2か月半放置してしまいましたが、続きです。
やっと少しずつ物語を動かし始められる……!!
『俺』が私になってから一ヶ月が過ぎた。
……正直、1日2日過ごせば夢オチで元に戻るでしょ、なんて考えていた時期が私にもありました。
けど現実はそんなに甘くはない。私は今も絶賛女の子だ。
苦労しながら過ごしたこの一ヶ月。でも、意外と過ごしてしまえば怖いことに「慣れ」はやってくるもので。今では言動ではもちろん思考でさえ一人称を
……ただ少し怖いのが、『私』が自然になるにつれてだんだん『
だけど、そんな気張った悩み多き毎日を過ごせるほどこの華奢な女の子の体はきっと強くなかったのだろう。
「……けほっ」
陽務楽羽、現在絶賛体調不良であります。
今朝起きていつものように自分の性別を確認した私は今日も頑張るかと覚悟を決めて学校へ行く準備を始めようとして…………立ち上がれなかった。妙にふらつく私の足は全然言う事を聞いてくれなくて。そもそもおぼろげな頭がちゃんと指示を出していなかったかもしれない。どっちだろうなぁ……なんてどうでもいい考えから『あれ、これ、もしかして……』と思い当たる時には既に私の意識は再び眠りに落ちていた。
二度目の起床を終えた私は誰もいない家の中に一枚残された書き置きで明らかに具合が悪そうだったから学校に連絡を入れて休ませてもらった事を把握した。特に何もすることがなくなってしまったが、そもそもボーっとする頭では何もできないことを悟った私は鍋に放置してあったおかゆを胃に流し込んで再び布団にもぐったのだった。
そして、今に至る。
何となく布団でゴロゴロしながら物思いに耽る。
ダルさこそ残れど一度寝てしまったら辛さは大分取れた。症状も咳が残る程度。自分に余裕が生まれてくれば、さっきまでは全く感じなかった退屈間が忽然と湧いてくる。
「そういえば私って暇なとき何してたっけ……ってゲームか」
この体になって以来なかなか余裕がなくてほとんどゲームをしてなかった気がする。この女子の生活に慣れるのに必死だったのだ。
「久しぶりにゲームやるかぁ……ってクソゲーしかねぇじゃん」
ゲーム棚を見てみれば昔の俺と全く同じラインナップ。ちなみに、ちゃんとラブクロックを始めとするクソギャルゲー類も攻略済み棚にちゃんとあった。
だが、やっぱりクソゲーは万全な体調で臨むものであるので今回はスルー……というかクソゲーって基本的に劇物の類しかないからな。体調不良時にはちょっときつい。
……となると、必然的に残されたゲームが一つ。
「シャンフロかぁ……」
今回の私の体調不良。原因が疲れからなのはきっと間違いないし、その上で間違いなく負担であったのは人間関係。人前で自分でない自分を演じ続けたことだろう。となると、やっぱオンゲはきついかなぁ。
「うーん。本格的にやる事が……」
『お…おじゃましましゅ……』
その時、声が聞こえてきた。ここ一か月でおそらく一番聞いたであろう人の声だ。
声の聞こえてきたのは部屋の外の……玄関の方から。
つまり。
「玲ちゃんが……!!」
家に来た!?!?
なんで!?!?
そんな現状もまともに理解できないままでいた私は。
「失礼します……」
「……ぃ、いらっしゃい」
多分、今まで一番よくわからない顔をしていると思う。
◇
「……まぁ、そのくらいでしょうか」
「うん。ありがと」
玲ちゃんが用意してくれたリンゴに齧り付きながら玲ちゃんから今日学校であったことをだいたい聞いた。「これくらいメッセで済ませてくれても良かったんだよ?」と言えば「お見舞いくらいさせてくださいよ」と返されてしまった。純粋に嬉しい。
「……それにしても、ちょっと恥ずかしいね。こうして
「もう、楽羽さんは病人なんですからそんなこと気にしないでくださいよ。それに、楽羽さんは制服でもパジャマでも、その、かわいい……です、よ?」
「えへへ、ありがと」
自然とふにゃっとした笑いが溢れる。
「……」
「……??」
それに対して玲ちゃんが浮かべたのはちょっと驚いたような、ちょっと嬉しいような不思議な顔だった。
「今、ちょっと前の楽羽さんの笑顔に戻りました。体調崩して逆に緊張の糸が切れたんですかね?最近、少し様子がおかしかったですから」
その言葉に思わずドキッとしてしまう。上手く馴染んだつもりだったが、やっぱりこれだけ一緒に居る、いや、
「……すごいね。わかっちゃうんだ」
「それはそうですよ!私がどれだけ楽羽さんの事を見……見……みぃ!?!?」
断言されてちょっとショック。私のロールプレイ技術もまだまだだなぁ……。
でも、やっぱりちょっと嬉しい。私が『私』であろうとする、行き着く先の見えない戦いをちゃんと見てくれている人がいる事が。今の私を、見据えてくれる人がいるという事が。
「わ、私がずっと楽羽さんを眺め続けていたかどうかは一旦置いておきまして、楽羽さん、ここ最近は特に笑顔をなんとなく作ってる感じがあったので、心配だったんですよ。こう、なんて言うんでしょう。感じてから笑うまでに一瞬ラグの入る感じと言いますか……」
「はは、なにそれ」
「楽羽さんはもっと素直に感情のまま笑ってた方が楽羽さんらしいです。どんな悩みを抱えてるかはわからないですけど、さっきみたいに、感じるままに笑っててください。そのほうが、かわいいです」
素直に、感情のままに。
そう言われて少し納得するものがあった。
気づいてしまえば簡単で。心につっかえてた色々な物が取れてた気がして。
気が抜けたからか再び急激に襲ってくる眠気の中で、今一番感じている感情をこの子にぶつけてしまおう。
「……れいちゃん」
「はい?」
「…………ありがと、だいすき」
「~~ッ!?!?それは、その、どういう意味の……ですか!?!?」
深い意味なんてないよと笑いかけようとするけど、もう眠気には逆らえなくて。
急にバグる玲ちゃんを横目にかわいいなぁなんて考えながら。
私は意識を飛ばした。
玲ちゃんに好きと伝えた。
そんなことを、『俺』は他人事のように感じていた。
私が楽羽になってから玲ちゃんの新しい一面、かわいい一面をたくさん見て。
私が玲ちゃんを好意的に想っているのも十分納得してる。
だけど。
この玲ちゃんへの感情の中に親愛以上の
きっとそれは玲ちゃんに「異性として魅かれてしまった『俺』の感情」。
それは
その感情は、きっと
だから私は、
そう、決意したんだ。
ほんとに、ほんとに難しかったんです。
今後も続きを書くのはきっと恐ろしく難しくて、いつになるかは全く予想もつかないですけど、絶対に完結までは書くつもりなので気長に待っていただければ幸いです。
感想お待ちしています!!!