も立派な営業所に見せておかないとおかしいですよね?」

 

 アイリスちゃんもマゴス君の意見に同意してコクコクと頷いている。

 

「カイルは技術者としてどう思う?」

 

「えーと、前にも言いましたが、ギルドに持ち込まれたポーションとうちで作っているポーションは材料も配合比率も全く同じです。違いがあるとすれば……瓶です」

 

「瓶ね。そりゃあ瓶は違うわな?」

 

 それも一緒だったらもうそれただのうちのポーションだし。

 

「ええ、ただあの持ち込まれた瓶は普通は採用しないような結構珍しいタイプなんですよ」

 

 うちで扱っているポーションの瓶は、コストを抑える関係から安価なコルク瓶を採用していた。

 ところが、ギルドに持ち込まれたあのポーション瓶は、料理で材料なんかを保管しておくような密閉瓶という物らしかった。これは開け閉めが容易でいて、密閉ができるので値段としては高くなるらしい。

 

「よくまぁ密閉瓶使って採算がとれるなぁと最初は思いましたよ。どうやら採算どうこうは関係無くなったようですが。私からはそれくらいです」

 

「いや、ありがとう。参考になった」

 

 しかし瓶か……そんなに珍しいものなら、出所が分かったりしないものだろうか? 

 考え込んでいたクラウス君も同じことを思ったようで、ポツリと意見を述べる。

 

「探し出すとするならば……目印は帽子(ハット)と瓶ですかね……」

 

「そんな所かね」

 

 見つけ出して真相を聞き出すとするならば、目撃証言を洗っていくしか無い。そうするとその二つが目印になる。

 

「店に買いに来たとかは無いですか? ……いや、それなら流石に分かりますか」

 

「一応店番やってた人達に確認してみるよ」

 

 まぁ本拠地に直接買いに来る事は無いんじゃないかと思う。そう言う意味ではギルドの売店も同じだ。仮にもし買っていたとするならば、ギルドの誰かが教えてくれたはずだ。

 そうなると、どこから俺達のポーションを手に入れたんだよという事になるけど、人づてに買われてたりしたらもう分からない。

 

「はぁ……ま、とにかくやれるだけやってみるか。マゴス君とアイリスちゃんは宿周辺での目撃証言を集めてみて欲しい。目印は帽子の男だからね」

 

「はい、分かりました」

 

「で、クラウス君はこの瓶がどっから出て来たのか探してくれ。そもそもこの街の物じゃ無いかもしれないし、見つけるのは相当難しいと思うけど一応頑張ってみて」

 

「了解です」

 

「ギルド周辺は俺とステイシアの二人でやるわ。トールにも、もう一回ちゃんと確認しときたいし。じゃあそういう事で。なんかあったらコレで連絡してね」

 

 魔王シアター改を取り出してひらひらさせる。みんなが頷いたのを確認して、その日は解散になった。

 

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